著者
小沼 守 近藤 広孝 石川 愛 小野 貞治 上木 万里子 石田 智子 渋谷 久 佐藤 常男
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.717-719, 2009-09-20 (Released:2016-09-03)
参考文献数
6

6歳齢,体重1.28kg,去勢雄の雑種ウサギ(Oryctolagus cuniculus)が,多飲多尿を主訴に来院した.飲水量は正常の約6倍の760ml/頭/日,尿量も正常の1.5倍の530ml/頭/日,尿比重は1.001と低比重尿が確認された.除外診断後,修正水制限試験により部分的中枢性尿崩症が疑われ,点鼻型合成バソプレシン誘導体による治療(1滴,24hr)を行ったところ,尿比重が中央値1.020,飲水量が中央値346ml/頭/日,尿量が中央値200ml/頭/日と改善した.よって本症例を部分的中枢性尿崩症と診断した.
著者
栗木 契 佐々木 一郎 吉田 満梨
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.111-119, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
19

2019年に設立された株式会社KINTO(以下,KINTO)は,トヨタ車およびレクサス車をサブスクリプションで提供するサービスを展開している。2022年12月には累積申込者数が55,000人に達し,その約4割を20~30代の若年層が占める。若者の車離れが指摘される国内の自動車市場において,KINTOは,人とクルマのどのような新しい関係を生み出しているのか。本稿では,トヨタ自動車がKINTOを設立した経緯,KINTOのサービスの特徴を確認した上で,それが若年層の自動車需要に対して,どのような便益を提供しているか。既存の代理店であるディーラーや,自動車保険を提供する企業,そしてトヨタ自動車などとも連携をしながら,どのように新たな価値を創出しているか,を議論する。
著者
米満 良平 西川 英彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.101-110, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
11

近年,顧客との共創を製品開発に活用する企業が増えている。しかし,製品化やプロジェクト運営の手間などから,一過性の取り組みに終わってしまうケースも多い。こうした中で,共創をブランドの提供価値の中心に掲げ,事業としても成長を続けているのがサッポロビール初のクラフトビールブランド「HOPPIN’ GARAGE」である。本ケースは,事業として共創に取り組んでいるだけでなく,顧客との共創に挑戦しながらも一度は自社コミュニティを終了し,再度新たに立ち上げるなど,試行錯誤の上に共創を続けてきた先進的なケースでもある。本稿では,どのような課題があり,ビジネスモデルを変更させてきたか,そのHOPPIN’ GARAGEの変遷を,1)自社顧客との共創,2)外部コミュニティとの共創,3)外部イノベーターとの共創,4)外部企業との共創,といった共創形態の変化に合わせて確認する。そこには,事業の状況や課題に合わせて,顧客との共創だけにとらわれず柔軟に共創相手を変えてく,HOPPIN’ GARAGEの巧みなマネジメントが見られる。その成長要因として,1)内部マネジメントの重要性,2)共創手法の最適化,3)共創体制の最適化という3点を提示する。
著者
王 珏
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.63-69, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
30

制御感とは,個人が望ましい結果を得る能力や望ましくない結果を避ける能力を持っていると自覚している心理的状態を指す。この概念は社会学者によって研究されてきたが,近年,消費者の制御感の影響に着目した研究が注目を集めている。しかし,当該領域全体を俯瞰するレビュー論文は未だ存在しない。そこで,本稿では,消費者制御感に関する既存研究を(1)制御感と補償的行動,(2)制御感と感情対処,(3)制御感と慈善行動,(4)消費者の制御欲という4つの研究潮流に分けて,概観する。そして,今後の研究課題として,(a)制御感の先行要因の探求,(b)制御感の低下による補償的行動の背後にある心理メカニズムの探求,(c)制御欲の調整効果の探究の3つの課題を提示する。
著者
芳賀 悠基
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.54-62, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
23

