著者
今野 良彦 森 康久仁 松葉 育雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.573, pp.21-26, 2007-02-26
参考文献数
5

本来時系列データからリアプノフ指数を推定する場合,大量のデータを必要とする.しかしながら常に十分な量のデータが得られるわけではない.そこで,著者らはブートストラップ法を用いて,少数時系列データからリアプノフ指数を精度よく推定する方法を提案している.ローレンツモデルなどのシミュレーションデータで実験を行った著者らの提案法は,時系列の自己相関が短くなければブートストラップ法を用いた提案手法の効果が得られることを示した.そこで本研究では,実際の時系列データである日次日経平均と日次TOPIXを用いた検証をする.実験結果より実際の時系列データでもある程度の自己相関があれば提案法の効果が得られた.また経験的であるものの,ブートストラップ長の適切な値の傾向を示すことができた.
著者
菅 靖子 山崎 晶子 山崎 敬一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.1-10, 2003
参考文献数
14
被引用文献数
1

本稿は,ミュージアム研究の展示空間における観客の相互行為に焦点を当てた鑑賞の「質」的分析を行うことにより,観客同士がつくりだす共有空間の形成の重要性および鑑賞行為における観客の相互関係を明らかにしたものである。特に,本研究では,これまで着目されていなかった共有空間に参与する「傍観者(bystander)」の役割に注目して,鑑賞行為を分析した。傍観者(bystander)と実践者との基本的な関係について,個別的なケースからより基本的な構造を分析し解明した結果,ミュージアムの展示において,傍観者(bystander)の動きは,共有空間の形成に参与するだけではなく,鑑賞行為全般を導くものである。なぜなら,傍観者(bystander)は実践者に対して,発話と共に指さしなどの非言語的なコミュニケーションを行い,情報・知識の伝達を行いやすい身体配置を取る,ということが明らかになった。
著者
佐藤 康宏 板倉 聖哲 三浦 篤 河野 元昭 大久保 純一 山下 裕二 馬渕 美帆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

人間が都市をどのようにイメージしてきたかを解明するために、日本・中国・ヨーロッパの典型的な都市図を取り上げ、作品を調査し、考察した。研究発表の総目録は、研究成果報告書に載る。以下、報告書所載の論文についてのみ述べる。佐藤康宏「都の事件--『年中行事絵巻』・『伴大納言絵巻』・『病草紙』」は、3件の絵巻が、後白河法皇とその近臣ら高位の貴族が抱いていた恐れや不安を当時の京都の描写に投影し、イメージの中でそれらを治癒するような姿に形作っていることを明らかにした。同「『一遍聖絵』、洛中洛外図の周辺」は、「一遍聖絵」の群像構成が、平安時代の絵巻の手法を踏襲しつつ本筋と無関係な人物を多数描くことで臨場感を生み出していることを指摘し、その特徴が宋代の説話画に由来することを示唆する。また、室町時代の都市図を概観しながらいくつかの再考すべき問題を論じる。同「虚実の街--与謝蕪村筆『夜色楼台図』と小林清親画『海運橋』」は、京都を描く蕪村晩年の水墨画について雅俗の構造を分析するとともに、明治の東京を描く清親の版画に対して通説と異なる解釈を示す。ほかの3篇の論文、馬渕美帆「歴博乙本<洛中洛外図>の筆者・制作年代再考」、板倉聖哲「『清明上河図』史の一断章--明・清時代を中心に」、三浦篤「近代絵画における都市と鉄道」も、各主題に関して新見解を打ち出している。
著者
吉田 小五郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.245-296, 1954

私は曩に、本誌第二十四巻第二・三合併號に「草創時代の幼稚舎」と題し、明治七年から同二十五年に至る舎史の大要を述べた。今回は、それに引きつゞき、明治二十五年以降大正八年に至る期間を假に「前期幼稚舎」と名づけ、その概要を記すことゝした。私が特に「前期幼稚舎」と呼ぶのは、この期間の主任者が何れも福澤先生の息のかゝつた人々であり、從つて舎内の空氣に福澤先生が溶けこみ生きてゐたかに思はれる。從つて其の後、即ち大正八年以降の幼稚舎とは明確に区別して然るべしと考へたからである。然し一貫した「幼稚舎史」の一部としては極めて不完全なもの故、「稿」の一字を添えて發表することにした。猶ほこゝでは將來通史を編む場含當然省略せらるべき基礎的な史料を幾つか「附録」として添えることゝした。本稿でも前例に倣ひ、福澤先生の外は一切敬称を省略した。
著者
尾崎 勤
出版者
二松學舎大学
雑誌
日本漢文学研究 (ISSN:18805914)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.59-81, 2007-03

