著者
長南 治 伊藤 彰敏 大橋 あけみ 綿貫 雅章 古江 尚
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.11-17, 2002-02-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
18

イチョウ葉抽出物摂取が高血圧者の血圧に及ぼす影響を調べる目的で, プラセボを用いた比較対照試験を実施した。高血圧者16名を対象者とし, イチョウ葉抽出物40mgを含む飲料もしくは対照飲料を1日1本, 12週間飲用した際の血圧変化を調べた。さらに, 飲用開始時ならびに飲用終了時に採血を行い, 一般血液検査および血液生化学検査を行った。試験期間中, 対照飲料摂取による血圧変化は観察されなかったが, イチョウ葉抽出物飲料摂取により, 収縮期血圧, 拡張期血圧, 平均血圧の有意な低下が観察された。また, イチョウ葉抽出物飲料摂取により, 血中尿酸濃度の低下が認められた。飲用終了後のリバウンド現象はみられず, 自覚症状, 体重および一般血液検査・血液生化学検査などの諸検査においても, イチョウ葉抽出物飲料摂取によりGOT, GPTの上昇が認められた一例を除き, 問題となる変化は認められなかった。
著者
八木 遥 山本 義貴 臼窪 一平 中村 友香 下山 あさ子 東 修司 田畑 裕和 稲垣 育宏 小寺 隆二 柴波 明男
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.490-495, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

入院患者は睡眠障害を生じる事が多く,睡眠薬の服用が必要となる事例は少なくない。現在わが国で用いられている睡眠薬はベンゾジアゼピン受容体作動薬が多いが,筋弛緩作用や持ち越し効果などから転倒に至る危険性がある。従来の睡眠薬と異なる作用機序を持つオレキシン受容体拮抗薬(ORB)は筋弛緩作用を持たないとされており,安全面に優れていると考えられている。そこで,入院中に内服した睡眠薬の作用機序毎の転倒率を調査した。2017年4月1日~2017年12月31日で当院において転倒・転落があり,ORB,ベンゾジアゼピン系薬(BZD)及び非BZDを服用していた入院患者を対象とした。また,転倒発生前に各薬剤を服用していた患者を群分けし,転倒率を算出し比較した。対象患者のうち調査期間内の睡眠薬全処方人数は1,682人であり,全転倒件数は45件であった。睡眠薬の分類における転倒率は3群のうちORB群による転倒率が1.45%と最も低く,BZD群と比較して有意に低かった事から,ORBは転倒へ与える影響が小さい可能性が示唆された。また,非BZD群の転倒率においてBZD群と比較して有意に低かった事から,転倒予防についても考慮しBZDよりも非BZDを使用する事が望ましいと考えられた。また,転倒事例の患者に高齢者が多かった事から,転倒の危険因子を多数保有している患者が多かったと考えられ,睡眠薬を使用した事で転倒の危険性が増大した可能性がある。
著者
相澤 泰造 酒井 俊典 林 拙郎
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.26-33, 2010-01-25 (Released:2010-10-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

2004年9月28日から29日にかけて三重県の北側を通過した台風21号による豪雨を起因として,宮川村では多くの地すべり・崩壊が発生した。航空写真等で233箇所の地すべり・崩壊を抽出した結果,その大部分は崩壊であった。地すべり・崩壊の発生箇所と地質帯,累積降水量,最大時間降水量との関係を検討した結果,地すべり・崩壊は最大時間降水量が120~110mmの地区で多く発生したことが明らかとなったが,累積降水量との関係はあまり認められなかった。また,三波川帯と秩父帯では地すべり・崩壊の発生頻度に大きな差はなかったが,三波川帯では流れ盤で地すべり・崩壊が多く,秩父帯では受け盤で多かった。宮川村は多雨地区であり風化が斜面表層部に限られていたため,地すべりよりも崩壊が多く発生したことが原因と判明した。
著者
大木 裕子 飯島 佐知子
出版者
一般社団法人 日本看護管理学会
雑誌
日本看護管理学会誌 (ISSN:13470140)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.116-125, 2013-12-28 (Released:2018-08-10)
参考文献数
39

