著者
井上 嘉幸
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-13, 1993-06-30

木材防腐防虫剤の安全性について,住宅環境に用いられる処理木材の安全性を調べるため,処理木材から揮散した物質を吸入した場合の毒性を調べることにし,処理木材で2種の飼育箱をつくり,マウスを90日間飼育して,飼育箱内の環境条件,マウスに及ぼす処理木材の作用等について検討を行った。別に,処理木粉による皮膚刺激試験,経口投与による毒性,薬剤の揮散速度等について検討を行った。得られた結果は,つぎのとおりである。(1) 2種の飼育箱では,A型の方がB型に比較して飼育箱内の環境条件が良好で飼育に適していることを明らかにした。(2) ペンタクロルフェノールおよびボリデン塩K-33については,マウスの体温が高くなったが,この理由は酸化的リン酸化の解除剤としての作用と考えられる。(3) 臓器重量について,B型飼育箱では肝臓重量が増大し,とくにクレオソート油の場合に著しいが,この理由として接触による吸収および一般に嚼む傾向があるため,その影響が肝臓に表れたものと思われる。脾臓については,ビス-(n-トリブチルスズ)オキシドの場合,肥大が認められた。(4) 全般的にナフテン酸銅は,マウスの行動等を含め毒性が少ないものと考察される。(5)処理木粉による皮膚刺激試験では,ビス-(n-トリブチルスズ)オキシド,クレオソト油などの刺激が大であった。(6) 経口投与による毒性につき,ラットにγ-BHCを投与し,これを継続した結果,飼育箱から飛び出ようとして体を強打するなど異常行動が認められ,組織標本を作成して検討した結果,脳に異常が推定された。(7) 薬剤の揮散速度について測定した結果,重量現象速度は,クロルデン>γ-BHC>クレオソート油の順となり,クロルデンの重量現象速度は従来の値より大きくなった。(8)飼育箱内に昆虫または微生物を置き,揮散による影響を調べることができ,アズキゾウムシ成虫では,γ-BHCの殺虫速度が最も大であった。(9)住環境調和型木材防腐防虫剤の安全性を検討するためには,今後,処理木材の毒性を検討することが重要である。
著者
藤木 史朗 安藤 英俊 鳥山 孝司
出版者
可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌. Suppl. (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.259-264, 2008-07-01
被引用文献数
2
著者
恒次 祐子
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

これまでに実験室実験において,生理応答の個人差をパーソナリティで説明することを試み,不安傾向,タイプA型傾向と味覚・嗅覚刺激時の脳血液動態との間に関連がある可能性を見出した。今年度は実験をフィールドに拡大し,実際に生活の場で自然環境と触れる際の生理応答の個人差について唾液中コルチゾールならびに分泌型免疫グロブリンA (s-IgA)を用いて検討した。森林浴実験を国内10箇所で実施した。被験者は毎回異なる男性大学生12名とし,午前中に森林中にて15分間の歩行を行い,午後には同じく森林中にて15分間の座観(椅子に座って景観を眺める)を行った。コルチゾール,s-IgA分析用の唾液は,朝,歩行前後,座観前後,夕方の1日6回行った。また対照として各地で「都市部」実験地を設定し,同じスケジュールで測定を行った。結果として,コルチゾール濃度にはどこの実験地においても明確な日内変動が認められ,主観申告との対応も良く出ていた。一方IgA濃度については主観申告との対応があまり見られず,値の個人差も大きかった。これについて文献的調査を行ったところ,ソーシャルサポート(日常生活で自分をサポートしてくれる人の数等に関する主観申告),タイプA型傾向などによってs-IgA濃度のベースラインが異なるという報告や,ストレスの種類によって視床下部-下垂体-副腎皮質系または視床下部-交感神経系のどちらが刺激されるかが異なり,それにより免疫応答の方向が決定されるという報告があることが分かった。s-IgAについては今後さらに文献的調査を実施し,刺激受容から分泌までの時間や,濃度の上昇・低下の持つ意味を整理する予定である。
著者
小田 亮
出版者
桃山学院大学
雑誌
国際文化論集 (ISSN:09170219)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.37-66, 1990-03-01

