著者
岡島 康友 原田 貴子
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、書字運動を特徴づける三次元運動解析パラメータを探索し、右利きの軽症の右片麻痺者6例と右利き健常者10例を対象に、左右の手による書字運動特性を解析するとともに、麻痺による書字運動の変化を検討した。左右の手で1.2,6,15cm角の3種類の大きさの平仮名「ふ」を、初めに各人の自由な書体で、次に楷書体手本をなぞらせた。評点をペン先、示指MP関節位、橈骨遠位端の3ヶ所において三次元座標からオフラインにて、書字時間、書字軌跡長、各点の運動半径、そしてその運動半径比を計算した。運動半径比とはペン先の運動半径を1とした時の他の2つの評点における運動半径比で、手や腕を固定してペン先の動きだけで書字がなされれば0に近くなり、反対にペン先と手全体が一塊となった動きでは1に近い値を示す指標である。健常者の自由書字では字体が大きくなるほどペン先は速くなり、書字時間を一定にする傾向を認めた。利き手書字の習熟性の反映と解釈できた。加速度や躍度あるいは文字軌跡長/文字半径といった書字運動や文字を構成する線のスムースさを反映するパラメータの一部で、感覚障害のある麻痺手による書字の稚拙さを示すことができた。健常者の書字運動半径比の結果で、字が大きくなるほど評点は一塊となって動くが、その一塊性は右手より左手で顕著となった。一方、右不全片麻痺者において、感覚が正常であれば健常者の右書字と同じ運動半径比の特性を認めたが、感覚障害があると小さな字でも一塊の動きになることが示された。つまり、麻痺があっても、感覚障害がなければ、書字速度は遅くなるにもかかわらず運動半径に示される利き手の習熟書字の運動特性は保たれることがわかった。巧緻運動の特徴の1つとして、身体各部の運動の独立性をあげることができるが、本研究の示す運動半径比はまさに、そういった独立性・分離性を示すパラメータといえる。
著者
小林 吉之
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,ヒトが歩行中に転倒するもっとも主要な要因である『つまずき』が生じる一因を解明するために,これまで著者らが行ってきた研究で得られた知見を基に,ヒトが歩行中に足部の位置をどの程度正確に知覚できているか,その特性を実験的に明らかにすることを目的とした.本研究の結果,ヒトの足部は歩行中遊脚期にも30mm程外側に偏っている事が確認された.
著者
北村 勝朗 生田 久美子
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本研究が目指す理数科系領域の学習モデル構築に向け,(1)もの作りの体験を理数科系領域における学習の枠組みの中で再考し,理数科系領域の学習における教科の本質ともの作りとの関係構造を明確にする作業,及び(2)わざ職人を対象としたインタビュー調査によるもの作りの体験の描写,の2つの作業を実施した。まず,もの作りを再考する作業から得られた知見として次の2点があげられる。第1に,もの作りは,新たな発見に向けた工夫と反復が必要であり,そのために長い年月に渡る試行錯誤の体験が不可欠となる。第2に,そうした意味において,もの作りは理数科系教育の本質に大きく迫る探索活動と位置づけられる。次にインタビュー調査による体験の描写に関しては,厚生労働省による平成17年度現代の名工として表彰されたわざ職人から,次の基準により20名の対象者を選出した。(1)理数科系領域における卓越したわざを発揮している職人,(2)個人の持つ技能の卓越性がきわめて優れた技能として評価されている,(3)製造法等の開発の成果も高く評価されている,(4)現在,表彰を受けた技能に関わる職業に従事している,(5)後輩職人の育成も高く評価されている。また,職業能力開発局能力評価課による国際技能競技大会(国際技能オリンピック)日本代表者から,次の基準により12名の対象者を選出した。(1)平成17年度の国際技能オリンピックの日本代表選手として優れた成績をおさめている若手職人,(2)理数科系領域における技能オリンピックのわざ職人,(3)オリンピック大会においてわざを高く評価されている。以上の基準に基づいて選ばれた対象者に対し,インタビュー調査を実施した。分析作業の結果,わざ職人は,ものづくりを自身の体験として取り込み(意味の発見),徹底して追求し(探索的体験),自他が一体化される過程(知識の統合)によって構成されることが示唆された。
著者
山口 佳三 石川 剛郎 清原 一吉 泉屋 周一 佐々木 武 佐藤 肇 大仁田 義裕 中居 功
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

