著者
元日田 和規
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

核磁気共鳴画像診断装置(MRI)と超音波診断装置(US)を用いた検査の実施が診療放射線技師(R)や臨床検査技師(M)に認められている。これら専門職は大学、短期大学、専修学校の異なる年限で養成されている。本研究では、RとMのMRI検査とUS検査に関する臨床能力を教育と資格試験から解析した。1.専門職教育内容:R課程(40校)とM課程(73校)にシラバスの提供を依頼し、回収した各21校と36校1のうち、授業時間数・時期・内容・教育方法が記載されているシラバスを解析対象とした。世界放射線技師会のROLE OF THE MEDICAL RADIATION TECHNOLOGIST(Guidelines for the Education Of Entry-level Professional Practice In Medical Radiation Sciences)をもとに、MRIとUSに関するコンピテンスを「画像解剖」「疾患と診断」「撮像」「装置の構成と原理」「画質の評価」「ペイシェントケア」「チーム医療」に分類し、平均授業時間を養成課程間で比較した。各項目の授業時間比率は機関で異なっていた。MRIに関する「画像解剖」「疾患と診断」「撮像」「装置の構成と原理」「画質の評価」の授業時間はR課程がM課程より有意に長かった。USに関する「画像解剖」「疾患と診断」「装置の構成と原理」「画質の評価」はR課程で有意に長かったが、「撮像」は差は認められなかった。「ペイシェントケア」「チーム医療」はR-M課程間で有意な差は認められなかった。2.国家試験:全出題数200問に対するMRIとUSの出題数はRで8-12、5-6、Mは1-2、3-6で、MはMRIで妥当性・信頼性の乏しい臨床能力評価であった。3.学会認定試験:受験資格としてMRIは装置の性能評価データの作成、USでは3年以上の臨床経験を要件として認知の評価をしていた。
著者
池内 敏
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1)以酊庵輪番制に関わる史料・論文、(2)対馬藩士の手になる外交史料(『善隣通交』『善隣通書』ほか)、(3)(1)(2)と密接に関連すると思われる対馬藩政史料〔国元日記や江戸藩邸日記〕、(4)元禄竹島一件に関わる論文、史料、(5)近世日朝間における外交折衝の特色を分析・評価する上で参考となる近代日朝漂流史料、を収集した。収集史料のうち、いくつかを選んで翻刻作業を進め、分析を行った。以酊庵輪番制については、現時点で得られる先行研究の整理を行った上で問題点を整理した。既往の評価が一面的であることを明らかにすると共に、今後以酊庵輪番制研究を進めていうくえで解明すべき点を具体的に指摘することとなった。それら諸論点のうち、第86代輪番僧であった梅荘顕常の動向に関わっては口頭報告を行った。対馬藩士の手になる外交史料については、収集した諸本間の比較検討を行った。また、対馬藩における外交史料集の嚆矢ともいえる『善隣通書』『善隣通交』の成立と元禄竹島一件交渉との関わりを検討した。その作業を進める過程で、元禄竹島一件交渉について詳細な検討を行わざるをえず、これまで歴史具体的な分析の不足していた安龍福事件について詳細に明らかにし、口頭発表を行うとともに原稿化した。
著者
南 一誠
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

居住者の個別性や生活の変化に対応できるように開発されたKEP方式による低中層集合住宅を対象に、入居後23年を経た実態を調査し、開発意図の実現や課題を明らかにして、今後の計画の参考にしようとする研究。調査対象は、住宅・都市整備公団が1982年〜1983年にかけて多摩ニュータウンに建設したエステート鶴牧3団地内の低中層分譲集合住宅で、低層21戸、中層93戸の調査を実施。入居直後の1983年と12年後の1995年に初見学らが行った調査データと比較しながら、生活の変化や間取り変更の実態を経年的に分析している。分析の結果、低層棟には竣工当初から住み続けている居住者が多く、中層棟では、KEP方式を採用していないタイプに長期居住者が多い。間取りの変更は、低層棟で約半数の住戸が、中層棟では約3割の住戸が実施している。これら低層棟と中層棟の違いは、住戸規模やメゾネットかフラットかの違いによるものと推測した。生活の変化への対応については、子どもが小さい頃は、子ども室を広くとり、成長に伴い個室に分割する変更が多く見られる。子どもが独立した後は、空いた部屋をそのままにしている例と隣接する部屋と一体にして広くする例がある。以上の実態から、若い世帯を対象とする計画では、はじめから細かく部屋を分けずに、必要に応じて段階的に問仕切ることができる構成が相応しいこと、また間仕切の変更は、居住者自らが行うことは少なく、遮音への不満も多いことから、居住者自身による変更を重視せず、遮音性に優れた構法で計画すべきであることを指摘した。また集合住宅のインフィルリフォームにおける住性能評価手法に関する研究として、民間分譲共同住宅(築後23年)を対象として、鉄骨系工業化住宅メーカーのインフィルシステムを用いて改修する現場の実態調査、環境性能測定を行った。この改修事例をモデルとして環境性能評価手法について検証した。
著者
中村 みどり
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

