著者
松岡 久美 山田 仁一郎
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

事例研究を積み重ねることで地域における文化的な事業の創出のメカニズムを探った。その結果、ダイナミックな資源の活用・循環・創出を行うためには、社会的起業家を中心として、住民、行政、企業等の制度固有の論理を持つ利害関係者集団が互いの利害を「相互資源化」して集合的行為として関与することが不可欠となることを指摘した。また、事業の成立には長い時間を要するため、事業体からの起業家個人の離脱という課題が新たな論点として浮かび上がることを指摘した。
著者
塩田 徹治 比嘉 達夫 佐藤 文廣 藤井 昭雄 木田 祐司 荒川 恒男
出版者
立教大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1.従来の研究に引続き、代表者塩田は、主としてモ-デル・ヴェイユ格子に関連する研究をし、種々の応用を得た。整数論への応用として、有理数体の高次ガロア拡大において、比較的小さな素数でのフロベニウス置換を、チェボタレフ密度定理との関連で調べ、興味深い具体例を構成した(文献[1])。また代数幾何の有名な問題である3次曲面上の27本の直線について(モ-デル・ヴェイユ格子の理論に加え)ワイヤストラス変換の概念を導入して、決定的な結果を得た([2])。2.藤井は、ゼータ関数のゼロ点の分布について研究し、リーマン・ゼータの場合、シャンクスの予想についての以前の結果を改良した。また、エプスタイン・ゼータの場合も興味ある結果を導いた([3]、[4])。3.木田は整数論および代数幾何学における実際の計算と、その計算量について研究した。成果の一部は[5]で公表した。これらの研究において、当補助金により購入したパーソナル・コンピュータは大変役立ったことを特記しておく。
著者
磯部 彰
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

山東を舞台とした信仰では、泰山信仰が最も普遍的ではある。主神は東嶽帝君であるが、羅祖教の流れにある黄天道などの新興宗門では、東嶽帝君に陪祀される夫人の泰山娘々を神格とした経典宝巻を作成している。明刊本としては、「天仙聖母源流泰山宝巻」西大乗教の萬暦刊「霊応泰山娘娘宝巻」(悟空編)の2種が伝わる。沢田瑞穂氏は後者で、両本を代表させるが、実際は両者の内容は異なる。前者の断簡を所蔵する一方、後者は『続刻破邪詳弁』巻1に邪教の一つとして著録され、複印本もある。古くから女神としては観音がいて、「香山宝巻」が作られてその出身の霊験談を記す。泰山娘宝巻も観音出身伝に倣って、泰山娘々の霊験談を作り出したと見える。同じ頃、やはり山東を舞台とする孟姜女宝巻も作られている。女性神の宝巻が目立つのは、教門の担い手に女性教祖や信者が多かったことと関係しよう。
著者
田代 健太郎
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

お椀型の非平面パイ共役系を有するコラニュレンの集積化について、種々の周辺置換基を有する誘導体を用いて検討した。金とコラニュレン周辺置換基中の多数のチオエーテル部位との多価の相互作用により、金ナノパーティクル表面をコラニュレンのケージで被覆することが可能であった。ドデカンチオールで表面修飾した同じサイズの金ナノパーティクルと比べ、コラニュレンで覆ったパーティクルのSHGが8倍程度増強されることを見出した。また、周辺置換基の適切な選択により、液晶性を示すコラニュレンを初めて作製し、その電場配向能を明らかにした。
著者
宮澤 伸吾 今本 啓一 今本 啓一 鯉渕 清 大友 健
出版者
足利工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高炉セメントB種を用いたコンクリートの自己収縮ひずみは,普通ポルトランドセメントを用いた場合と比べて大きく,高温履歴を受けると初期材齢における自己収縮の進行速度が大きくなり,終極値も大きくなることを実験により明らかにした。自己収縮の終極値および進行速度を最高温度の関数として定式化し,温度履歴の影響を考慮した実用的な高炉セメントコンクリートの自己収縮ひずみの予測式を提案した。提案した自己収縮ひずみの予測式は,日本コンクリート工学協会「マスコンクリートのひび割れ制御指針2008」の設計用値として採用された。低発熱・収縮抑制型高炉セメントを用いた場合,温度上昇過程において,自己膨張に起因する圧縮応力が導入されることが認められ,一般の高炉セメントB種および普通ポルトランドセメントを用いた場合と比べて引張応力-強度比が小さくなり,温度ひび割れ低減効果が認められた。これにより,高炉セメントの比表面積,三酸化硫黄(SO_3)量および高炉スラグ混入率を調整することにより,マスコンクリートの温度ひび割れ抵抗性は著しく向上することが明らかとなった。フルサイズ骨材を用いたダムコンクリートについて,自己収縮および断熱温度上昇量を把握するとともに,拡張レヤー工法(ELCM)により施工される重力式ダムについて3次元FEM温度応力解析を行った。その結果,高炉セメントを用いた場合は,外部コンクリートや着岩コンクリートにおいては大きな自己収縮が生じ,これに起因して発生する引張応力がひび割れの発生原因になりうることが明らかとなった。さらに,セメントの種類によりダムコンクリートの自己収縮は著しく異なり,セメントの種類の選定によりダムコンクリートのひび割れ抵抗の向上を図れる可能性があることを指摘した。
著者
永田 知里 清水 弘之 武田 則之 藤田 広志
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

