著者
水越 厚史
出版者
東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学研究系環境システム学専攻
巻号頁・発行日
2008-12-26

報告番号: 甲24235 ; 学位授与年月日: 2008-12-26 ; 学位の種別: 課程博士 ; 学位の種類: 博士(環境学) ; 学位記番号: 博創域第405号 ; 研究科・専攻: 新領域創成科学研究科環境システム学専攻
著者
下田 正弘 LEE J.-R.
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究の究極的な目標は、インド初期仏教教団の分裂と異説共存の問題を明らかにすることである。そこで、初期仏教教団で発生したと判断される様々な紛争事件を集め、その内容及び解決法などを吟味し、教団で起こり得る紛争の種類と、その解決法の多様性を把握する作業を進めている。その過程で、現前僧伽、すなわち、教団の実質的な活動の基準となる境界がどのように運営されていたのか、その具体的な姿の解明に力を注いだ。なぜなら、現前僧伽こそ、教団紛争の拠点となるからである。その結果、一つの境界によって成立する現前僧伽というのは、地域的な意味だけではなく、むしろ、精神的に結ばれた比丘たちが一定の場所に居住しながら、教団の行事や会議を一緒にしたり、また、布施物を一緒に享受するというような性格を持っている可能性の高いことがわかった。ここで、精神的に結ばれたというのは、例えば、教理の面で異見をもつ者がなかったり、あるいは、教団の決定に対して反対立場を取らないようなことである。現前僧伽がもつ独立した性格は、パーリ律の注釈からはより明確な形で現れており、時代が進むにつれ、段々強くなっていったと思われる。時々、相手の境界を壊すという表現が出てくるが、これは、各現前僧伽が、ある意味で、対立していた状況を思い出させる。一方、罪を犯した比丘に下される懲罰羯磨に関する諸伝承からも、現前僧伽の運営方針の一面を確認することができた。懲罰羯磨とは、罪を犯した比丘に対して教団が懲罰を下すために行う会議であるが、パーリ律とその注釈、及び、これに相当する漢訳律を比較検討した結果、その対象となる罪に不可解な点が存在することがわかった。比丘が罪を犯した場合には、普通、懺悔によって罪を償うが、この羯磨は、教団が告白懺悔を促しても全く耳を傾けず、勝手に行動して、教団の秩序に危険をもたらす者が主な対象となる。しかし、対象となるその具体的な罪の内容は非常に包括的であり、かつ、曖昧である。そして、すべての場合において強調されるのは、‘もし教団が欲するならば'という表現だけである。これは、同じ罪であっても、教団側の意思によって、懲罰羯磨の対象になることも、ならないこともあったことを推測させる。厳密な規則を立てず、すべてを現前僧伽の判断に委ねる態度からは、いつでも、問題児を現前僧伽から排除することができた可能性さえ窺える。点として数多く存在した現前僧伽は、むしろ、このような独立した性格に基づき、自由に分裂を重ね、また、それを包括する四方僧伽という概念によって仏教徒としてのアイデンティティを保つことができたと思われる。
著者
村尾 るみこ
出版者
東京外国語大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

アフリカにおける「下からの」平和構築の動態から、「上からの」平和構築の課題克服の方途を探った。特に、農作物販売に関する戦略とマクロな政治経済との関係を分析した。その結果、調査地域であるザンビア国境地帯では、植民地期からの経済構造に南アフリカ経済が浸透するなかで、地域住民による新しいトランスナショナルな経済活動が構築されていることが明らかとなった。それはアフリカ農民の高い移動性が活用され、同時に農村での生計をも維持していた。
著者
東 政明 小林 淳 石田 裕幸
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞内外の水輸送を司る分子が,細胞膜にあるアクアポリン(水チャネル)である。生物の水やイオンのバランス維持は,細胞が有する必要不可欠な機能で,昆虫は小さな体でありながら,そのごく少量の体内水分をアクアポリンを介して効率よく循環させ,からだの乾き(渇き)を防いでいる。水を唯一の輸送溶質とするアクアポリンの基本的な性質に加え,細胞膜に対して通過性が高いとされる非電荷溶質(グリセロール・尿素等)をも通過可能な多機能タイプ(アクアグリセロポリン)の同定と特徴付けを,カイコおよび他昆虫を用いて実施した。さらなる分子機能を調査するべく,単純な小胞系やリポソーム系の確立をめざした。
著者
小田 寛貴
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

平安・鎌倉期の古写本は完本としてはほとんど現存しないが,掛軸などに利用されたため断簡としては大量に伝来している.これが古筆切である.しかし,後世に制作された偽物・写しも多く混在するため,その高い史料的価値も潜在的なものでしかない.本研究では,こうした古筆切に放射性炭素年代測定法を適用し,史料的な価値を判定するとともに,平安・鎌倉期古写本の少なさゆえに従来は困難であった研究を行ったものである.
著者
大河 原信
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.94-106, 1970-02-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
48
被引用文献数
1 2