一次資料に基づき、外務省の東方文化事業に陶晶孫が関わってゆく過程、すなわち彼が日本留学時代に「特選留学生」に選抜されてから帰国後に上海自然科学研究所へ入所するまでのルートとその背景を明らかにすることができた。また戦前の中国人留学生たちの帰国後のネットワーク、およびその後の形跡を辿ることにより、陶が戦後国民政府から台湾帝国大学の接収に派遣されるまでの背景を考察し、陶晶孫研究に新たな視点を与えるに至った。
著者
小清水 右一
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

1. マウスPB-カドヘリンのcDNAクローニングに成功し,その胎児期における発現様式の検討を行なった. Northern blotではPB-カドヘリンは胎生9日齢ごろよりその発現が認められ,胎生後期にかけてその発現量の上昇がみられた. より詳細な発現部位を明らかにするためin situ hybridizationを行なったところ,きわめて特異的なPB-カドヘリンの発現様式が確認できた. すなわちPB-カドヘリンは胎生10日齢では神経管と肢芽にのみシグナルが観察できる. 神経管における発現は腹側に限局して認められ,また将来小脳形成のオーガナイザー領域として機能する中脳-後脳境界領域(いわゆる峡脳)に特に強い発現が認められた. 一方,肢芽における発現はその後端,いわゆるZPA(zone of polalizing activity)領域に限局しており,その後,指骨軟骨凝集塊にその発現部位が変化する. PB-カドヘリンのこの様な発現様式は各種組織・器官の形成に関与する形態形成関連遺伝子,特にShhやFGFファミリー,wntファミリーの各種因子の発現とよく似ており,PB-カドヘリンの発現がこれらの因子により制御されている可能性を推測させるものである.2. マウスおよびヒトPB-カドヘリン遺伝子のゲノムクローニングを行った. マウスに関してはすでにほぼ全長に相当する領域の構造決定を済ましており,現在,マウスおよびヒトにおける染色体マッピングを行っている.3. dominant-ncgalivc型PB-カドヘリンを小脳形成領域に特異的に発現するトランスジェニックマウスの作製を試みた. その結果,すでに5系統のトランスジェニックマウスを得ることに成功しており,順次,その表現型の解析を進めている.
著者
酒本 勝之 田中館 昭博 野城 真理
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

多周波インピーダンスCT装置の製作と多周波インピーダンスCTの応用前に済ましておくべき生体電気特性の基礎的検討を以下の様に行った。1.多周波インピーダンスCT装置の作成:位相検出のため高精度の電子素子を用いた回路設計と試作を行った。その結果、振幅に関し周波数50kHzでの従来のインピーダンスCTで得られた精度と同等の結果が得られた。しかし、高周波数(約100kHz以上)で、浮遊容量の影響、周波数切り替え時での相互干渉が大きく、充分な位相検出の精度が上がらず、設計変更をする必要があった。2.細胞内外液量分布の変化と生体組織の電気インピーダンス変化との関係:細胞内外液量分布の変化と生体組織の電気インピーダンス変化との関係を流動血液を用い、理論と実験を持って検討した。また、有限要素法による数値解(ラプラスの方程式の解)によりシャドウイフェクトの影響を検討した。以上の結果,シャドウイフェクトの影響により、細胞外液抵抗の変化率は細胞外液量の変化率より小さいが、細胞内液抵抗の変化率は細胞内液量の変化率にほぼ等しいことが分かった。3.人工透析時の細胞内外液変動の検討:人工透析時に患者の下肢での電気インピーダンス変化の測定を行ない、人工透析中の細胞内外液の変動を裏付ける結果が得られた。特にショック時でのインピーダンス値は不定期で急激な変動が見られ、細胞内外液量に大きく急激な変動が見られることが示唆された。4.組織温度の変化による組織内血液量の変化の測定:電気インピーダンス法を用い筋組織温の変化による組織内血液量の変化を推定した。温度の上昇により血液量の増加が推測され,従来考えられている通りの結果が得られた。
著者
長沢 和俊 趙 靜 張 樹春 劉 文鎖 王 宗磊 李 肖 王 炳華 杉本 良 昆 彭生 荒川 正晴 櫻井 清彦 大橋 一章 岡内 三真 WAN Zong Lei WAN Bin Hoa ZHANG Shu Chun ZHAO Jung 劉 文すお 趙 静 昆 彭夫 劉 玉生 柳 洪亮 小澤 正人 于 志勇 李 宵 夏 訓誠 昆 彰生
出版者
早稲田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