乳がんリスクの指標としての血中・尿中エストロゲン値と生活環境要因の中からサーカディアンリズムに関わる睡眠・夜間照明・夜勤・生活リズム等、サーカディアンリズムの指標である尿中メラトニン値との関連性を成人女性、妊婦、幼児を対象に評価した。成人女性において、夜間照明への暴露あるいはサーカディアンリズムの乱れが内因性エストロゲン値を変化させ、ひいては乳がんリスクに影響を及ばす可能性を示唆した。
著者
佐倉 緑
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コオロギを用い、体表物質によって引き起こされるオス同士の闘争行動の発現に触角からの入力が関与することを明らかとした。また、脳内の一酸化窒素(NO)とオクトパミン(OA)シグナルの阻害により、敗者の攻撃行動の回復がそれぞれ促進、抑制されることがわかった。触角への体表物質の刺激により脳内でNOが増加すること、NOにより脳内のOA量が減少することから、体表物質-NO-OAというシグナル経路が脳内に存在すると結論づけられた。
著者
尾形 幸生 作花 哲夫 深見 一弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

電気化学的に生成する多孔質シリコンの構造発現を統一的に把握するために諸条件下で生成する微細構造を詳細に検討し、以下の成果を得た。(1) マクロ孔形成は独立した事象として考えるのではなく、他の構造を含んだ多孔質構造形成として統一的な視点で取り扱わねばならないことを明らかにした。(2)ルゲート型多孔質シリコンのセンサー応用の可能性を示し、電気化学手法による微細構造制御による光学特性の向上の可能性を示した。
著者
笹本 智弘
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

界面成長を記述するKardar-Parisi-Zhang(KPZ)方程式や、その離散版モデルの揺らぎについての研究を行った。特にレプリカ法とよばれる手法を用いて定常状態における1次元KPZ方程式の高さ分布と時空2点相関関数に対する明示的な表式を求めることに成功した。これらの量はこれまでいくつかの物理的な手法を用いて調べられていたが、近似無しに表式が得られたのは大きな進展である。また、非対称排他過程やq-TASEPと呼ばれる離散モデルに対して双対性を用いることにより、見通しよく揺らぎの性質を理解出来る事を示した。さらに多点分布や多成分系に対する揺らぎについてもいくつかの成果を得た。
著者
上平 正道 河邉 佳典
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

申請者らが開発したトランスジェニック鳥類作製技術をベースにして、ニワトリなどの家禽鳥類をタンパク性医薬品などのバイオロジクス生産のための生体バイオリアクターとして使用するために、(1)生産物を安定して大量に発現するための卵白特異的発現システムの開発、(2)生産物が糖タンパク質である場合に付加糖鎖の制御、(3)鳥類での生産に適したバイオロジクス生産、について検討を行った。
著者
三輪 眞木子 河西 由美子 松嶋 志津子 中村 百合子 竹内 比呂也
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

内外の有識者インタビュー調査により、図書館情報専門職の学位・資格の国際的同等性と互換性の実情を把握した。専用ウェブサイトを開設し、世界各国の図書館情報専門職養成コアカリキュラムデータを収集・分析した。アジア・太平洋地域の学校図書館の国際研修プログラムを開発しセミナーの形で実施した。世界各国・地域の有識者に当該地域の図書館情報専門職教育の動向と質保障に関する論文の執筆を依頼し、論文集を編纂した。
著者
菅野 望
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

