著者
嵯峨山 茂樹 中妻 啓 深山 覚 酒向 慎司 西本 卓也
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.546-553, 2009-09-01
被引用文献数
3

本稿では,任意の日本語テキストの持つ韻律に基づき,歌唱曲を自動作曲する手法について解説する.文学作品や自作の詩,ニュースやメールなど,あらゆる日本語テキストをそのまま歌詞として旋律を生成し,歌唱曲として出力する自動作曲システムは,手軽な作曲のツール,音楽の専門知識を持たない人のための作曲補助ツールとして有用であろう.さらに著作権問題の回避としても用途があろう.歌唱曲は歌詞との関連性が求められる.特に高低アクセントを持つ日本語では,発話音声にピッチの高低が付くため,歌詞を朗読する際の韻律と旋律が一致することが重要とされる.筆者らはこの点に着目し,ユーザが選択した和声,リズム,伴奏音形を拘束条件として,旋律を音高間を遷移する経路とし,韻律の上下動の制限の下で最適経路となる旋律を動的計画法により探索する問題として旋律設計を捉えた.このモデルに基づき,任意の日本語歌詞に,その韻律に一致した旋律を付ける自動作曲手法により自動作曲システムOrpheusを作成したので紹介する.
著者
瓜生 大輔 生井 みづき 徳久 悟 柏樹 良 稲見 昌彦 稲蔭 正彦 奥出 直人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.281, pp.47-52, 2009-11-05

本論文では慶應義塾大学「ユビキタス・コンテンツ製作支援システムの研究」チームが開発した統合開発環境xtelとデザイン思考を応用した「Smart Kitchen Utensil」の開発手法を提案する。Smart Kitchen Utensilとはセンサー・アクチュエータ等が内蔵された調理器具で、実際に材料を入れ、火にかけるなどの調理を行うことが可能である。今回、この調理器具の一例として私たちが開発した「panavi」システムを挙げる。panaviはセンサー・アクチュエータおよび無線通信機能を内蔵したフライパンを中心とする調理スキル向上を支援するシステムである。このシステムの開発では実際に開発の初期段階からxtelプラットフォームを用いプロトタイプを製作し、9月に行われた「ユビキタスコンテンツショーケース2009」というイベントで展示を行った。本論文では、この期間の開発過程をケーススタディとして紹介する。
著者
吉池 佑太 岡田 美智男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.743-751, 2009-11-01
被引用文献数
2

私たちは足もとにある「石ころ」に向かってコミュニケーションをとろうとはしない.なぜなら,「石ころ」をコミュニケーション可能な相手として"みなして"いないからである.私たちが「コミュニケーション可能な他者」として期待しているのは,同型な身体をもった他者である.同型な身体というのは,物理的に同型な身体をもっているということ以上に,他者を含む環境(物理的・社会的環境)と同型な関係をもっているということである.本研究では,人とロボットとの同型性について「実体」と「関係」という観点から特徴付けを行う.そして,Dennettの「志向姿勢」の議論を踏まえつつも,新たに「関係としての同型性」という観点を加えることで,「ソーシャルな存在」を見出すための要件について整理する.また,その帰属傾向を検証するためのプラットホーム(Sociable PC)と,Sociable PCを用いた評価実験について述べる.実験結果から得られた知見をもとに「ソーシャルな存在」を帰属させるデザイン可能性について議論する.
著者
高橋 謙輔 栗原 聡 廣津 登志夫 菅原 俊治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.1851-1860, 2009-11-01
被引用文献数
2

本論文では,センサの位置情報についての事前知識を用いずに,反応情報のみからセンサ間の隣接関係の推定法を提案する.コンピュータ機器やセンサデバイスの発展とともに様々なセンサネットワークアプリケーションが提案されてきた.これらのアプリケーションにおいて人間の行動に基づいたトポロジー情報は,人間の行動を支援するために必須のものである.しかし,大量のセンサを使用するアプリケーションにとってこの情報を手動で設定し,維持するのは簡単でない.提案手法ではAnt Colony Optimization(ACO)を用いて精度の高いトポロジーの自動推定を行う.本手法では取得したセンサデータの信頼性を推定し,ACOに適用することによって高精度化を実現する.最後に,独立した三つの環境で収集したセンサデータを用いて提案手法を評価し,従来の手法と比べすべての環境について推定誤差率がかなり向上したことを示す.
著者
海老澤 栄一
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.58, pp.1-4, 2008-10-31

職場環境や住環境、学習環境などが、今大きく揺れ動いている。行動のガイドラインやモデルは、そう簡単には見つかりそうもない。だからといって手をこまねいて、傍観者気取りにはなれない。1つのヒントは先人たちの叡智を探り、理論構築の仕組みをたどることによって、何らかの解決方法がみつかるかもしれない、ということである。その期待の根拠は、大恐慌やオイルショック、直近では食べ物の毒物混入、サブプライムローン、果てまた鳥インフルエンザなど、世間を混乱に陥れる"地球規模"の事件は、その大半が天罰ではなく、人為的に引き起こされた事件であるということである。であれば、人間が被害者であり同時に加害者であることが明らかとなる。たとえ"犯人捜し"が困難をきわめ、糸の絡まりを1つずつほぐしていく作業が想像を絶するものであっても、社会を構成するヒト一人ひとりが何らのかかわりをもちガイアの舞台で固有の役割を演ずることにより、暗闇の向こうに明かりを灯す-探すのではなく-可能性を探ることが本報告の狙いである。
著者
上田 洋 村上 晴美 辰巳 昭治
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.144-156, 2010 (Released:2010-01-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

