著者
伊藤 稔 田中 雅博
出版者
甲南大学
雑誌
甲南大学紀要. 理工学編 (ISSN:13480383)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.125-135, 2005-07-31

In this paper, we evaluate the performance of Differential Evolution (DE), Particle Swarm Optimization (PSO), and Real-Coded Genetic Algorithm (Real-Coded GA) on a function optimization problem. The comparative study is performed on 4 benchmark problems. The results from our study show that DE outperforms the other methods.
著者
橋本 健一
出版者
千葉県立衛生短期大学
雑誌
千葉県立衛生短期大学紀要 (ISSN:02885034)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.21-25, 1987
被引用文献数
1

DANILEVSKY(1961)の総説によれば,アオムシコマユバチApanteles glomeratus L.は,多化性のオオモンシロチョウPieris bΓassicae L.を宿主としたときは比較的低温でしかも短日の条件のときに前始期での休眠に入るが,1イヒ性のエゾシロチョウAporia cratagei L.に寄生した場合は1令期に宿主の休眠幼虫体内で越冬し,春になってエゾシロチョウ幼虫の休眠が終了しない限り,活性化されない。一方,日本ではアオムシコマユバチ(以下ハチと略記)はモンシロチョウP. rapae crucivora BOISDUVAL幼虫(以下アオムシと略記)を主要な宿主としている。著者は,10〜11月に野外で採集したアオムシから脱出・営繭したハチ繭が25℃全暗の条件下で脱出後8〜12日めに羽化してしまうことから,少なくとも東京地方ではアオムシを宿主とするハチは休眠状態に入らずに越冬していると考えられることを報じた(橋本, 1981)。しかし,TAGAWA et. al(1984)が,京都付近のキャベツ圃場より11月および2月に得たハチ繭は前蛹での休眠に入っていることを報じ,さらに,石井他(1987)は本種の休眠要因として,アオムシ体内で寄生時代に経験する低温が重要であることを報告した。そこで,千葉市産の本種個体群を用いて前蛹休眠および休眠誘起条件について実験を行ったところ若干の知見を得たので報告したい。
著者
上田 豊
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.252-263, 1995-11

第36次南極地域観測隊夏隊16名(上田観測隊長), ドイツの交換科学者1名および越冬隊40名(召田隊長, 石沢副隊長)は, 1994年11月14日「しらせ」にて東京港を出発し, フリーマントル寄港後, 12月24日昭和基地に接岸した。翌年1月12日までに, 約1070トンの物資輸送を終え, 2月14日まで昭和基地施設更新建設工事, 大型短波レーダー設置ほかの作業を行った。氷床ドーム深層掘削計画では, ドーム往復内陸旅行を実施し, ドームふじ観測拠点で第35次拠点建設班と合流, 完成した新拠点で1月29日から9名による初越冬を開始した。昭和基地とその近辺では潮汐・海潮流, 生物, 測地, 気球回収予備実験, リュツォ・ホルム湾周辺露岸域とリーセルラルセン山域では地殼形成過程に関する地質調査, 測地, 生物などの観測を実施した。また往路に引き続き帰路の船上で, 海洋物理・化学・生物, 地磁気ほかの観測をしつつシドニーに到着した。第36次夏隊は順調な成果をあげ, 第35次越冬隊とともに3月28日空路帰国した。
著者
大貫 繁雄 大塚 友彦 清水 昭博 城石 英伸 西村 亮 小坂 敏文
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,技術者を目指す学生のモチベーションを向上させるため,15歳という低年齢から学生の意識を「頑張ること=達成感を得るための第一歩」が「嬉しい(さらなる向上へ)」という状態に遷移させる仕組みを提案する.まず,現行の新入生専門導入科目「ものづくり基礎工学」の現状分析を学生意識調査により,入学当初から,複合・融合的視点を修得する意義を認識する学生が多いことが明らかになった.次に、社会ニーズ(環境やエネルギー等)の高い分野の基礎実験テーマを組み込み、社会で望まれる技術者像の理解向上を試みた.学生の意識調査から社会ニーズの高い分野への関心や社会で望まれる技術者像についても高い認識を持っていることが明らかになった.最後に,社会人技術者から構成される人材バンクを立上げ,外部教育力を活用して,「ものづくり基礎工学」の授業の一環として設計・製作物の発表会(競技会),講演会等を実施し,学生の自発的な発想力や行動力向上のための新しい授業形態を検討した.学生意識調査から,現場技術者から実務能力について講演を受けることで、技術者意識について共感する学生が多い結果となった.
著者
新谷 寛
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