われわれは平成6年から同8年にかけて、トルファン地区の総合調査を実施した。調査はそれぞれ分担研究者の専門により、美術史学の大橋教授はベゼクリス、トスクチ仏洞を、故書学の荒川助教授はトルファン文書の研究を行なったが、とくに共通のフィールドとしては、交河故城西方の溝西墓の発掘調査に全力を傾注してきた。周知の通り交河故城は今から2200年前から広くこの地方を支配してきた車師前国の都城で、溝西墓にはその車師前国時代の墓と、5世紀の高昌国から唐代にかけて、この地方に進出した漢民族の古墓群があり、その総数は2000基以上もある。以下、溝西墓の発掘調査を中心に、3年間の研究実績を総括してみると、次の通りである。(1)平成6年度:初年度はまず全隊員により、トルファン地区のGeneral Surveyが行われた。即ち高昌故城、アスターナ、ベゼクリクチ仏洞、蘇交塔など、トルファンの主要史跡を踏査し、各遺跡の史的意義、トルファン文書との関連などを調べた。さらに共通のフィールドとしての交河故城西方の溝西墓については、頼るべき地図がないので、新疆測量部の協力により、溝西墓(東西約3km、南北約1km)全域の測量を開始した。この測量により平成6年度末までに全域の1/500地図が出来上った。また王炳華氏の選定により、溝西墓のほぼ中心部で4か所の高昌国時代の墓を試掘した。その際、田中地質コンサルタントKKの協力を得て、遺跡の電磁波探査、気球による航空測量などを行なった。こうした物理探査は中国とくに新疆では最初の試みで、多くの考古学関係者の関心を集めた。この年に発掘した第2号墓からは墓碑が出土し、この墓は某氏の妻氾氏の墓で、589年に没したことが確認された。これによって溝西墓は、交河城にいた高昌貴族(6〜8世紀)と唐人の墓であることが分り、今後発掘地域を拡大することにより、アスターナと同じようなミイラ、古文書、絹織物等、副葬品の出土が期待された。(2)平成7年度:2年目には西北部の高昌国の豪族、麹氏と張氏の螢城から2か所、中央部のマウンドのない墓(三年物理探査で発見)2か所、南部の唐代の墓と思われるもの5墓計9基の墓を発掘、2個の墓誌、未盗掘の墓1基を発掘した。発掘後、墓の中央にトレンチを入れ、墓の構造も検討した。また田中地質の気球により前年度失敗した溝西墓、交河故城の空中撮影に成功した。今年度は9基の墓を発掘したが、ここは盗墓が盛んでほとんど盗掘されており、かつ墓室内の湿度・気温が意外に高く、有機物やめぼしい遺物は、ほとんど出土しないことが明らかになった。(3)平成8年度:そこで今年度はまず次の基礎調査の達成をめざした。(1)遺跡全域の1/500地形図の作成。…これは平成6-7年度に完成した。(2)250m四方の遺跡地図の完成…本年度の夏、不足分を補って完成。(3)全古墓の実測(Numbering)とデータベース化…実測は今夏終り、現在早稲田大学電算室でデータベース化しつつある。ついで本年度の発掘調査は、遺物の出そうな高い地域の墓4か所で8基の墓を発掘した。しかしこれらの高い地区の墓はいずれもすっかり盗掘されていて、遺骨のほか何も残っていなかった。そこで発掘主任の岡内教授は発想の転換をはかり、車師前国期の墓を発見し、ここを発掘した。その結果、そこから黄金の王冠、黄金の指輪、ブロ-チ、南海産の貝符、星雲文鏡が出土し、近くの17号墓からは黄金の髪飾り、トルコ石の首飾り、黄金製のバックルや脚飾りなどが出土し、車師人の王侯・貴族の黄金装飾品がワンセットで出土し、併出した星雲文鏡や五銖銭から、時代も前一世紀と特定でき、王炳華所長も「これだけ金製品がまとまって出土したことは新疆はもとより全中国でも珍しく、おそらく今年度の中国考古学で最も重要な発掘の1つ」と評価された。これらの出土品のうち王冠は明らかにスキタイ・サウロマタイ風で、ブロ-チや指輪は、西アジア工芸品の影響をましており、バックルや足飾りはモンゴル高原から青銅の類似品が出ており、貝符は南海産、漢鏡と五銖銭は中国の影響をまし、当時のトルファンが東西文明の十字路にあったことを示している。又殉葬馬や鉄鏃、轡の出土は車師が騎馬民族であることを示している。
著者
坂本 元子 藤沢 由美子 石井 荘子 小林 幸子 川野辺 由美子
出版者
和洋女子大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