ゼラチンや卵白にジアゾニウム塩や重クロム酸塩を配合し光照射すると,これら高分子物質は橋かけ,不溶化を起こす.この原理は古くから写真製版に利用されてきたが,近年ポリビニルアルコールの桂皮酸エステルが強度,保存性,解像力によりすぐれた新しい製版用樹脂として登場して以来,感光性高分子という新しい領域が誕生した.光と高分子の関係はさらに,一方でいかにして光劣化を防ぐかという問題,他方では光変化を積極的に利用しようとする方向に進展する.同時に一方では,それら安定剤や感光剤をポリマーに配合する様式から,感光構造を直接高分子中に結合,包含させる工夫,すなわち反応性高分子の一形態としての新分野が開拓され始めたのである.
著者
前田 敦司 遠藤 匠 山口 喜教
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.83-83, 2004-05-15

マークスイープアルゴリズムに基づくインクリメンタルガーベジコレクタは,停止時間をごく短時間に抑えることが可能であるが,効率が悪く,CPU時間が増加する.この性能低下の原因は,一括型GCと比較してマークする時期が早いことに起因するmark/cons比の悪化,GCルーチンを呼び出す回数の増加,write barrierのオーバヘッドなどによる.一方,世代別ガーベジコレクタは高いCPU効率が得られ,また平均の停止時間は比較的短いため良いレスポンスが得られるが,旧世代領域のGC( メジャーコレクション)の際には長い時間にわたって計算処理が停止してしまい,リアルタイム応用には適さない.本発表では,世代別GCがある意味でインクリメンタルGCの一種と見なせることを指摘する.この観察に基づき,新世代領域のGC(マイナーコレクション)のたびに,インクリメンタルに旧世代領域のガーベジコレクションを行う新しいGCアルゴリズムを提案する.インクリメンタル化のために必要となるライトバリアは,世代別ガーベジコレクタの実装にいずれにせよ必要なライトバリアと同じ仕組みを利用する.このアルゴリズムは,通常の世代別ガーベジコレクタに近い効率を保ちながら,停止時間を短く保ち,ガーベジコレクタのリアルタイム性を向上させることができる.Incremental garbage collectors based on mark-sweep algorithms can minimize the pause time caused by garbage collection at the expense of increased CPU time. The main reasons for this performance degradation include: (1) mark/cons ratio gets worse in incremental collectors because objects are marked earlier than in non-incremental counterparts, (2) increase in number of calls to collector routine and (3) write barrier overhead. Generational collectors, on the other hand, can achieve high efficiency and relatively short average pause time, while occasional long pause for collection of old generation space (major collection) makes these collectors unsuitable for real-time applications. In this presentation we point out that certain class of generational collectors can be viewed as a special case of incremental garbage collection. Based on this observation, we propose a new GC algorithm which incrementally reclaims old generation space every time a minor collection is performed. Write barrier for generational collector is also used for incremental collection. With this algorithm, we can improve real-time response of garbage collector by keeping pause time short, with little overhead added to ordinary generational collectors.
著者
生田 幸士
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.507-511, 1991-08-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2 4
著者
横山 稔 横山 陽子
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.95, 2014 (Released:2014-07-04)

このAwaseru 結婚指輪は、2つの指輪を重ね合わせることで、2人のココロを1つにすることを象徴化したものである。二つのリングはそれぞれが少しづつ欠けていて、1人の人間では不完全であることを暗示し、合わせることで永遠の愛の成就を表現するデザインとした。多くのカップルが結婚する時にイメージするのは、幸福な時間、幸福な空間やキモチだろう。それを求めて結婚をするのだが、結婚式というハレの場から日常生活のケの日々が始まると、大方あのハレの日に誓ったコトバやキモチを忘れてしまう。指輪を合わせ、キモチを合わせる。また幸福な気分で二人の関係を新たに確認する。そのような幸せを感じるきっかけや時間をデザインした。またこの合わせる技術は、日本の伝統的木造建築の、精緻な<継ぎ手>からインスパイアーされたもので、釘や接着剤を使わない継ぎ手は、古来から多くの寺社建築に使われてきた、日本が世界に誇る建築文化である。結果として、世界的なデザイン賞の一つであるドイツの「iF design award 2014」をプロダクトデザイン部門で受賞した。
著者
鈴木 衞 Mamoru Suzuki
雑誌
東京医科大学雑誌 (ISSN:00408905)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.12-18, 1998-06-20
著者
櫻田 忍 溝口 広一 寺崎 哲也
出版者
東北薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