エタノール低温酸化反応の初期段階で重要であるα-ヒドロキシエチルラジカルと酸素分子の反応についてレーザー光分解/近赤外波長変調分光法による実験計測及び量子化学計算とRRKM/支配方程式解析による理論計算を行った.理論計算による反応速度定数の温度依存は実験計測と良く一致し,若干の負の温度依存性を示した.理論計算による主生成物は100気圧以下においてアセトアルデヒドとHO_2ラジカルであり,高圧ではCH_3CH(OH) O_2ラジカルの生成が競合することが示された.
著者
栗木 清典
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

大腸がんの罹患リスクに対する獣肉摂取と、インスリン抵抗性に関連するPPARγ遺伝子Ala12Pro多型、C161T多型およびCD36遺伝子A52C多型の相互作用を明らかにする症例・対照研究を実施した。Pro12Ala多型とC161T多型を組み合わせた解析において、全体の70.0%を占めるPro/Pro + C/Cでは、牛乳、卵の低摂取頻度に対する高摂取頻度のオッズ比(OR)は0.82、0.78と低かったが、Pro/Pro + (C/T+T/T)(25.3%)の飽和脂肪酸、加工肉摂取では1.42、1.63と高かった。CD36遺伝子において、A/A型の牛・豚肉の低頻度摂取、獣肉の低摂取量と比較して、C/C型の高摂取によるORは4.39、3.16と高かった。現在、わが国の40歳以上の10人に1人が糖尿病を患っており、糖尿病は一部のがんのリスク要因と報告されているが、日本人におけるリスク評価は十分ではない。そこで、糖尿病と臓器別がんリスクを大規模症例・対照研究で検討した。糖尿病の現病・既往のある男は7.5%、女は2.6%であった。糖尿病のORは、男/女の全部位(1.4/1.4)、肺(1.5/1.6)と肝臓(2.2/2.3)、男の咽頭(1.8)、喉頭(2.3)、食道(1.7)、膵臓(2.3)と大腸(1.3)、胃(1.7)と子宮頚部(1.9)で有意に高かったことから、糖尿病を引き起こすインスリン抵抗性はがんのリスク要因でもあるという仮説を支持した。近年の生活習慣の急速な欧米化に伴い増加している疾病のリスクを評価し、個人を対象にした一次予防方法を確立するには、食生活習慣調査とともに、脂質・脂肪酸摂取のバイオマーカーを確立することが必要である。そこで、多数の血液検体から、微量で、迅速、簡便、安価、高精度に脂肪酸レベルを分析する独自の方法を開発し、特許出願した。
著者
シヤムマ アワド 高橋 智聡
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

がん抑制遺伝子RBは多くのクロマチン修飾因子と結合し、その機能を制御する。このようなRBによるエピジェネティック制御機能を解明するために、我々はRB欠損モデルマウスとヒト原発がん組織を使い、RBとATMの相互作用がDNAメチル化酵素DNMT1の安定性を制御すること、また、DNAマイクロアレイ解析から数百のがん関連遺伝子のDNAメチル化状態が、RB-ATM-DNMT1の相互作用により調節されていることを発見した。
著者
功刀 俊洋
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

