著者
小池 弘美 甲斐 倫明 飯本 武志
出版者
一般社団法人日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.140-145, 2022-12-29 (Released:2023-02-09)
参考文献数
16

Relatively high levels of radioactivity were detected from the handball goal post that had been placed in the schoolyard of an elementary school in Nobeoka City, Miyazaki Prefecture, since around 1997. In November 2021, the goal post was to be removed, and it was transferred to a scrapping company through a waste disposer commissioned by Nobeoka City. Radiation monitoring at the time of transport detected the surface dose rates of 20–30 μSv/h at maximum from the pipe scale of the goal post. The goal post was found to have been apparently handmade by reusing scrap metal pipes. The components and radioactivity adhering to the interior of the pipe are measured and analyzed. Mineralogical analysis shows that the naturally occurring radioactive materials (NORM) contained mainly gypsum, gorgeyite, and baryte. The total radioactivity was evaluated to be 54.5 MBq to be equivalent to 226Ra by a preliminary estimation. The specific activity of the collected sample was 0.6 MBq/kg in the same nuclide. This case may be one of the typical examples of NORM in Japan, and four points in terms of radiation protection are discussed, clarification of the scientific and technical mechanisms of NORM generation, formulation of systematic and specific guidelines on the estimation of NORM according to the purpose of the evaluation, formulation of a comprehensive radiation protection strategy for NORM in Japan, and clarification of policies and procedures on sharing and disseminating relevant information to the public.
著者
濱岡 豊
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.3_34-3_43, 2020-03-01 (Released:2020-07-31)
参考文献数
32
著者
SCHWARZENEGGER C.M.
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究によって次の点が明らかとなった。1 宗教と犯罪の関係: 非常に宗教性の強い国民が多い国々では犯罪率が高く、日本のように比較的宗教性が弱い国々では犯罪率が低い。2 犯罪の惹起要因: 社会的な結びつきの弱さと歪んだ価値観が、犯罪行為の基本的な要素である。社会から隔絶された過激なカルト(オウム真理教、太陽の寺院、ワコ)では、信者は、両親、友人、同僚のような他のコントロール機関とのコンタクトを絶たれ、カリスマ的な宗教上の指導者による「真理の教え」という歪んだ価値観が教え込まれた。こうしたことが、信者の犯罪行為へとつながって行った。3 日本の宗教シーンの特性: 日本の宗教シーンの特徴として次の点を挙げうる。すなわち、(1)非常に多様な宗教団体があるということ、(2)欧州や米国の一神教とは異なり諸々の宗教が混然と融合している宗教観、(3)宗教的寛容さ、(4)宗教性の弱さ、である。日本においては、伝統的な信仰上の流派である神道や仏教は、多くの人々にとって精神的な支柱としての意味を失ってしまっている。精神的な指導を得たいという欲求を満たしているのは、多くの新興宗教であり、新興宗教は、とりわけ若く、精神的に不安定な人々の間で流行している。4 国家によるカルトのコントロールのあり方: 今後、カルトに対する国家のコントロールは強化されることになるになろう。しかし、宗教の自由は守られなければならないので、個々の信者が入信することを妨げることはできない。そこで、ヨーロッパやアメリカの例を参考に、当局が、布教の方法や信者の扱いを適切に審査し、国民に警告を発するシステムが検討されるべきである。5 カルトの経済行為: カルトが企業を創設し、製品を製造している場合には、宗派は通常の企業と同様に扱われるべきである。この点では、税の減免措置は、廃止されるべきである。
著者
向井 千夏 奥野 誠
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.176-182, 2010 (Released:2010-12-03)
参考文献数
32
被引用文献数
1

体内受精を行う哺乳類では,精子鞭毛は射精にともない運動を活性化し,雌生殖器官内での受精能獲得時には超活性化と呼ばれる運動を示す.精子は卵に出会うまで,鞭毛運動を維持するためにATPが必須であるとともに,活性化や超活性化の運動変化を引き起こす細胞内シグナル伝達においても,cAMPの生成やタンパク質リン酸化にATPが必要となる.ATPの供給経路としては解糖系と呼吸系の2つがあげられるが,従来,精子の形態やその生産効率からミトコンドリアによる呼吸系が主であると考えられてきた.しかし,近年の研究成果により,鞭毛主部における解糖系によるATP供給が主要な働きをしていることが明らかとなってきた.本稿では,マウスでの知見を中心に,精子の鞭毛運動とシグナル伝達に関わるATP供給について解説する.
著者
入江 経明
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.846-851, 1987-12-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
2