ガラスは工業的に非常に重要であるが、ガラス転移転移の基礎的メカニズムに対する回答は未だに得られていない。この問題に対し我々は、「局所安定構造形成による短距離秩序化」と「結晶化による長距離秩序化」との競合によるフラストレーションが過冷却液体には存在し、それがガラス転移現象の本質と深く関わっているという「二秩序変数モデル」を提案している。そこで、相互作用ポテンシャルに上記のフラストレーションを導入することで、結晶化からガラス化までを続一的に扱えるモデルを構築した。ガラスには、ガラス転移現象の他にも、ボゾンピークと呼ばれる未解決問題が存在する。ボゾンピークとは、THz領域に存在する、デバイの状態密度(低温での結晶の振動状態密度を良く記述できるモデル)よりも過剰の振動状態密度である。しかし、ボゾンピークがガラス転移現象と関連があるのかどうかや、その起源に関しては未解明のことが多い。我々は、前述したモデル用いて、分子動力学シミュレーションを行った。このモデルの圧力やフラストレーションを制御することで、ボゾンビーク振動数を幅広く変化させ、系統的に研究することにより、ボゾンピーク振動数と横波の音波の Ioffe-Regel limit(ガラスのランダムネスの影響のため、音波が強い散乱を受け伝播できなくなる振動数)とに深い相関があることを発見した。さらに、この事実は次元性やポテンシャルの詳細によらない普遍的なものであることも明らかにした。このことは、ガラス(非晶質)の振動ダイナミクスの理解に大きく寄与するものと考えられる。
著者
小林 満
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

