著者
間島 雄一 坂倉 康夫 まじま ゆういち さかくら やすお Majima Yuichi Sakakura Yasuo
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.38, no.suppl. 2, pp.134-138, 1995-06-01

慢性副鼻腔炎患者の約半数に鼻粘膜粘液線毛輸送機能の低下が認められることが知られている。本研究では生理的食塩水エアロゾルが慢性副鼻腔炎患者の低下した鼻粘膜粘液繊毛機能にどのような影響を及ぼすか検討した。生理的食塩水0.7mlをジェットネビュライザーで鼻腔に投与し、投与前後のサッカリン時間(ST)粘液繊毛機能の指標として測定した。23名の正常人では生理的食塩水投与前後のSTに有意の変化は認められなかったが、慢性副鼻腔患者19名では生理的食塩水投与後に投与前に比し有意にSTが改善した。慢性副鼻腔炎患者の低下した鼻粘膜粘液繊毛機能に及ぼす生理的食塩水のこのような効果を本症における鼻粘膜粘液繊毛機能低あのメカニズムと併せて考察した。
著者
上原 秀一郎 田附 裕子 山中 宏晃 上野 豪久 有光 潤介 小川 恵子 奥山 宏臣
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.960-963, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
7

腸管不全症例において不安定な経口摂取や経腸栄養管理に漢方薬が有効であった自験例を報告し、漢方薬の臨床栄養への貢献を考察する。人参湯は腸管不全7例に、また五苓散は難治性下痢2例に投与した。人参湯の効果について、投与前と3ヶ月継続服用後の腹部症状についてVisual analogue scale(VAS)や症状の変化で評価したところ、7例中6例で腹部膨満と腹痛の改善が認められた。また下痢についても同様であった。人参湯の投与中、経腸栄養の中断はなく、腹部レントゲン像で腸管拡張の改善が認められた。また吸収不良による水様性下痢の症例に対しては、五苓散投与により2例中2例で便性の改善が得られ、血清アルブミン値も改善した。在宅静脈・経腸栄養を必要とする腸管不全症例について、西洋医学のみで管理することが困難な栄養管理上の問題に対して漢方薬が有効なこともあり、Quality of Lifeの上昇に寄与するものと考えられた。
著者
柴田 純
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.109-139, 2008-03-31

柳田国男の〝七つ前は神のうち〟という主張は、後に、幼児の生まれ直り説と結びついて民俗学の通説となり、現在では、さまざまな分野で、古代からそうした観念が存在していたかのように語られている。しかし、右の表現は、近代になってごく一部地域でいわれた俗説にすぎない。本稿では、右のことを実証するため、幼児へのまなざしが古代以降どのように変化したかを、歴史学の立場から社会意識の問題として試論的に考察する。一章では、律令にある、七歳以下の幼児は絶対責任無能力者だとする規定と、幼児の死去時、親は服喪の必要なしという規定が、十世紀前半の明法家による新たな法解釈の提示によって結合され、幼児は親の死去や自身の死去いずれの場合にも「無服」として、服忌の対象から疎外されたこと、それは、神事の挙行という貴族社会にとって最重要な儀礼が円滑に実施できることを期待した措置であったことを明らかにする。二章では、古代・中世では、社会の維持にとって不可欠であった神事の挙行が、近世では、その役割を相対的に低下させることで、幼児に対する意識をも変化させ、「無服」であることがある種の特権視を生じさせたこと、武家の服忌令が本来は武士を対象にしながら、庶民にも受容されていったこと、および、幼児が近世社会でどのようにみられていたかを具体的に検証する。そのうえで、庶民の家が確立し、「子宝」意識が一般化するなかで、幼児保護の観念が地域社会に成立したことを指摘し、そうした保護観念は、一般の幼児だけでなく、捨子に対してもみられたことを、捨子禁令が整備されていく過程を検討することで具体的に明らかにする。右の考察をふまえて、最後に、〝七つ前は神のうち〟の四つの具体例を検討し、そのいずれもが、右の歴史過程をふまえたうえで、近代になってから成立した俗説にすぎないことを明らかにする。
著者
小林 哲夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.309-319, 2017-05-15 (Released:2017-07-25)
参考文献数
43