研究の目的は,微分方程式系をJet空間の部分多様体として,幾何学的対象ととらえて,接触同値問題を核に,微分幾何学および特異点論の手法で研究することにある。今年度は最終年であるので,当初に掲げたつぎの6つのテーマをそれぞれまとめる研究を行った。(1)二階一未知関数偏微分方程式系の接触同値問題,特にE.CartanによるG_2-modelを多変数に一般化したG_2-型偏微分方程式系の研究。(2)Monge-Ampere方程式の解の特異点と衝撃波の構成。(3)微分方程式系のsymbolより生じる階別Lie環の研究および高階有限型微分方程式系(完全積分可能系)の同値問題とその応用。(4)線形高階有限系微分方程式系の同値問題の射影部分多様体論とGauss-Schwarz理論への応用。(5)微分式系の種数の概念のWebb幾何による意味付け。(6)測地流が完全積分可能系となるRiemann多様体の構造解明。(1)の課題については、成果発表として,Duke大学Bryant教授,Columbia大学倉西教授,Minesota大学Olver教授を訪れ活発な討議と共同研究を行った。(2)の課題は、泉屋が,まとめを雑誌「数学」に発表した。(3),(4)の課題は、高階常微分方程式系の同値問題を含み、背足による線形可積分系の線形同値問題を接触同値問題に発展させる研究である。基本的な成果を今年,研究代表者が八ツ井とともに公表した。(4)については,背足の線形方程式系に対する剛性定理の射影幾何学的解釈を研究代表者が,Jun-Muk Hwang教授(KIAS)とともに,まとめた。(6)の課題は、Liouville曲面の一般化の研究であり、完全積分可能系の大局的理論である。清原が,今年はそのKahler版をまとめた。
著者
大嶽 秀夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1993年の「政治改革」は、派閥の力を弱めることによって、相互に矛盾する二つの動きを日本政治に生み出した。一つは、党執行部のリーダーシップの強化であり、もう一つは個々の議員の相対的自律性の強化である。いずれの方向が今後優勢となるかはみきわめが難しいが、その行方を左右するものとして、2つの要因が重要である。一つは、与党が連立をいつまで必要とするかである。公明党との連立が不可避である限り、党執行部の党内統制力は強い状態にとどまるであろう。他方、もう一つの要因として、1970年代中期からのポピュリズムの断続的登場が挙げられる。ポピュリズムとは、通奏低音としての政治不信(政党とくに与党と官僚への不信)を背景に、時折現れる特定政治家への高い期待の急浮上(と急落)のことであるが、これが近年再三にわたって登場している。日本新党ブームを起こして首相に就任した細川護煕、(自社さ連立時代に)厚生大臣として薬害エイズ問題を「解決」し国民的人気を博した菅直人、派閥内で孤立していながら国民的人気で自民党総裁に選ばれ、九六年総選挙で自らを党の「顔」にしたテレビCMによるイメージ・キャンペーンで勝利を収め、「六大改革」に邁進した橋本龍太郎、森政権時代に「加藤の乱」で国民の喝采を博した加藤紘一、二〇〇一年の自民党総裁選挙で突如人気をさらった小泉純一郎と田中真紀子のコンビなどが、こうした突発的で強い期待を集めた政治家たちである。以上の特定政治家への国民的支持の一時的急上昇の主体は無党派層が中核となっっているとみられるが、それが自民党内権力構造に大きな影響を与えている。そして、その支持を背景として、九〇年代以降のポピュリストたちは、ネオ・リベラル型政策を掲げて、日本政治の改革に邁進する姿勢を示してきた。換言すれば、党内基盤の弱いポピュリスト政治家たちは、(自分の所属する政党を含む)政党や官庁を敵に仕立てて、改革の姿勢を演出する。これが今日日本政治の常態となっているのである。
著者
小沢 博 有馬 哲夫 大西 洋一 中村 隆 大河内 昌 石幡 直樹 ROBINSON Peter
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、英文学に現れた異人概念の変遷を比較検討することにより、英文学及び英国文化を、広義の異文化交渉史の中で捉え直すことにあった。新大陸や東洋のみならず、文学的尚古主義、階級差、性差といった広い意味での内なる異文化も対象とし、そこに継起する異人概念の変遷を検証することにより、英文学を内と外の複眼的視点で相対化しようとする試みである。こうした観点から、小沢は、英国ルネサンス期に見られる外国人排斥運動の思潮を検討し、これが当時の演劇作品と上演活動にどのような影響を与えているかを考察した。石幡は、英国ロマン派文学に顕著な尚古主義や高尚なる野人の概念を異文化への憧憬の象徴的行為として捉え、ロマン派思潮台頭の背後にある社会文化的要因を当時の異国趣味との関連で検討した。大河内は、19世紀における階層社会の形成を異人としての下層階級の形成として捉え、当時の政治経済理論がこうした内なる異人の生産といかに連動していたかを政治社会史的文脈の中で探った。