絶対王政の理論的な正当化が進んだ16~17世紀、カンパネッラはキリスト教的都市国家を目指し、ブルーノも社会改革に触れたが、両者とも自由に哲学することを禁じられ迫害された。『偽金鑑識官』における原子論もガリレオを異端者と判断する原因となったが、異端審問後には、ガリレオは数学的議論として不可分者と無限について論じているものの、有限の人間の知性は無限を理解できないという慎重な態度も見せた。ガリレオ裁判後、イタリアのガリレオ派には、マガロッティのようにリベルタン的テーマにも取り組んだ者もいたが、マルケッティによるルクレティウスの翻訳は、原子論的性格のために出版を許可されなかった。
著者
成田 千恵
出版者
日本女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、個々の重症心身障害児(者)の体温調節障害の特性や身体の変形の程度、精神活動レベルを生体情報等の詳細な実測より客観的に評価し、それを基に個人の障害や生活環境の状況に適切に対応した衣服要素を検討することで、重症心身障害児(者)の衣生活における温熱性快適性の向上を目的としている。今年度は、これまでに計測を実施した重症心身障害児(者)、および健常者の衣服内環境と生体情報等の計測データの比較検討を行った。寝たきりの重症心身障害児(者)の衣服内環境の計測結果において、個人により衣服内湿度の変動レベルに差違が観察された。これまでの計測結果から衣服内湿度の変動は精神的ストレスの影響が反映されていると予想されることから、変動レベルの差違が障害の程度に影響を受けているとも考えられる。計測対象とした重症心身障害児(者)では部位による皮膚温変動に個人による特徴が観察されているが、健常者の長時間にわたる皮膚温計測においても、皮膚温変動には大きな個人差がみられ、重症心身障害児(者)にみられるような特徴的な皮膚温変動のケースが観察された。また、身体の変形が観察される重症心身障害児(者)においては、着用している健常者用衣服のサイズが身体に適合していないことにより衣服による保温性が十分得られないことが考えられる。衣服による保温性を高め、かつ介護者が無理なく着脱させることが可能である適切なゆとり量を検討するため、健常者を用いて異なる身体的障害を有する重症心身障害児(者)を模擬した被験者実験を行い、着脱による衣服開口部の伸張を計測し、障害により着脱に必要とされるゆとり量の差異について検討した。
著者
小柳 正司
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は,以下の諸点について,2年間にわたる研究のまとめを行った。第1に,機能的リテラシーの捉え方の変遷を考察した。その結果,能的リテラシーは,当初の経済開発と人的資源確保に結び付いた「仕事のためのリテラシー」から,より広く社会的,市民的,文化的な次元を含む人間の基本的な生活能力の一環として捉えられるようになったことが明らかになった。第2に,機能的リテラシーの官製モデルを分析した。そして,一般の成人識字教育は,もっぱら非識字の「二流市民」を「良き市民」へと社会的に再適応を図る一種の補償教育であることを明らかにした。第3に,こうした通常の機能的リテラシーと成人式字教育の在り方を「飼い慣らし」と「非人間化」と批判したパウロ・フレインの識字教育論を考察した。そして,彼の識字教育は,文字の獲得を,民衆が自らの言葉で現実世界の成り立ちを読み取っていく過程として組織するものであることを明らかにした。第4に,1980年代のレ-ガン・ブッシュ政権下で新保守主義の教育改革が進行する中で登場した「文化的リテラシー」の主張を取り上げ,それが多民族国家アメリカの国民的共通文化の確保という課題をリテラシーの問題として新たに提起するものであることを明らかにした。第5に,文化的リテラシーの新保守主義的傾向への対抗理論として登場した批判的教育学のリテラシー概念を取り上げ,そこでは,(1)リテラシーの獲得は人々を既成の文化構造への参入を保証しつつ,それへの従属を図るものであり,(2)従ってリテラシーの問題は,何をもって「正統文化」とするのか,だれがそれを決めるのかという政治力学の問題であることが鋭く問われていることを明らかにした。
著者
佐藤 尚子 岡田 亜矢 江原 裕美 内海 成治 大林 正昭 黒田 一雄 横関 祐見子 織田 由紀子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.女子教育の問題は、その社会におけるジェンダーのありようと深く関係していることを明らかにした。たとえば、ジェンダーギャップの少ないと言われているブラジルにおいても、女子教育の現状は問題がある。ジェンダー概念は文化の深層に根ざすため、微妙な形で表出するからである。女子教育の発展はジェンダー規範と関係があり、ジェンダー規範はそれぞれの地域や民族の文化と深い関係がある。しかし、イニシエーションや早婚など女子教育を阻害する民族的文化的背景を絶対視する必要はない。近代中国において女子の伝統であった纏足が消滅した例があるからである。2.女子教育を促進または阻害する文化のもつ意味は重大であるが、しかし、本研究は、題目にあるとおり、現在の文化的要因を越えて「社会経済開発」を考えようとした。たとえば、フィリピンでは、識字率、就学率、最終学年への到達率、教育の理解度などで性別格差がみられないと報告されている。しかし、フィリピンはまだ途上国経済から脱していない。女性と女子教育が社会経済開発に強い役割を持つことが重要である。経済開発に対する教育の貢献度を男女別で量的に比較することは困難であるし、女子教育と経済開発の関係性は複雑でもあるが、社会経済開発における女子教育の有用性については強い相関関係がある。日本でもナショナリズムの台頭時期に主に社会開発の視点から女子教育が普及した。インドでは女子教育は階層間格差によって増幅され、重層的な格差の構造を形成している。この構造を破るものは、目に見える形で社会経済開発と女子教育が結びつくことである。3.単なる人権・倫理的視点からの女子教育振興ではなく、社会経済開発という視点を入れた女子教育振興こそ、発展途上国の女子教育を成功に導くものとなると思われる。
著者
川上 陽子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

H19年度は、おもに贈与について研究を深めた。贈与が死と密接な連関をもっていることをつまびらかにした。そのために、ハイデガー、キルケゴール、デリダ、レヴィナス、ブランショらの著述をひもとくこときながら、彼らが死が到来するものということを前提とし、他の誰のものでもなくこのわたし固有のものである死という概念、それをぞんざいの担保としていたのに対し、死は誰しもに必ず訪れるものであるにもかかわらず、死の瞬間にわたしは雲散霧消するのであるから(すくなくとも「わたしたち」の「世界」においては)、死は届きそうでその瞬間に姿を消す、決して届き得ないものであること、つまりは絶対的他者性であり、にもかかわらず、それは産まれる瞬間にどこからともなく誰から都もなく贈与された、わたしとは切っても切り離すことができない不気味ななにものかであることを論じた、さらには、誰しもに贈与されていることば、とりわけその先鋭的な形態である一人称代名詞「わたし」が、誰しもに贈与されているがゆえに、誰しもにとってもっとも近しいものでありながら誰のものにもなりえないアンヴィヴァレンスをはらんでいることを、多和田葉子やブローディガンなどの文学作品を論じることによって明らかにした。ここにおいて、死とことばが、贈与という概念によわて結ばれることになる。死はぞんざいにとって絶対的他者性であるがゆえに、またその他者性においてのみそのぞんざいの単独生を支え、ことばも絶対的他者性であるにもかかわらず、わたしはそれを使用することによってしかしゅたい化することができない。どちらもぞんざいにとってなくてはならぬものであるにもかかわらず、それをつきつめると、しゅたい化とともに脱しゅたい化がおこるのである。これはいままで論じられることのなかった論点であり、たいへん重要な示唆に富むものであるとおもわれる。
著者
坂田 浩之 川上 正浩 小城 英子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.91-98, 2009-01-31