In 660 A.D. Admiral Abe no Hirafu 阿倍比羅夫 and his fleet crossed the Sea of Japan and arrived at what is most likely Hokkaido 北海道. After a violent battle, Hirafu defeated an unknown ethnic group there. He captured the survivors and took them to the capital. The Nihon Shoki <<日本書紀>> describes the group using the name "Sushen" 粛愼 The Sushen are a legendary tribe appearing in ancient Chinese literature. When the Duke of Zhou (Zhou-gong Dan 周公旦) ruled as regent, the Sushen offered tribute to the Zhou 周 dynasty. Establishers of new dynasties followed the precedent of the Duke of Zhou, and legitimized their kingships in accordance with the right of revolution (geming 革命). In.660 A.D. when Prince Naka no Oe (Naka no Oe no Miko 中大兄皇子), son of Empress Saimei (Saimei Tenno 齊明天皇), siezed power, he used the same ideology - right of revolution - to validate his kingship. Prince Naka no Oe arbitrarily identified the tribe brought to the court by Hirafu as the legendary Sushen people.
著者
三國 久美 工藤 禎子 深山 智代 広瀬 たい子 桑原 ゆみ 篠木 絵理
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、乳幼児を持つ両親を対象として育児ストレスを縦断的に測定し、1)子どもの月齢に伴う親の育児ストレスの変化、2)父母の育児ストレスの違い、3)育児ストレスに関連する家族特性について明らかにすることであった。育児ストレスの測定には日本版Parenting Stress Index (PSI)を用いた。日本版PSIは、奈良間ら(1999)により開発された尺度であり、高得点は高ストレスを意味する。子どもが4ヶ月の時点で縦断研究を開始し、3歳6ヶ月まで約6ヶ月毎に計7回の自記式質問紙による調査を行った。全調査で有効回答を得た父112人、母174人を分析対象者とした統計的解析により、以下の結果を得た。1)日本版PSI総得点は子どもの月齢による差がみられ、父では4ヶ月、10ヶ月と増加し、1歳6ヶ月時が最も高く、以降減少した。母では4ヶ月時が最も低く、10ヶ月から1歳6ヶ月にかけて増加し、その後の変化はみられなかった。2)日本版PSI総得点は、父母間で差がみられ、4ヶ月から3歳6ヶ月まで常に父よりも母の育児ストレスが高かった。また、4ヶ月から3歳6ヶ月までの父母の日本版PSI総得点には有意な正相関が認められた。3)日本版PSIと家族特性との関連をみたところ、子どもの出生順位では第二子以降よりも第一子のほうが、また子どもの健康状態では良好なものよりも治療中のもののほうが、父母ともに有意に育児ストレスが高かった。また、有職の母よりも無職の母の育児ストレスが有意に高かった。父の学歴では、中学卒のものはそうでないものよりも母の育児ストレスが有意に高かった。以上の結果から、子どもの月齢、出生順位、健康状態、また母の職業の有無など育児ストレスに関連する要因を踏まえて両親への育児支援を行う必要性が示唆された。
著者
小玉 亮子
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、二〇世紀初頭のドイツにおいて、家族及ぴ家庭教育がどのように議論されたのかを明らかにすることを目的としている。特に、この時期、あるべき家庭教育の推進のための一つのシンボルとして、母の日が大きな役割をになったことに注目している。母の日はアメリカで生まれるやいなや世界中に広まっていったのだが、ドイツはその中でも特に受け入れられた国である。当時ドイツは、第二次世界大戦による敗戦の混乱のなかで、精神的立て直しが急務の課題となっていた。その課題をひきうけるべく1925年に「民族の復興のための特別委員会」がつくられた。ここに参加したのは、民間団体、地方自治体、有識者個人等さまざまであったが、そのなかで「ドイツこだくさん家族全国連盟」があった。この団体は、あるべき家族像をうちだしながら、民族の立て直しを図ることを目的としたもので、そこで、母の日は重要な位置づけを与えられた。本研究では、この「ドイツこだくさん全国連盟」の機関誌の推移をみながら、民族の復興がしだいに強調されるなかで、母の日がより重視されてくる過程を追った。母の日をめぐる議論は、一方で、理想の家族や母をたたえつつ、他方で現実の家族や女性を非難する言説によって構成されている。国家や民族の強化や立て直しといった時代の要請、また、近代家族をみずからの地位の確立に役立てようとする家族とそして女たちの期待と共犯しつつ、母の日は普及していった。ワイマール期のこのような展開は、来る全体主義の時代とは無関係ではなく、むしろ、政治体制が全体主義に移行するより以前に、助走が始まっていたことを明らかにするものである。
著者
林 史典
出版者
筑波大学
雑誌
文藝言語研究. 言語篇 (ISSN:03877515)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.165-183, 1983
著者
古川 茂
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.37-41, 1932-04
著者
冨士 昭雄
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤國文 (ISSN:04523652)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.37-44, 1981-03
著者
桑原 保正 森 直樹 田辺 力
出版者
日本環境動物昆虫学会
雑誌
環動昆 (ISSN:09154698)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.91-95, 2007-06-07
参考文献数
11

