著者
有村 和章
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1 主要研究内容(1)第4学年の「物質とエネルギー」区分に関する実社会や実生活との関連性の児童の認識について調査を実施した。(2)第4学年単元「電気や光の働き」において,実社会や実生活との関連性の認識を重視した学習内容を設定し,指導計画に位置付けた。(3) 実社会や実生活との関連性の認識を深め,児童が主体的に学習を振り返ることのできる自己評価法確立のために,評価の視点を設定し,自己評価カードを作成した。(4) 実証授業により,児童の認識の高まりと資質・能力,科学概念の獲得の状況を行動記録及び発言記録から分析した。2 主要研究成果(1)4年生においては,電気について動力源としてや,生活に不可欠なものとしての見方や考え方はもっているが,それが人工的に作られ,消費されるものであるといった見方や考え方をもつ子どもはまだ少ない。そのため,LEDなど節電のための機器に対して関心を持っている子どもは非常に少ないことが分かった。(2)第4学年単元「電気や光の働き」に,「回路を流れる電流の強さによって,乾電池の消耗度も変化すること」(内容(1))及び「LEDは豆電球より弱い電流で発光するためその利用は節電へつながること」(内容(2))を付加した。内容(1)については,直列つなぎと並列つなぎの場合の豆電球の点灯時間を比較する実験を行い,点灯時間と電流の強さを関係付ける学習内容を設定した。内容(2)については,低電圧で発光するLEDを教材として採用し,LEDと豆電球をそれぞれ使用した場合の乾電池の消耗度を比較する実験や,手回し発電機を用いて発電に必要な力を比較する実験等を位置付けた。その結果,電気の消耗を意識し,節電に心がけようとする子どもや,身の回りで行われているLEDの信号機の設置等節電への取組へ関心をもつ子どもが増えた。(3)自己評価法については,「追究活動への取組」,「問題解決の成就感や達成感」,「自然を見つめ直そうとする思いや態度」の視点から自己評価できるよう単元毎に自己評価カードを作成したところ,自己の高まりを自己認識したり,自らの課題を明らかにしたりする姿が見られた。
著者
竹村 元秀 米原 典史 小林 真之 杉生 真一 森谷 正之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

神経損傷ラットの情報伝達機構が大きく変化することが、神経因性疼痛発現の基礎にあることが明らかになった。ぺプチド性C線維を介したシグナリングが侵害刺激をよりシャープに上位中枢に送るが、非ぺプチド性C線維のシグナリングがそのぺプチド性C線維を抑制するといった制御に関わっている可能性を示すデーターを得た
著者
中林 誠一郎
出版者
埼玉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

1.ネットワークの集団挙動の制御興奮性結合と抑制性結合を用いて、ネットワークのクラスター化と集団挙動が観測できる。集団挙動は、電極が最近接する結合節(ノード)の興奮・抑制で支配される場合(対称グラフ)は易しい。結合強度が空間変調される非対称グラフの場合、数理モデルは、常微分方程式では、取り扱えない。ネットワークの動態の記述は、泳動・拡散を露わに含む偏微分系へと変化するので、ab initioな計算は難しい。そこで、実験的に求めたArnold Tongueから、結合定数を経験的なパラメーターとして、連立常微分方程式から半経験的な数理モデルを構築した。2.生理神経回路の構成的研究同一の機能を発現する複数のネットワークの中から、生体系が特定の回路を選んだ背後には、生理的あるいは発生学的な拘束条件があると思われる。腎盂機能を再構成した際には、腎臓細胞と尿管の平滑筋細胞の解剖学的な配列を手引きとして、経験的にトイモデルに機能を発現させた。ネットワークの数理の見通しが良くなれば、計算機を補助的手段として、この逆問題を実験でもとめる。得られた振動子配列から、生理系の設計図を読み解く事ができる、このことを、腎盂のしごき運動を例に実証した。このように、電気化学系のモデルで記述される緩和振動子の同期の特徴およびメカニズムは、神経系の緩和型ニュウロンの連成および電気化学振動子の連成計でみられた実験結果と一致した。連成電気化学振動子系が、神経系の緩和型ネットワークの多くの特徴を模擬できることが示された。
著者
宮本 雅子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

