著者
松木 明知
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.427-440, 2005 (Released:2005-09-28)

華岡青洲 (1760~1835) は江戸時代後期の医師であるが, 1804年に麻沸散を用いて, 世界で初めて全身麻酔を行ったことで広く知られている. しかし青洲自身記録や著書を書かなかったため, 多くのことが謎として未解決のまま残されている. 例えば彼の末娘の名前や生没年はまったくわからなかった.  著者は青洲と同じ麻沸散を作り, 動物実験を繰り返し, 麻沸散開発の経緯を明らかにした. また華岡家の菩提寺であった地蔵寺の過去帳を発見して, 青洲のこれまで知られていなかった兄弟, 子女の名前や没年を明らかにした. 青洲の思想 「内外合一活物窮理」 は現代の医学においても通用する.
著者
春田 佳代 山幡 朗子 篠田 かおる 伊藤 眞由美 春日井 邦夫 鈴村 初子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.5_71-5_75, 2011-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
17

浣腸による直腸損傷事例は,年間数例報告されている。一要因として,カテーテル挿入の長さが考えられるが,基礎看護技術の書籍に記載されている長さはさまざまである。そこで,下部消化管造影の画像を用いて,浣腸時の体位である左側臥位での成人の生体による肛門縁から直腸前壁までの長さを調査し,安全なカテーテル挿入の長さを検討した。 その結果,性別による肛門管直上部から直腸前壁までの長さに有意な差は認められないため,性別によりカテーテル挿入の長さを変える必要性はないと考えられた。また,年齢が高くなるにつれて,肛門管直上部から直腸前壁の長さが長くなる傾向がみられたが,年齢層別の最小値と最大値に大きな差がみられた。したがって,左側臥位でカテーテル挿入時に直腸前壁に損傷を与えない安全な長さは,測定最小値の2.9cmに解剖学的肛門管2.5cmを加えた5.4cm以下であり,基礎看護技術の書籍では5.0cm以下とすることが安全である,と考えられた。
著者
根本 重之
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.466-471, 1997-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4

周知のように1990年前後から酒類の小売機構に大きな変化が生じている。酒類メーカーとしては, その状況を的確に促えて適切な流通チャネル政策をとることが必要である。今回は, 酒類をはじめとする消費財の流通およびメーカーのチャネル戦略について, 専門的に研究を進めている著者に酒類小売機構の変化を見る基本的な視点や考え方をまとめていただいた。
著者
小池 はるか 吉田 俊和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.266-275, 2007 (Released:2007-07-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

本研究の主な目的は,共感性と特定の人物に対する対人的迷惑行為の認知との関連を検討することである。学生113名から質問紙((1) 共感性,(2) 顔見知りから受けた行為の迷惑認知,(3) 友人から受けた行為の迷惑認知,(4) 迷惑認知の評定の根拠)の回答を得た。その結果,共感性の低い者は,共感性の高い者に比べ,行為を迷惑と認知しやすいという仮説が部分的に支持された。また,状況依存的な共感性が高い者は,迷惑認知評定をする際に,自己の視点のみではなく,行為者の視点に立っている傾向が示された。さらに,友人からの行為より顔見知りからの行為を迷惑と認知したり,行為者が顔見知りの場合より友人の場合に状況依存的な共感性が高くなるといった結果が示され,行為者との関係性が対人的迷惑認知及び共感性に影響を与えていることが明らかとなった。
著者
星野 優太
出版者
公益財団法人 牧誠財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.45-58, 2019-01-10 (Released:2019-06-17)
参考文献数
10

本稿は,エブリイホーミイグループの中核企業であるエブリイ社にインタビューしてその特徴を分析し,成功要因と課題を提示したものである。エブリイホーミイグループは,食に関する総合プロデュースグループとして新しい企業価値を生み出すという壮大な理念のもとに様々な事業を展開してきた会社である。 エブリイホーミイグループの成功の要因は,11のグループ企業が一つのホールディングス体制のもとに多様な業態の理念と戦略を共有し,中核のスーパーについて次々と新たな店舗を開拓しつつ,新しいビジネスモデルを打ち出してきたことにある。しかも,それぞれの店舗は選択と集中により地域で一番を目指すという戦略,基幹店である緑町店などは産直売り場を思い切って3倍にするという圧倒的な集客力を実現する戦略等,ユニークな経営をおこなったところにその特徴がある。 とくにエブリイの優れた点を挙げると,一つは,独自のビジネス・マインドを持って経営をしていること,もう一つは,ミッションとメッセージを通じて有為な人財を育てていること,さらに付け加えれば,時流をいち早く読んで,その時代にタイミング良く新しいビジネスモデルに基づく店舗を開設していることにある。 そうしたエブリイのユニークな経営と新たなビジネスモデルの成功の要因について,実際の比率分析からその証拠を見出してみようというのが,本事例研究の狙いである。最後に,まとめとエブリイの今後の課題を提示している。
著者
川野 克典
出版者
公益財団法人 牧誠財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.61-76, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
10