This paper aims to explain a correlation between the social division of ritual services on "purification" and the social connotations of "pollution", a form of ritual states of danger. In chapter I, we see the cases of performers of purification among three African societies; the Kaguru, the Nuer, and the Bambara. Among the Kaguru, 'joking partners' (watani), presons who stand reciprocal' joking relationship' with one another, conduct the ritual services to purify the pollution of death, incest, crime or witchcraft. Watani have "strangerness" and aren't regarded as pariha. Among the Nuer, the 'leopardskin chief or priest' conducts purification rituals. They are "strangers" in the communities where they live. Unlike watani leopardskin priests are specializing in purification, but, like watani, have strangerness. The Bambara society consists of three categories of people; freemen (horon), artisans (nyamakala) and slaves (djon). Among the Bambara, nyamakala, who conduct ritual srevices of purification for horon, are a kind of pariha. They are travelling "market people", and "strangers" to communities of freemen. In short, all these executors of ritual purificatuion among three societies above have "strangerness", but only Bambara nyamakala are held in contempt and, in some sense, awe others. That is, all "strangers" who execute purifying rituals are not regarded as awesome, nor as pariha. Then, what makes certain executors to be pariha and awesome? To answer this question, we must know three "ideal types" of "exchange"; market exchange, reciprocity, and redistribution, and know chieftainship from kingship. The discrimination of the types of "exchange" furnishes the ideal types of social domains; "liminal domain" or "the space of muen" where market exchange takes place, "the space of giri" where the rule of reciprocity dominates, and "domestic domain" or "the space of on". And the ritual danger of pollution can spead and affect within the domestic domain or the space of redistribution in which the pollusion arose. Persons or objects in "liminal domains" are free from the danger. This is why the executors of purification have "strangerness". Kingship, which produces the total redistribution system including liminal domains in the kingdom, stands in a dilemma. Because, only to the king, who stands on the top of the total redistribution system, "liminal domains" turn out to be "domestic domains", and the body of the king can be affected by all the pollution which every community in the kingdom throw into the liminal domains. It is "scapegoat mechanism" that can solve the kingship dilemma. The scapegoat that are connected with the king and live in the liminal domains are burdened with purification for the king. They appear as pariha in the total redistribution system, because they are alienated by the connection with the kingship from each community of which the kingdom consists.
著者
奥野 喜裕 村上 朝之
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、クローズドサイクルMHD発電の実用化に向けて、「MHD発電機の実用高度化」研究を戦略的に推進した。衝撃波管駆動MHD発電実験装置、および高精度電磁流体数値シミュレーションを駆使して、類似の発電システムの中では世界最高の発電出力密度を達成するとともに、発電機形状の改良による発電性能の向上を実証し、理論的裏付けとともに,更なる性能向上に向けての確度の高いロードマップを提示することができた。

2 0 0 0 OA 紀伊続風土記

著者
仁井田好古 等編
出版者
帝国地方行政会出版部
巻号頁・発行日
vol.第5輯 高野山部 下, 1911
著者
北村 歳治 吉村 作治 佐藤 次高 山崎 芳男 店田 廣文 長谷川 奏
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、イスラム社会の変動を科学技術の視点から分析することを目的とする。具体的には、1)イスラム世界を歴史と現代に至る技術革新の流れの中で概観し、2)IT等の科学技術がもたらす「一様化」と個別化がもたらす「多様化」の双方からイスラムの社会経済・文化の問題を分析する。1)では、マムルーク朝の文献資料を基に農業分野の技術革新を分析し、エジプトが砂糖産出国に変貌していった過程に焦点をあて、イスラム文化が実践性と受容性に富んでいる背景を明らかにした。また、今日のイスラム系のウェブサイトが英語とアラビア語を駆使して双方向性のコミュニケーションに成功している事実を明らかにした。2)では、イスラム地域でのワークショップやフィールド調査等を通じて、以下の成果を得た。(1)経済・ビジネス関連:民主化推進派と保守強硬派がせめぎあう中で、科学技術を意識した湾岸諸国は、石油依存経済からの脱却と産業の多角化を進め東アジア等との経済関係を強化したが、イスラム地域全体としては取組みが停滞している点、トルコでは経済改革を通じEU加盟を現実化させる方向に進んでいることが逆に西欧キリスト教国に対しイスラム的努力をどれだけ受容できるのかという新たな問題を提起した点、また、イスラム金融が東アジアの金融取引において看過できない動きとなっている点等を明らかにした。(2)情報・技術関連:ITの進展とともに、インターネットが過激派のサイバー・テロ手段となる傾向も顕著となった点を具体的に捉えた。(3)社会・文化関連:エジプトでは、電子化政策の推進が文化財保護行政にプラスしている点、東南アジアでは、インドネシアのユドヨノ政権の成立過程でイスラム団体を含む民主化勢力の貢献が見られた点、マレーシアでは海外からの投資を梃子にした人材育成やハイテク産業の育成及び中等教育に主眼を置いた教育体系も科学技術と経営を重視してきた点等を明らかにした。
著者
長澤 榮治 池田 美佐子 黒木 英充 鈴木 董 松本 弘 松井 真子(黒木) 黒木 真子(松井 真子)
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