高齢社会における室内色彩計画のための資料を得ることを目的とし、調査研究を進めた。まず、高齢者と若齢者が持つ高齢者の居室に望まれるイメージについては、それほど大差ないものであることがわかった。よって、空間設計を行う際のイメージ設定に関しては、設計者の年齢による配慮は特には必要でないことが明らかとなった。色彩のイメージは高齢者と若齢者で異なる部分が見られた。そこで、室内に配色した場合の空間のイメージについて捉えた。ソファの色彩と壁面の色彩から受ける印象評価については、明度の高いB系を基調としたインテリアが高齢者に好まれている。しかし、若齢者には好まれないため望ましい配色とはいえないが、利用者の大部分が高齢者のみとなる施設などにはこの色は利用できると考えられる。また、ソファ茶色・からしのYR系でYR系の壁の場合、若齢者・高齢者ともに価値因子に対する評価が高く、多くの人が出入りする空間では、有効な配色であると考えられる。さらに、高齢者が、好ましいと判断する基本的なイメージは、「配色が良い」「明るい」「落ち着く」「バランスがよい」「色が好き」などであることがわかった。また、「明るい」と「落ち着く」というイメージが強く結びついている。具体的な内容としては、「同系色の組み合わせ」「ソファと床の色」「壁とソファの色」「ソファの色」「壁と床の色」としており、特にソファの色に注目していることがわかる。若齢者も基準としているイメージは大きくは変わらないが、「落ち着く」と「暖かい」というイメージが大きく結びついている。具体的な内容としては、高齢者が具体的な部位の色彩に注目しているのに対し、若齢者は全体的な色の「統一感」「同系色の組み合わせ」などによって好ましさを判断している。以上から、高齢者と若齢者では、室内色彩空間のとらえ方が異なることが把握できた。
著者
野呂 太一 乾 孝司 高村 大也 奥村 学
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.3405-3414, 2007-10-15
参考文献数
14
被引用文献数
2

本論文では,ブログテキスト中に記述されたイベントが,実世界において朝,昼,夕,夜のどの時間帯で生起したかを自動判定するアルゴリズムを提案する.生起時間帯を判定する直接的な情報として,「午後3 時に~した」等の明示的な時間表現が考えられるが,ブログテキストでは,明示的な時間表現が現れにくい.そこで,本研究では,明示的な時間表現の代わりに,イベントの生起時間帯を連想させる語(「出勤」,「花火」等)の情報を利用する.イベントの生起時間帯を連想させる語集合を人手のみで収集することは表現の多さから現実的にほぼ不可能な作業である.そのため,提案手法では,ブートストラップ的に,イベントの生起時間帯の学習と並行して同時に,イベントの生起時間帯を連想させる語を自動獲得する.We propose a machine learning-based method for identifying when each event in weblog texts occurs: morning, daytime, evening, or night. Earlier study analyzed only explicit temporal expressions for events and mapped them on time-line in newswire texts. However, other texts such as weblogs contain few explicit temporal expressions. We therefore use various implicit temporal expressions extracted automatically. Specifically, we adopt naive bayes classifiers backed up with the EM algorithm, and support vector machines.
著者
井上 敏 Satoshi Inoue 桃山学院大学経営学部
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学総合研究所紀要 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY BULLETIN OF THE RESEARCH INSTITUTE (ISSN:1346048X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.85-95, 2009-03-18

Present Japan is confronted with a grave economic crisis. Museums are being forced to streamline their management under pressure from the economic situation affecting Japanese society overall. But the legal system for museums in Japan is not prepared for optimal management of museums. What is needed is an open discussion on implementing a new system under the concept of "intellectual freedom" in museums. This paper will examine this concept by looking at two key themes. One of these is Dr. Juzo Arai's theory of museum studies. The other is the legal case of the Museum of Modern Art, Toyama. In his theses, Dr. Arai emphasized the importance of selfgoverned organization by gakugeiin ( Japanese Curator) of local museums. This suggestion was indeed used as factual evidence in the legal case of the Museum of Modern Art, Toyama (1986). In Japan's present museum system, little attention is given to the opinions of gakugeiin, creating the need to organize independently from local governments. The concept of "intellectual freedom" in museums must be discussed as a first step toward revising the Museum Act in Japan.
著者
大橋 まり子
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.28, pp.101-111, 2007-03-31

This paper compares apologies by Japanese and Australians. The data is based on the result of a Discourse Completion Test from 53 Japanese and 22 Australians. The result shows that Japanese apologies are influenced by uchi soto relation, on the other hand Australian apologies have no relation to social factors.
著者
田中 雅史
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-15, 2000-02-20

