著者
福岡 和也 塩崎 道明 古西 満 濱田 薫 長 澄人 成田 亘啓
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.271-277, 1992-04-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6

症例は72歳, 女性.Hugh-Jones III度の労作時呼吸困難を主訴として入院.胸部X線写真にて右胸水貯留を認め, 胸膜生検から癌性胸膜炎 (腺癌) と診断.MMC, OK-432による胸膜癒着術を施行したが, 被包化胸水の遺残と肺の癌性リンパ管症を併発した.その後, 胸腔内カテーテル挿入部に皮下浸潤による腫瘤を触知するとともに右体幹を中心としたびまん性の皮下腫脹と右腋窩リンパ節腫脹が出現, 胸, 腹部CTでは右体幹の皮下組織に広範囲に及ぶ網目状の高吸収域を認めた.これらの所見からびまん性皮下浸潤を疑い, CBDCA, VP-16による全身化学療法を施行するも奏効せず, 呼吸不全に陥り死亡.剖検の病理組織所見から, 本症例にみられたびまん性皮下腫脹の原因は右肺下葉原発の低分化型腺癌の胸膜, 胸壁から皮下組織への直接浸潤と皮膚の癌性リンパ管症によるものと考えられた.
著者
菊池 和美 長田 久雄
出版者
帝京平成大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

報告者は, 参与観察調査および実証研究を通して, 犬の飼い主らが自らの住む地域コミュニティで行っている「犬の散歩」が,飼い主にとっての,人々との地域交流関係の形成と維持の機会となること,また,その関係性の発展が地域コミュニティにおける潜在的な人的資源形成に繋がり,散歩を行う地域社会への愛着と関心「わが町意識」を高め,ソーシャル・キャピタル醸成のプラットフォームとなる可能性を有することを指摘した.
著者
加藤 宏 益子 邦洋 関 裕 朽方 規喜 安藤 高夫
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.380-382, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
4

超高齢化社会が到来し, 在宅医療と救急医療の連携推進が求められている。二次救急病院である当院は, 2014年12月から病院救急車を活用した患者搬送システムを運用している。出動件数は年々増え続けて, 2019年12月までに出動総件数1,874件 (在宅療養患者救急搬送523件) に達しており, 47%が慢性期病院への搬送であった。病院救急車は, 在宅医療従事者をサポートしながら高齢者を地域全体で支えるセーフティネットの役割を果たし, 急性期病院や消防救急車の負担軽減にも貢献する。加えて, 当院では, 院内多職種が協働して訪問診療にも取り組んでいる。2018年度の訪問診療件数は8,688件に達し, 525件の緊急往診に対応した。24時間救急対応可能な病院が在宅医療の一部を担うことは在宅療養支援の強化につながり, 在宅医療との相互理解や連携を深める点でも有意義である。
著者
仲地 健
出版者
沖縄国際大学産業総合研究所
雑誌
産業総合研究 (ISSN:13405497)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.27-37, 2014-03
著者
菊池 康紀 平尾 雅彦 大久保 貴史 佐々木 章亘
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会研究発表会講演要旨集 第6回日本LCA学会研究発表会(会場:東北大学)
巻号頁・発行日
pp.91, 2010 (Released:2011-02-14)

ポリメタクリル酸メチル(PMMA)はガラスのように高い耐衝撃性と透明性を有しており、熱可塑形成、着色が容易であり、液晶の導光板や看板、建物や乗物の窓材などに利用されている。本研究では、工場内加工ロスや家電・自動車に含まれるPMMAを回収しリサイクルするシステムが導入されたときに、実際にPMMAに関わる物質の流れがどのように変化するか、解析する。特に、PMMAのグレードに合わせてリサイクルの実行可能性を考慮する。
著者
岩本 通弥
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.73-144, 1993-11-10