中村は、19世紀英国小説におけるユダヤ人の表象を検証し、大衆文化の担い手としての小説がいかに通俗的な異人観を形成していったかを考察した。大西は、17・18世紀英国演劇における新大陸と東洋の表象を比較検討し、西欧の西進と東進がもたらした異なる二つの非西欧文化との交渉を演劇の文化史として考察した。有馬は、アメリカ文学におけるインディアンの表象の変遷を俯瞰し、これを英国の植民地政策との関連で比較文化論的に考察した。Robinsonは、英国近代文学の創作活動が異人としての女性の侵入と密接な関係を持ってきたことを、RichardsonのClarissaやT.S.EliotのThe Waste Land改作問題と絡めて検証した。以上のような具体的研究成果を通じ、共同研究者の知見を統合して、英文学における異人概念の変遷の一面を解明できた。
著者
小沢 弘明 大峰 真理 上村 清雄 橋川 健竜 秋葉 淳 後藤 春美
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、近現代ヨーロッパにおける中心=周縁関係の再編過程を分析することであった。この研究では二つの側面を重視した。第一は、ヨーロッパ内部の地域的な不均等発展を分析することである。この側面では、ルネサンス・イタリアにおける中心=周縁関係をフィレンツェとシエナめ関係に見る研究、ハプスブルク君主国とオスマン帝国内における中心=周縁関係から分析する研究を行った。第二は、ヨーロッパ概念の特質と、近代世界における構造化の中でヨーロッパの位置を探る研究である。本研究では、両大戦間期の国際社会における中心=周縁関係の議論をイギリス帝国を中心に分析する論考、植民地期の北アメリカを帝国史や大西洋史(アトランティック・ヒストリー)などの研究動向から分析する論考、18世紀フランスにおける奴隷貿易を基軸にヨーロッパ=アフリカの通商関係を再考する論考を準備した。本研究ではまた、いくつかの方法論上のアプローチも検討に付した。それは、「域内周縁」理論、 「境界地域」理論、ハプスブルク君主国やオスマン帝国について最近行われているカルチュラル・スタディーズやポストコロニアル・スタディーズからの議論である。EUの東方拡大と新自由主義による世界の構造化が進んでいる現在、とりわけ周縁の位置からヨーロッパの歴史的位置を解釈することは不可欠である。そのような視点を取ることは、帝国論や、新帝国主義論、新自由主義論などに関するわれわれの理解を深化させることになろう。本研究ではさらに、主題に関する今後の研究の基礎を拡大するためにデータベースの作成を行った。これらを利用することによって、近現代ヨーロッパ史を、これまでとは異なった観点で分析していくことが可能となろう。
著者
芳賀 達也 市山 進 橋本 祐一
出版者
学習院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

ムスカリン性アセチルコリン受容体M2サブタイプ変異体の結晶化・高次構造の解明を主目的とした。約8Aの回折点を示す結晶が再現的に得られる条件を見いだしたが、原子構造の解明には至らなかった。副次的課題として、ムスカリン受容体の細胞内第3ループがフレキシブルな構造を取ること、ムスカリンM4受容体の細胞内移行には2つ以上の機構が併存すること、ムスカリン受容体のリサイクリングに関わるモチーフの同定、などの結果を得た。
著者
大嶽 秀夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1975年以降、アメリカでも日本でも、政治不信の高まりを背景に、政治のプロフェショナルでないという姿勢、すなわち素人イメージを演出したアウトサイダー的政治家が、突発的に人気を得るという現象が、間歇的にしばしば発生した。これを近年の政治学では、ポピュリズムという概念を再定義して表現するようになった。ポピュリズム概念は、政治学では従来、ロシアのナロードニキ、アメリカの革新運動、ラテンアメリカの政治体制をさす言葉として使われてきたが、最近は、カーター以来の大統領による「going public」の手法ならびに米国の減税運動に典型的にみられる直接民主主義的運動を表す言葉として、新たな意味賦与をともなって使われるようになった概念である。日本でも同様の現象がみられ、1976年の新自由クラブ、1989年の土井社会党、1993年の日本新党、そして2001年の小泉・眞紀子ブームがそれに当たる。これらのポピュリストたちは、政治腐敗を最大の課題として登場しており、中でも田中派の流れをくむ経世会、橋本派を最大の標的とした。言い換えると、政治学でいうクライアンティリズムに対する「改革」をスローガンとしていたのである。この対立図式は、米国の都市政治におけるマシーン政治と改革運動との対立の再現である。問題は、しかし、これらの日本のポピュリストたちは、小泉純一郎を除いて、いずれも短命に終わっていることである。本研究では、小泉がなぜ例外的にその人気を維持し、改革を達成できたかを検討した。そのために、ケーススタディ・アプローチをとって、(1)道路公団改革、(2)郵政民営化、(3)イラクへの自衛隊派兵、(4)北朝鮮拉致問題の4つの争点につき、実証的に研究を行った。そして、橋本内閣によって導入された首相の権限拡充という制度的変化と、小泉自身のもつリーダーシップ能力に検討を加え、通常制度論を援用していわれているような前者ではなく、後者の方がより重要な要因であったとの結論に導いている。