目的:文献検討により,患者の転倒リスクと予防対策の関連,および転倒リスク要因と予防対策の対応を調べ,それらの転倒予防効果を確認すること.方法:PubMed,CINAHL,医中誌Webを用い,2002~2011年の期間について,病院の入院患者を対象に複合的な転倒予防対策を実施した論文を検索し,28文献を抽出した.結果:患者の転倒リスクと予防対策の組み合わせ方には次の4種類があった.A)リスクスコア算出により転倒危険度を評価し,危険度別に対策を実施する方法,B)危険度の評価に加え特定のリスク要因に対して対策を実施する方法,C)転倒の原因となるリスク要因を識別するアセスメントにより対策を実施する方法,D)あらかじめ特定した転倒リスク要因に対応した対策を実施する方法である.これらの組み合わせ方の違いによる転倒予防効果の大きな相違はなかった.また,リスク要因として挙げられたものは,①認知,②移動,③①と②の組み合わせ,④薬剤,⑤その他の5分類であった.リスク要因に対する予防対策の組み合わせは多様であった.移動のリスク要因に対する,運動関連の対策で転倒予防の効果が期待されたが,その他の効果は決定的でなかった.結論:今後は,患者の転倒リスクと予防対策を結びつける最善の方法を,コスト面の評価を含めて検討すること,転倒リスク要因に対する予防対策の効果を明確にしていくことが必要である.
著者
小松原 明哲
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.230-237, 2017-08-15 (Released:2017-08-15)
参考文献数
15

Safety-Ⅱと,その方法論であるレジリエンス・エンジニアリングは,ヒューマンファクターズの国際的権威であるErik Hollnagel 博士らが提案してきたものである.細部については議論が続いているが,ごく簡潔にいえば,状況に応じた柔軟な対応による安全確保と向上といえ,いわば現場力を指すものである.Safety-Ⅱと対をなすものが,Hollnagel がSafety-Ⅰと位置付けるヒューマンエラー防止である.Safety-Ⅰ,Safety-Ⅱの議論では,そのテクニックにいきなり走るのは危険であり,背景に存在するヒューマンファクターズの理論構造を正しく理解することが強く求められる.本稿では,それらSafety-Ⅰ,Safety-Ⅱの概念,またそれに対応する方法論としてのヒューマンエラーの防止,レジリエンス・エンジニアリングについて,概要を述べる.
著者
北川 博之 横田 啓一郎 並川 努 花﨑 和弘
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.139-145, 2022-08-15 (Released:2022-09-15)
参考文献数
14

背景: 食道癌手術における空腸瘻は早期経腸栄養のアクセスルートとして有用であるが, 腸閉塞の原因となりうる. 空腸瘻と十二指腸瘻の腸瘻起因性腸閉塞と術後体重変化に与える影響を検討する. 対象と方法: 2013年3月から2020年11月に食道癌に対して胸腔鏡下食道切除術, 胃管再建を施行した109例の患者背景, 手術成績, 術後合併症, 腸瘻起因性腸閉塞, 術後1, 3, 6, 12カ月後の体重を, 空腸瘻群74例と十二指腸瘻群35例に分類して比較した. 結果: 十二指腸瘻群は空腸瘻群に比べて術前化学療法 (45.7% vs. 78.4%; P=0.001) と出血量 (150mL vs. 120mL; P=0.046) が少なかった. 腸瘻起因性腸閉塞は12例が空腸瘻群に生じた. 十二指腸瘻群は術後1カ月後の体重減少率が空腸瘻群より有意に小さかった (93.9% vs. 91.8%; P=0.039). 結語: 食道癌手術において十二指腸瘻は空腸瘻に比べて手術時間を延長することなく腸瘻起因性腸閉塞を防止し, 術後早期の体重減少を抑制し得ることが示唆された.

1 0 0 0 群馬県史

著者
群馬県史編さん委員会 編
出版者
群馬県
巻号頁・発行日
vol.通史編 5 (近世 2 産業・交通), 1991
著者
篠﨑 正郎
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.199, pp.199_17-199_32, 2020-03-30 (Released:2020-04-16)
参考文献数
96