本稿はこれまで概して「日本独特の現象」ともされてきた〈親子心中〉に関し、韓国におけるその事例を紹介することで、そうした言説に修正をはかるとともに、両者を比較することにより、より深いレベルにおける〈親子心中〉の諸現象、すなわち〈親子心中〉という行為だけでなく、それをめぐる社会や文化のより大きな象徴的システムのうち、何が普遍的であり、あるいは何が日本的であるのか、そのおおよその見通しを得ることを目的としている。そのため本稿では、これまでほとんど日本には報告されてこなかった、韓国における〈親子心中〉を含めた「自殺の全体像」を提示することからはじめるが、資料としては、その代表的な中央紙である朝鮮日報と東亜日報における自殺記事を、一年分収集し、これを分析した。新聞を資料として用いることに関し、方法的な視角を述べるならば、新聞記事というニュースの性質を、単なる情報の〈伝達〉という機能から捉えるのではなく、むしろ、より読み手(decorder)の役割を重視した、神話的な〈物語〉を創出していくものとして、繰り返し語られるニュースのなかの、隠れたメッセージや象徴的コードを読み解いていく。その物語性は、読み手に文化的諸価値の定義を提供しているが、こうした視角で分析してみると、日韓の自殺と親子心中「事件」のコードは類似したものが多い一方、大きく異なる点も存在する。最も相違するのは日本の自殺・親子心中の〈物語〉が「他人に迷惑を掛けること」の忌避を訴えているのに対し、韓国のそれは「抗議性(憤り)」を媒介とした「他者との心情の交流」が主要な価値コードとなっている。正反対の日本の価値コードからすれば、韓国の自殺・同伴自殺は「いさぎよし」とは見做されず、また逆に日本のそれも韓国的コードでは負に位置付けられようが、それは両国の感情表現の方法をはじめ「死の美学」や死生観・霊魂観の相違に起因するものであり、表面的形態的には類似している日韓の〈親子心中〉も、その意味するところは大きく異なっている。
著者
Tetsuya Akaishi Tamotsu Onodera Tatsuya Takahashi Hideo Harigae Tadashi Ishii
出版者
Tohoku University Medical Press
雑誌
The Tohoku Journal of Experimental Medicine (ISSN:00408727)
巻号頁・発行日
vol.259, no.4, pp.263-271, 2023 (Released:2023-03-09)
参考文献数
35
被引用文献数
3

The third and fourth doses of the vaccine against coronavirus disease 2019 (COVID-19) were widely administered in Japan since December 2021. Currently, however, data are scarce regarding acute adverse events with the third and fourth doses. The present study reports the profiles of acute adverse events after the third and fourth COVID-19 vaccine doses, seen at the site of a mass vaccination center in Japan. Between December 2021 and July 2022, 267,515 individuals received the third, and 32,934 received the fourth COVID-19 vaccine dose at the mass vaccination center, of whom 442 recipients of the third (0.19%), and 22 recipients of the fourth (0.07%) dose reported acute adverse events and were examined by doctors on site. The most common diagnosis was vasovagal syncope/presyncope (incidence: 0.01-0.10%), followed by other miscellaneous complaints, acute allergic reactions (0.05-0.005%), and anaphylaxis (< 0.005%). Vasovagal syncope/presyncope occurred most frequently in recipients in those in their 20s, whereas acute allergic reactions were most frequent in those in their 40s. Both reactions were more frequent in women than men. The peak occurrence of vasovagal syncope/presyncope was earlier than 15 min after the injection, whereas that of acute allergic reaction was later than 15 min after the injection. The incidence of acute allergic reactions appeared to differ between various vaccine manufacturers, whereas that of vasovagal syncope/presyncope did not. These real-world data may benefit the safe and efficient implementation of mass vaccination campaigns for citizens who want to receive COVID-19 vaccines now and in the future.
著者
堤 親範 阿部 俊也 岡山 卓史 空閑 啓高 下川 雄三 植田 圭二郎 西原 一善 中野 徹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.1063-1069, 2021 (Released:2021-12-30)
参考文献数
27
被引用文献数
1

自己免疫性膵炎(AIP)は限局性病変を形成し,膵癌と鑑別困難な症例が存在する.本検討は当院で経験したAIP 34例を対象とし,その臨床学的因子,手術症例の周術期因子を解析した.AIPの5例(14.7%)で膵癌を疑い,手術を施行した.AIPにおいて,多変量解析でCA19-9高値(>37U/mL)(P=0.01),膵外病変なし(P=0.01),EUS-FNA未施行(P<0.01)が手術施行に関わる独立した因子であった.また,単変量解析で 血管浸潤所見(P=0.03)を認めるAIPで有意に手術が施行され,限局性膵腫大(P=0.06)を認めるAIPで手術が施行される傾向にあった.AIPと膵癌の特徴を同時に認める症例ではそれらの鑑別が困難になりやすく,AIPに対する手術を回避するためにはAIPに特徴的な所見を含め,EUS-FNA/FNBの重要性を再認識する必要があると考えられた.