生体防衛反応に及ぼす無機質・微量栄養素欠損の影響を検討する目的で、栄養素としてマグネシウム(Mg)をとりあげ、Mg欠乏ラットを用いて検討を行った。初年度はMg欠乏時の補体系の動態を、2年目はMgのmarginal欠乏状態時及び欠乏初期の補体系の変動を観察した。更に3年目はMg欠乏時の免疫応答能について検討した。いずれもSD系の雄ラットを用い、Control食(Mg:73ppm)、Mg欠乏食(Mg:10ppm)及び2年目は低Mg食(Mg:30ppm)で飼育し実験に供した。補体系の検討は各飼料で3週間飼育後回復食を投与、各週毎の血中補体C3濃度、補体溶血活性(CH50)等を測定した。Mg欠乏初期の検討は、欠乏食飼育0、1、2、3、5、及び7日目の血液を同様に実験に供した。免疫応答能の検討では、欠乏食飼育1、2週目の脾臓及び腹腔マクロファージ(Mφ)を用い、マイトジェン(ConA、LPS)刺激による幼若化反応及びサイトカイン(IL-1、IL-2等)産生能を検討した。補体系の動態はC3濃度及びCH50がMg欠乏食飼育により著明な上昇を示し、この変化はMgの補充により回復した。また、Mg欠乏状態の程度が強くなるに従ってC3濃度及びCH50は上昇していた。Mg欠乏初期の観察では、C3濃度及びCH50の上昇が顆粒球数の増加に先がけて観察された。従って、Mg欠乏時の補体系の上昇はMg自体の欠乏で引き起こされ補体の活性化に伴って産生されるfragmentの作用により白血球の増加が起こる可能性が示唆された。一方、免疫応答に及ぼすMg欠乏の影響では、ラットの脾細胞マイトジェン刺激試験で、欠乏食飼育1週目においてConAに対する反応性が著しく低下していたが、その時のIL-2産生の低下はみられなかった。MφのIL-1産生低下も認められないことから、Mφの他の機能である抗原提示能やリンパ球増殖及び抑制等の機能の一部がMg欠乏により変化している可能性も考えられ、更に詳細な検討が必要であると思われる。
著者
古木 達郎
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

苔類ツキヌキゴケ科について多様性と種分化を研究し、Mizutaniaについて雄枝を初めて発見し、かつ植物 体は他に類縁を見いだせないほどネオテニーが進んでおり、非常に特異であることを論じた。また、日本産 の分類学的再検討によって3属18種を認めた。トサホラゴケモドキとツキヌキゴケのタイプ標本の解釈の誤り、 フジホラゴケモドキが台湾産Calypogeia formosaと同種であること、タカネツキヌキゴケが基本種と同種であ ることなどを確認した。更に、ハワイ諸島産について3属6種、マレーシアに2属種5を認めた。
著者
宮入 興一 樋口 義治 黍嶋 久好 宮沢 哲男
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の成果は、「平成の大合併」によって基礎自治体が広域化、大規模化し、これに対応するために制度が形成されてきた都市内分権にともなう「地域自治組織」と「住民自治組織」との重層的な仕組みについて、合併の背景や合併経緯、合併方法まで含めて「多層的内部自治組織」として構造的に解明し、それらを類型化して比較分析することによって、「多層的内部自治組織」の本質を究明するとともに、それらが様ざまな形態をとることの意義を住民自治の観点から理論的・実証的に解明し、広域的市町村におけるより好ましい地域自治のあり方を探究しえたことにある。
著者
花田 勝広
出版者
滋賀県野洲市教育委員会 文化財保護課
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

