著者
戸張 敬介
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.27-84, 2014-09

序論 一. 問題の所在 : 日中戦争下における党の成長 二. 本稿のアプローチ : 権力に対する人々の主体的行動としての「密輸」第一章 華中の日本軍占領地域における「密輸」 一. 日本軍占領下の戦時統制 二. 統制の実状と「密輸」の流れ 三. 日本軍を取り巻いていた中国社会の特徴(以上、八十七巻七号)第二章 国民政府の支配地域における「密輸」 一. 国民政府による戦時の貿易管理 二. 「敵貨」の流入と禁輸物品の流出 三. 国民政府を取り巻いていた中国社会の特徴(以上、八十七巻八号)第三章 共産党新四軍の根拠地周辺における「密輸」 一. 長江中下流域での新四軍の展開 二. 新四軍が直面した「密輸」 三. 新四軍を取り巻いていた中国社会の特徴結論 一. 「密輸」の全体像と発生原理 二. 様々な集団が様々な目的でせめぎあう空間 三. 不確実性と最終的な勝利とを結びつけるもの(以上、本号)論説
著者
埴淵 知哉 山内 昌和
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.14-29, 2019 (Released:2019-01-29)
参考文献数
28
被引用文献数
4 1

近年,国勢調査の「不詳」増加が懸念されている.本研究は,国勢調査の調査票未提出に関連する諸要因を明らかにし,データの補正や解釈,あるいは将来の調査改善に役立つ情報の獲得を目的とした.インターネット調査により収集された,国勢調査の回答状況を含む個票データの分析から,若年層や未婚者,単身世帯,短期居住者などが未提出になりやすく,特に年齢が未提出発生の基本的な関連要因であることが示された.また,大都市圏居住者において未提出が生じやすいこと,プライバシー意識は予想に反して未提出に結び付いていないこと,国勢調査の理解度が年齢とは独立して未提出に関連していることなども明らかになった.国勢調査データを地域分析に利用する際には,これらの偏りがもたらす疑似的な地域差・地域相関の可能性に留意するとともに,将来の国勢調査では,年齢層を問わず調査結果の利用・公開方法を広く周知していくことの重要性が指摘された.
著者
並松 信久
出版者
京都産業大学日本文化研究所
雑誌
京都産業大学日本文化研究所紀要 = THE BULLETIN OF THE INSTITUTE OF JAPANESE CULTURE KYOTO SANGYO UNIVERSITY (ISSN:13417207)
巻号頁・発行日
no.26, pp.308-268, 2021-03-31

常食と菓子の区別は明確なものではない。和菓子は日常生活における常食という側面ももっていたからである。常食と菓子とを区別しようとすれば、生産者と消費者の認識の違いに依拠しなければならない。したがって、和菓子の歴史を明らかにしようとする場合、菓子自体の展開よりも、菓子屋の変遷を明らかにしなければならない。和菓子に関する先行研究では、和菓子の成り立ちや京菓子の特徴が詳細に考察された。歴史的な史料に基づいて実証的な研究が行なわれてきた。しかしながら、菓子屋とその歴史的背景との関連を記述した研究成果は少ない。本稿では、和菓子の成立過程とともに、和菓子と菓子屋との関係を明らかにした。歴史的には、菓子は西欧や中国から日本に伝来した後に、和菓子として独特の発展を遂げた。明治期になって洋菓子が普及し、「和菓子」という言葉が生まれ、洋菓子と和菓子が区別された。しかし、実際は和洋折衷菓子も多く、菓子も多くの食物と同様、文化的な融合化が進んだ。
著者
Masafumi Noda Narandalai Danshiitsoodol Takemasa Sakaguchi Keishi Kanno Masanori Sugiyama
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.1886-1890, 2021-12-01 (Released:2021-12-01)
参考文献数
39
被引用文献数
10

A lactic acid bacterial strain, Lactobacillus plantarum SN35N, which has been isolated from the pear, secretes negatively charged acidic exopolysaccharide (EPS) to outside cells. We have previously found that the SN35N-derived acidic EPS inhibits the catalytic activity of hyaluronidase (EC 3.2.1.35) promoting inflammation. The aim of this study is to find other health benefits of EPS. EPS has been found to exhibit an inhibitory effect against the influenza virus (Alphainfluenzavirus Influenza A virus) and feline calicivirus (Vesivirus Feline calicivirus), which is recognized as a model of norovirus. Although more studies on the structure–function relationship of EPSs are needed, SN35N-derived EPS is a promising lead for developing not only anti-inflammatory agents, but also antiviral substances.
著者
中岡 博史 細道 一善 光永 滋樹 猪子 英俊 井ノ上 逸朗
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.37-44, 2014-04-20 (Released:2014-04-20)
参考文献数
28