Michael W. Doyle offers three main explanations for imperial expansion: the first being a metropolitan model, the second emphasising peripheral problems and the third based on the systemic model. The British Empire was dismantled by the early 1970s, but Britain resumed military engagement from the mid-1970s. Although this is not imperial expansion, the second explanation is appropriate: Britain renewed its commitment to the former imperial area because of its involvement in the local crises.Some crises in the former imperial area included those in the Indian Ocean, the Middle East, the Caribbean Sea and the South Atlantic. In the Indian Ocean, the Soviet Navy had maintained its presence since 1968, and the Soviet Indian Ocean Squadron was organised in 1974. This squadron and pro-Soviet forces in the littoral states posed a threat to Western interests. In Belize, there was the possibility of an invasion from neighbouring Guatemala in 1975 and 1977, and Britain was obliged to reinforce the garrison; Guatemala was demanding over a third of Belizean territory, and the dispute was not successfully resolved. In the Falkland Islands, the tension between Britain and Argentina increased in the late 1970s, resulting in the British government being unable to withdraw its ice patrol ship, which had merely maintained a token presence, and dispatching a task force during the 1977 crisis. In the Middle East, the Iranian Revolution in 1979 brought a regime change that was no longer pro-Western. Moreover, the Soviet invasion of Afghanistan in 1979 created tension in the Persian Gulf and put both the United States and Britain on alert. Then, the outbreak of the Iran-Iraq War in 1980 endangered the passage of merchant shipping through the Straits of Hormuz or within the Persian Gulf, resulting in the United States, Britain and France starting zonal patrols. All these crises lead to a study of Britain’s priority two commitments (i.e. its commitments outside NATO). However, it was not until the Falklands Conflict in 1982 that the British government decided to maintain its power projection capability, including three aircraft carriers.Why did Britain resume its commitment? It is difficult to find the cause in the metropolitan model, since the trade between Britain and the Commonwealth dwindled in the 1970s and the British economy was in decline, often cynically called the ‘British sickness’. It is also impossible to explain it using the systemic model, in light of the fall of Britain and rise of the Soviet Union and the Third World. Therefore, the local crises are the most persuasive argument for the reason for British engagement.

1 0 0 0 OA 山鹿語類

著者
山鹿素行 著
出版者
国書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第3 巻第24−32 士談第3−11, 1911
著者
小口 彦太
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.32, pp.1-48, 2022-03-15

1990 年代に入るや,鄧小平の「南巡講話」を突破口にして,中国の市場経済が本格的に始動し始め,これと符節を合わせて統一契約法が1999 年に制定された。この法律は中国内の市場経済を媒介するための基本法としてだけでなく,国内市場と国外市場を繋ぐ[接軌=レールを繋ぐ]ことを目的として制定されたものであり,したがって立法時にあって最新の国際的契約立法・思想を参照したきわめて先進的契約法であった。しかし,この法は2020 年の民法典の編纂にともない,その法典の中の一編として組み込まれることになった。しかし,そのことは統一契約法の諸規定がそのまま機械的に民法典の中に移し替えられたことを意味しない。統一契約法中の7ヵ条が削除され,26ヵ条が新設され,ほぼ無修正のまま民法典に継承された条文は僅か21.7%に止まった。このことは,統一契約法から民法典契約編への移行がきわめて大掛かりな作業であったことを意味している。そして,注目すべきことは,民法典編纂を契機として本格的注釈書が刊行されたことである。本稿は,民法典編纂に伴う「契約法」から「契約編」への条文の改変の在り様を逐条的に示し,あわせて法解釈論上興味あると思われる条文につき王利明主編『中国民法典釈評』合同編通則およびその他の注釈を【注記】の形で書き込んだものである。もとより本稿での注記はきわめて限られたものであり,今後これを拡充すると同時に,各条文の解釈に関する学説と裁判例の渉猟に努めたい。こうした作業を行う目的は二点あり,その一は,中国ビジネスに携わっている実務者にできるだけ正確な中国契約法の情報を提供することであり,その二は,比較法的関心であり,中国法と日本法の条文上および解釈論上の「ズレ」に着目して,何故このような「ズレ」が生ずるのか,その社会的要因は何なのかという問いを究明することである。
著者
川村 康 七野 敏光 中村 正人 Kawamura Yasushi Shichino Toshimitsu Nakamura Masato
雑誌
令和3(2021)年度 科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究成果報告書 = 2021 Fiscal Year Final Research Report, Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
巻号頁・発行日
vol.2018-04-01 – 2022-03-31, pp.420p., 2022-03-15