本研究は,不思議現象に対する態度を研究する上での基礎作業として,現代の日本人女子大学生が実際に不思議だと感じていることを探索し,彼らにとっての"不思議"の潜在的な構造を明らかにすることを目的としたものである。20答法を応用した調査法を用いて記述データを収集し,それをテキストマイニング手法を用いて分析し,そこにどのようなキーワードが見出され,多く用いられているのか,またそれらのキーワードはどのようなクラスターを構成するのかについて検討を行った。その結果,"人間の不思議","自分の不思議","能力・可能性の不思議","好みの不思議","性の不思議","思考の不思議","差異の不思議","生理的欲求の強力さの不思議","心・感情の不思議","生・世界・文化の不思議","美・魅力に関連した事柄の不思議","身近な事柄の不思議",という12 のクラスターが抽出され,一般的傾向として,現代の日本人女子大学生が,実際には,身近で,普遍的で,自然なことに対して不思議という感覚を覚えることが明らかにされた。
著者
竹内 史央 TAKEUCHI F. 渡辺 武志 WATANABE T. 山田 孝 YAMADA T.
出版者
名古屋大学教育学部附属中学校 : 名古屋大学教育学部附属高等学校
雑誌
名古屋大学教育学部附属中高等学校紀要 (ISSN:03874761)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.47-51, 2010-01-25 (Released:2010-03-03)

数学・社会(歴史)・理科(物理)の教員により、三つのグループに分かれて行う授業である。ここでは、科学的思考を身近で体験するためのアプローチとして、数学的・理科的・社会科学的観点から三つのグループに分かれ、様々な観点から科学的リテラシーを身につけさせるための授業を展開している。
著者
松見 法男
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