アラビア文字圏とは、アラビア語・ペルシア語・オスマントルコ語などアラビア文字を用いる文化的世界を指す。これまで同地域に関する研究は、思想・宗教分野への関心が強く、また伝統的資料利用法による印象論的分析が中心であり、基礎資料の体系的利用にもとづくに政治社会分析の体制が十分に整ってはいなかった。本研究は、近現代の同地域に関する政治社会分析のために、議会議事録・官報・法令集・政府年鑑・地誌など基本資料を用いたデータベース形成のための手法を構築することを目指した。具体的な作業として、これらの原資料のデジタル化を行い、デジタル化した資料の索引・目次などを利用して用語検索システムのためのアラビア文字入力作業とデータベース設計のモデルの構築を試みた。また、上記の作業に当たっては、未所蔵分の資料の補充や関連する資料の収集、そして現地専門家との意見のために海外調査を実施した。今回アラビア文字圏データベースの構築に向けて基礎的な作業の対象に選んだのは、(1)オスマン帝国官報、(2)エジプト議会議事録、(3)エジプト新編地誌の三資料である。(1)オスマン帝国官報については、マイクロフィルム化とデジタル化を行い、全刊行号に関する書誌情報を入力し、そのデータの整理作業を行うとともに、検索システムのための準備作業を完了した。(2)のエジプト議会議事録は、索引のデジタル化と会期・会議別一覧表の作成を行った。(3)アリー・ムバーラク著『新編地誌』は、エジプト近代社会経済史資料の宝庫であるが、全文のデジタル化と索引のアラビア語入力、キーワード検索のための入力データの選定・整理作業を実施し、パイロット版の検索システムを作成した。上記のデータベースについては、今年度中に試験的に公開する予定である。
著者
森田 幸雄 新井 真理子 野村 治 丸山 総一 勝部 泰次
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.585-587, 1994-06-15
被引用文献数
4

2歳の雄, 輸入伝書鳩において総排泄口後方の皮膚に結節(直径約15mm)を認めた. 皮膚の結節および糞便からMycobacterium avium血清型2型が分離された. 分離菌のうち光沢があり隆起した親水性の集落(SmD株)ならびに光沢がなく小さい疎水性集落(RG株)を, 鶏(白色レグホン, 雌, 40日齢)の翼静脈内にそれぞれ10^6個および10^7個接種したところ, RG株投与鶏は39日目に, SmD株投与鶏は77日目に死亡した. SmD株, RG株投与鶏はともに肝臓, 脾臓の腫大が著しく, SmD株投与鶏の肺, 肝臓および脾臓には粟粒大の白色結節が認められた. 投与鶏の肺, 肝臓, 脾臓, 腎臓ならびに膵臓からSmD株およびRG株が回収された.
著者
花辺 充広 尾辻 泰一 メチアニ ヤーヤ ムバラク 佐野 栄一 浅野 種正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.137, pp.291-295, 2006-06-26

