著者
Toshio Katsuki
出版者
The Japanese Society for Plant Systematics
雑誌
Acta Phytotaxonomica et Geobotanica (ISSN:13467565)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.119-126, 2018 (Released:2018-06-30)

A new species, Cerasus kumanoensis T. Katsuki (Rosaceae), sp. nov., is described from the southern Kii Peninsula, Japan. It is similar to C. jamasakura var. jamasakura and C. leveilleana because the corymbose inflorescences and extended peduncle are identical in these three taxa. However, C. kumanoensis is distinguished by several morphological and phenological characteristics, an earlier flowering period, narrowly ovate and smaller leaf blade (4–8 cm long, 1.8–3.6 cm wide) and glabrous petiole and pedicel.
著者
脇水 健次 西山 浩司 遠峰 菊郎 真木 太一 鈴木 義則 福田 矩彦
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 第21回(2008年度)水文・水資源学会総会・研究発表会
巻号頁・発行日
pp.9, 2008 (Released:2008-11-28)

地球温暖化の影響下では,極端な多雨か極端な少雨の発生頻度が増加すると言われている. 従来,わが国では,干ばつ(渇水)防止のために,度々,ヨウ化銀(AgI)やドライアイスを用いた人工降雨法が,実施されてきた.しかし,これらの方法では問題点が多く,雲内の多量の過冷却液体雲水を効率良く降水に変換できなかった.そこで,この問題を解決するために,1999年2月2日から「液体炭酸を用いた新人工降雨実験」を実施し,良い結果を得ている.しかし,これらの実験やシミュレーション結果から,どうしても「雲の厚さが2000m以上」必要であった.しかし,2007年と2008年の実験から,雲の厚さが,1000m程度の「非常に薄い冬季過冷却積雲」からも地上に降水をもたらすことにも成功したので,本稿では,最近の2例{実験A(2007年2月4日)と実験B(2008年1月17日)}の実験結果を報告する.
著者
小西 浩之 冨士栄 聡子 生嶋 清美 保坂 三継 中江 大
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.185-195, 2015-03-15 (Released:2015-03-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1

モニタリングポスト測定データの波高分布をもとに東京における福島原発事故の影響を調査した結果,原発から新宿まで到達した人工放射性核種の経時変化が明らかになった。2011年3月15日~16日の空間放射線量の急激な増加では気体状の多くの放射性核種が通過し,131Iなどいくつかの核種がわずかに乾性沈着した。3月21日~23日の降雨に伴って131I,134Cs及び137Csなどの核種が湿性沈着した。
著者
國松 淳和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.227-233, 2020 (Released:2020-04-01)
参考文献数
4

発熱 (fever) と高体温 (hyperthermia) は異なるものである. これは, 機能性高体温症の理解, ひいては不明熱患者から機能性高体温症を適切に診断するために核となる知識である. 機能性高体温症は本来, 古典的不明熱からは除外されていた. しかし現在本邦では, 予後不良ではない病態であっても, 症状苦痛から少しでも解放されたいという価値観が優勢となりつつあり, 機能性高体温症は比較的独立した問題となってきている. 機能性高体温症を診断するには, 慢性炎症を除外し, 全身性エリテマトーデス, Sjögren症候群, 特発性後天性全身性無汗症, 家族性地中海熱といった疾患を検討しつつ臨床的に判断する. 選択的セロトニン再取り込み阻害薬が奏効しやすい小児・思春期の高体温症と違い, 成人例では治療は困難を極める. 成人の場合の治療の基本骨格は, まず併存している器質的疾患を特定しそれを改善することに努める. そして続発する心身ストレスとしての高体温状態を改善すべく, 多因子に対して多元的にアプローチするのがよく, 心身医学的な介入はそれを構成するものとして重要である.
著者
川本 哲也 小塩 真司 阿部 晋吾 坪田 祐基 平島 太郎 伊藤 大幸 谷 伊織
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-122, 2015 (Released:2017-06-20)
参考文献数
73
被引用文献数
19