著者
田中 均
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

当該年度の研究実績は、主に以下の三点に整理できる。(1)シュレーゲルの小説『ルツィンデ』(1799年)の研究成果を『美学』に投稿し、修正を経て掲載された。修正の段階では、芸術創造における親密性の役割についてのシュレーゲルの思想を、社会学者ニクラス・ルーマンの親密性に関する理論と関連づけて、シュレーゲルの歴史的な位置づけを明確にすることを試み、恋愛と友情との関係、親密性と芸術との関係についてシュレーゲルの思想に独自性があることを指摘した。(2)シュレーゲルにおける「新しい神話」と公教性/秘教性の問題を検討し、研究成果を国際美学会議で発表した(英語)ほか、『ドイツ文学』に研究論文として掲載された。論文執筆の過程において、重要な先行研究であるD.v.Petersdorff"Mysterienrede"との関係について再検討し、研究の独自性を明確にした。特に、1800年頃までのシュレーゲルは、公教性と秘教性を厳密に対立させず、両者の性格を併せ持った言語形態として「アイロニー」を構想したことを指摘した。(3)これまでの研究成果を統一的な視点のもとにまとめる作業を行った。具体的には、これまでに発表した研究実績を相互に関連づける、シュレーゲルの「アイロニー」、「ロマン的文学」の概念を改めて整理する、またシュレーゲルの各時期における文学ジャンルの理論を整理するなどの課題に従事した。シュレーゲルの理論をさらに歴史的コンテクストのうちにおく作業は、いまだ途中段階にある。
著者
丸山 孝一 姚 麗娟 楊 聖敏 地木 拉提 瓦 依提 神崎 明坤 趙 嘉麟 陳 継秋 阿吉 肖昌 文 蘭 関 清華
出版者
福岡女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

全国でも17万余人しかいない錫伯族の文化研究は歴史人類学的に急を要する。本研究では東西2地域のシボ族が伝統文化を維持し、あるいは消失しつつある現状を観察、報告するものである。かたや伝統を失った東シボ(遼寧省)が伝統回帰を志向するのに対し、西シボ(新疆ウイグル自治区)では240年余維持してきた伝統を急速に喪失しつつある。そこに急接近してきた漢文化またはナショナリズムに対する同化と反発の文化力学的過程があることが判った。
著者
川人 貞史
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.議員立法の活性化の分析を進めるため,1947年の第1回国会から1998年の第144回国会までの衆議院議員提出法律案(衆法)について,提出者の所属会派,各院における付託日,委員会議決,会派ごとの賛否の情報,本会議議決,修正・否決の場合の回付,衆議院再議決,法案成立の場合の公布日などの分析用データ・ファイルを作成した.2.近年の議員立法の活性化と対照をなす1950年代以降の議員立法の衰退に関して,数量分析で特質を分析し,議員立法発議要件過重化に至る国会法改正過程を検討し,政治アクターたちにとって国会法改正がどのような意味をもったかを分析した.議員立法の衰退の原因は,国会法改正よりもその後に別に形成された制度ルールが重要だったことがわかった.3.1994年の政治資金規正法改正により透明度の高まった政治資金全国調査データを利用して,政治資金支出と選挙競争の関連性に関する初の包括的研究を行った.4.2000年9月から官報および全国47都道府県の公報に順次掲載された1999年政治資金収支報告書の概要(中央届け出分および地方届け出分),および,2000年6月25日執行の衆議院総選挙の選挙運動費用収支報告書の概要に関する全国47都道府県の公報掲載資料を収集し,データ入力した.2000年総選挙における小選挙区結果データおよび比例代表選挙結果データを小選挙区単位で政党ごとに集計し直したデータ・ファイルを作成した.また,市区町村ごとに集計された1995年国勢調査データを小選挙区単位で集計し直したデータ・ファイルを作成した.5.4で作成したすべてのデータを統合することにより,政治改革のインパクトの理論的・実証的分析のためのデータ・ファイルを作成し,1996年および2000年総選挙における戦略投票,政党間協力,政治資金の効果に関する分析を進めていく.
