著者
押谷 一 松本 懿 深澤 史樹
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.99-114, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
4

北海道のニセコ町は、まちづくりの基本概念として「住むことが誇りに思えるまちづくり」を掲げ、情報公開と住民参加を原則とした「ニセコ町まちづくり基本条例」を制定し、「住民参加」による徹底したまちづくりを進めている。 本研究では、ニセコ町の道の駅「ニセコビュープラザ」を取り上げて、まちづくりの特徴や成功要因について整理した。さらに、地元経済界による中心市街地活性化に成功している富良野市のフラノマルシェの取り組みと対比させることにより、まちづくりの普遍的な課題を整理し、効果的なまちづくりのあり方について再評価を行う。
著者
塩﨑 大輔 橋本 雄一
出版者
北海道地理学会
雑誌
地理学論集 (ISSN:18822118)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.1-6, 2021-05-12 (Released:2021-05-21)
参考文献数
9

本研究はスキーリゾート開発が著しい北海道倶知安町のひらふ地区を対象とし,開発の経緯を施設建設によって概観した後,各施設に関する土砂災害の危険性を空間的に検討することで,スキーリゾート開発と災害リスクとの関係を明らかにした。 そのために建築確認申請計画概要書から作成したデータベースで開発を年代別に分析し,当該地区の土砂災害リスクを国土数値情報の災害関連情報とあわせて検討した。ひらふ地区の開発はバブル崩壊前後と2000 年代後半に拡大した。特に海外からの不動産投資が急増した2000 年代後半からの開発では,スキー場に近接した施設建設の適地が不足したことにより,バブル期の開発に比べ,その開発範囲は河川沿いの急傾斜地にきわめて近い場所まで広がっていた。ここには高級コンドミニアムなど比較的規模の大きい建築物が複数立地しており,近年の観光施設集積地の縁辺部における大型開発が,土砂災害の危険性を高めていた。これらの結果から,対象地域では好景気の時期に開発が進んでいることや,開発の時期が新しいほど土砂災害の危険性が高い場所で施設建設が行われていることが明らかになった。
著者
一場 香理 礒田 昭弘 野島 博 高崎 康夫
出版者
日本作物学会関東支部
雑誌
日本作物学会関東支部会報 5 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
pp.65-66, 1990-12-06 (Released:2017-08-24)

Eleusine属にはE. kigeziensis、E. tristachya等の多年生種とE. coracana(シコクビエ)、E. indica、E. multiflora等の一年生種がある。ここではシコクビエ9系統を出穂期以降、自然条件、自然日長・25/20℃、24h日長・25/20℃で栽培したときの生育と生存期間について報告する。
著者
藤井 紀行
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.5-14, 2008-02-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
34
被引用文献数
1

日本列島における高山帯は,本州中部以北の山岳に点々と隔離分布している.一般にこの高山帯に生育の中心を持つ植物のことを「高山植物」と呼んでいる.高山帯がハイマツ帯と呼ばれることもあるように,この植生帯ではハイマツ(マツ科)がマット状に広がったり,色とりどりのお花畑が広がったり,美しく雄大な景観を見ることができる.日本に分布する各高山植物の種レベルの分布を見ると,その多くが日本より北の高緯度地域にその分布の中心を持っており,日本の本州中部地域がその南限になっていることが多い.こうした分布パターンから,一般的に高山植物の起源は北方地域にあり,過去の寒冷な時期に北から日本列島へ侵入し,現在はそれらが遺存的に分布しているものと考えられている.しかしそうした仮説の検証を含め,いつ頃どのようにして侵入してきたのか,その分布変遷過程について具体的なことはまったく分かっていないのが現状である.そこで筆者はこれまで,こうした植物地理学的な課題を解明するために,主に葉緑体DNAをマーカーとした系統地理学的解析を進めてきた(Fujii et al. 1995, 1996, 1997, 1999, 2001, Fujii 2003, Senni et al. 2005,Fujii and Senni 2006).本稿ではそれらの解析を通して見えできた本州中部山岳の系統地理学的な重要性について言及する.過去に書いた総説的な和文諭文も参照していただきたい(藤井1997, 2000, 2001, 2002,植田・藤井2000).
著者
多田 直哉 大谷 隆一 柴田 昌宜 小林 智光
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.129-136, 2001-02-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

Fatigue tests were conducted at 1273K using smooth bar specimens of a nickel-based single crystal superalloy CMSX-10, and small cracks were observed on the surface of the specimens by means of microscope. It was clarified by the observation that fatigue fracture of CMSX-10 takes place as follows; (1) Oxide-layer was formed on the surface of the specimen. (2) A lot of small cracks of the size of about 100μm were initiated perpendicular to the stress axis on the surface of the oxide-layer. (3) Some of them grew and penetrated the oxide-layer to reach the base metal. Processes (1) to (3) were completed at the very early stage of fatigue life. (4) Growth of the cracks that reached the base metal brought about the final fracture. As the formation of oxide-layer on the surface of the specimen was considered to be a trigger of crack initiation, a fatigue test was also conducted with repeated removal of the oxide-layer by emery paper and diamond paste. In this test, no crack appeared on the surface of the specimen even at 20000 cycles when a lot of cracks were observed in the normal fatigue tests. This proves that removal of the oxide-layer retards the initiation of small cracks and extends the fatigue life.
著者
中本 敦 佐藤 亜希子 金城 和三 伊澤 雅子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.45-53, 2011-05-30 (Released:2018-01-01)
参考文献数
28
被引用文献数
2