本稿は,マーケティング及び消費者行動の分野で注目を集める価格公平感(price fairness)ないし価格公平性知覚(price fairness perceptions)に着目したレビュー研究である。マーケティング分野の主要誌をターゲットとし,価格公平感の先行要因を中心にレビューを行った。このレビューは,Xia, Monroe, and Cox(2004)のフレームワークをベースとして実施することで,研究の傾向を掴むとともに,不足している分野を明らかにしている。また,消費者が価格公平感を知覚する状況を想定したゲームモデルなどを用いて,企業が実行する価格戦略の帰結(均衡,利益)を明らかにした研究についても簡単にまとめた。これらのレビューにより,価格公平感の先行要因には特定カテゴリの研究が多くを占める傾向があることや,その傾向には,時勢に合わせた変遷が見られることが明らかになった。この研究は,近年広がりを見せる消費者の個人情報を利用した価格差別や,パーソナライズド・プライシングに対する消費者の反応とそれらが企業にもたらす利益について貢献することを目的としている。
著者
富岡 美恵 来間 弘展 尾池 純太 三浦 祐介
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.59-64, 2017 (Released:2022-09-03)
参考文献数
11

スポーツ現場やリハビリテーションにおいて,運動後に起こる遅発性筋痛の回復を促進するために,マイクロカレント療法やストレッチングを行う.これらの治療が,運動後の筋にどのような影響を及ぼすかを検討した.健常成人30名に対し,30%MVCのダンベルにて肘関節の屈曲・伸展運動10回5セット行った.運動後に,MCRとセルフストレッチングを組み合わせて施行する群(MCR群),セルフストレッチングのみを施行する群(Stretch群),コントロール群(Control群)に分け治療介入を行った.運動負荷前・運動負荷直後・24時間後・48時間後・72時間後に,筋硬度・疼痛閾値・最大筋力を測定した.筋硬度は,MCR群では48時間後以降で24時間後と比較し優位な低下を認めた.疼痛閾値は,24時間後において全ての群で優位な低下を認め,MCR群とStretch群は72時間後において24時間後と比較して優位な上昇を認めた.マイクロカレント療法とセルフストレッチングの併用は筋硬度や疼痛閾値を早期に改善させ,遅発性筋痛に対し効果的であることが示された.
著者
水野 学 中川 充 石田 大典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.18-29, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
24

本研究の目的は,ハードウエア・スタートアップ企業(以下,HWSU)が創業前後に直面する「あいまいな問題」とその「解決行動」,ならびにその背景にある「支援」のあり方について,事例分析を通じて検討することである。HWSUは,開発しようとする製品やサービスの大まかな方向性を決める「機能デザイン」と,それを具現化させるための「技術デザイン」という2つの側面において,多くの「あいまいな問題」を抱えている。しかし,十分な経営資源や専門知識を有しないHWSUがそれに単独で対処することは難しく,適切な支援が必要となる。そこで本研究では,DMM.make AkibaというHWSU支援組織に焦点を当てる。この組織が提供する2つの支援は,HWSUの成長に貢献している。すなわちテックスタッフは,開発目標とロードマップの重要性を示唆することで,技術デザインに関する本質的な問題の発見に,そしてコミュニティマネージャーは会員と支援企業を1つのコミュニティとして活性化することで,機能デザインに関する重要な問題の再認識に寄与している。
著者
近藤 公彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.6-17, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
21

この論文は,北海道を代表する土産菓子メーカーである石屋製菓株式会社のケース研究である。同社の製品ブランド「白い恋人」は土産菓子ランキングで首位にあげられるほどの知名度を有し,そのブランド名を冠した「白い恋人パーク」をはじめ,種々のコラボ商品も展開されている。「面白い恋人」をめぐる吉本興業等との商標権侵害やコロナ禍での観光客の激減に伴う売上高の低下といった逆境を乗り越えて,2022年には中東ドバイへの進出を果たした。一方,石屋製菓は東京GINZA SIXへの出店に際して,白い恋人を扱わず,「ISHIYA」という企業ブランドを前面に掲げた。そして,白い恋人にせよ,ISHIYAにせよ,いずれも「北海道」という圧倒的な地域ブランドを背景にしている。本研究は,製品ブランドの白い恋人を中心に同社の歴史を記述し,その過程においてISHIYAという企業ブランド,そして北海道という地域ブランドがどのように相互作用しているのかをブランドの構成要素,ブランド・エクイティ,および経験価値のフレームワークの観点から多面的に検討し,ブランド研究への新たな理論的示唆を提示する。
著者
吉川 大志 金子 里可
出版者
日本支援工学理学療法学会
雑誌
支援工学理学療法学会誌 (ISSN:24366951)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.55-61, 2022-09-25 (Released:2023-09-25)
参考文献数
20

