著者
堀田 進
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.267-274, 1998-12-15 (Released:2016-08-18)
参考文献数
49
被引用文献数
42 42

In August 1942 dengue fever broke out in Nagasaki, a port city located in the Kyushu District, Japan. It soon spread over other cities, recurring every summer until 1944. This was not only the first dengue epidemic in Japan proper but also was one of the most widespread dengue epidemics recorded in a temperate region, involving at least 200,000 typical cases. It was obvious that the principal vector was Aedes albopictus which distributes in the Main Islands of Japan, particularly south of 38-39°N. At that time an important factor promoted transmission of the infection. A number of water tanks had been set up for the purpose of extinguishing fires caused by bombardment during the war, and the tanks were occupied by innumerable mosquitoes. Large-scale application of insecticides was not then possible. Since the early work by Yamada (1917a, b), it had been believed that Ae. aegypti mosquitoes do not habit in Japan proper, excepting the Ryukyu and Ogasawara Islands. Contrarily, Oguri (1945) and Oguri and Kobayashi (1947,1948) reported that they found Ae. aegypti in the Ushibuka area of Kyushu (32°N) during September 1944 to May 1947. Several other investigators obtained similar survey data as those of Oguri and Kobayashi (1947,1948). The species, either adults or larvae, completely disappeared, however, from there after 1955. In another survey it was observed that, inside a cargo boat which plied between Japan and dengue-prevalent Southeast Asian countries, many Ae. aegypti were seen flying and also larvae were caught from small water deposits on the decks. It was thought that Ae. aegypti were transferred into Japan probably by boat, and that the mosquito settled in a particular area of Japan for several years. There was no definite evidence as to whether or not the imported Ae. aegypti had some role in the 1942-1944 Japanese dengue epidemics. However, serious precautions must be taken against the possible danger that vectors of infectious diseases may be introduced into an originally non-endemic area. Biological and epidemiological aspects relative to these problems are discussed.
著者
上野 行一
出版者
日本・美術による学び学会
雑誌
美術による学び (ISSN:24356573)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.1-15, 2023-09-25 (Released:2023-09-27)

2021年、中教審は「令和の日本型学校教育」の構築に関する答申において、STEAMのAを広い範囲(Liberal Arts)と定義した。筆者は「芸術統合学習としてのSTEAM教育の考察(1)」*において、この定義はSTEAMのAをArts(芸術)と捉え、芸術の創造性や身体性、楽しさ等を重視した欧米を中心とする21世紀型教育の新しい枠組み、芸術統合学習としての性格を併せ持つSTEAM教育の動向とは異なるものであること、およびその問題点を指摘した。 このような重大な決定はどのような議論を通してなされたのだろうか。本稿では答申までの中教審議事録におけるSTEAMのAに関する議論を精査し、その定義の成立過程を明らかにした。本稿はSTEAM教育の教育課程の編成に示唆を与えるものであり、「芸術統合学習としてのSTEAM教育の考察(1)」を補完する資料として位置付けられる。 *上野行一「芸術統合学習としてのSTEAM教育の考察(1)―米国におけるSTEAM教育政策の見地から―」、日本・美術による学び学会『美術による学び』3巻4号、2022
著者
久保 健一郎
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.4-9, 2020 (Released:2020-06-25)
参考文献数
17

【要旨】環境要因が神経発達症のリスクを高めるメカニズムとして、母体の免疫活性化が注目されている。最近、動物モデルを用いた研究で、母体の免疫活性化の結果、サイトカインの一種であるIL-17a が上昇してマウスの大脳皮質に構造変化を生じる知見が報告されて注目を集めた。さらに、ごく最近、成体の動物モデルの脳へのIL-17a の直接投与が自閉スペクトラム症様行動への治療効果を持つという知見が発表されて反響を呼んでいる。一方で、臨床的に神経発達症のリスクを高める環境要因として筆者らが注目しているのは、在胎28週未満の超早産での出生である。超早産児において神経発達症のリスクが高まる要因として、虚血性の脳障害が想定されている。虚血性の脳障害が発達段階の脳に与える影響を明らかにするため、筆者らは、マウスにおける胎児期虚血モデルマウスを作成して脳への影響を解析した。すると、胎児期虚血によって、神経細胞の移動が遅れ、大脳皮質の白質にとどまる神経細胞が増加した。このモデルマウスには、成体になった後に認知機能障害が生じたが、その認知機能障害は前頭葉の機能低下によって生じること、また前頭葉の表層に存在する神経細胞の活性化によって認知機能障害が改善する可能性があることが示された。これらの動物モデルを用いた研究において得られた新たな知見が、いずれ人における神経発達症等の病態理解や新規治療法の開発に結びつくことが期待される。