In this essay I analize Natsume Soseki's Kokoro or The Heart and Uchida Hyakken's Hanabi or Fireworks, from the viewpoint of the labyrinthine images in them. These short stories have in common extraordinarily dreamy characteristics. In Kokoro, a man finds a strange bird that reminds him of vague memories within himself. Then he meets a strange woman who also gives him impression that she may be related to dim memories of his past. She leads him into a dark, narrow, mazy lane, that is, a labyrinthine space. In this story Soseki created a chain of images that showed his subjective world: a bird, a woman, memories, and so on. He created Kokoro on the basis of subjective visions, instead of the real world. On this point, Soseki can be compared with the Western subjective artists whom G. R. Hocke called the Mannerists. Kokoro's influence on Hanabi is obvious. In Hanabi, a man also meets a strange woman on a bank near the sea. They walk together towards the seaside. They saw splendid fireworks on their way, and he thinks that the fireworks resemble the memories of his past. That is, the image of fire or fireworks has the function of the bird in Kokoro. Getting into a small labyrinthine corridor, he feels uneasy. Finally the woman fall upon him, screaming a flirt!. Hyakken also created a subjective chain of images in his work. These works are quite neurotic, but I think pathological approaches are not sufficient to understand them. Because Soseki and Hyakken composed them deliberately from the viewpoint of artistic effects. They tried to express their inner enigmatic world, which they thought really valuable. They produced many labyrinthine images in the process of representing such enigmas.
著者
高橋 秀雄 桐山 武
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟論集
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.21-37, 1970-05
著者
川西 康友 満上 育久 美濃 導彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1359-1367, 2011-08-01

本論文では屋外に設置された固定カメラを対象とし,太陽の動きによる日照の変動と看板やベンチなどの置かれ方に起因する構造の変動を再現した背景画像生成手法を提案する.この手法では,長期間観測して得た大量の画像を観測日と観測時刻という二つの観点で整理し,複数日・同時刻の観測画像に注目することで画像の日照成分を推定し,同日・複数時刻の観測画像に注目することで画像の構造成分を推定する.これにより,従来うまく背景画像を生成することができなかった日照の変化と構造の変化の両方を含むシーンにおいて,この二つの変化を同時に再現した背景画像生成を実現する.実験では従来手法と提案手法によって,様々な定点カメラによって得た画像に対して生成した背景画像を比較することで,本手法による背景画像生成の有効性を示した.
著者
矢口 勇一 大島 万里恵 河合 天士 岡 隆一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.63, pp.59-64, 2009-05-21

本論文では,Web中にあるからの感性情報の検索を行うために,Web動画中の音声検索システムを用いての類似性を基に感性検索をする方法を提案し,その予備実験を報告する.Web上のビデオデータは極めて多種多様であり,これらの感性的意味を単一の記号によって表現することか不可能に近いといえる.このような時系列データを対象にして,感性語に対応するビデオデータの区間を検索することは,かなり一般化された手法を用いる必要がある.本論文では,フレームワイズな音素識別に基づく音声検索手法をWeb上で実装したAiZoomというシステムを用い,検索したクエリと類似する音声区間を含むビデオデータの部分を抽出し,その類似区間の感性を分類した感性ヒストグラムを用いて,その動画の感性特徴を得る.また,この感性特徴を得た区間のオプティカルフローを調べて,個々の感性特徴に対応する画像特徴が得られるかを検証する.
著者
京極 岳久 竹澤 聡 高島 昭彦
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2009, no.5, pp.137-138, 2009-09-12

EMG signals from human muscles are very useful for data acquisition and triggering to control the several actuators like a power assist. EMG signals have the possibilities for substantial action pattern and we examined experimental test for dynamical motion of arm and leg of human. Recently, much attention has been paying to the application of EMG Signal by Loop type Algorithms. We tried to associate the stimulus of muscles EMG signals from the two or three positions of the legs and arms. In this paper, we discussed on the availability of on-line EMG Signal by Loop type Algorithms for simplified EMG model signals. We are able to show the pattern of the visual contour by EMG Signal by Loop type Algorithms.
著者
笹倉 一広 近衞 典子 近衞 典子 福田 安典 大塚 秀高 金 文京 笹倉 一広 木越 治 福田 安典 大塚 秀高 岡崎 由美 金 文京 鈴木 陽一 上田 望 木越 治 田中 則雄 入口 敦志 川上 陽介 木越 秀子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

・各地の図書館などを調査し、関連資料を収集した。そのなかで、岡島冠山『太平記演義』の 善本を発見し、影印した。・白話小説と並んで、善書の影響にも着目し、善書を収集・考察し、新発見と覚しき善書を影印した。・「三言二拍」訳注の基礎資料の収集・電子化をし、訳注の基盤を整備し、国文学・中国文学双方の研究に共有されるテキストのプロトタイプを作成した。・シンポジウム「日本近世文藝と中国白話の世界」を開催した。
著者
首藤 文洋
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒトに心地よさを感じさせる音を被験者に提示すると、被験者の前頭葉酸素ヘモグロビン量の変動が相対的に小さくなる。被験者はその音を「気分がよい」と評価したと考えられる。これらの音のうち、川のせせらぎの音をマウスに提示すると、情動に深く関与するセロトニンやノルアドレナリンの脳内濃度が変動していた。これらのことは音刺激には本能システムにはたらくことで心地よさを感じさせる脳機能メカニズムに作用するモノがあることを示唆しており、これらの音を使うことで多くの人が安らぎを感じられる音環境が設計できる可能性が示された。
著者
山崎 晴雄 鈴木 毅彦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