研究の目的古墳時代の渡来人は、ヤマト政権内部の技術変革と支配構造に影響を与えたこと知られる。古墳時代中期以降、須恵器・韓式系土器などの遺物・鍛冶遺構から技術系工人、横穴式石室などの群集墳に埋葬される固有性が顕著な事例では検証することが可能である。文献史学のミヤケ制を古墳群・遺跡・遺物などの考古資料を積極的に用い、渡来系氏族の存在を検証・新たな展望を示唆した。ヤマト政権の地域支配に渡来人が従来知られる以上に積極的に関わっており、本年度の研究費で下記の研究を実施した。視点と実施内容大型群集墳等の横穴式石室の実測調査は、平成20年7月~3月に集中的に花田が単独で実施した。ミヤケ推定地の遺物精査を平成20年8月~3月)に実施し、渡来人の墓制の実態と様相を、明らかにした。さらに、従来の韓式系土器などの遺物に加えて、私が専門に進めている大壁建物などの遺構を実査・確認することにより、渡来人集団の墓制の摘出を行った。平成20年11月に古代学研究会で、現状の成果を報告・要旨を一担整理した。平成21年1月以降は原稿の成稿に専念した。研究内容と成果基礎的資料の作成のため、渡来人の群集墳である大和の龍王山古墳群の開口する32基の実測調査を行った。平尾山古墳群の横穴式石室の実測は開口する10基の実測を行った。平尾山古墳群は、東洋文庫の梅原末治考古資料の目録調査を行い、消滅した20基の古墳石室図を確認した。群全体の石室間の規模格差・構築方法を考慮し実測を行った。画一化された横穴式石室の大群的な集約はヤマト政権の墓制へ規制とみた。渡来人が被葬者集団であり、墓制の実証的な横穴式石室のデーターを作成しながら、大型群集墳の形成の成因がミヤケ制と考えられるとの結論となった。畿内大型群集墳の中枢構造の渡来系氏族の高安・安宿郡の集落の把握、ミヤケ制の展開を知るため、畿内型横穴式石室の普及・確立過程を首長墓と併せて解明するため、福岡市那津ミヤケの設置された玄界灘沿岸、ミヤケの設置記事のある行橋市周辺の横穴墓、筑紫君磐井拠点地域の久留米市古墳など、渡来系資料の実査・古墳精査・報告書・論文の収集を集中的に行った。資料調査は、福岡・市埋文センター・宗像市・福津市・古賀市・那珂川町・前原市の渡来系遺物資料の実査と周辺の古墳の現地精査、飯塚市・行橋市・久留米などでも古墳の現地精査を行った。岡山県児島ミヤケや三宅里を調べるため岡山県総社市でこうもり塚・江崎古墳の精査を行った。渡来人の東海への渡来系資料精査のため、名古屋市の博物館の渡来系遺物実査を行った。ミヤケの設置は、畿内地域が渡来人集団に初源的な戸籍や編戸を伴った可能性が高く、大型群集墳は渡来系集団の造墓である可能性が高い。吉備ミヤケ周辺では古墳が当初地域的な特性を示す横穴式石室が形成されるが、7世紀初めには畿内型石室となる。筑紫の玄界灘沿岸には、那津ミヤケが設置されるが、墓制は福室の九州型石室であり、墓制の転換がなされていない。しかし、須恵器・製鉄遺跡は6世紀末以降にヤマト政権による直接的な生産支配が行われている。渡来系資料も数多く出土しており、渡来人の積極的な関与がなされている。欽明朝のミヤケ制は畿内・吉備は直接的であったが、他地域は、推古朝以降に制度的変革がなされているようだ。ヤマト政権の地域支配であるミヤケ制の解明は、墓制や渡来系遺物の様相より、渡来人の痕跡を明らかにすることにより、制度を考古学的資料から明らかにできた。また、畿内の横穴墓が豊前のミヤケ設置地帯から系譜を引くものであり、ミヤケ設置に伴う集団の畿内への移住が考えられる。史料から見ると秦氏の集住地帯である
著者
川島 均
出版者
松本大学松商短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

運動習慣が海馬の神経新生を促進し、海馬の機能である記憶・学習の向上をもたらすことが多く報告されているが、そのメカニズムは不明のままである。近年、神経の分化や新生にマイクロRNA(miRNA)と呼ばれる小さなRNA分子が関与することが示唆されている。そこで本研究では、神経新生をもたらすことが知られている12日間の自発的走運動がmiRNAに及ぼす影響をマウス海馬において調べた。その結果、調べたmiRNAにおいて有意な変化を見いだすことはできず、もっと早い段階において海馬miRNA発現が変化するのではないかと考えられた。
著者
近森 秀高
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究では、3個のタンクからなる単純な洪水流出モデルにカルマンフィルターを併用した排水機場洪水位実時間予測システムについて、カルマンフィルターの適用条件およびモデルの単純化が予測精度に及ぼす影響と、この予測システムに基づく排水機制御システムの有用性について吟味した。得られた結果は以下のようである。1.この予測システムを用いて、昭和47年7月および昭和61年7月豪雨時の巨椋・久御山両排水機場における洪水位の予測を行い、カルマンフィルターの適用条件と予測精度との関係について吟味した。その結果、状態変量の推定誤差分散行列の対角項は1×10^<-3>、システム誤差分散は1×10^<-2>〜10^<-3>、観測誤差分散は1×10^<-2>未満程度がよいことが分かった。2.予測システムを単純化した場合の予測精度の変化について検討した。その結果、洪水位予測の際重要になるピーク水位の予測誤差に着目すると、a)上流域からの流出は非線形タンク1個で表現してもよいこと、b)上流域タンクの孔係数は流出解析の結果に基づいて固定しておいても実用上差し支えないこと、c)他流域からの流入やポンプのon-offにより水位変動が激しい場合は、氾濫域タンク水深をフィルタリングの対象とした方がよいこと、などが明らかになった。3.セルフチューニングコントロール理論を適用して、排水機実時間制御システムを構築し、このシステムを巨椋流域で発生させた10〜100年確率の仮想出水に適用した。その結果、この制御システムを用いた場合、排水規則に準拠して排水量を決めた場合に比べ、洪水時のピーク水位はあまり変化しないが、流域低地部での湛水時間は大幅に短縮できることが分かった。しかし、水位低減時、排水機が激しい間欠運転が起こし、排水管理上問題となることも明らかになった。
著者
須田 千里
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

