著者
野口 和人 黄瀬 浩一 岩村 雅一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1135-1143, 2009-08-01
被引用文献数
5

局所特徴量を用いた特定物体認識において,認識率,処理時間,メモリ量について良いバランスを実現することは重要な問題である.局所特徴量は高い識別性をもつことから,高い認識率を実現することは困難ではないものの,その前提として長い処理時間や大きなメモリ量が要求されるため,大規模化の障害となっている.本論文では,認識率にあまり影響を及ぼすことなく,処理時間やメモリ量を削減する手法について述べる.処理時間の削減については,近似最近傍探索が有効であることを述べるとともに,従来法であるANNと比べて,ハッシュを用いた,より認識に有効な手法を提案する.メモリ量については,局所特徴量を表す特徴ベクトルに対してスカラ量子化を適用することにより,簡単に削減可能であることを示す.10万画像を用いた認識実験の結果,各次元の表現に用いるビット数を16ビットから2ビットに減少させても認識率に影響をほとんど及ぼさないこと,提案手法によって,認識率98.1%,処理時間119.7msを実現可能であることが分かった.また,1万画像を用いたANNとの比較では,同程度の認識率を実現するための処理時間,メモリ量が,それぞれ1/4,1/3であることも確認した.
著者
武富 貴史 佐藤 智和 横矢 直和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1440-1451, 2009-08-01
被引用文献数
15

拡張現実感において,現実環境と仮想環境の幾何学的な位置合せを実現するためには,カメラの位置・姿勢を推定する必要があり,現在までに様々なカメラ位置・姿勢推定手法が提案されている.中でも,ランドマークデータベースを用いたカメラ位置・姿勢推定手法は,屋内外を問わず利用でき,広域な環境を対象とした場合にもカメラ位置・姿勢推定の誤差が累積しないという特長をもつ.しかし,従来手法ではデータベース中のランドマークと入力画像上の自然特徴点との対応付け処理に多くの計算コストを必要とするため,実時間でのカメラ位置・姿勢の推定が困難であるという問題がある.そこで,本論文では連続フレーム間でのランドマークの追跡とランドマークへの優先度情報の付加により,対応付け処理において用いられる対応点候補数を削減することで,実時間でのカメラ位置・姿勢推定処理を実現する手法を提案する.実験では,従来手法との比較によって計算コストの削減効果を検証する.また,実時間処理可能な試作システムを用いた複数のアプリケーションへの応用例を紹介し,提案手法の有効性を示す.
著者
後藤 真孝 伊藤 克亘 速水 悟
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.2330-2340, 2000-11-25
被引用文献数
29

本論文では, 代表的ないいよどみ現象である有声休止(音節の引き延ばしも含む)を自動的に検出する手法を提案する.有声休止は音声対話において発語権の保持等の大切な役割を果たしており, その検出は音声対話システムを実現する上で重要である.従来, サブワード単位に基づく連続音声認識やワードスポッティングの枠組みで有声休止に対処する研究事例はあったが, いいよどみ現象として個々に検出しておらず, その役割を把握して適切に扱うことはできなかった.本手法は, 有声休止中は調音器官の変化が小さいことに着目し, 音韻的に変化が少ない持続した有声音(有声休止音)を検出する.その際, ボトムアップな信号処理によって, 有声休止音がもつ二つの音響的特徴(基本周波数の変動が小さくスペクトル包絡の変形が小さい)を検出することで, トップダウン情報を使わない言語非依存な検出を可能とする.本手法をリアルタイムに実行するシステムを実装し, 有声休止箇所のマーク付け作業を施した日本語の音声対話コーパスを用意して, 評価実験を行った.その結果, 30名の話者の自然発話に対し, F値0.726の精度で有声休止を検出できることが確認された.
著者
井関 健太 矢口 勇一 岡 隆一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.328, pp.101-108, 2008-11-20

本報告は,任意の対画像のピクセル最適対応を与える2次元連続DPを用い,少ない枚数の画像で精度のよい3次元形状が復元できることを示す.従来法が対象物体から連続的に観測した面像列における特徴点の対応系列を利用するのに対して,提案手法は画像集合の1枚の画像と任意の他の画像とのすべてのピクセル対応を利用する.ピクセル対応点が稠密に利用できるため,因子分解法によって3次元形状を復元する際,少数枚の画像から精密な形状復元ができる.ピクセル対応関係からメッシュ構造が得られる事を利用し,ドロネー三角網を定義する事なく密なテクスチャマッピングを施すことができる.これらのことを実験で示すとともに,従来法の典型であるKLT,SIFT+因子分解法を同一画像集合に適用し,比較実験も行った.これらの実験で提案手法が従来法より精密な3次元形状復元を行うことが分かった.
著者
渡部 修 福島 邦彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.95, no.598, pp.235-242, 1996-03-18