著者
黒部 利次
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

情報機器や精密機器に搭載されている硬脆性材料の部品の加工の精度の向上とコストの低減を目指して、磁性流体を利用した研削型超精密研磨法の開発研究を行っている.本研究は,磁性流体に砥粒を懸濁した磁性スラリーを用いることにより,加工液を溜めるための研磨槽や加工物の移し替えを必要としない研削加工型の最終仕上げ法の開発を指向している.加工装置は,精密型自動XYステージおよび2軸パルスコントローラを用いて,同時2軸制御型の加工実験装置であり,円盤状ポリシャと加工物ホルダを回転させるための2つの直行した回転軸から構成されている.ポリシャ内部には永久磁石を配置して,磁性スラリーをポリシャ外周表面上に保持できるようになっている.また,加工物側回転軸を固定してあるXYステージを速度制御して精密な送りを行ない得るようになっている.硬脆材料であるガラス,シリコンウエハを加工物とし,本研磨法の基本的特性を調べるために,研磨能率と仕上げ精度について研磨回数,クリアランス,磁場強度と磁場勾配の影響を検討した.また,送り速度を制御して加工物を送りながら研磨することによって面創成研磨の加工性能を検討した.さらに本研磨法による鏡面創成への適用について検討した.その結果,水ベース磁性流体とケロシンベース磁性流体では,加工量の大きさがことなること,研磨能率は加工点付近の磁場強度と磁場勾配を変えることによって制御し得ること,また,表面粗さは,使用する砥粒径に強く依存することも明らかとなった.本研磨法を平面創成に適用した実験的検討の結果,加工物の回転中心からの距離に応じて送り速度を制御して研磨を行うことによって精密な平面創成ができること,さらに,磁性スラリーとして粒径の大きい砥粒による研磨の後,小さい粒径の砥粒によって研磨を繰り返すことによって,粗面を高能率で鏡面に仕上げることができることを示した.
著者
石橋 孝治
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

平成9年度はプロトタイプ型の簡易岩盤三軸圧縮試験装置(直径10cmの試験片対応)を製作し,原位置での適用を前提とした中規模の室内モデル実験を実施した。根付き試験片部は低強度セメントモルタル(一軸圧縮強度15.4MPa)を,周辺岩盤部はコンクリート(呼び強度24MPa)を用いてモデル岩塊を作製した。根付き試験片が最も単純な1不連続面(円柱軸から60度傾斜)を内在する場合も取り扱った。平成10年度は圧力変換器と油圧ジャッキを装備して,佐賀県多久市の砕石工場内(玄武岩が主体)での原位置岩盤に対する適用実験を行った。軸値からの反力は鉱山重機(自重80トン)にとった。周圧,軸力および変位はデータロガーを介してパソコンに取り込む計測システムを構築しこれを採用した。2年間に渡る一連の実験から明らかとなった事柄を以下に列挙する。1.作成したプロトタイプ型の簡易岩盤三軸圧縮試験装置が計画どおりの機能を有していることを確認した。2.本試験は強度定数を5%程度過小評価する傾向がある。実験の範囲内では強度定数に関して寸法効果は確認されなかった。3.不連続面を内在する試験片の強度は不連続面自身の強度定数の影響を著しく受ける。4.原位置試験から実験手順と計測システムに問題の無いことが確認された。しかしながら,水溶性コーキング材のシール効果は低くシール材の改善が指摘された。重機重量不足のため1本の試験片のみの破壊となった。指摘された問題を解消し,原位置試験の実施実績を重ねることで本試験法の試験技術を確立したい。
著者
兵藤 不二夫
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

寒帯林の遷移過程における植物の窒素源の変化を明らかにするために、スウェーデン北部において約400年と5000年の遷移系列を対象にし、その植物及び土壌窒素の窒素同位体分析を行った。その結果、2つの遷移系列において植物の窒素同位体比が有意に変化することが明らかになった。土壌の溶存有機態窒素や無機態窒素の同位体分析の結果と合わせると、この植物の窒素同位体比の変化は、植物が溶存態有機窒素やコケによる窒素固定、そして菌根菌へとその窒素源を変化させていることを反映しているものと考えられる。