2重入れ子型回折格子ゲートを有するInGaP/InGaAs/GaAs高電子移動度トランジスタを対象に、光励起2次元プラズマ不安定性を発振源とするテラヘルツ(THz)電磁波放射を室温観測した。低電子濃度プラズモン領域で励起された光電子群は、近傍の高電子濃度プラズモン領域に注入されプラズマ不安定性を誘発する。結果、生じたプラズマ共鳴振動を源とするTHz波放射が得られる。プラズモン領域と素子裏面のITOミラー間に形成される縦型共振器構造の効用により、放射THz波には利得が与えられる。レーザ2光波励起を行なった場合、直流光励起電子により励起された4.5THz近傍の共鳴振動成分が、差周波励起された5.0THzの共鳴振動成分により増強される効果が確認された。THz帯における注入同期発振の可能性を示唆する結果である。
著者
濱田 正美 久保 一之 稲葉 穣 東長 靖 小野 浩 矢島 洋一 小野 浩 矢島 洋一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

中央ユーラシアにおけるイスラームの歴史的展開の全体像を通時的に把握することを最終目標として、歴史地理、イスラーム神学、イスラーム神秘主義哲学、文化史など、従来概ね歴史研究からは等閑視されていた分野に関する知見を組み込んだ歴史像を描く可能性への橋頭堡を築いた。
著者
角岡 賢一
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷紀要 (ISSN:02890917)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.169-189, 2008-01

この小論では、仏教語彙が本来の教義を離れて意味が一般化した過程を語彙誌的に跡付ける試みを行う。まず直近20年間の新聞記事をデータベースによって検索し、共時的視点から分析を行う。次に時代を遡り、本来の意味から逸脱し始めたのがどの時代であったかを探る。検証の対象としたのは、次の八語彙である。他力本願、お題目、一蓮托生、億劫、極楽浄土、唯我独尊、後生大事、〓啄同時各語彙が新聞記事でどのように用いられているかによって、仏教語彙本来の意味であるか一般化した意味かに分類した。その比率の比較は、語彙項目毎に大きな偏りがあった。「極楽浄土、〓啄同時」の二語は九割以上という高率で本来意味での記事が見られた。それ以外の六語はいずれも、この比率が一割未満であるという極端な偏りが見られた。
著者
今井 真士
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

(1)理論的枠組みに関して,主に中東地域の権威主義体制を論じた先行研究を題材に,「比較権威主義体制論」と呼びうる研究分野が比較政治学に形成されつつあることを明らかにした.とりわけ,(1)民主化に言及することなく権威主義体制それ自体の内部力学を分析対象と見なす,(2)権威主義体制下においても「制度」が重要である,という問題意識を共有しながらも,分類論,寿命論,分岐論という複数の研究戦略が乱立・共存していることを明らかにした.これに関連して,分岐論の根底にある考え方を体系的に表したものとして『ポリティクス・イン・タイム』の翻訳を手がけた.(2)具体的な議論に関して,権威主義体制の違いを説明するために2つの問いに注目した,(1)複数政党制を認める権威主義体制において,与党が野党と連立政権を形成して権力を維持しようとする場合がある一方,名目的な協定を締結するだけで権力を維持しようとする場合があるのはなぜか?(2)野党がイデオロギー横断的な連合(特にイスラーム主義者と左派の連合)を形成する場合がある一方,イデオロギー別に連合を結成する場合があるのはなぜか?という問いである,これを検討するために,与党による野党の「排除率」と,イデオロギーの異なる野党間の「議席占有率の差」に着目して,2つの仮説を提示した,与野党の関係について,排除率が低ければ,与党は取り込みの手段として連立政権を構築しうる一方,排除率が高ければ,与党は排除しなかった野党との間で形式的な対話を進めると想定した.野党間の関係について,イデオロギーの異なる野党間の議席占有率の差が大きければ,連合を構築するよりも個別に行動し,拮抗していれば,イデオロギー横断的な連合を構築すると想定した,この議論によって,権威主義体制における取り込みに関する仮説を精緻化するとともに,中東地域のイスラーム主義政党の行動の多様性を説明することが可能になると思われる.