本研究の目的は,大規模社会調査のデータを横断的研究の観点から二次分析することによって,ビッグ・ファイブ・パーソナリティ特性に及ぼす年齢と性別の影響を検討することであった。分析対象者は4,588名(男性2,112名,女性2,476名)であり,平均年齢は53.5歳(SD=12.9,23–79歳)であった。分析の対象とされた尺度は,日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J;小塩・阿部・カトローニ,2012)であった。年齢と性別,それらの交互作用項を独立変数,ビッグ・ファイブの5つの側面を従属変数とした重回帰分析を行ったところ,次のような結果が得られた。協調性と勤勉性については年齢の線形的な効果が有意であり,年齢に伴って上昇する傾向が見られた。外向性と開放性については性別の効果のみ有意であり,男性よりも女性の外向性が高く,開放性は低かった。神経症傾向については年齢の線形的効果と性別との交互作用が有意であり,若い年齢では男性よりも女性の方が高い得点を示した。
著者
戸梶 亜紀彦
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.360-368, 2001-12-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
27
被引用文献数
10 10

This study deals with just a emotion of emotions. When we see good movies or wonderful landscapes, read heart-warming stories, our hearts are frequently moved. This phenomenon evokes fairly certain emotions. However, it has hardly been studied in psychology. Many researches by the author were reviewed in order to investigate and elucidate mechanisms of evoking emotional responses of “Kandoh (the state of being emotionally moved)”. On the basis of these researches, first, the various types of “Kandoh” are categorized, and secondly a comprehensive process model is proposed. The outlines of this model are as follows. It is suggested that event related knowledge and information are very important factors for an audience (that is spectators, listeners, viewers, readers, and so on) to become highly involved, and then high involvement states elicit psychological and physiological stress. Therefore, desirable developments of a story produce stress reduction or relaxation, and finally people evoke “Kandoh”. Based on these results, some characteristic aspects of our cognitive system and some significance of emotional responses of “Kandoh” are discussed.
著者
清水 勝 時田 元 越野 陽介 星山 直基 山田 昌夫 高橋 善弥太 西川 佳秋
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.690-694, 1989-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

アセトアミノフェン大量服用による急性肝不全はよく知られている.今回著者らは40歳,女性のアルコール常用者が,アセトアミノフェン4.8g(セデスAR錠60錠)をアルコールとともに服用し,急性肝不全で死亡した1例を経験した.剖検肝重量は750g,広汎性部位により亜広汎性肝細胞性壊死が存在し病理学的に急性肝萎縮と診断された.本例の服用アセトアミノフェン量は4.8gと比較的少量であるが,急性肝不全をきたした原因として,1)アルコール常用者であったこと,2)アセトアミノフェンがカフェインとの合剤で服用されておりその相互作用が考えられ文献的に考察した.アセトアミノフェンの使用にあたっては,予想以上に重篤な肝障害発生の危険もあり注意が必要である.
著者
大野 隆 西 洋
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.6-18, 2011-01-20 (Released:2017-04-25)

Recently, there are many papers using the framework of the Stock-Flow Consistent model (hereafter SFC) in the refereed journals. However, no studied has ever been attempted in Japan. While there is one textbook, a Japanese translation of Introduction to Post-Keynesian Economics, it explains the balance- sheet matrix and the transactions flow matrix only. Therefore, we endeavor to explain the intuitive framework of SFC, and give a way to construct this model in Japanese. One of the characteristics of the SFC model is the stock and flows are integrated into an analysis; all sectors and financial assets are included in the model so that there is no black box in the economic transactions in the accounting sense. In this paper, first, we survey the developments of the Kaleckian model and the Minskian model to consider the significance of the SFC model. SFC model plays an important role to integrate implications derived from these models. Second, we construct a simple SFC model based on Doss Santos and Zezza (2008), and find the following results from simulations. The SFC model can explain not only the wage-led growth regime but also the profit-led growth regime. In addition, this model can also explain the normal regime and puzzling regime that the Minskian model has presented so far. In many cases, these results depend on the values of various parameters. Thus, we show that the SFC model can generate various regimes concerning income distribution-growth regime and debt-growth regime.
著者
山ノ内 崇志
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2231, (Released:2023-09-08)
参考文献数
206