海成段丘上に位置する孤立した短い活断層の成因を検討するため、日本各地の当該断層について、断層地形の特徴、運動様式、地質構造、地震活動等を考察した。その結果、1.沖合に存在する大規模な逆断層のバックスラストと、2.海岸沿いの基盤地質構造が、遠方の大地震や過去の環境条件の変化による応力集中によって再活動したもの、の2タイプの断層があることが判った。何れも起震断層として活動する可能性は考えにくい。
著者
浜野 龍夫 林 健一 川井 唯史 林 浩之
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.21, pp.73-87, 1992-12-31
被引用文献数
4

Crayfish in Lake Mashu, Hokkaido, Japan, were captured with tangle nets in the summer of 1992. All specimens, 171 males and 517 females, had intermediate diagnostic character between two subspecies, Pacifastacus leniusculus leniusculus and P, l. trowbridgii. Although three very large individuals of unidentified crayfish were captured in this lake by poachers of trout in 1975 and 1985, there is no certain confirmation because of illegal samplings. One of the present authors took a chance to measure one of them, a fresh male crayfish with very large chelae, in 1975 when he was 11 years old and recorded only its giant size, i.e. 47 cm carapace length. However, the largest P. leniusculus collected in this study was 5.7cm in c. l. Neoteny may have occurred because there is no secondary sexual character on chelae of adult P. leniusculus males. This lake has no river. Age of the lake is estimated as about 2000 years old. Further, all species of fish and crustaceans in the lake were artificially introduced from other waters. Of crayfish, only P. leniusculus occurs and was introduced from Portland, Oregon, U.S.A., in 1930. From these, the unidentified gigantic crayfish seems to have been P. leniusculus grown to a giant size.
著者
森 芳功
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.379-390, 2010

「感動」とは,情動が動くことであり,複数の感情が関わって喚起される。本稿では,美術鑑賞における「感動」の働きに注目し,まず,鑑賞過程における「感動」について,美術史上の「感動」の記録や,鑑賞支援活動の実践を材料として試論的に整理を試みた。そして,「感動」に至るには,鑑賞者のもつ予備的な経験や知識,期待感や緊張感が条件として必要であることや,鑑賞者の経験や知識を鑑賞に結びつける主体的な活動が必要であることを示すとともに,鑑賞過程のなかの「感動」を基点とすることで,鑑賞の手がかりの少ない子どもや,鑑賞を深めたり表現につなげようとしたりする子どもたちに対する支援の視点が得られることを指摘した。
著者
堤 純一郎 安藤 徹哉
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究期間の3年間に6つのテーマで研究を行った。まず、亜熱帯島嶼地域の沖縄における伝統的な木造住宅から最近のパッシブクーリング住宅まで、歴史的な変遷を考慮した6棟の戸建住宅における熱環境の実測調査または既存データの解析を行い、住宅の熱環境に関する変化について考察した。次に、低緯度における最大熱負荷要因となる屋上面の遮熱、断熱に対する対策として、RCスラブと亜鉛鉄板屋根を対象に、屋上植栽、セラミックタイル、ペイントなどの6種類の屋上被覆材料の熱的効果に関する屋外実験を行った。屋上植栽の熱的効果が最も高く、セラミックタイルはそれに準じる。市販の断熱ペイントの遮熱性能も確認できた。さらに、沖縄県産の素材を用いた3種類の外装仕上げ材料を実験用の小型RC住宅の西壁と北壁に塗り、これらの遮熱及び断熱性能の評価を行った。単純な塗り壁仕様の仕上げ材料であるが、これがある程度外断熱的な働きをすることが明らかになった。以降は建物を取り巻く屋外環境に関する研究である。まず、伝統的な町並みの代表として首里金城町の石畳の道とアスファルト舗装の熱環境を比較測定した。日中ばかりでなく夜間も石畳の表面温度は常にアスファルトよりも低いことが明らかになった。また、沖縄の伝統的屋敷囲いであるフクギの防風林に関する、詳細な調査を本部町において行った。現存するフクギ林だけでなく、歴史的な変遷に関する調査も行った結果、フクギ林の生活環境に与える効果を肯定する住民の意見と、RC造住宅に替わってから徐々にフクギ林が減っている現実を明らかにした。次に、都市の熱環境を調整要素としての重要な働きが期待される樹木そのものの熱環境に関する実測調査を行った。琉球大学構内において8種類の樹木の熱環境測定を行い、樹種による熱的効果の違いを明らかにした。さらに、天空における樹冠の形態係数を用いて、街路樹が日陰を作る効果を定量化した。