視覚系によって外界の構造を推定するときには, オクルージョンという問題が存在する. 両眼視では, オクルージョンによって, 一方の眼からは見えている領域が, もう一方の眼からは遮蔽によって見えなくなるという状況が起こりうる. このような両眼非対応領域上の点は, 偽対応しか生成しない. 心理物理学的知見からは, オクルージョンの処理は初期視覚の段階で行われていることが示唆されている. 本稿では, オクルージョンの存在を考慮した, 視差推定アルゴリズムを提案する. 本稿で提案するアルゴリズムは, 対応点問題を解く最も基本的なアルゴリズムである, Marr-Poggioの第1アルゴリズムを拡張したものである. このアルゴリズムは, オクルージョンが生じる幾何学的性質を考慮し, 両眼非対応領域のような対応が与えられない領域の視差推定も行うことができる.
著者
林 行雄 上林 卓彦 真下 節 松田 直之 服部 裕一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

脳死状態は心臓が強い交感神経緊張状態にさらされた後中枢神経の支配が破綻した状態という観点に立ち、以下の研究を行った。(1)中枢神経による不整脈制御周術期不整脈のモデルであるハロセン-エピネフリン不整脈を用いて不整脈発生における中枢神経の役割を検討した。副交感神経の情報伝達物質であるアセチルコリンが不整脈抑制に関与し心臓のアセチルコリン受容体、PTX感受性Gタンパク、protein kinaseAを介して、最終的には心臓のATP感受性Kチャンネルを開口させ、抗不整脈作用をもたらすことを示した。また脳内のイミダゾリン受容体のタイプ1がこの制御に深く関与していることも明らかとなった。脳死による中枢神経の廃絶に伴う副交感神経機能の廃絶が脳死状態での不整脈制御の破綻の一因の可能性が示唆された。(2)脳死における揮発性麻酔薬の心筋感作作用Pratschkeらの方法(Transplantation 67:343-8,1999)に基づいてラット脳死モデルを確立した。脳死状態ではハロセンに心筋感作作用が認められたが、イソフルレン、セボフルレンの心筋感作作用は弱かった。しかし麻酔薬間の格差は縮まった。この結果は中枢神経機能が吸入麻酔薬の心筋感作作用に関与していることを示していると考えられる。(3)脳死に伴う心機能の変化ラット脳死モデルにより、コンダクタンスカテーテルを用いた心機能の評価を行った。脳死に伴い、血圧の低下は脳死後5-6時間を要するが、脳死導入後2,3時間でEjection Fractionの低下が認められる。っまり、脳死後の早期に現れるEjection Fractionの低下を抑制することで脳死後の心機能の維持につながると思われた。ATP感受性Kチャンネルの開口薬であるニコランジルはいわゆるpreconditioning作用で心筋保護に働くことが知られているが、これを脳死前から持続投与することでEjection Fractionの低下に至る時間を延長し、結果脳死後6時間での生存率の改善が見られた。またこのニコランジルの作用はミトコンドリアATP感受性Kチャンネル阻害薬で消失した。脳死による心機能の破綻にミトコンドリアATP感受性Kチャンネルが関与していると思われた。
著者
川口 喜三男 呉敬軍 和田 幸一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.48, pp.119-126, 1993-05-28

一定の面積の自動倉庫を十分利用するためにより多くの部品を保管し,かつ効率よい出荷作業が要求されている.それを実現するために,平面自動倉庫に置ける荷台の移動操作の最小歩数についての研究がなされている.本論文は,未だ解決されていない三つの空位を持つN×M(≧)平面自動倉庫において任意の位置にある荷台を自動倉庫の出口まで移動するのに要する最小歩数関数を決定する.又,M=2の場合の最小歩数関数は一般の場合の解においてM=2と置く事によっては解は得られないので,M=2の場合に対して最小歩数関数を別個に決定する.The minimum number of sliding operations (steps) for moving a palette in an automatic warehouse was considered. In this paper, we consider the function of the minimum number of steps for a palette at any position in the aotumatic warehouse of size N×M(M≧2) with three spaces to be moved to the exit of the automatic warehouse.
著者
平林 孝裕
出版者
関西学院大学
雑誌
関西学院大学キリスト教と文化研究 (ISSN:13454382)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.113-132, 2006