サトイモ科の浮遊植物ボタンウキクサは侵略的外来種として外来生物法の規制対象となっているが、琉球諸島には古い分布記録があり、外来性に疑いが持たれる。文献と標本記録に基づきボタンウキクサの外来性を再検討した結果、最も古い記録として、1854年にC. Wrightによって採集された標本と水田の普通種として記録した手稿が確認された。1950年代までの複数の研究者が、ボタンウキクサが沖縄島から八重山諸島にかけて分布し、水田やその周辺で在来水生植物と共に生育することを記録していた。1950年代以前は複数の研究者がボタンウキクサを在来種として扱っており、一方で外来種とした例はなかった。外来種とした最初の見解は1951年にE. Walkerらが標本のラベル上で示したものであり、1970年代以降に外来種とする見解が一般化したが、科学的な根拠を提示した例はなかった。園芸的な栽培・流通は1930年代に始まって1950年代に盛んになり、1970年代から日本本土での野生化が記録され始めていた。根拠が不十分であるにも関わらず外来種とされた理由として、1) 当時は未発表手稿など古い情報の取得が困難だったことと、2) アフリカ原産とする説など研究者の判断を偏らせるバイアスが存在した可能性が考えられた。以上のことから、琉球諸島に古くから分布していた系統のボタンウキクサを科学的根拠に基づいて外来種と見なすことはできず、最近の分子系統地理学的な知見を踏まえると自然分布の可能性を否定できないと考えられた。この系統は現在、生育地の縮小や、導入された系統との競争や交雑といったリスクにさらされている可能性がある。外来生物法による適切な取り扱いのためにも、分類学的な検討や識別法の確立、現状の把握が必要である。
著者
片倉 慶子 河上 友宏 渡辺 洋一 藤井 英二郎 上原 浩一
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.606-612, 2019-05-31 (Released:2019-07-27)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

現在日本に生育するイチョウは中国から伝来したものだが,日本各地に拡散された過程は明確でない。本研究では,樹齢が長く日本に伝来した当初に近い遺伝的特徴を維持していると考えられる各地のイチョウ巨木を対象とし,遺伝的変異の地域的特性から,日本におけるイチョウの伝播経路および伝播方法の推定を試みた。九州から本州東北部の胸高幹周8 m以上の巨木から葉を採取し,180個体199サンプルについて8つのマイクロサテライトマーカーを用いて解析を行った。解析の結果,8遺伝子座から8~21の対立遺伝子を検出し,142種類の遺伝子型が認識され,13種類の遺伝子型が70個体で共有されていた。遺伝子型を共有している個体はクローンであると考えられ,地理的に離れて分布している場合もあることから,日本におけるイチョウの伝播には種子だけでなく挿し木等の方法も用いられたと考えられる。遺伝的多様性を比較すると,遺伝子多様度(HE)は0.57-0.82,アレリックリッチネス(AR)は4.51-8.49を示し,どちらも他地域に比べ東日本で低い値を示したため,中国から西日本にイチョウが伝来し,その一部が東日本に運ばれたと考えられる。
著者
鈴野 弘子 豊田 美穂 石田 裕
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.376-381, 2008-03-30 (Released:2008-05-09)
参考文献数
11
被引用文献数
3

用途が拡大しているミネラルウォーターを, 調理に使用する際の取捨選択の基礎的知見を得ることを目的として, 硬度の異なる数種のミネラルウォーターを用いて昆布だし汁を調製し, そのミネラル成分とうま味成分の含有量を検討した。1) だし抽出時における昆布への水分吸収は, 硬水は軟水より低い傾向であった。ミネラルウォーターの pH は弱アルカリ性から中性であったが, 昆布だし汁は弱酸性になった。2) 昆布だし汁のミネラル含有量は, Na は抽出1時間から6時間にピークに達し, その後は平衡か若干減少する傾向にあった。K 含有量は, 抽出1時間で急激に上昇し, その後は微増傾向あるいはピークに達した後, 減少傾向であった。Ca 含有量は, 軟水の昆布だし汁では増加はわずかであった。また, 抽出時間が長くなってもその増加はほとんど認められなかった。一方, 硬水ではだし抽出1時間後には減少し, その後は平衡であった。すなわち, もともとミネラルウォーター中に含まれていた Ca が昆布に吸着したと考えられた。Mgも一度溶出され, その後再吸着されたといえる。3) 昆布だし汁のグルタミン酸ナトリウムの含有量は抽出時間が長くなると増加する傾向であった。しかし, これらの増加傾向に軟水, 硬水の違いは認められなかった。4) 昆布だし汁への硬水の利用は適さないと考えられ, さらにミネラルウォーターを調理に用いる際は, 調理の種類によって使い分けが必要であることが示唆された。