コロナ禍の2020年に,アンケート及びインタビューにより,日本企業の管理会計・原価計算に関する実態調査を実施し,東京証券取引所上場企業155社からアンケートの回答を得た。 調査の結果,劇的な管理会計・原価計算の変化を見出すことはできなかったが,一部企業では,マーケティングデータの活用等,ICTを活用した管理会計・原価計算を開始していた。しかし,ICTを活用して管理会計・原価計算の変革を進めるためには,新しいフレームワークが必要である。そして,日本企業に対して,そのフレームワークを強制適用できるならば,日本企業の競争力を高めることに寄与できる。

1 0 0 0 OA 園芸療法

著者
田崎 史江
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.59-65, 2006 (Released:2008-01-18)
参考文献数
12
被引用文献数
5 2

私たちは植物のある環境に身を置くことで癒されたり喜びを感じる.都市の中の緑のオアシスである公園やオフィスや病院の中インテリアプランツが,ストレスにさらされている人間を癒すことは科学的に証明されてきている.また,植物の生長に積極的な活動で関わることで心身ともに健康な状態を維持することもできる.長年農業にたずさわっている高齢者や定年後に農業をはじめる高齢者が健康的な生活を楽しんでいる様子がよく見られる.人間は植物の恩恵を受け,生命を維持していることを経験的に知っているのである.園芸療法は植物を育て,使う活動を通して心身機能を良い状態に導いていく手法で,昔から作業療法の作業種目の1つとして用いられてきた.園芸活動は体を動かす健康的運動であるだけでなく,人の五感を刺激し,これにより楽しさや喜び,驚きを感じ,それは心を良い状態に保ち続けることになる.さらに,グループで作業することは会話を楽しみ,帰属感も責任感も養い,社会性を保つことにもつながっていく.高齢社会の現在,介護予防,認知症予防の方向からも園芸療法が取り組まれてきている.
著者
石橋 陽一
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.1110-1114, 2023 (Released:2023-09-15)
参考文献数
9
著者
久岡 加枝
出版者
国立民族学博物館
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-11-01

近年のロシアでは、アディゲ人をはじめとするコーカサス系諸民族の歌謡や舞踊が、若い世代の間で大衆的な人気を持つが、アディゲ人の歌謡や舞踊の担い手の活動を考察する本研究からは、ロシアにおけるマイノリティのアイデンティティと結びついた表演活動のあり方だけでなく、現代ロシアの若者文化の動向を明らかにすることが可能である。
著者
櫻井 文教 水口 裕之
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.24-30, 2023-01-25 (Released:2023-04-25)
参考文献数
24

がん細胞特異的に感染し、がん細胞を死滅させることで抗腫瘍効果を示す腫瘍溶解性ウイルスが、次世代の抗がん剤として大きな注目を集めている。2021年には、わが国においても腫瘍溶解性ヘルペスウイルスが承認(条件および期限付き承認)を受けた。一方で腫瘍溶解性ウイルスは、それ自体が自然免疫を活性化させるとともに、がん細胞よりDamage-associated molecular patterns(DAMPs)やがん抗原を放出させることで抗腫瘍免疫を活性化し、それが腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍効果に大きく寄与することが明らかとなってきた。また、腫瘍溶解性ウイルスと免疫チェックポイント阻害剤などのがん免疫療法との併用が、高い相乗効果を示すことも報告されている。本稿では、腫瘍溶解性ウイルスによる抗腫瘍免疫活性化とがん免疫療法との併用療法について紹介したい。
著者
水野 義隆 西村 園子 椛島 真一郎 鍋田 優 早川 文代 稲津 康弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00052, (Released:2023-09-19)

カット野菜の製造工程では喫食サイズにカットした野菜を次亜塩素酸ナトリウム水により殺菌することが多く,それが野菜の食味変化や褐変などの原因となることもある.一方,カット野菜の殺菌にはオゾン水も利用できる.本研究は,原体野菜のカットの際にスライサーに界面活性剤を含むオゾン水をかけ流す製造方法(以下,新製法)と,水を流しながら同様にカットし,その後,次亜塩素酸ナトリウム水溶液による浸漬処理を行う製造方法(以下,通常製法)の野菜の殺菌および品質に与える影響を比較した.菌数評価では,カットキャベツ,カットレタスおよびカット大根において,新製法区の一般細菌数および大腸菌群数は通常製法区と統計的に有意な差はみられなかった.成分分析では,カットキャベツおよびカット大根において,通常製法区のアスコルビン酸含有量が新製法区に比べ有意に低下していた.外観評価では,カットキャベツおよびカット大根において,通常製法区は変色しボリュームダウンしていたのに対して,新製法区では変色せずにボリューム感があった.官能評価では,カットキャベツにおいては通常製法区は甘味が弱くなり,カット大根においては通常製法区はシャキシャキ感と甘味が弱くなり,薬品臭,苦味および水っぽさが強くなったのに対して,新製法区では水洗いに近い食味であった.以上の結果より,新製法は通常製法と同等の菌数を示し,野菜本来の食味・外観を劣化させにくいことが判明した.さらに新製法は通常製法と比較すると浸漬処理工程を省略できることから,製造時間の短縮や使用水量の低減につながる技術として利用できるものと考えられる.