口永良部島・新岳では,2014年8月と2015年5・6月に爆発的な噴火が発生した.噴出物中には新鮮な火山ガラスが含まれていたため,マグマ水蒸気噴火ないしマグマ噴火で,火砕流が発生したと報道された.しかし新鮮な物質は非発泡で,石基はほぼ結晶質であったため,マグマが火道中で固結した貫入岩体の破片と推定された.類似した噴出物の代表例は,1966年の爆発的噴火で放出された高温のジョインテッドブロックである.これら岩塊も高温の岩脈が破砕され噴出したものと判断される.爆発の原因は高温岩体と地下水が反応した蒸気爆発と推定され,噴火メカニズムは水蒸気噴火と酷似していた.新岳の歴史時代の爆発的噴火でも,今回と同じような高温の固結岩塊を噴出した事例が多いかもしれない.なお火口から斜面方向に噴出した噴煙はブラストであったと判断できる.2015年噴火のブラストは,100km/h以上の高速で海岸に達した.
著者
竹下 欣宏 桐生 和樹 花井 嘉夫 北澤 夏樹 川上 明宏
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.291-307, 2017-05-15 (Released:2017-07-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

2014年9月27日午前11時52分ごろ,御嶽山で水蒸気噴火が発生した.我々は,この噴火による詳細な降灰範囲を明らかにすることを目的として,長野県,山梨県,群馬県,東京都においてアンケート調査を実施した.アンケート結果と既存の研究による降灰確認地点に基づき降灰域を検討した結果,長野県中南部および山梨県の北西部の広い範囲において9月27日の噴煙から1g/m2以下の微量な降灰があったことが明らかになった.27日の噴煙による微量な降灰域は,降灰軸の南側,特に木曽山脈と赤石山脈に囲まれた南北に長い伊那盆地内において広いことが明らかになった.このことは,微量な降灰域は上空の風だけでなく,地上付近の風と地形にも影響を受けることを示している.微量な降灰域に対する地上付近の風の影響は浅間山や桜島のマグマ噴火でも確認されており,細粒な火山灰が降下する際には普通に起こっているものと考えられ,2014年御嶽山の水蒸気噴火でも確認された.
著者
長谷川 健 中川 光弘 宮城 磯治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.269-281, 2017-05-15 (Released:2017-07-25)
参考文献数
24
被引用文献数
4

北海道東部の活火山であるアトサヌプリ火山について,最近の爆発的噴火履歴,特に水蒸気噴火の発生履歴の再検討を行った.火口近傍の露頭および2本のボーリングコアを調査し,これまで未記載であった水蒸気噴火堆積物を新たに5層発見した.その結果,従来2回とされていた最新期の水蒸気噴火が,少なくとも最近2,700年間に7回を数えることができる.特に1,500~1,000年前の間は平均で100年に1回の噴火を繰り返す頻発期であり,最新の噴火は300~400年前であることも分かった.
著者
山田 陽子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.380-395, 2002-12-31
被引用文献数
1

本論の目的は, 「社会の心理学化」 (P. L. Berger) をE.デュルケム以来の「人格崇拝」の再構成から位置付けることである.心理学的知識が普及した社会では, 「心」に多大な関心が払われる.その侵犯を回避すべく慎重な配慮がなされ, 「心」は聖なるものとして遇される.「心」が重要だと語りかける一方で, それを操作対象とする「心」をめぐる知の普及はいかに解釈されうるか.ここではデュルケムの「人格崇拝」論にE.ゴフマンの儀礼論, A.ホックシールドの感情マネジメント論を接続し, それぞれに通底する「人格崇拝」論の構造と異同を明らかにすることによって解答を試みる.<BR>デュルケムは「人格崇拝」概念において, 近代社会では個人の人格に「神聖の観念」が宿ると指摘した.ゴフマンはそれを継承して儀礼的行為論を展開し, 世俗化の進行する大衆社会において唯一個人が「神」である様子を詳細に記述・分析した.デュルケムの宗教論とゴフマンの儀礼的行為論の影響が認められるホックシールドの感情マネジメント論では, 人格や「カオ」に加えて「心」に宗教的配慮が払われることが示唆されている.<BR>ホックシールドを「人格崇拝」論から読む試みを通じ, デュルケムやゴフマンの現代的意義を再評価しつつ, 心理学的知識の普及に関する新たな分析視角の導出と理論的枠組みの構築をめざす.
著者
バートニック ローマン 佐伯 靖雄
出版者
産業学会
雑誌
産業学会研究年報 (ISSN:09187162)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.31, pp.41-53, 2016 (Released:2017-04-03)
参考文献数
18

How do firms adapt to technological change? The ability of firms to sense and implement new technologies and configure new processes that match new requirements is central to competitive advantage (Teece, 2014). But how do firms perform these steps? We look at the development of electric motor technologies in Japanese and German firms to explore these issues. We find substantial variety in how firms approach this change: Some firms have outsourced their electric motor production to Tier1 specialists. Other firms have kept the knowledge completely in-house. Yet other firms cooperate or outsource selectively to avoid these extremes. We offer some propositions on how the individual firm p osition and general features of the German and Japanese supplier settings influence firm strategi es.
著者
高須 克弥
出版者
昭和大学
巻号頁・発行日
1973