当該研究期間における主な研究成果は以下の通りである。1、『風流線』における橘南渓『東遊記』の影響。『風流線』「手取川」で、工夫たちが手取川上の空中を飛行する男女の姿を目撃し、それを二柱の神と考えて地震や津波の前触れかと噂し合う場面は、『東遊記』巻之二「松前の津波」に拠る。2、『白牛』における『白縫譚』第二十七編(柳下亭種員作)の影響。『白牛』の遊女屋の女主人の形象は、『白縫譚』で牛のイメージで描写されるお牛に拠る。3、『風流線』『続風流線』における草双紙の影響。(1)草双紙的見立て。本作は大津絵の枠組みで捉えられており、滑稽性や伝奇性が顕著なことなどから、作品全体は草双紙に見立てられていると考えられる。(2)俵藤太秀郷のムカデ退治譚を踏まえ、お龍と巨山の対立が設定されている。(3)柳亭種彦『偐紫田舎源氏』の影響。仲働のお辻が双眼鏡で見回す趣向は、『偐紫田舎源氏』第二十編に拠る。また、幸之助が美樹子にわざと言い寄ったところ、彼女の方も幸之助を養子とした上で姦通しようと持ちかける設定は、『偐紫田舎源氏』第二編に拠る。(4)二世柳亭種彦作・二世歌川国貞画『七不思議葛飾譚』第六編の影響。『続風流線』「七箇の池」で、三太の養母がヒロインお龍の絵姿を調伏する場面は、『七不思議葛飾譚』で、厚ぎの姥がま萩の方の絵姿を板に張り付け、ヒキガエルや蛇などを供えて呪詛する設定に拠る。4、『夜叉ケ池』における柳亭種彦『綟手摺昔木偶』の影響。前者の舞台「越前国大野郡鹿見村琴弾谷」は架空のもので、『綟手摺昔木偶』冒頭、女仙赤魚が住む「琴引谷」に拠る。また、末尾で赤魚が飛び去るときの地震も、『夜叉ケ池』末尾のそれと対応する。5、『神鑿』における馬琴『頼豪阿闍梨恠鼠伝』の影響。『神鑿』で、人形の精が坊主と双六を打つ場面は、『頼豪阿闍梨恠鼠伝』巻之二に見える、双六を打つからくり人形に拠った可能性が高い。
著者
角田 力弥 中村 直哉
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