ジヤスデ目イトヤスデ科のオカツクシヤスデKiusiozonium okai(Takakuwa and Miyosi,1949)の防御分泌物には,Polyzonimineと2',3',5',6',7',7a'-ヘキサヒドロ-2,2-ジメチルスピロ[シクロペンタン-1,1'-{1H}ピロリジン]-7'-オキシム-O-メチルエーテルが主成分として,またニトロポリゾナミンが微量成分としてそれぞれ含まれることを確認した.このオキシムエーテルは中米産矢毒蛙のスピロピロリジンアルカロイド236であり,カエルと同所的な中米のジヤスデにこれまでその存在が証明されていたが,今回同じ化合物を日本のヤスデから検出した.
著者
李 早 宗本 順三
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.75, no.647, pp.67-74, 2010-01-30 (Released:2010-04-02)
参考文献数
29
被引用文献数
1 5

The authors are investigating physiological effect of waterscape in Chinese residential quarters. In this report we investigated an EEG by a comparison between waterscape and non-waterscape images. Results showed: α-EEG of 85% testees have activated in waterscape images compared to non-waterscape ones. Images of [Fountain pond equipped with landscape facilities] and [Pond with green islet] had higher α-EEG than others, and were shown significant difference to more than half of non-waterscape ones. It was also noticed that α-EEG of testees could be enhanced according to area increase of landscape facilities or water in these images.
著者
前川 昭二 斉藤 勝也
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 = Journal of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.51, no.595, pp.412-418, 2003-08-05
参考文献数
8

An airship has usually two or three ballonets in its envelope in which air is contained. Its buoyancy and attitude control is performed by changing the air content of each ballonet. It is said that ballonet slosh may influence airship's stability or ride quality. However, no quantitative treatment has been performed so far to investigate this phenomenon. In this paper the coupled equations of an airship longitudinal motion are formulated by modeling the ballonets as cylindrical containers. Some numerical calculations are performed for a 25m class airship and it has been shown that the ballonet slosh may become a design issue when the shape of the ballonet is thinner or when the size becomes larger.
著者
鶴若 麻理
出版者
聖路加看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、医療における事前指示についての専門家へのヒアリング調査、および各地域の高齢者へのインタビュー調査を通して、アジア地域の高齢者が終末期医療の希望の表明方法や意思決定に関する意識を明らかにすることを目的とした。台湾では2000年5月23日に『安寧緩和医療條例』が制定され、一方、シンガポールでは、1996年にアドバンス・メディカル・ディレクティブが法制化されているが、どちらの地域ともに、普及率が極めて低い現状であった。二つの地域の専門家へのヒアリング調査から、死をタブー視する傾向、医師と家族が最も良い決定をしてくれるという考えや、最後まで最善の治療を望んでいるという傾向が、普及率のきわめて低い要因となっていることが明らかになった。今後の課題としては、市民や医療者への教育プログラム、医療従事者の中立的立場での適切で十分な情報提供が求められていた。三つの地域の高齢者へのインタビュー調査からは、終末期医療への希望を話すことへの心理的抵抗とともに、語りたいという葛藤が交錯していた。また文章化することへの抵抗感、相談できる医師の不在、終末期の想像の困難さが共通してあげられた。作成した文書が医療現場で適切に扱われるかという点と、作成したことで適切な治療を受けられなくなるという不安をあわせもっていた。さらに作成する意味として、患者の権利であるという捉え方よりはむしろ、家族の負担の軽減という考えを有していた。専門家による的確な情報提供や相談システムの構築や教育プログラムが求められる。
著者
松田 俊広 伊野 文彦 萩原 兼一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.5, pp.852-861, 2011-05-01

本論文では,実時間の画像ノイズ除去を目的として,GPU(GraphicsProcessing Unit)に基づく高速な全変動最小化手法を提案する.既存手法と異なり,提案手法はカーネルを二つに分割する.この分割はGPU内の同期を増加させるが,メモリアクセスパターンを簡素化し,メモリアクセスに起因する分岐を削減できる.更に,オフチップメモリの実効バンド幅を最大化し,その読み書き量を最小化するために,スレッドブロックの大きさや形状を適切に定める.実験の結果,提案手法は単一カーネルに基づく既存手法よりも30%ほど高速であった.また,スレッドブロックの形状に応じて,性能が4%ほど向上した.1024 × 1024画素からなる時系列臨床画像に対し,秒間46フレームの実時間ノイズ除去及び可視化を実現できた.