昭和60年にお燗機能付き酒類容器が新発売され, いつでもどこでも手軽に燗酒が飲めるようになり話題となった。しかし, 製品開発の過程では解決しなければならない多くの技術的問題があり, 製品設計から発売までに2年を要したという。|本稿では, 新製品開発に伴う諸問題の解決手法やその苦労について詳細に解説していただいた。新製品開発の代表例として大いに参考になるケースである。お燗機能付き酒類容器は “話題性・遊び心” のある商品であり, 今後の普及・発展を期待したい。
著者
武村 雅之
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.377-396, 1998-03-13 (Released:2010-03-11)
参考文献数
28
被引用文献数
2

Strong ground motion in Tokyo metropolis during the Sep. 1, 1923 Kanto earthquake was important factor for determining the seismic design code in Japan. However, it has not been clarified in detail, because of no strong motion record near the source region of the Kanto earthquake. The author collected the descriptions and made a data set of 548 personal experiences in and around the southern Kanto district to investigate the strong ground motion from the Kanto earthquake. Many descriptions in Tokyo metropolis indicated that three severely strong shakings arrived at this area during the Kanto earthquake. The first shaking was, of course, caused by the main shock (M=7.9) at 11:58AM (JST). The second and the third shakings were caused by the aftershocks occurring 3 minutes and 4.5 minutes after the main shock, respectively. These aftershocks were identified on a seismogram obtained at Gifu observatory and magnitudes of them were determined to be 7.2 and 7.3, respectively from this seismogram [TAKEMURA (1994)]. The results of the analyses of the personal experiences also indicated that the duration time of the first shaking due to the main shock was 30 to 40sec. The strength of the second shaking was as strong as the first shaking, of which seismic intensity was estimated to be VI in JMA scale, while duration time of the second shaking was shorter than the first shaking. On the other hand, the third shaking was weaker than the first and the second shakings, of which seismic intensity was estimated to be V. The sequence of strong shakings within 5 minutes after the occurrence of the main shock of the 1923 Kanto earthquake was elucidated in Tokyo metropolis in the present study.
著者
上農 正剛
出版者
日本手話学会
雑誌
手話学研究 (ISSN:18843204)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.74-93, 2020-12-22 (Released:2021-12-25)
参考文献数
50

聾教育は音声言語の習得を目指した以前の口話法から手話を併用した二言語教育の時代に変化してきた。当初、聾教育の現場では日本語に対応した日本語対応手話(手指日本語)が採用されていたが、その後、日本語とは文法構造を異にする日本手話の存在が再評価されたことにより、二つの手話のいずれが聾教育にとってより妥当なのかという議論が生じた。 しかし、いずれにしても聾教育における手話の意義は書記日本語教育との関連の中で検討されなければならないという事情がある。なぜなら、聞こえない子供たちは就学後、教科書という文字テキストを基盤とした教科学習という避けがたい現実の中に置かれるからである。手話も書記言語も共にその意義と妥当性はこの現実の中で問われざるを得ないのである。
著者
山根 良行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.430-431, 2018-09-20 (Released:2019-09-01)
参考文献数
3

金は人間生活とのつながりが非常に深い物質である。高等学校の化学基礎におけるイオン化傾向の単元で,金は王水にのみ溶けると記載されているが,これまでヨウ素が含まれるうがい薬やヨードチンキに溶け,その溶液で金コロイドを生成することが紹介されている。今回は,学校で身近にあるヨウ素-ヨウ化カリウム水溶液(以下,ヨウ素液と略記する)を用いて,金コロイドを生成する方法を紹介する。
著者
新井 智一 福石 夕 原山 道子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.125-137, 2011 (Released:2011-02-12)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