約30種類のμ受容体スプライスバリアントのうち、MOR-1、MOR-1A、MOR-1C、MOR-1Eをクローニングしてその安定的発現細胞株を作製し、種々のμ受容体作動薬を用いその機能解析を行った。μ受容体の基準作動薬であるDAMGOは、上記4種類のμ受容体スプライスバリアントのいずれに対しても高い親和性を示し、またそれらを介した強力なG蛋白活性化作用を発現した。一方、内因性オピオイドペプチドを遊離する選択的μ受容体作動薬amidino-TAPAも、DAMGOと同様に上記4種類のμ受容体スプライスバリアントを介した強力なG蛋白活性化作用を発現したことから、これらのスプライスバリアントは内因性オピオイドペプチドの遊離を誘導するμ受容体サブクラスでは無い事が明らかとなった。そこで、μ受容体遺伝子のexon選択的アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドを用いた行動薬理学的研究により、amidino-TAPA感受性DAMGO非感受性のμ受容体スプライスバリアントの検出を行った。その結果、MOR-1J、MOR-1K、MOR-1Lが、amidino-TAPA感受性DAMGO非感受性μ受容体スプライスバリアントであり、内因性オピオイドペプチドの遊離に関与している事が明らかとなった。そこで研究対象をMOR-1J、MOR-1K、MOR-1Lに絞り、そのクローニングならびに安定的発現細胞株の作製を試みた。その結果、これら3種のμ受容体スプライスバリアントのクローニングには成功したが、その遺伝子を導入した細胞において、μ受容体を介した生理機能を検出することはできなかった。これら3種のμ受容体スプライスバリアントは極めてサイズが小さく、他のスプライスバリアントとは著しく構造が異なっている。おそらく単体では機能することができず、他の7回膜貫通型スプライスバリアントと異種重合体を形成することにより特異的機能を発現する可能性が考えられる。本研究課題を継続遂行するには、μ受容体スプライスバリアント異種重合体の機能解析といった、極めて複雑難解な機能解析が必要と考えられる。本研究課題でクローニングした遺伝子は、研究計画最終前応により採択された研究課題で用いられる予定である。
著者
Pasquale Pagano Leonardo Candela Donatella Castelli
出版者
CODATA
雑誌
Data Science Journal (ISSN:16831470)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.GRDI19-GRDI25, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
33
被引用文献数
20 2
著者
梶原 志保子 徳永 隆治 松本 隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.408-419, 1994-03-25
被引用文献数
4

本論文は,「いかにして時系列データのみから未知力学系の分岐係数を推定し,その分岐図を再構成するか」というカオス的力学系のための新しい逆問題を設定し,非線形短期予測手法およびKarhunen-Loeve変換に基づく一つの解法を提案する.本手法は,推定対象となる力学係の情報は系数を含めすべて未知と仮定する.また,その有効性および可能性は2係数エノン写像族および3係数ロジスティック・ディレイドロジスティック写像族への適用結果で示される.最後に,この逆問題を基礎にしたいくつかのカオス応用を議論する.
著者
大原 司 佐藤 翔 逸村 裕
出版者
情報メディア学会
雑誌
第13回情報メディア学会研究大会発表資料
巻号頁・発行日
2014-06

国内心理学分野におけるオープンアクセスの実態と進展状況を明らかにするため、『筑波大学心理学研究』掲載論文が引用する和雑誌掲載もしくは日本語の論文を対象にWebにおける公開状態調査を行った。結果から、心理学分野におけるオープンアクセスの論文の割合の経年的な増加と、引用時点でオープンアクセスではなかった論文の遡及的なオープンアクセス化が明らかとなった。
著者
服部 陽介 本間 喜子 丹野 義彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.85.13060, (Released:2014-08-01)
参考文献数
47
被引用文献数
2 2

The purpose of this study was to clarify the contents of meta-cognitive beliefs about thought suppression and to investigate the relationship between these beliefs and the paradoxical effects of thought suppression. In Study 1, we developed a scale measuring the endorsement of meta-cognitive beliefs about thought suppression. This measure, the Meta-cognitive Beliefs about Thought Suppression Questionnaire (BTQ), has four subscales: Distraction, Paradoxical Effect, Regret, and Promotion of Concentration. In Study 2 and Study 3, the BTQ showed sufficient criterion-related validity and test-retest reliability. In Study 4, we conducted an experiment to investigate the relationship between meta-cognitive beliefs about thought suppression and its paradoxical effects. Results showed that the Paradoxical Effect subscale score significantly predicted the number of intrusive thoughts during thought suppression. The development process of meta-cognitive beliefs about thought suppression and implications for research about cognitive control are discussed.
著者
千草 聡
出版者
筑波大学平家部会
雑誌
筑波大学平家部会論集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.2-10, 2002-06-30

平安末期の任和寺は、第五代御室の覚性法親王についで第六代守覚法親王も和歌活動を行い、当代歌人を集めて歌会や歌合、五十首歌を詠進させるなど、和歌関係の記録が散見する。『左記』は平家歌人との月次歌会を伝えるが、守覚の ...