HLA領域の遺伝的多型は医学分野のみならず,人類の移住,混合,自然選択や遺伝的適応といった進化過程を推測する集団遺伝学においても重要なツールとして用いられている。日本人の起源については諸説あるが,約30,000年前の後期旧石器時代に日本列島へと移住してきた狩猟採集民である縄文人と,紀元前1,000年から西暦300年頃に朝鮮半島から日本列島へと移住してきた弥生人の祖先が混血して,現在の日本人集団の起源になったとする“混合モデル”が有力であると考えられている。本稿では,日本人集団の混合的起源を支持する遺伝的知見について概説するとともに,HLA遺伝子多型から日本人の祖先集団を推測する遺伝的痕跡の探索について,最新の研究を紹介したい。
著者
吉岡 徹 市原 茂
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.111-116, 2002-05-31
参考文献数
6

本研究では,江戸時代から使われはじめたという「粋」という言葉の持つイメージが現代の若い女性にどのように受け継がれているのかを探るとともに,九鬼周造の粋理論が彼らにも適用できるのか否かを検討した。粋についての九鬼の考察は,彼自身の注意深い観察と感性から洞察された深い意味を持つものと考えられるが,彼自身の仮説を客観的に検討するということは,あまり行われてこなかった。そこで今回は,粋な柄の代表とされる縦縞模様のワンピースと浴衣を着たモデルに様々なポーズをとらせ、それを写真にしたものをコンピュータ画面上に提示し,SD法を用いて女子学生に評価させることにより,彼の理論を検討してみた。九鬼周造によれば,「粋」は,価値の優劣を表現すると共に,媚態をも表現しているということであったが,実験の結果は彼の理論を概ね支持するものであった。一方,外来語の中では一番「粋」に近い語であると思われた「シックな」は,「粋」よりは,「渋み」に近い意味としてとらえられていることがわかった。
著者
水田 拓道 植屋 清見 日丸 哲也 永田 晟 山本 高司
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.100-107, 1975-09-01
被引用文献数
1

目的に応じたサウナ入浴をするための一つの条件として,サウナ入浴時間が生体におよぼす影響というかたちで,主に運動機能的な面からサウナ入浴前後,および入浴中の変化について比較検討した。本実験の結果からサウナの効果的利用法について次のような示唆が得られた。1. アンケート調査の結果,サウナ入浴時間においては5分単位の入浴を繰返している者が最とも多く60%余りをしめていた。また,95%の者がなんらかの形で冷水浴を併用していた。2. 全身反応時問,膝蓋腱反射閾値,垂直跳ぴにおけるジャンプパワー等,筋神経系の関係する機能においては,5分入浴,1分冷水浴で3回繰返し入浴法が,入浴前に比べてよい成緒を示し効果的であることがわかった。このことから,経験的に得た5分単位の入浴法が,疲労回復,気分転換等に効果的であることが裏付けられた。3. 血圧,心拍数,皮膚温の変化には設定パターンによる著明な差異は認められなかった。しかし,いずれのパターンにおいても循環機能への有効な刺激として考察され,長期にわたる利用によって環境温の変化に対する適応能を高める効果が期待される。4. サウナ入浴中の酸素摂取量は安静時に比して,パターン(1)が23.2%,パターン(2)が31.6%それぞれ増加した。エネルギー代謝促進の面からは少し長い入浴時間が必要と考えられる。
著者
Tadashi Maeda Katsuhito Kashiwagi Sadako Yoshizawa Takahiro Sato Kotaro Aoki Yoshikazu Ishii Kazuhiro Tateda
出版者
National Institute of Infectious Diseases, Japanese Journal of Infectious Diseases Editorial Committee
雑誌
Japanese Journal of Infectious Diseases (ISSN:13446304)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.560-562, 2021-11-22 (Released:2021-11-22)
参考文献数
7
被引用文献数
4