本研究は,ローカルな環境改変の要因を大スケールの政治経済的コンテクストとミクロな政治との関わりという観点から解明するポリティカル・エコロジー研究を援用し,山梨県白州町(現北杜市)において多くの企業が地下水を大量に採取してきた要因を明らかにした.白州町議会では,企業による環境改変への懸念が表明されてきたものの,白州町の行政は企業に対する地下水採取規制に消極的であった.それは,白州町議会で保守系議員が圧倒的多数を占めてきたこと,企業誘致が順調に進まなかったこと,ミネラルウォーターの採取地であることが白州町の観光に寄与してきたこと,によると考えられる.
著者
高屋 むつ子 和泉 眞喜子 佐々木 知子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.224-229, 2005 (Released:2006-08-04)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

The HPLC method is now commonly used for fractional determination of chlorogenic acid (Chl). We determined the quantity of Chl (5 -CQA + 3 -CQA) contained in raw coffee beans, and examined the influence of different roasting times and extraction conditions (temperature, device, water). The results were as follows:(1) Raw coffee beans contained 4.5 to 6.0% of Chl. This Chl was reduced by roasting, that is, about 60% of Chl was lost by mild roasting, 60 to 70% by moderate roasting, 70 to 80% by moderate to strong roasting, and 90 to 99% by strong roasting.(2) The influence of temperature on the extraction of Chl was slight, but the quantity of Chl extracted tended to be slightly higher at 95°C, followed in a descending order by 90°C and 85°C.(3) The quantities of Chl extracted by a spirit lamp siphon and paper drip were the same, while that extracted by an electric coffee maker was smaller.(4) The quantities of Chl extracted with distilled water and soft water were the same, but that extracted with hard water was smaller.
著者
川口 敬之 阿部 真貴子 山口 創生 五十嵐 百花 小川 亮 塩澤 拓亮 安間 尚徳 佐藤 さやか 宮本 有紀 藤井 千代
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
pp.2023.001, (Released:2023-08-23)
参考文献数
21

目的:精神保健福祉に関わる複数の立場の者が「患者・市民参画(Patient and Public involvement:PPI)」による研究を想定した際に,参画する研究段階や研究テーマについて,どのような考えを持っているかを明らかにすることを目的とした。方法:対象は,当事者,家族,支援専門職,行政職員,研究者の立場の参加者37名とし,半構造的なフォーカスグループインタビューを実施した。インタビューでは,PPIによる研究に対し,『どの研究段階で共同したいか/共同できるか』および『研究テーマや方法によって共同したい気持ちは変わるか』に関する参加者個人の考えを聴取した。質的データは,質的内容分析に基づきカテゴリー化を行った。結果・考察:研究段階に関する【研究段階によるPPI実施の可能性】および【各研究段階におけるPPI実施に関する見解】の2領域では,全ての研究段階で共同することの意義とともに,当事者や家族による柔軟な参加の許容が望まれるとする見解や,研究段階における当事者や家族の参画の意義や課題感が示された。また,研究テーマによるPPI実施についての具体的な意見に基づいた【研究テーマによるPPIの実現可能性】および【PPIに基づく研究が有効または実施が期待される研究テーマ】の2領域が生成された。精神保健福祉研究におけるPPIの普及に向け,成功事例の蓄積や解決策の検討を行うべき課題が提示された。
著者
小粥 淳史 八柳 哲 神戸 崇 井上 頌子 荒木 仁志
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2216, (Released:2023-09-01)
参考文献数
37