沖縄島におけるオリイオオコウモリPteropus dasymallus inopinatusの個体数の長期モニタリング(2000年から実施)において、近年個体数の増加傾向が見られた。調査はルートセンサス法を用いて、沖縄島の都市部と森林部の2ヶ所で行った。都市部では2001年9月から2009年8月に、森林部では2004年と2008年の2年間調査を行った。両調査地ともにここ4〜8年間の間で個体数がおよそ3倍に増えていた。またこの目撃個体数の増加は全ての季節で見られた。これらの結果は、オリイオオコウモリの目撃数の増加が空間的な偏りの変化ではなく、沖縄島個体群自体の増大を意味するものであることを示す。沖縄島に接近した台風の数は2005年以降減少しているが、これは個体群の成長率の上昇のタイミングと一致していた。以上のことから沖縄島のオリイオオコウモリの個体群サイズは台風による攪乱頻度によって調節されている可能性があることが示唆された。今後、地球温暖化により台風の攪乱が不規則になると、本亜種の個体数変動が不安定になり、個体数増加による農業被害の拡大とともに地域個体群の絶滅が起こる可能性が高まることに注意する必要がある。
著者
佐伯 忠彦 暁 清文 山中 栄三 柳原 尚明
出版者
Japan Society for Equilibrium Research
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.428-433, 1988 (Released:2009-10-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Vestibular findings were studied in 27 patients with acoustic neurinoma. Four of them had experienced vertigo and/or dizziness at the onset of the disease, and 14 other patients had these complaints during the course. Vestibular symptoms were more prominent with middle-sized tumors which extended to the posterior cranial fossa than with those in the internal auditory canal. Although most acoustic neurinomas originate from the vestibular nerve, the incidence of vestibular symptoms is rather infrequent. This is probably due to a compensating mechanism of the central nervous system while the tumor grows slowly. Therefore, the growth rate of the tumor is considered to be most important for the concomitance of vestibular symptoms. The origin of the tumor was identified in 13 cases; in 3 it was from the inferior vestibular nerve and in 10 from the superior vestibular nerve. No significant difference in caloric test results could be seen between the tumors of different origins. The incidence of vestibular symptoms was more frequent when the tumor originated from the superior vestibular nerve than from the inferior vestibular nerve. The recover time required from the dysequilibrium after extirpation of the tumor depended on the degree of preoperative vestibular function.
著者
小牧 純爾
出版者
北陸心理学会
雑誌
心理学の諸領域 (ISSN:2186764X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.53, 2016 (Released:2023-07-07)
参考文献数
31
被引用文献数
1
著者
大野 美幸 野津 直子 金津 久美子
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.47-52, 2008 (Released:2019-08-03)
参考文献数
2

5 階西病棟は脳神経疾患の患者が7 割を占めている。多くは高次脳機能障害をきたし、点滴ルートや尿管、胃管カテーテルの自己抜去行為も頻繁に認め、安全のためミトンや抑制帯による抑制を行っている。しかし、抑制解除の評価が難しく、一度始めた抑制がなかなか外せない現状にある。そこで、抑制解除の要因を明らかにすることを目的に、看護師10 名に半構成的面接法を行い、そこから得たデータを質的帰納的に分析した。その結果、看護師が抑制を解除できると判断した要因として、3 つのカテゴリーと9 つのサブカテゴリーが抽出された。看護師は、【抑制解除につながる患者側の要因】として、《抜去に及ばない程度の理解力がある》《抜去しようとするしぐさがない》《看護師で補える程度のリスク状態》を見極めていた。また【抑制解除を促す看護師の介入】として、《抑制しない工夫》《他職種へのはたらきかけ》《ゆとり(業務のゆとり、看護師の経験からくるゆとり、目が届く)》を、さらに【抑制解除につながる看護師側の要因】として、《抑制への罪悪感》《家族への配慮》《抑制解除の成功体験》を挙げ、抑制解除につなげていることが明らかとなった。
著者
塩路 理恵子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.326-331, 2014-04-01 (Released:2017-08-01)

本稿では身体表現性障害のうち,普通神経質にかなりの部分が含まれる身体表現性自律神経機能不全,心気障害について入院・外来の症例を提示し,身体表現性障害の森田療法の実際について紹介した.森田はその成り立ちを「とらわれ」から理解し,注意と感覚の悪循環が働くことを指摘した。特に神経質性格を基盤とした身体表現性障害は森田療法のよい適応となってきた.身体の不調に対する不安,疾病に対する恐怖の裏に「仕事をやり遂げるために体調を万全にしておきたい」「健康でありたい」という「生の欲望」をみることも森田療法の重要な視点である.森田療法では身体的な不調や心気的な不安にとらわれ,悪循環によって増悪していくあり方を扱い,とらわれを離れ本来の望みである生活を豊かにしていくことを目指す.生活に注目すること自体が身体状況へのとらわれから焦点を外し,自然な心身のあり方を取り戻していくことでもある.