革新=社会党推薦の市長・市政について、1950年代から1960年代前半までの東北地方と京阪神地方を比較すると、東北地方の革新市長は、1959年前後から遅れて登場し、1960年代に社会党公認の市長として飛鳥田一雄横浜市長の全国革新市長会にその中心メンバーとして参加していった(たとえば、仙台、秋田、酒田、大館)。それに対し、京阪神地方の社会党系市長は、1950年代の早期から登場しながら、1960年代に退場してしまうか、革新市長会に不参加・消極的という態度をとった(たとえば、大阪、神戸、西宮、舞鶴、宇治)。この相違の原因は、野党や労働組合の党派・組織対立の影響と、地域開発の現実性の違いにあった。第1に、東北地方の社会党は、左派(佐々木更三)中心であり党内最左派出身の飛鳥田をリーダーとすることに親和的だった。それに対し、京阪神地方の社会党は右派(河上丈太郎、江田三郎)中心であり、また民社党と共産党が強力で社会党の市政における指導権は弱かった。それで、京阪神の革新市長は、民社・同盟系労組をも地盤としており、1960年代には自民・民社・社会の相乗り市政に移行していった。第2に、京阪神地方は東海から瀬戸内地方と同様、繊維産業など既成工業の合理化と石油化学・鉄鋼などの新興工業の立地(新産業都市建設)が1960年代前半に現実に進行しており、都市政治への「合理化・開発=保守化・中央依存」圧力が東北地方より強かった。それに対し、東北地方では、新興工業(機械組み立て・アルミ・パルプ)誘致が実現するのは1970年代であり、1960年代までは、社会党市政が生活基盤整備に尽力したため、住民の支持がっづき、保守勢力にも許容される余地があった。これが、東北地方の革新市政が1960年代後半まで生き残り、「革新自治体の時代」を準備できた経済的要因であった。
著者
越智 和弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究が目的として掲げた資本主義が発展するうえで不可欠な要素として起きる女性的他者の抑圧構造の解明に関し、研究期間内において具体的に達成できた内容は以下の通りである。1. 女性に帰属するものとみなされた快楽を敵視する禁欲の思想が、16世紀の近代の開幕と共に強化されたことを突き止めたこと。2. 女性的快楽敵視の思想がヨーロッパ全土に共通するものであるように見えるなか、じつはアルプス北方地域においてとりわけ強く浸透している顕著な事実があり、それが、近代資本主義が誕生した地域と重なることを確認したこと。3. 快楽を敵視する禁欲の思想が、一般にはキリスト教にその源泉を求めるべきものであり、それによってとかく西洋全般に共通するものとみなされがちだが、同時にそれがアルプス北方地域にことさら強く表れる原因をゲルマン的性格に見いだしうることを、5〜7世紀にかけての、とかくヨーロッパ人が語りたがらない「空白の2百年」に着目する中から解明した。本研究がもつ最大の意義は、今日西洋だけがあらゆる面にわたって規範を提供する支配文化となりえた真の理由を解明しようとしたことにある。その重要性は、西洋が支配文化となり得た核心的原因を、女性を快楽の体現者として他者化し、他のいかなる文化にも先駆けて快楽に結びつく要素を巧みに抑圧する術を見いだしたことにあることを、ゲルマン的な女性恐怖と快楽敵視という観点から初めて分析したことにある。
著者
廣海 啓太郎 赤坂 一之 三井 幸雄 太田 隆久 三浦 謹一郎 石井 信一
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本報告中では、SSIは「放線菌のズブチリシンインヒビタ-」を、SMPIは「放線菌の金属プロテア-ゼインヒビタ-」を表す。SSIが放線菌金属プロテア-ゼSGMPA及びSGMPBを強く阻害することを見出し、新規蛍光性基質を用いて阻害物質定数を決定した(石井)。遺伝子工学的手法を用いてSSIの種々のアミノ酸残基を置換し、これら変異体の特性ならびにSSI遺伝子発現系の特性を明らかにした(三浦)。SSIに対するモノクロ-ナル抗体の作成を試み、数種のIgG1及びIgM産生クロ-ンを確立し、NMRによるエピト-プ解析を行った(荒田)。シンクロトロン放射光を用いてSSI及び変異型SSIとズブチリシンとの複合体の結晶のX線回折デ-タの収集に成功し、これに基づく構造精密化を行った(三井)。耐熱性プロテア-ゼ、アクアライシンI、の遺伝子の全塩基配列を決定し、大腸菌中で発現させ、本酵素の構造と機能を解析した。(太田)。クロ-ン化した遺伝子を用いるSMPIの生産において、菌体外分泌生産量を増大する条件を検討した(高橋)。蛋白質についての安定同位体利用NMR法を確立し、部位特異的アミノ酸置換がSSIの高次構造に及ぼす効果を解析した(甲斐荘)。SSI変異体につき重水素NMR法により分子構造の「ゆらぎ」を解析した(赤坂)。SH/SS化合物の電気化学的微量分析法を確立した(千田)。SSI変異体とズブチリン及びSMPPIとサ-モリシンの相互作用を平衡論的・速度論的に解析した(廣海・外村)。海洋細菌から新規ペプチド性セリンプロテア-ゼインヒビタ-、マリノスタチンD、を単離し一次構造を決定した(原)。ペプスタチン非感受性の酸性プロテア-ゼの新規インヒビタ-、チロスタチン、を単離し一次構造を決定した(小田)。好熱菌から単離した新規耐熱性酸性プロテア-ゼの特徴ある性質と極めて高い基質特異性を明らかにした(村尾)。
著者
生田 久美子 北村 勝朗 前川 幸子 原田 千鶴 齊藤 茂
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,スポーツ・看護・芸能領域の伝承場面における修辞的な言語(わざ言語)の分析を通して,「わざ」の伝承における「わざ言語」の意義を問い直し,学びの可能性を考究することにある。実際に卓越的技能の指導現場に触れている「わざ言語」実践者を対象とし,「わざ言語」が生起する文脈や役割の分析が行われた。本研究の成果として,行為の発現を促す役割,身体感覚の共有の役割,及び到達した状態の感覚へといざなう役割,を確認した点があげられる。
著者
國 雄行
出版者
東京都立短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1877年(明治10)に東京上野で第一回目が開催された内国勧業博覧会は、その名が世に知られているにもかかわらず、その実態は曖昧なまま、日本の経済発展に貢献したと解釈されている。本研究は、この曖昧な博覧会像を多少なりとも鮮明にするため、平成11年から同14年まで4年間にわたり万国博覧会や共進会も検討しながら、内国勧業博覧会に関する分析を行い、明治政府の殖産興業政策を明らかにしたものである。第一章では、博覧会という西洋文明が比較的スムーズに明治社会に導入、定着したことを明らかにした。第二章では、施設と展示技術が向上したが、自発的な出品者は少なく、博覧会の規模は拡大したが博覧会出品が有益であるという認識は一般的ではなかったことを実証した。第三章では、日本の国力が、いまだアジア規模の博覧会開催が出来ないことを記した。第四章では、第三回内国勧業博覧会は博覧会が社会に定着するとともに、博覧会に関する諸問題が顕在化したことを実証した。第五章では第四回内国博の出品物数の変動要因として、(1)出品物の精選、(2)日清戦争(各業種の繁忙による出品困難、運輸不便による出品困難)の存在を提示した。第六章では、第1回(1877年)、第3回(1890年)、第5回(1903年)の出品物と審査報告を分析し、機械化の特徴を提示した。以上のように、本書は全六章構成であるが、これで決して内国勧業博覧会の実態を明らかにしたとは言い難い。今後は、出品物や地域レベルにおける出品活動をとおして、明治社会において内国勧業博覧会をはじめとする勧業諸会がどのように捉えられていたか、把握する必要があると思われる。
著者
山本 和生
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