日本に生息する汽水・淡水魚のうち、約4割が環境省レッドリストにおいて絶滅危惧種に指定されており、なかでもタナゴ類の減少は顕著である。その一要因として外来種の影響が挙げられ、国内の溜池に広く見られるオオクチバスやカムルチーによる捕食、タイリクバラタナゴによる競合のほか、産卵母貝の生活史に必須なハゼ類の減少による間接的影響が懸念されている。既存生態系保全のためにはこれら外来種による生物群集への影響を正しく評価し、優先順位に基づく管理を行う必要がある。しかし、外来種の影響を総合的に評価するのは技術的に難しく、研究事例は限られている。そこで本研究では、上記三種の外来魚と在来タナゴ類が生息している秋田県雄物川流域の溜池に注目し、35地点から採集した水サンプルおよび魚類ユニバーサルプライマー MiFishを用いて環境DNAメタバーコーディング解析を行い、外来種が在来タナゴ類、ハゼ類をはじめとする溜池の魚類群集に与える影響を複合的に評価した。その結果、非計量多次元尺度法を用いた群集解析においてはオオクチバスの強い影響が示され、本種のDNAが検出された溜池では平均検出在来種数・Shannon-Wienerの多様度指数が共に約4割も減少するなど、在来群集構造を大きく改変している可能性が示された。またタイリクバラタナゴは在来タナゴ類と同所的に生息し、タイリクバラタナゴDNAの検出地点では在来タナゴ類の平均DNA濃度がタイリクバラタナゴDNA非検出地点平均のわずか2.4%と有意に低い傾向が確認された(p =0.0070)。一方、オオクチバスは在来タナゴとは共存しない傾向があり、オオクチバスとカムルチーのDNA検出地点では有意差はないものの共に在来タナゴ類の平均DNA濃度が低い傾向がみられた(外来種DNA非検出地点平均のそれぞれ6.6%、8.0%)。これらの結果から、オオクチバスは高い捕食圧によって溜池の魚種群集構造全体に大きな影響を与える一方、タイリクバラタナゴは在来タナゴ類と競合することで後者の生物量に強い負の影響を与えている可能性が示唆された。北日本における溜池の既存生態系保全のためにはオオクチバスの迅速な駆除と拡散防止が最優先となる一方、在来タナゴ類が生息する場所ではタイリクバラタナゴやカムルチーの個体数管理も併せて重要となるものと考えられる。
著者
髙橋 摩理 内海 明美 大岡 貴史 向井 美惠
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.175-181, 2012-08-31 (Released:2020-06-07)
参考文献数
18

地域療育センターを利用し,自閉症スペクトラム障害(以下ASD)と診断された小児338 名とその保護者を対象にアンケートを行い,偏食の実態を調査し,偏食に影響を与える要因の検討を行った.絶対食べない食材数と発達レベルとの関連が推察されたが,年齢との関連は明らかにすることができなかった.食べない食材は,年齢や発達レベルに大きな差はなく,「イカ・タコ」など食べにくい食材や野菜が多く,摂食機能との関連を検討する必要があると思われた.食べない食材数と感覚偏倚とでは,「触覚」「視覚」との関連が強く,保護者が食べない理由としてあげていた「食感」「見た目」と重なっていた.食材を加工し提供することは,「触覚」「視覚」への配慮となり,有効な対応法と思われた.食事場面だけでなく,生活全般を通して,発達レベルの向上や感覚偏倚の軽減を行うことが必要と推察された.
著者
Akihiko Nakamura Kei-ichi Okazaki Tadaomi Furuta Minoru Sakurai Jun Ando Ryota Iino
出版者
The Biophysical Society of Japan
雑誌
Biophysics and Physicobiology (ISSN:21894779)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.51-58, 2020 (Released:2020-07-10)
参考文献数
26
被引用文献数
4 5

Motor proteins are essential units of life and are well-designed nanomachines working under thermal fluctuations. These proteins control moving direction by consuming chemical energy or by dissipating electrochemical potentials. Chitinase A from bacterium Serratia marcescens (SmChiA) processively moves along crystalline chitin by hydrolysis of a single polymer chain to soluble chitobiose. Recently, we directly observed the stepping motions of SmChiA labeled with a gold nanoparticle by dark-field scattering imaging to investigate the moving mechanism. Time constants analysis revealed that SmChiA moves back and forth along the chain freely, because forward and backward states have a similar free energy level. The similar probabilities of forward-step events (83.5%=69.3%+14.2%) from distributions of step sizes and chain-hydrolysis (86.3%=(1/2.9)/(1/2.9+1/18.3)×100) calculated from the ratios of time constants of hydrolysis and the backward step indicated that SmChiA moves forward as a result of shortening of the chain by a chitobiose unit, which stabilizes the backward state. Furthermore, X-ray crystal structures of sliding intermediate and molecular dynamics simulations showed that SmChiA slides forward and backward under thermal fluctuation without large conformational changes of the protein. Our results demonstrate that SmChiA is a burnt-bridge Brownian ratchet motor.