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著者
小林航太著
出版者
KADOKAWA
巻号頁・発行日
2022
著者
山原 美奈 河合 昌孝 大場 広輔
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.157-160, 2005-04-01 (Released:2008-05-22)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

コウヤマキのアーバスキュラー菌根の感染形態を明らかにするために,短根の切片を光学顕微鏡で観察した。その結果,宿主の細胞から細胞へと直接伸長する菌糸とコイル状樹枝状体,嚢状体が認められ,Paris-typeの感染形態であることが判明した。比較観察したスギとヒノキの菌根は,それぞれParis-typeとArum-typeであった。
著者
竹内 規彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.39-50, 2023-09-20 (Released:2023-09-30)
参考文献数
50

本稿では,人的資本を扱う戦略的人的資源管理(SHRM)研究の文献レビューから,既存研究の課題を整理するとともに今後の研究方向性について議論する.具体的には,株主価値向上モデルに基づく従来のSHRM研究において,人的資本の議論がより狭義の「認知的KSAOs」に限定されている点を明らかにした.さらに,経済的,社会的,環境的側面での価値向上を重視する持続可能性パラダイム下では,「非認知的KSAOs」を含む新たな人的資本の構成要素にも着目することや,既存の認知的KSAOsとの相互作用が重要となることを提起する.
著者
やまだ ようこ
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.21-42, 2008 (Released:2020-07-06)
被引用文献数
1

質的研究における「対話的モデル生成法(DMPM)」の基礎作業の一環として,次の観点から理論的検討を行った。(1) バフチンの対話原理から 4 つの革新的概念を整理し,特に「対話と差異」「多声性とテクスト」概念と関連させて検討した。(2) バフチンの対話原理をさらに発展させ,筆者の「多声テクスト間の生成的対話」概念を提示した。特に現代思想における「差異」を「生成」に変換する議論をもとに,ドゥルーズの「生成」概念と筆者の「両行 りょうこう」概念,デリダの「差延」概念と筆者の「はなれる」概念を関連づけて考察した。さらに,「多声テクスト間の対話」に関して,クリステヴァの「間テクスト性」「ポリローグ」概念とコンピュータ科学の「ハイパーテクスト」概念をむすびつけた。(3) 全体の議論のもとになる世界観と方法論を 3 つのモデル「ツリーモデル」「リニアモデル」「ネットワークモデル」によって提示し,「多声テクスト間の生成的対話」概念を,ネットワークモデルに位置づけた。
著者
中村 祐子 奥田 博之 後藤 由佳 勅使川原 早苗
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.344-354, 2019 (Released:2020-03-06)
参考文献数
22

更年期障害の治療において,更年期女性を「証」に基づき個別的総合評価を行い,治療薬を選択する漢方治療は有用である。中でもホルモン補充療法(hormon replacement therapy 以下HRT)禁忌,または HRT を希望しない場合はその有用性が高いと考える。今回我々は漢方的指標を用いて証を判断し駆瘀血剤に抑肝散加陳皮半夏を併用し有効だった症例を経験したので報告する。
著者
米道 宏子 伊藤 麻衣 阿部 啓子 高橋 有希 中里 弥生 上遠野 雅美 平野 加奈子 阪本 靖介 福田 晃也 笠原 群生
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Supplement, pp.s75, 2021 (Released:2022-05-12)

チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下CLS)とは、医療現場において心理社会的サポートを提供する専門職である。アメリカ小児学会はChild Life Programの必要性を明確に提言している。今回、急性肝不全症例の患者サポートに関して必要性・重要性をCLSの視点から報告する。当院へ紹介される小児急性肝不全の患児は転院後にICU管理となる重症症例がほとんどである。通常の移植患者と異なり小児劇症肝炎症例は鎮静管理下・人工呼吸・血漿交換治療を継続し、治療によって自己肝が回復しない場合は緊急肝移植手術が必要となる。そのため移植術前に患児への十分な説明が行えず、患児の理解や受容が欠けた状況の中で患児は術後に覚醒するため、医療的トラウマのリスクが高まる。これらの要因が、長期管理における患児の病識の欠落、内服コンプライアンスの低下の原因となると考えられる。当院の急性肝不全患者に対し、CLSは主に①ティーチング、②プリパレーション/ディストラクション、③治癒的遊び、④復学支援を行う役割を担い、病状や手術への理解促進・医療環境への適応・治療に対する患児の協力・ご両親の治療への理解・積極的介入を引き出すことに成功している。小児急性肝不全以外にも緊急で移植を行わなければならない状況は多い。しかし日本ではCLSの数や認知度が不十分な為、今後、患児と家族へのサービスの影響や効果を識別する研究を行いCLSの重要性を啓発してゆく必要がある。
著者
田口 幸洋 広渡 文利 吉川 謙造
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
鉱山地質 (ISSN:00265209)
巻号頁・発行日
vol.26, no.138, pp.263-271, 1976-10-30 (Released:2009-12-14)
参考文献数
15

The Fuke mine, situated at about 10 km north of Okuchi city in Kagoshima Prefecture, is one of the gold-silver ore deposits of the epithermal vein type in the Green-tuff region. The ore deposit is considered to be an intermediate type between the gold-silver vein and the base metal vein.The high grade ore in the mine is named "Tozi-kin" in which can be visually recognized the part where fine-grained golds are concentrated. As for the electrum in this ore, mode of occurrence and chemical composition have been investigated by a microscope and EPMA. The results are as follows : 1. The Tozi-kin ore often shows a characteristic banded arrangement from the wall rock to the inner of the ore; Fe-Mg chlorite, drusy quartz with pyrite and hematite, fine-grained quartz with banded sulfides and electrum, and green clay mainly composed of chlorite-saponite mixed-layer.2. Paragenetic sequence of vein minerals may be divided into four stages; First stage: Drusy quartz accompanied by pyrite and hematite. Second stage: Fine-grained quartz characterized by sulfides and electrum. Third stage: Altered minerals. Fourth stage: Barren quartz associated with calcite. 3. Observed ore minerals are electrum, galena, sphalerite, chalcopyrite, pyrite, hematite, hessite, and an unkown Ag-Au telluride.4. Electrum precipitated after the precipitation of sulfides in the second stage.5. The electrum filling intergranular cavities of quartz is irregular and angular in shape, whereas that in sulfides varies from granular to cylindrical, and often amoebic.6. The grain size of electrum is generally less than 50 microns in diameter, but it attains 200 microns in some cases.7. The chemical composition of electrum from the Fuke-honpi vein shows a very little fluctuation among grains as well as in a grain, with an average chemical composition Ag 19.1 wt.%, Au 80.6 wt.%.Some of these properties of electrum such as the homogenity of composition and the relatively coarse grains, are considerably different from those of electrum in the Kuroko ore.
著者
三輪 真理 辻村 真由子 鈴木 育子 石垣 和子 山本 則子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.84-92, 2009-04-10 (Released:2016-08-25)
参考文献数
10

摘便終了後の便失禁は在宅療養者と家族の大きな負担である. 本研究は, 摘便後の便失禁を防ぐ方法として実践家が用いる技術を明文化し, その有効性を実証的に検討した. 便失禁を予防する技術を看護師 4名 ・ 家族介護者 1名から聞き取ってまとめ, 訪問看護師 8名にこのまとめに基づいて摘便を実施してもらい, 実践からデータ収集して検討した. 12名の療養者への計 68摘便のデータを得た. ①まとめに基づいた摘便の実施により便失禁は減少しなかった. ② 「粘液が出る」 という摘便終了の目安がみられた摘便では, みられなかったときよりも便失禁が有意に少なかった. ③ 「粘液が出る」 は浣腸を実施した場合にのみ発生した. ④ 「腸がおりる ・ とじる」 という目安がみられた摘便では, 便失禁が少ない傾向がみられた. 浣腸をする場合, 粘液が出るまで摘便を実施することが, 便失禁予防に役立つ可能性がある. 「腸がおりる ・ とじる」 という目安はさらに検討する必要がある.