我々は科研費の助成を受けて、濾胞樹状細胞(FDC)の新規機能的マーカー:胚中心Bリンパ球(GCB)のEmperipolesis能を発見し、FDCはこの密接な細胞相互作用を介してGCBのアポトーシス感受性を変動させ、そのセレクションにも積極的に関与していると報告してきた。今回はこの研究をさらに発展させ、FDCはに再発現するRAG-1&RAG-2も制御している可能性を検索した。ただ、研究を始めてまもなく、改めてRAG-1&RAG-2が成熟Bリンパ球に特異的に再発現する事自体が疑問視されるようになり、我々の研究も依然として推敲を重ねている途中であるが、これまでの成績からいえることは、(1)ヒト扁桃の成熟Bリンパ球に明瞭なRAG-1&RAG-2の発現はない。(2)それをrIL-4/CD40で活性化させるとRAG-1&RA6-2の発現がで時折観察される。(3)しかし、FDCに包み込まれた分画Bリンパ球に発現の有意義な変動はなかった。(4)29例のB細胞腫瘍株でのRAG-1&RAG-2の発現をサーベイすると、Follicular lymphomaのほとんど(3/3)とDiffuse large B cell lymphomaの亜群(centroblastic 1/9,T cell/histiocyte-rich 5/7)にメッセージが確認された(中村ら、発表)。以上のことから、FDCは胚中心のRAG-1&RAG-2発現現象に積極的に関与していないらしい。ただ、B細胞腫瘍株での検索ではRAG-1&RAG-2発現が胚中心成熟段階と関連深いことを改めて示唆しているので、意義についてはさらに現在の検出実験系の感度を上げたり、その他の遺伝子発現との総合的な検討をくわえた研究を続け、将来に成果を発表したい。
著者
田村 智淳 桂 紹隆 フランシス ブラサル
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年以降、入力済みの梵文テキスト(Vaidya本)、チベット語テキスト(デルゲ版)、漢訳テキスト(60・80・40巻本)の校正を開始し、同時にSuzuki本、チベット語ペキン版、収集した諸写本との校合に従事した。研究期間中に収集した28本の写本の中、5本の画像化を終了し、残余については10〜50%のスキャン率である。総体的には約30%を画像化した。華厳経入法界品第1章の完全な"Tri-lingual text"をめざして、以下のような最終報告書を作成した。(1)既刊本のVaidyaテキストの下に、Royal Asiatic Society所蔵の写本の読みを全文ローマ字体で記載した。さらに、Suzuki本、Baroda写本、Cambridge写本の異読をfolio-lineの数字を伏して記載した。(2)デルゲ版チベット語テキストの全文を梵語テキストの下に記載し、ペキン版の異読をその下に附した。(3)漢訳3本の全文をチベット語テキストの下に記載した。これらの作業を通して気づいたことは、少なくとも第1章に限れば、梵語テキストおよびチベット語テキストに関しての異同は、そのほとんどが書写ミスであり、また語句の順序の違いであり、新しい解釈の資料となりうるようなものは見いだせなかったことである。しかし、同様の作業を入法界品の全章にわたって完了するならば、あるいは何かを見いだせるのかもしれない。特に、漢訳3本のあいだの異同は多く見られ、それぞれの漢訳の梵文原典を推察することは今後の課題であろう。
著者
安藤 正規
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

1.2002年8月〜2003年8月にかけて、大台ヶ原においてニホンジカのルーメン液を用いたin vitro培養試験を2週間×3回おこなった。すなわち、ニホンジカの主食であるミヤコザサに樹皮を5%混合した試料と、ミヤコザサ単体の試料をそれぞれ培養し、発酵過程の違いについて調べた。その結果、樹皮の5%の混合はササの消化には影響を及ぼさないことが明らかとなった。また、樹皮単体の消化率は常にササの消化率よりも低いことが明らかとなった。さらに、春(5、6月)の実験において、樹皮の消化率が負の値を取ることが多かった。これは、樹皮によるルーメン液中のタンパク質もしくは微生物の吸着を示唆していると考えられる。この結果から、樹皮はルーメン内でササとは異なる反応をし、またその反応は季節によって異なる可能性があるということが示唆された。2.2002年8月〜2003年8月にかけて、大台ヶ原においてニホンジカの血液サンプルの採取をおこない、19個体分のサンプルを得た。この血液について血中尿素窒素濃度と血中ミネラル濃度(Ca、Mg、NaおよびK)を測定した。シカの血中尿素窒素濃度には季節的な変化は見られず、また家畜(ウシ)の標準濃度より高い値であった。この結果から、大台ヶ原のシカは、サンプルのなかった冬季を除いて良好な栄養状態を保っていることが示唆された。また、血中K濃度が夏季(8月)に高い傾向が見られた。過去の研究から、シカの主食であるミヤコザサのK濃度は夏季に高くなることが明らかとなっており、シカの血中K濃度はこの影響を受けて夏季に高い値を示すと考えられた。3.上記を含むこれまでの研究結果を基に、論文を2編作成した(投稿中および投稿準備中)。
著者
中山 俊秀 大島 稔 中山 俊秀
出版者
東京外国語大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