博士論文

8 0 0 0 OA オルニチン

著者
浅桐 公男
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.185-187, 2016 (Released:2016-12-09)
参考文献数
14
著者
川田 菜穂子 平山 洋介
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.215-225, 2016 (Released:2017-08-10)

『全国消費実態調査』(1989・1994・1999・2004年)の匿名データを用いて家計における住居費負担の動向を把握し,所得格差と相対的貧困の拡大における住居費負担の影響を検討した。住居費負担率は経年に従って増加しており,とくに『公団・公社の借家』や『民営借家』に居住する世帯の負担増が顕著であった。また,住居費控除後所得を基準に貧困率を算出すると,住居費控除前所得を基準にした場合と比較して上昇した。さらに,低所得世帯を対象としたヒアリング調査の事例分析から,狭小・老朽で低廉な借家に居住せざるを得ない世帯や住宅を選好できず住居費負担が過重になる世帯の具体的な生活状況を把握した。
著者
布井 雅人 吉川 左紀子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.364-373, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
16

Our preferences are influenced by the presence of others. However, it is unclear how the simultaneous presence of multiple others influences preference judgment. In this study, we presented multiple happy or disgust face images around a target and examined their influence on target preference. In Experiment 1, we presented only happy or disgust faces in order to examine the influence of quantity. In Experiment 2 and 3, we manipulated the ratio of happy or disgust and neutral faces. Findings revealed that the happy face increased the target preference and its effect varied by the ratio of happy faces. On the other hand, the disgust face decreased the target preference only if there was one such face. These results indicate that although the numeric information of others’ facial expressions influences preference judgment, this influence differs with the nature of others’ expressions.
著者
鈴木 慎太郎 田中 明彦 岸野(大木) 康成 村田 泰規 楠本 壮二郎 石田 博雄 安藤 浩一 白井 崇生 大西 司 相良 博典 瀧本 雅文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.118-124, 2016-03-25 (Released:2016-03-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

背景.数多くの健康食品が販売されており,医薬品と併用している場合も少なくない.なかでも滋養強壮を謳った「にんにく卵黄」は盛んに広告されており,愛飲者も相当数が見込まれる健康食品である.症例.69歳男性.4年前から「にんにく卵黄」を服用し続けていた.数週間前から労作時の呼吸困難と乾性咳嗽を自覚し,近医で肺炎の診断にて抗菌薬と副腎皮質ステロイドを投与されるも改善せず,当科を紹介受診した.胸部X線およびCT上,両側中下肺野,末梢側優位のすりガラス影を認めた.気管支肺胞洗浄液でリンパ球優位の細胞増加を認め,気管支肺生検ではリンパ球主体の炎症と軽症の器質化肺炎様の所見を認めた.「にんにく卵黄」の服用中止により速やかに改善し,リンパ球刺激試験でも同商品で陽性反応を示したため,同食品による肺障害を強く疑った.結論.健康食品やサプリメントの摂取歴についても,問診で詳細に聴取することが大変重要である.
著者
山口 二郎
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.202-225,267, 2006 (Released:2010-04-30)

Nowadays, the Koizumi government has put his structural reform into practice to some extent. His policy based on neo-liberal ideology is changing policy system which realized parity among the regions and classes in the post war Japan. As the result of 2005 general election showed, the people give support to his reform. This paper aims at grasping the notion of equality that the LDP and the bureaucracy have been pursuing for fifty years. Then, it tries to answer a puzzle, why ordinary people support the neo-liberal policy which causes pain and disadvantage to themselves.Japanese-style equality was brought about by combination of discretionary policy and socialization of risk. Although the socio-economic system in post war Japan is often called “successful social democracy”, it is far from the true one in west European countries. Universalistic approach was quite weak in social policy, and discretionary policy such as subsidy and public investment projects functioned as redistributive policy for backward sectors. Discretionary approach also caused chronic corruption and unfair vested interests in the bureaucracy.Koizumi was good at attacking this corrupted complex, and aroused expectation among the people. They supported Koizumi's reform because they expected him to slash the corruption and vested interests. However, they do not appreciate real outcome of the structural reform. Our opinion poll in early 2006 shows that they still approve the notion of welfare state and have deep concern about inequality in recent Japanese society.Koizumi's reform removed various shelters in Japanese society, and people become exposed to many kinds of risk. In this context, it is likely that debate on role of the government becomes serious in party politics.