酵母CAN1遺伝子について突然変異を見ると,haploidの場合は1x10^<-6>の頻度で,diploid hetrozygousな場合は,1x10^<-4>の頻度となる。従って,diploidでは,DNA複製に依存した間違いによって突然変異が生じ,diploidの場合は,組み換えや染色体喪失などdynamicな染色体の再構成がその原因であることが分かった。次に,染色体喪失生成機構を知るために,DNA損傷性の突然変異は誘発しないが,発がん性を持つ化学物質を用いてその作用機構を調べた。用いたのは,o-phenylphenol(OPP)等の代謝物について,酵母でaneuploidyを強く誘発することが分かった。OPPの代謝物で酵母を処理した場合,1)塩基置換などの突然変異は誘発しない。2)aneuploidyの頻度は10^<-3>のオーダーとなる。3)酵母β-tublinと結合し解離作用を阻害する。4)FACS観察では,細胞周期をG_2/Mで止める。4)蛍光顕微鏡の観察では,M期後半で細胞周期を止める。OPPによる細胞分裂阻害をすり抜けた細胞は,ある確率で染色体喪失を生じる。CINは次の突然変異やCINを促すことで,更に次の変化を促し,発がんに至る。従来発がん機構の説明として,がん抑制遺伝子やprotooncogeneの突然変異が蓄積してがんが生じるという説(がん突然変異説)がある。現実のがんを見るとがん突然変異説で説明できない場合が大変多い。その一つとして.DNA損傷は作らない化学物資による発がんがある。本研究で,そのような化学物資の代表として,OPPを取り上げ,naeuploidyによって,その作用を及ぼすことを明らかにした。がんaneuploidy説の開幕である。