著者
関 成人
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.5, pp.368-373, 2007 (Released:2007-05-14)
参考文献数
13
被引用文献数
1

排尿障害は蓄尿(尿をためる)障害と排出(尿を出す)障害に大別される.蓄尿障害には排尿筋の収縮を抑制する薬物(抗コリン薬や平滑筋弛緩薬)あるいは膀胱出口部抵抗を増強する薬物(α1およびβ2受容体作動薬)が用いられ,排出障害には排尿筋収縮を増強する薬物(コリンエステラーゼ阻害薬など)ないし膀胱出口部抵抗を減弱させる薬物(α1遮断薬や抗男性ホルモン薬)が適用される.しかし閉塞性疾患(前立腺肥大症など)と合併する過活動膀胱に代表される,蓄尿および排出障害が混在する病態における抗コリン薬の有用性は十分確立されておらず,その使用は慎重に行う必要がある.排尿障害の薬物治療における問題点としては,排尿筋収縮力障害に対する有効な薬物に乏しいことと,有病率の高い過活動膀胱に対する第一選択薬である抗コリン薬の有害事象が挙げられ,抗コリン作用とは異なる作用機序を有する治療薬物の臨床応用や開発が進められている.
著者
高木 興一 松井 利仁 青野 正二 酒井 雅子
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.957-964, 1995-12-01
被引用文献数
12

本研究では、パチンコ、音楽鑑賞などの娯楽に伴い暴露されるような音の危険性をTTS(騒音性一過性域値変化)の観点から、暴露実験により評価することを試みた。暴露実験の結果、パチンコ店、ディスコ、ライブハウスの音を2時間暴露すると20dB程度のTTSが生じ、その聴力への危険性が大きいことが示された。一方、ヘッドホンステレオでの聴取を想定した、洋楽、邦楽のCDの音の暴露では、3〜5dBのTTSが生じるのにとどまった。また、既存の2種類の予測式によりTTSを計算したところ、どちらの予測値も実測値に比較的よく追随し、レベル変動の大きな変動騒音によるTTSの予測に対し、両予測式を適用できることが分かった。
著者
邊 英浩 BYEON Yeong-ho
雑誌
都留文科大学研究紀要 (ISSN:02863774)
巻号頁・発行日
no.74, pp.159-169, 2011-10-20

朝鮮王朝は朱子学によって建国され、その思惟様式と対外観は16世紀に登場した李退溪(名は滉、字は景浩、退溪は号1501~70年)、李栗谷(名は珥、字は叔獻、栗谷は号 1536~84年)によって代表される。しかし朝鮮王朝が末期に近代に遭遇したとき、その基本的な思惟様式と対外観は大きく変容していた。それは、夷狄の中華への上昇可能性の肯定、儒教文明化以外の文明化への視野の拡大、この2 点である。こうした思惟様式と対外観の変容が起きつつあったときに、朝鮮王朝は近代を迎えることとなった。そのため高宗政権は、自ら近代化を進めながら、これらの近代的な夷狄との外交交渉、同盟関係を適宜構築していく政策を推進し、一定の成果をあげていくことができたのである。これらは国際関係を単に力関係から見るという次元では理解できないものであった。
著者
斉藤 日出夫
出版者
三田社会学会
雑誌
三田社会学 (ISSN:13491458)
巻号頁・発行日
no.10, pp.112-126, 2005

論文1. 序2. 身体という問題3. 綜合的統一としての身体4. 実体と外部5. 結語
著者
西山 莉紗 竹内 広宜
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

ビジネス上重要な技術課題を解決することができる社内外の技術を知ることは,企業の知財戦略や技術戦略を検討する上で役立つことが期待される.本発表では,特許公報や科学技術論文などの技術文書から,ある課題の解決につながる効果を持った複数の技術を同定し,任意の技術課題を解決する技術を調査しているユーザーの検索要求に応えることを目指す.
著者
菰田 文男
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.568-578, 2011 (Released:2011-12-01)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

テキストデータの電子化とコンピューターの情報処理能力の向上は,構造化されていないテキストデータを解析し,価値のある知識を取得することを可能にした。テキストマイニング研究の意義は,今後ますます高まることが予想されており,企業の技術経営(MOT)においては,事業の「選択と集中」など重要な意思決定を行う際の利用が期待されている。しかし,経営判断に影響を与えるような信頼性の高い知識を発見するためのテキストマイニング手法は,これまで十分に確立されているとはいえない。そこで本稿では,テキストマイニングに人間の実際的な知識を効果的に導入する手法を考案し,その手法が企業の意思決定に利用可能な知識を発見し得るかを検証した。具体的には量子ドット太陽電池を解析事例に取り上げ,テキストマイニングで抽出した単語に関連キーワードを組み合わせた「単語セット」を作成,進化させる方法を示し,その有効性について論じる。
著者
古宮嘉那子 但馬 康宏 小谷 善行
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.2679-2691, 2008-07-15