Most coronavirus disease 2019 (COVID-19) cases are mild or asymptomatic, and a substantial minority of patients have severe or critical diseases. There are several reports on the potential risk factors of severe disease, but few reports have reported a relationship between antibody titer and severity in Japan. Antibody-dependent enhancement affects disease progression. We evaluated the IgG responses in COVID-19 patients at our tertiary hospital. The IgG index was the measure of interest. We assigned 1.4 as the cutoff value for a positive result based on the specifications by the manufacturer and observed that patients could be categorized into two groups: the early elevation of IgG and late elevation of IgG (IgG elevated in the first 7 days ± 2 days or more than 10 days after symptom onset) groups. The former comprised early IgG responders (n = 7) and the latter comprised late IgG responders (n = 14), and they were compared. The C-reactive protein and D-dimer concentrations were significantly higher in the early IgG responders on admission (HD 0). The respiratory rate was also higher. The lymphocytes were significantly fewer on day 7 of hospitalization (HD 7). These results suggest that early production of anti-severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 IgG may be associated with clinical indicators of severity.
著者
水谷 哲也
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-6, 2013-06-25 (Released:2014-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1 5

2012年にサウジアラビア・カタールで発生した重症呼吸器症患者の原因病原体は,新型のコロナウイルスであった.このウイルスはMiddle East Respiratory Syndrome Coronavirus (MERS-CoV) と呼ばれ,2002年に発生した重症呼吸器症候群(SARS)以来のコロナウイルスによる重症例として注目されている.発生後1年しか経過していないので不明な点は多いものの,MERS-CoVはベータコロナウイルスの2Cグループに属するタケコウモリコロナのウイルス(Bat-CoV HKU4)やアブラコウモリのウイルス(Bat-CoV HKU5)と近縁であることが明らかとなった.このようにコウモリが自然宿主であることが推測されているが,まだ特定に至っていない.最近,ヒトからヒトへの感染が強く疑われるケースが報告され,感染の拡大が懸念されている.
著者
青木 聖久 Kiyohisa Aoki
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.133, pp.47-73, 2015-09-30

精神障害を有する本人(以下,本人)が暮らしを営むにあたって,障害年金を継続して受給するのは大切なことだといえる.ところが,就労したことによって,障害等級の級落ち(以下,級落ち)や支給停止になれば,暮らしに大きな影響を受けることになる.これらの状況をふまえ,本稿では,実際,障害年金が級落ちや支給停止になっている,あるいは,その可能性が高い状況にある本人の実態及びその後の相談体制,さらには,本人や家族が,障害年金や就労をどのように捉えているかを明らかにした.その結果,障害年金が級落ちや支給停止になっている者は6.7%いることがわかった.一方で,殆どの本人や家族が障害年金の意義を認めていた.また,就労についても,多くの本人や家族がその意義を認めていたものの,再発を危惧したり,障害年金の支給停止を気にしていることがわかった.そのため,就労に対して,ためらっているような意見も多く見られた.本稿では,生活支援に携わる者(以下,生活支援者)が,これらの複雑な想いを理解したうえで,本人や家族への直接的支援と共に,障害年金が使いやすい社会資源として位置付くように,社会へ働きかける等の間接的支援の取り組みが重要であるということを示した.
著者
木内 敬太
出版者
一般社団法人 日本支援対話学会
雑誌
支援対話研究 (ISSN:21882177)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.15-29, 2016 (Released:2018-01-26)
参考文献数
52

近年、成人の発達障害者の支援においては、高等教育、職域ともに、これまでの障害者を見守り、支えるという支援だけでなく、障害者の個性を活かし、活動能力を高めるための積極的な関わりが、支援を行う専門家と、教職員や管理監督者などの非専門家の双方に求められるようになってきている。そこで、クライアントの強みに目を向け、活動能力を高めることに焦点を当てた対話的支援法であり、障害者と関わる非専門家の研修にも応用できる、コーチングへの期待が高まっている。すでに欧米では、発達障害者に対するコーチングの実践と研究が進んでいる。本稿では、ADHD、自閉症スペクトラム障害、学習障害、境界性知的機能を取り上げ、障害の特徴と大学や職場での困難について記述するとともに、各障害に対するコーチングの有効性と日本における発達障害者へのコーチングに関する今後の課題について論じた。発達障害者が他の人々と同等に自立した生活を送れるようにするためには、コーチングにより、修業、日常生活、就職、就労の一貫した支援を行うことが重要である。我が国においてそのような体制を確立するためには、発達障害者へのコーチングの有用性と必要性についての啓発、実践家の養成、発達障害者へのコーチングの効果研究、非専門家のコーチング技能習得の有効性の研究を進める必要がある。
著者
岩手県立博物館
出版者
岩手県
巻号頁・発行日
no.(116), 2008-03