平成16年度は,「日本語を母語とする幼児の英語学習において,言語の種類と色のイメージがものの認識にどのような影響を与えるか」を明らかにするため,日本語単語と英語単語の聴解課題を用いた実験を行った。被験児は英語未習の幼稚園年長児24名であった。日常カタカナ語として用いられる「赤,黄,緑,青,黒,白」の6色を色イメージとして選定し,それらの日本語単語と英語単語を,特定の色をもつ普通名詞3個(いちご,ヒヨコ,はっぱ)ならびに特定の色をもたない普通名詞3個(かばん,車,花)と組み合わせ,計72個の言語刺激材料を作成した。6色の名詞に対応する絵カードは,標準絵を利用して36枚を作成した。実験計画は2(刺激言語:日本語,英語)×2(色イメージ性の有無)×2(音韻短期記憶容量の大小)の3要因配置であった(第3要因のみ被験者間変数)。実験は個別に行われ,被験児は,ヘッドホンから流れる言語刺激(日本語-英語バイリンガルによる発音)を1個ずつ聴き,それが表すものをできるだけ早く36枚の絵カードから選ぶ(1枚を指差す)ように教示された。測度は正答率と反応時間であった。聴解課題終了後,日本語ディジットスパンテスト(DST)が行われた。正答率に関する分散分析の結果,言語刺激の主効果が有意であり(日本語で高い正答率がみられ),DSTの主効果にも傾向差(DST高群で高い正答率)がみられた。色イメージの主効果は有意ではなかった。幼児が「色のついたもの」を認識するときは,色イメージよりも言語音声に影響されること,また,カタカナ語の借用元である英語よりも日本語で色名単語が発音されるほうが「色のついたもの」の認識が正確になることがわかった。さらに「色名単語+普通名詞」の聴き取りでは,音韻情報を一時的に保持する音韻短期記憶の容量が要因の一つとして関わることが示唆された。
著者
米倉 達広 住谷 秀保 米倉 達広
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1. 筆者らは、最近その応用が盛んとなっている仮想空間構築の方法論を、視覚、聴覚、触覚の融合方法に関する理論的基盤を確立することにより達成しようとする。本報告ではそのための主たる予備実験として、個々の感覚モードを互いに分離し、それぞれが視覚機能をどのように代行するかを調査した。このための第1段階として人間の聴覚機能に着目し、視覚機能を主体とする空間認知の感覚機能をこれに代行させることを試みた。すなわち、音響媒体を用いた3次元位置情報の提示と3次元動作情報入力を用いた3次元空間インタフェースを提案し、視覚媒体を失った場合においても整合感のあるインタフェースを用いることにより、簡単な訓練のみで十分な空間認知が可能となることを実験的に証明した。これにより、視覚メディアの空間認知機能の補助として聴覚メディアの重要性を確認したのみでなく、聴覚メディアのみによる仮想空間走査性を示唆した。2. 次に触覚提示装置を用いた空間認知方式を考案し、これによる周囲障害物までの距離感覚提示を試作した。具体的には、人間の蝕覚特性を独自の方式で計測し、そのうえで視覚情報を遮断した状態で同装置を用いて周囲障害物回避を伴う歩行実験を行った。その結果、適切なインタフェース方式を用いた場合、触覚メディアが視覚メディアの適切な代行機能となり得ることを示唆した。これらにより視覚的な障害を有する操作者や視覚機能低下者のための情報機器操作、生活環境把握の一助として、聴覚メディアならびに蝕力覚メディアが十分利用できることを主にタスクパフォーマンスを用いる方法論により確認した。3. 更に、各種の利用目的に応じた仮想空間の構築に際して、感覚統合を有効に用いた幾つかの事例を述べ、仮想空間における感覚統合の重要性とそのための方式についてまとめる。有効な仮想空間を構築する際、人間のもつ環境適応能力による感覚代行機能は極めて重要なヒューマンファクタであり、今後はネットワークインフラまでをも含めた分散仮想環境(Distributed Virtual Environment)構築に関するヒューマンファクタを調査していきたい。
著者
宮田 高道 岩下 英史 酒井 善則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.380, pp.39-43, 2010-01-14

携帯電話に代表される低解像度のディスプレイで,高解像度の動画像を視聴する際には解像度変換が必要となる.一方,低解像度ディスプレイでの閲覧時にユーザが各自の所望の箇所を拡大して閲覧可能なvirtual cameraworkと呼ばれるユーザインタフェースも提案されている.そこで本研究では,ある動画像について複数の視聴者がvirual cameraworkを用いて提示範囲を指定したときの操作履歴から,視聴者の人気集中度等の情報を得た.これに基づいて多くの視聴者が所望する箇所を可能な限り縮小せずに提示することを目的とし,動的輪郭モデルやSeam Carvingのアルゴリズムを応用した集合知による解像度変換法を提案した.これらの手法を単純なダウンサンプリングと客観評価尺度によって比較し,提案する解像度変換の有効性を検討した.
著者
西野 順二 戸田 英治 鹿田 和之進 本多 中二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.35, pp.1-6, 2003-03-24
被引用文献数
1

本研究は、RoboCupサッカーシミュレーションリーグに人間が参加し、その協調行動の様子について計測および分析を行った。視野の制約やノイズ、情報の欠損など限られた情報リソースをもとに、明示的に予定されていない他のプレイヤとの協調が見られるなど、人間ならではの行動が見られた。本論文では特にフォワードプレイヤ(FW)に焦点をあて、その行動の経時変化、他のプレイヤやオフサイドラインとの関係を各種の統計量にもとづいて分析した。相手チームの特性の迅速な把握と行動対応や、明示されない協調的行動の創発を確認した。This paper shows an analysis result of human soccer forward player's behavior in simulated soccer; RoboCup. We developed an interface system called OZRP/Palm-system that enabled human pilots to dive into simulated socder field. Human players could play very well in spite of several constraints such as limited information and noise. We showed quick opponent modeling abilities and a priori cooperation abilities by means of statistical indices.