令和2年度は、当初は2回の研究会を開催する予定であったが、新型コロナウィルス感染症流行の影響により、対面形式での研究会の開催を断念せざるを得なくなった。これに代えて、研究協力者(中村正人氏、七野敏光氏)の助力を得て、電子メールを交換する形式で、1回の研究会を遠隔開催した。この研究会では、研究代表者が電子メールに報告の書面を添付して研究協力者両名に送付し、これに対する研究協力者からの電子メールによってそれぞれの専門領域の視点と知見にもとづく質問と意見を得、さらに電子メールによって質疑応答や意見交換を行うことによって、本研究課題の解決についての視野を広げることができた。この成果にもとづいて、『岩波講座 世界歴史 第7巻』(岩波書店、令和4年刊行予定)に収録予定の論文「法構造の新展開」(仮題)を執筆し、唐から元に至る法典編纂の歴史における宋勅の存在意義を確認することができた。また、唐律と慶元勅の対応検証による宋勅の構造の解明をめざして令和元年度に執筆した、本研究課題の中間報告にあたる論文「宋代以勅補律考:宋律勅合編序説」を『法と政治』71巻1号(関西学院大学法政学会、令和2年5月)に公表することができた。さらに、この論文で扱わなかった宋勅の篇目についても『慶元条法事類』からの勅条の抽出と復原の作業を進めることができた。令和2年度に開催した研究会の具体的な日程と主な内容は以下のとおりである。第8回研究会(令和3年2月2日~20日・電子メールの交換による遠隔開催):書面報告「唐明間における法構造の新展開」ならびにこれに対する質疑と意見
著者
麻木 孝郎 末岡 慎也 深澤 秀明 伊東 靖彦 古野 正憲 長 久
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
資源地質 (ISSN:09182454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-36, 2004-05-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Since 2001, Nittetsu Mining has been carrying out copper exploration activities in twenty-two promising areas in Northern Chile, which were extracted using ASTER image analysis. In these areas, Furano area in Region I has been selected as the most important target considering its high mineral potential inferred from the ASTER image analysis and its easy access.Furano area, covering 282km2, locates some 15km northwest of Cerro Colorado copper mine. Geology of the basement rocks mainly consists of lower Cretaceous andesite and Paleogene intrusive rocks. They are widely covered by ignimbrite and alluvium sediment of Tertiary to Quaternary age. The RC drilling program of 13 holes, totaling 3, 704m, was carried out on the prospective locations in the western part of the project area, which were selected by geological and geochemical surveys. Dominant copper and gold mineralizations were observed in some holes. Above all, a tourmaline breccia zone in silicified andesite showed average copper grade of 0.9% over the depth from 110m to 190m in one hole. The ore body shows 40m in width, dipping 55 degrees towards north, and is expected to be 400m continuation from the distribution of surface mineral occurrences. About 20 million tons of ore reserve was estimated above the depth of 300m. In another hole, drilled in ignimbrite-covered area, oxidized and corroded tourmaline breccia and underlying chalcopyrite-disseminated granite porphyry were observed. A secondary precipitation of chalcocite was also recognized in the lower part of the tourmaline breccia. These evidences suggest that the adjoining area covered by ignimbrite still has high potential for porphyry copper deposition. Additional drilling exploration is required around those holes.
著者
三嶋 孝 奥田 茂 大島 明 宋 桂子 平岡 力
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.1086-1093_1, 1979

早期胃癌を放置した場合どの位の時間でどのような進行癌に発育するかを知ることは重要なことであり,従来retrospective studyを中心に検討されてきた.しかしこの方法は初期変化が癌であるとの組織学的裏付けを欠いているためあくまで推定の域をでないといわざるを得ない.本研究は生検で癌と診断され,レ線,内視鏡で早期と推定されながら何らかの理由で6ヵ月以上経過が追跡された症例を収集し,早期胃癌から進行癌への発育進展をprospectiveに検討したもので次の結果を得た.(1)早期から進行への進展に要する時間をKaplan,Meierの方法で算出したところ36ヵ月を要することが推定された.(2)早期から進行への進展に伴う病型変化として次のコースを確認できた.(1)IIc ul(-)→Borr.II.(2)IIc ul(+)→Borr.III.(3)IIc+III→Borr.III.(4)III+IIc→Borr.III.(5)IIa→Borr.II.(6)I.IIc ul(-)→Borr.I