近代以降の日本において、キリスト教は教育の領域で大きな働きをなしてきた。海外から日本を訪れた宣教師や宣教団体は、キリスト教信仰を伝えて教会を建てると同時に、学校を設立した。このような歴史的背景により今日もしばしばミッションスクールと一般に呼称されるキリスト教主義学校は、独自の教育機関として日本の教育界で確かな地位を占めている。キリスト教主義学校の独自性を、どこに見定めるかという問は、慎重に答えられるべきであるけれども、その独自性は、キリスト教について教科教育(宗教科・聖書科やキリスト教科目)とチャペルアワーに代表される正課外諸活動として具体化されている。後者には、奉仕活動から音楽などの文化活動も含まれるが、その枢要な部分を占めるべきものは、やはり定例乃至特別の礼拝形式で行われる諸活動であろう。この目的のために、キリスト教主義では、とくにチャペルと呼ばれるキリスト教の礼拝堂が備えられる。チャペルには、通常の教室と異なったキリスト教的雰囲気が醸成されており、これが他の学校では体験できないキリスト教主義学校独特の環境を形成し、ここで学ぶ学生・生徒ほかにしばしば強い印象を与えている。
著者
山下 利之 高橋 雅博 酒井 秀昭 武田 利浩 市村 匠
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.105-112, 2000-04-15
被引用文献数
8

高度情報化社会の発展に伴い, コンピュータとのコミュニケーションにより, 長時間の仕事, 作業を進める機会がますます増えつつある.人間同士のコミュニケーションの場合, 自然言語によるverbal情報に, 表情や身振りによるnonverbal情報が加わり, 円滑なコミュニケーションが行われている.そこで, 人間とコンピュータとの円滑なコミュニケーションを促進するインタフェースとして, 本研究では顔に注目した.そして, 特定の状況において生じる感情を表している表情をファジィ推論によって選択するモデルを提唱した.眉と目の傾きに関する3条件と口の形の3条件の組合せによる9種類の顔を用いてファジィ推論モデルを構成した.本モデルを, コンピュータ画面上に入力された文章に表されている感情を表情で表現するシステムへ応用することを試みた.システムに関する質問紙調査の結果, ヒューマンインタフェースとしての顔表示の有効性が示された.
著者
ましこ ひでのリ
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告.IM, [情報メディア]
巻号頁・発行日
vol.97, no.89, pp.1-6, 1997-09-12

いわゆるワープロ機能における漢字論議をみていて痛感されるのは, コスト感覚を度外視しているのではないかとおもわれる前提-たとえば「第2水準漢字程度の字数は不可欠」といった-である. たとえば固有名詞におびただしくあらわれる特異な表記をともかく伝統どおりに再生産しなければという官公庁等のこだわりは, 時代錯誤的なアナログ・フェティシズムとはいえまいか. 先天性の全盲者のおおくがのりこえてしまっている「日本語表記には漢字は不可欠」というおもいこみ. これらの再検討をふまえない, モジ・セットの議論は, 一歩距離をおいたとき, 悲喜劇としかいいようがない. 梅棹忠夫氏のといた, ワープロ=かなタイプ論は, いまだに検討にあたいする.
著者
有本 卓
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.625-654, 2004-07-20
被引用文献数
7

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
宮崎 和光 木村 元 小林 重信
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.800-807, 1999-09-01
被引用文献数
42

1・1 工学の視点からみた強化学習 強化学習とは, 報酬という特別な人力を手がかりに環境に適応した行動決定戦略を追求する機械学習システムである. 強化学習の重要な特徴に, 1)報酬駆動型学習であること, 2)環境に対する先見的知識を前提としないこと, の2点がある. このことは, 「何をして欲しいか(what)」という目標を報酬に反映させるだけで, 「その実現方法(how to)」を学習システムに獲得させることを意味する. 強化学習システムは, 人間が考えた以上の解を発見する可能性がある. 加えて, 環境の一部が予め既知な場合には, 知識を組み込むことも可能である. この場合, 知識ベースが不完全であってもあるいは多少の誤りが含まれていても構わない. また, 強化学習は, ニューロやファジィなどの既存の手法との親和性が高い. さらに, 緩やかな環境変化には追従可能である. これらの理由から, 強化学習は工学的応用の観点から非常に魅力的な枠組と言える.