【目的】脳卒中片麻痺者2例に対する短下肢装具(ankle-foot orthosis:以下、AFO)装着の改善を目的とした工夫について報告する。【方法】症例1(右片麻痺者)は本人用AFO作製時にクイックリングを採用し、面ファスナーシールを足部外側に貼付したことで、リングにベルトを通しやすく、足部の下にベルトが挟まれないようにした。症例2(左片麻痺者)はAFOを床に立てて装着する方法で練習を行い、AFOベルトへの装着番号シールの貼付や手順書を提示し装着手順を視認できるようにした。【結果】症例1は本人用AFO作製後に装着時間が短縮し、AFOの履き易さや愛着が改善した。症例2はAFO自己装着動作を含めた短距離歩行が自立した。【結論】脳卒中片麻痺者に対するAFO装着に対して工夫を行った結果、自己装着の自立度や装着時間、履き易さが改善された。
著者
小山 正
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.237-243, 2023 (Released:2023-09-29)
参考文献数
20

初期の時間,位置や場所を表示する語の獲得は動作語の獲得との関連が指摘されてきた.そこには,子どもの日常生活における認知や遊びの発達との関連性が考えられるが,その点についての資料は少ない.本研究では,定型発達の子どもの初期の時間,位置や場所を示す語の獲得が進む2〜3歳の時期に注目し,家庭における認知・遊びの発達との関連性を検討した.研究協力者は,保育所に在園する子どもとその保護者で,保護者にマッカーサー乳幼児言語発達質問紙(CDI)と家庭での認知・遊びの発達に関する調査に縦断的に回答してもらった.生後23ヵ月時から36ヵ月時のCDI「語と文法」における動作語,時間,位置や場所を表示する表出語彙得点と家庭での認知・遊びの諸変数との相関分析の結果,時間,位置や場所を表す語の獲得は動作語の獲得や家庭での認知・遊びの発達における「人の行為の表象化」「物での構成遊び」や「空間理解」との関連が示唆された.
著者
高島 謙 押海 裕之
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.33-40, 2021 (Released:2022-05-03)
参考文献数
85
著者
江田 早苗 内藤 由香 平野 絵理香
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.143, pp.48-59, 2009 (Released:2017-04-07)
参考文献数
10
被引用文献数
1

韻律(プロソディー)情報は,円滑な日本語のコミュニケーションを図る上で重要な役割を持っており,日本語学習者の韻律情報知覚のストラテジーを明らかにすることは,今後の音声教育の発展に貢献すると考えられる。本稿では,イントネーションの統語機能の知覚に焦点を当て,日本語母語話者,中級,上級学習者を比較した聴覚実験の結果を報告する。実験調査の結果から,中級・上級学習者ともに,イントネーションの「区切り」による統語機能を,文音声の意味理解の手がかりとして,予想以上に利用しようとしていることがわかった。本研究で明らかになった日本語学習者の韻律情報に対する意識の高さを利用し,複雑な統語構造を持つ発話の理解を助けるストラテジーとして,日本語音声教育の場面に積極的に取り入れることを提言したい。
著者
岡田 知己 土屋 浩二 竹村 浩之 脇田 満 藍 智彦 三澤 成毅 田部 陽子 三井田 孝
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.243-247, 2023-04-25 (Released:2023-04-25)
参考文献数
24