敬語は,たくさんの要因によって使い分けられており,これまで,これらの使い分けを補助するシステムが開発されている.しかし,従来のシステムでは,言語知識をあらかじめ与える必要があり,また,入力情報に序列関係を含むなど,人間関係のとらえ方の知識を必要とするものであった.そのため,筆者らは敬語選択システム(HEDS)を作成し,決定木学習を用いた敬語に関する知識獲得の手法を提案する.HEDSは,人間関係についての複雑な判断を必要としない情報を入力とし,最も適切なタイプの敬語を選択するルールを決定木学習によって用例から自動的に作成するものである.そのため,本システムでは,使い分けに関する言語学の知識を必要とせず,実データから,自動的に敬語に関する言語知識獲得を行うことができる.敬語には,(1)尊敬語/謙譲語,(2)丁寧語の2つのタイプがある.HEDSはそれぞれのデータを用意することによって,両方に適用可能である.(1)尊敬語/謙譲語を決定するHEDSは,1つの動詞につき,敬語が尊敬語,謙譲語,敬語でない普通語の3つのうちから1つに選択し,(2)丁寧語については,動詞に丁寧語を付加するかどうかを決定する.A speaker must choose suitable honorific expressions in a sentence depending on many features. Some computer systems have developed that help people determine the suitable expressions. However, existing systems need to be previously provided knowledge of language and need knowledge about human relationships to use them. Hence we made a system honorific expression determining system (HEDS) and proposed a method of knowledge acquisition using decision tree learning. It generates automatically a set of rules to determine the most suitable type of honorific expression from examples, by decision tree learning. HEDS needs knowledge about neither human relationship nor linguistics about Japanese honorific expressions and it can acquire knowledge about Japanese honorific expressions from pragmatic data automatically. Japanese honorific expressions have two independent systems: (1) respect/modesty expressions and (2) polite expressions. HEDS can be applied to both of them if we gave it learning data for each. The HEDS for respect/modesty expressions determines what type of honorific expression a verb should be out of three types: a respect expression, a modesty expression and a non-honorific expression, and the HEDS for polite expressions determines whether or not a sentence includes a verb needs a polite expression for a set of features for the verb.
著者
横山 勉
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.51, pp.285-288, 2008-07-27

自然環境を取り入れた遊び環境をもつ保育園にはいくつかの外遊び空間があり、今回は園面と基地における遊び場の比較による遊び空間特性を示す。基地は、自然環境を活かした遊び場を構築する図面と共通するものが多くあるが、もうひとつの遊び空間として独自性を示し、直接的な自然体験を通して幼児の成長に深く関わっている。園庭における日常的な遊び空間に対して基地は冒険的な遊び環境を提供していると考えられる。
著者
林 幹人
出版者
桜美林大学
雑誌
桜美林論考. ビジネスマネジメントレビュー (ISSN:21850658)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.33-45, 2010-03
被引用文献数
1

近年、組織内のコミュニケーション手段としてソーシャル・メディアを導入する動きがある。それは、情報通信ネットワーク上で一般の人々が開かれた形で情報を発信したり、その情報の受け手である一般の人々が開かれた形でその情報に応答することを支援する技術である。ここでは、この技術を組織内に導入したものを組織内ソーシャル・メディアと呼ぶが、その導入目的のひとつは、組織内のコミュニケーションを促して知識の共有を図り、ひいてはイノベーションを実現することにある。そこで本研究では、イノベーション・プロセスにおいて組織内ソーシャル・メディアを利用することの意義について検討する。 イノベーション・プロセスにおけるこの技術の重要な意義のひとつは、それが組織内集合知の利用を支援する点にある。組織内集合知とは、組織内の情報通信ネットワーク上において当該組織の不特定のメンバーが相互作用を通じて発揮する何らかの問題解決を可能にする知的能力を意味する。それは、組織内に保有されながらもこれまで十分に利用されてこなかった知的資源であり、イノベーション・プロセス研究においても特に検討されてこなかったものである。この技術は、妥当性が高く多様な機密性を確保しながら知識を低コストで交換することを支援する。 本研究では、組織内ソーシャル・メディアをイノベーションの実現のために利用している企業に対しインタビュー調査を実施した。調査を通じて、この技術が、確かにイノベーション・プロセスにおいて組織内集合知の利用を支援し、イノベーションの実現に寄与しうることが確認された。
著者
伊藤 則之 安永 守利
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.12, pp.2004-2030, 2011-12-01

プロセッサの設計では,高い動作周波数を実現するために様々な設計手法が研究され,そして適用されている.このような高性能実現のためには,アーキテクチャ設計や論理設計だけでなく,半導体上で実現する回路設計や物理設計も重要となる.プロセッサの回路設計や物理設計では,高い動作周波数をできるだけ短い期間で実現するために,マニュアル設計と自動設計が選択的に適用される.この両者を組み合わせて適用するために,すべてが自動設計であるASIC設計とは異なり,設計手法に多様性が生まれる.本論文では,実際のプロセッサ設計に適用された設計手法をサーベイし,高性能化を実現するための回路設計及び物理設計の設計フローとCADシステムをまとめる.また,最後に,今後のプロセッサ設計における設計手法の展望について述べる.
著者
小林 隆志 佐伯 元司
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.60-75, 2004-01-27

本稿では, Gang-of-Four(GoF)デザインパターンのようなソフトウェアパターンを使用したソフトウェア開発を支援するために, パターンのモデルとその利用法に関して議論する. 我々はパターンを使用した開発の問題点は, 開発者によるパターンの持つメカニズムを壊す変更であると捉え, パターンとその正しい使用過程のオブジェクト指向モデルを提案する. 本モデルでは, パターンには変更可能な箇所と, パターンの持つメカニズムのために変更すべきではない箇所がある点に着目しパターンの構造情報と, 変更可能な構造をどのように変更するべきかの操作情報を保存する. また本稿では, モデルを記述する言語としてJavaを選択し実際にGoFパターンのうち22個を記述する. また, その記述を利用し開発者を支援するツールを提案する.