When users find information about people from the results of Web people searches, they often need to browse many obtained Web pages and check much unnecessary information. This task is time-consuming and complicates the understanding of the designated people. We investigate a method that integrates the useful information obtained from Web pages and displays them to understand people. We focus on curriculum vitae, which are widely used for understanding people. We propose a method that extracts event sentences from Web pages and displays them like a curriculum vita. The event sentence includes both time and events related to a person. Our method is based on the following: (1) extracting event sentences using heuristics and filtering them, (2) judging whether event sentences are related to a designated person by mainly using the patterns of HTML tags, (3) classifying these sentences to categories by SVM, and (4) clustering event sentences including both identical times and events. Experimental results revealed the usefulness of our proposed method.
著者
月田 潔
出版者
日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.31-34, 1964-01-25

The method described for the estimation of squalene involves chromatographic separation of the dehydrogenated reaction products of squalene with N-bromosuccinimide into several parts of DS 1〜6 (adsorbent : lime, developer of chromatograms : 10〜20% acetone in hexane), followed by spectrophotometric determination of DS 4 at 395 mμ. This method would be effective particularly for estimating squalene of natural source in the presence of other unsaturated polyenes. The configurations of DS l, 2 and 3 were assigned tentatively to be all-trans-, 10 or 14-monocis-hexamethyltetracosaundecaene and all-trans-hexamethyltetracosanonaene respectively.
著者
吉崎 正憲 上清 直隆 瀬古 弘 高山 大 楠 研一 つくば域降雨観測実験グループ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.19-33, 1998-01-31
被引用文献数
5

1995年8月10日に関東平野で発生した雷雨について, 総観(1000km)・関東(100km)・雷雨(10km)の3つのスケールから, アメダス, 気象台や地方自治体の自記紙, 高層観測, ドップラーレーダーなどのデータを用いて調べた. 総観スケールの寒冷前線が関東地方を通る時に発生したので, 解析対象の雷雨は界雷型であった. しかし, この雷雨の発生や発達には, 総観スケールだけではなく関東スケールの風系も関与した. 関東平野の地上付近には3つの風系(非常に高温の南寄りの風I, 高温の北西寄りの風II, 低温の北東寄りの風III), およびその間には温度や風の不連続なシアラインが見られた. 雷雨は3つのシアラインが交差する付近で発生して, 風系IIIの中で発達・成熟した. それぞれの風系の気塊は温度・湿度・相当温位がほぼ一様でミニ気団的な特性を持っていた. 雷雨の最盛期には, 激しい降水による強い下降流とそれによる地上付近の顕著な外出流の雷雨スケールの流れが見られ, またそうした流れによってアーク状の雲が発生した. 風系IIIの寒気と北東風の生成について定量的な考察を行った. 寒気は風系IIIにあった別の雷雨の降水の蒸発の冷却効果などによって作られたものであり, 北東風は雷雨から吹き出すガストであったと結論された.
著者
田村 朝子 加藤哲子 加藤哲子 鈴木 一憲 南 江美子 佐々木 舞 木下 伊規子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.403-409, 2003-11-20
参考文献数
20
被引用文献数
3

「煮物」は,「煮くずれ」が生じやすく,難しい調理操作の一つとされている。特に大量調理では,家庭などの少量調理に比べて煮くずれが生じやすい。本研究では,大量調理で煮物を作る場合の煮崩れ防止の調味加工前の材料(ジャガイモ)に,した処理の調理条件を検討した。蒸す,揚げる,炒める,ゆでるの4種類を行った。煮くずれは,ジャガイモを取り除いた後の煮汁中に残った残渣量,ジャガイモの破断強度,色差,組織観察,官能評価で総合的に比較した。その結果,「揚げる」処理を行ったものが最も煮くずれ量が少なかった。これは素揚げにより,いもの表面が脱水され,表面が硬くなって,内部組織がくずれにくい状態になったものと考えられた。以上のことから,ジャガイモの煮物の煮くずれ防止には,揚げる処理を用いる方法が有効であると考えられる。
著者
真道 公雄
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.127-132, 1981

誘電体に一定の直流電圧を印加しながら加熱または冷却すると電流が流れる. これを熱刺激分極電流 (TSPC) と名付け, 誘電体の分子運動に関する情報を与える. 十分に熱処理した無配向のポリエチレンテレフタラートフィルムに直流の高電圧を印加しながら加熱すると, 初めはプラス方向の電流が流れるが, 適度な高温で電流はマイナス方向に流れ, 更に高温でプラス方向に流れる. この試料に高温から同じ電圧を印加したまま冷やしてゆくと, プラス方向の電流が流れるが, 低温から再び温めると電流はマイナス方向に流れる. この電流は高温での直流伝導電流の値が優勢になると隠ぺいされる. 熱刺激分極電流の方向が温度によって変化するのは, ポリマーの極々な分子運動の緩和による変位分極が温度の逆数に比例し, 冷却時にはその分極が増加するが昇温時には減少することで説明できる.
著者
真道 公雄
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.127-132, 1981

誘電体に一定の直流電圧を印加しながら加熱または冷却すると電流が流れる. これを熱刺激分極電流 (TSPC) と名付け, 誘電体の分子運動に関する情報を与える. 十分に熱処理した無配向のポリエチレンテレフタラートフィルムに直流の高電圧を印加しながら加熱すると, 初めはプラス方向の電流が流れるが, 適度な高温で電流はマイナス方向に流れ, 更に高温でプラス方向に流れる. この試料に高温から同じ電圧を印加したまま冷やしてゆくと, プラス方向の電流が流れるが, 低温から再び温めると電流はマイナス方向に流れる. この電流は高温での直流伝導電流の値が優勢になると隠ぺいされる. 熱刺激分極電流の方向が温度によって変化するのは, ポリマーの極々な分子運動の緩和による変位分極が温度の逆数に比例し, 冷却時にはその分極が増加するが昇温時には減少することで説明できる.