等温核酸増幅法であるNicking Enzyme Amplification Reaction(NEAR)法を測定原理とする迅速SARS-CoV-2検査「ID NOW新型コロナウイルス2019」(ID NOW)の性能と臨床的有用性を検証した。2021年2月1日~8月25日の間に順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京)を受診した救急外来患者および緊急手術患者673例を対象とした。同一症例から同日に採取した鼻咽頭ぬぐい液検体を用いてID NOWとreal time reverse transcription-PCR(PCR)法による核酸増幅検査を行い,PCR法を対照法として評価した。PCR法では陽性36,陰性637,ID NOWでは陽性35,陰性638であった。PCR法による陽性36例中,ID NOW陽性は31例であり,PCR法による陰性637例中,ID NOW陰性は633例で,完全一致率は98.7%であった。PCR法を対照法としたID NOWの陽性一致率は86.1%,特異度は99.4%であった。偽陽性を4例認められたが原因は特定できなかった。陽性結果に対する繰り返し検査,整備された検査環境,および臨床検査部門によって許可されたものによる検査によって偽陽性を最小化することができる。ID NOWは,これらの対策を遵守して検査することでポイント・オブ・ケア・テストとして最適な性能を提供できる。
著者
Wenqi Ge Xiaotong Wang Yi Xie
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Electronics Express (ISSN:13492543)
巻号頁・発行日
vol.20, no.18, pp.20230321, 2023-09-25 (Released:2023-09-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1

Electromagnetic interference has always been an important assessment indicator for the inspection of power intelligent Unmanned Aerial Vehicles (UAVs). Therefore, it is necessary to carry out a structure optimization study to improve the UAV’s anti-electromagnetic interference capability. This paper analyses the flight stability of the UAV at different heights under the strong magnetic environment of the dry-type transformer, and carries out structural optimisation of the rotary-wing UAV design against the standard non-magnetic environment. After simulation and comparison, the UAV’s anti-electromagnetic interference capability is significantly enhanced after structural optimisation. The research results of this paper can further expand the application scope of inspection UAVs and provide a strong technical guarantee for promoting the development of intelligent and automated power inspection.
著者
湯浅 俊彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.51-78, 2004-03-20 (Released:2020-03-31)
著者
大橋 英寿 やまだ ようこ
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.6-15, 2005 (Released:2020-07-05)

質的心理学を開拓してきた,世代,専門,性を異にする二人の研究者が,自分自身の長年の研究の「来し方」をふまえて,今後の質的心理学の「行方」,研究の方向性や問題点について対談した。おもな対談内容は,以下のようであった。 1)複雑多岐の要因が連関するフィールドワークと質的研究との深い関係性。2)質的心理学の理論的・方法的位置づけ を明確にし,発表の場をつくっていく必要性。3)研究者だけではなく相手にとっても重要なテーマを研究することと相手の琴線にふれるインタビューを行うための事例の積重ね。4)イーミックな視点の重要性と,他の視点との交差の必要性。5)対象者の主体性と事例の匿名性への疑問。6)旅日記的な事例記述に終わらず,一般化できる研究へ向かう方略。
著者
小濱 健吾 山岸 拓歩 橋詰 遼太 田山 聡 貝戸 清之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.22-00101, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
21

降雨に伴う斜面災害に対する道路利用者の安全を確保するために,適切な通行規制の実施が重要となる.本研究では,通行規制の基準となる雨量指標値の設定のために提案されている通行規制基準値の設定方法の枠組みの高度化を図る.具体的に,斜面災害の発生予測モデルとしてハザードモデルを提案し,災害の発生時点を正確に把握できない不可観測性に対処する.また,通行規制に用いるべき雨量指標を土中水分量と降雨強度の観点から検討する.さらに,同モデルに適合したリスク管理指標として「見逃し件数」と「規制時間」を採用し,規制基準値設定モデルを定式化する.最後に,実在する高速道路区間における斜面災害履歴,巡回点検履歴,降雨履歴を用いた適用事例を通して,本研究で提案する方法論の有用性を検証する.