本研究最終年度である平成14年度は、研究成果の取りまとめに力を入れる一方、引き続き現地調査も行い、言語資料の量・質両面でのよりいっそうの充実をはかり、古アジア諸語研究の基盤整備をすすめることができた。また、これまで蓄積されてきた古アジア諸語の記述研究の成果をより広いコンテクストにおくべく、北太平洋を挟んで対峙する北米北西海岸地域の言語・文化の記述研究も並行して行った。チュクチ・カムチャツカ語族のアリュートル語に関しては、研究協力者の永山ゆかり(北海道大学大学院)が、ロシア連邦カムチャツカ州のコリヤーク自治管区においての現地調査を実施した。アリュート語については、研究協力者の大島稔(小樽商科大学教授;H14文部科学省在外研究員)がコマンドルスキー諸島ベーリング島においてアリュート語ベーリング島方言及びメドヌイ島方言に関する調査を実施した。研究代表者および研究協力者の中山久美子(カリフォルニア大学大学院)は北米北西海岸側の調査をカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー島西岸で行った。これらの現地調査で得られた言語の一次資料はこれまでの調査研究による資料とともに電子化した。語彙・文法データはデータベース化し資料の利用価値・利用効率を高め、音声はデジタル化し音質の劣化を防ぐとともにやはりデータとしての扱いやすさを向上させた。調査研究の成果刊行物としてはさらに文法概説およびテキスト集3編をまとめ、さらに、ロシア人研究者の著したアリュートルの言語と民話についての記述の翻訳作業を進めた。
著者
坂野 昇平 平島 崇男 鳥海 光弘 鈴木 尭士 大貫 仁 原 郁夫
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

昭和61年度は, 各自の野外調査と討論会を開いた. 討論会は11月22・23の両日, 京都府立セミナーハウスにて開催した. 参加者は総研メンバー・院生併せて38名に及び, 三波川帯に関する巾広い分野からの話題提供が行われた. 名発表に対して活発な議論が展開され, 大変レベルの高い討論会であった. 原岩年代論・変成相系列・変成年代については大方の意見の一致を見たが, 構造論と熱構造については意見の一致が得られなかった. 特に注目を集めた報告は, 板谷によるK-Ar年代測定であった. 彼は四国中央部汗見川で約70個の年代測定を行ない, 変成度や熱構造との関連を報告した. この研究により, 三波川帯は変成年代測定でも世界的レベルに達した. これ以外では, 横山による, 四国の第三条久万属群からの, 現在露出している三波川変成岩と同じか, それよりも高変成度の岩石由来の礫岩の発見, 高須・上阪による, 四国中央部五良津角内岩体からの異なる熱史を持ったエクロジャイトの発見も注目された. 討論会の発表内容は総研ニュースレターとして印刷し関係者に配布した.昭和62年度は討論会を開くにはやや予算が不足していたので, メンバー各自が野外調査を行うとともに, 自費研修として, 京都・舞鶴・徳島で開かれるオフィオライト野外討論会(昭和63年3月6-15日)に参加することとした. 総研報告書は, 昨年度の討論会の内容をもとに編集中である. また, 三波川変成帯の岩石学を中心とし, 世界各地の高圧変成帯の解説を加えた特集『高圧変成帯の岩石学』を月刊『地球』で発刊することにし, 現在原稿の編集中である. さらに, 三波川帯の原岩論・熱構造・時代論をJournal Metamorphic Geologyの特集号として出版する計画をたて, 編集部の内諾を得ている.
著者
金光 桂二 中島 敏夫 肘井 直樹
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、養菌性キクイムシとその共生菌、および穿入樹木の3者間の相互関係の解析を通じて、昆虫と菌との共生の機構を解明することを主たる目的として行われたものである。同一地域(愛知県北東部)に生息する2属4種の養菌性キクイムシ(ミカドキクイムシ(Scolytoplatupus mikado)、サクキクイムシ(Xylosandrus crasーsiusculus)、クスノオオキクイムシ(X.mutilatus)、ハネミジカキクイムシ(X.brevis)の生態を調査し、さらに坑道内および虫体上の胞子貯蔵器官(mycangia)内の菌相を分離試験により明らかにした。また、キクイムシの生育に伴う菌相の変遷とそれらの形態上の変化を明らかにするため、走査型電子顕微鏡(SEM)による直接観察も併せて行なった。本研究で新たに得られたおもな知見は、以上の通りである。1.養菌性キクイムシの材内生存率、穿入材サイズと坑道内産卵数との間にはそれぞれ正の相関関係が成立し、繁殖に好適な衰弱木や枯死木が量的に増加することによって、個体数を急激に上昇させる可能性を持つ。2.養菌性キクイムシの主要栄養源となる共生菌(PAF)は、種特異的なAmbrosiella属の菌であり、穿入樹種ごとに異なった酵母類は、副次的共生菌(AAF)と考えられた。3.養菌性キクイムシがmycangiaに共生菌を取り込む時期は、羽化直後の未成熟成虫期と考えられる。4.本結果で明らかにされた潜在的な繁殖力の大きさと、木質そのものに依存しない生存様式から判断して、4種の養菌性キクイムシとアンブロシア菌との間にみられた繁殖サイクルは、キクイムシ側にとってのより栄養価の高い食物資源の安定的供給と、菌側にとっての選択的な胞子の保護、確実な分散による生息域の拡大という相利共的関係を裏付けるものである。