著者
黒崎 文雄
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

1.「急速熱分解反応を可能にする新規低コスト炭素化炉の開発・設計」急速熱分解反応を可能にする加熱方法として、黒鉛型枠に原料を充填し通電加熱する方法を採用した。通電加熱法の場合、試料量の増加や大面積の実現のためには、黒鉛型枠を大きくする必要がある。しかし、熱容量が増加するため、急速度での昇温はより困難であった。そこで、型枠の厚みを極力薄くした黒鉛型枠を設計・自作し、実験結果をもとに黒鉛型枠の最適化を検討した。その結果、急速熱分解反応を可能にする昇温速度の制御の実現と従来に比べて、10倍程度の重量と面積を有するマクロ・ポーラス炭素材料の合成に成功した。2.「急速熱分解を応用して合成したマクロ・ポーラス炭素材料の多孔質構造の評価と普遍化」加熱温度400℃以下の炭素化物では、著しく早い昇温速度であっても、マクロ・ポーラス炭素材料特有の三次元ネットワーク構造は存在せず、原料の微細構造が維持されていた。一方、加熱温度450℃以上の炭素化物では、昇温速度1℃/秒以上の場合、三次元ネットワーク構造を有していた。また、保持時間による影響はほとんど確認されなかった。以上の結果より、従来の加熱温度より低い温度での合成や保持時間が短縮化できることが示され、より少ないエネルギーでマクロ・ポーラス炭素材料を合成し得ることが示された。3.「原料の疎水性および乾燥方法の相違による微細構造変化」昇温速度以外のファクターによるバイオマス原料の微細構造の崩壊および凝集現象を検討した。t-ブチルアルコールへの溶媒置換したキチンナノファイバーを原料とし、炭素化したところ、原料の微細構造の崩壊が起こらず、原料の微細構造が維持されたナノファイバーカーボンが得られた。原料の疎水性および乾燥方法をファクターとして、急速加熱法に組み込むことで、マクロポーラス炭素材料の特徴である多孔質構造の制御の幅を広げることができると期待される。
著者
今井 弘道 鈴木 敬夫 安田 信之 岡 克彦 國分 典子 鈴木 賢
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

16年度は、このプロジェクトを中心として、第五回東アジア法哲学シンポジウムを開催した(9月・札幌)。これはすでに何回も報告した通りであるが、日本国内からの参加者を始め、中国、各国、台湾その他を含めて100人を優に超える参加者があった、その中で、2006年には台湾で、第6回大会を行うこと、併せてそれを東アジア法哲学会の発会大会とすることが決議され、準備委員長として、本プロジェクトの代表者である今井が選出された。17年度は、上記第六回東アジア法哲学シンポジウム/東アジア法哲学会の発会大会が、行われた(主催・台湾大学、3月・台北)。中国、韓国、台湾その他を含めて150人を超える参加者があった。そこで、今井が理事長に選出された。これで、このプロジェクトで目標としてきた東アジアの法哲学の共同研究体制は基本的には完成し、大きな可能性が保障されることになった。18年度は、北京大学法学院から朱蘇力・張騏両教授を招待し、シンポジウム《中国における「生ける法」と「司法」を通しての法形成の可能性》を、名古屋大学と北海道大学で共催した。また上海政法学院教授の倪正茂教授を招いて「上海における住民運動と市民的法文化」とシンポジウムを行った。個々の成果については別記する。
著者
梶山 秀雄
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

前年度の研究成果をふまえた上で、ポストコロニアリズム批評、カルチュラルスタディーズ関係の文献を狩猟し、引き続きディケンズ作品に散見される「催眠術」、「動物磁気」、「自然発火」といった疑似科学的な主題を、当時の雑誌、新聞の超自然現象をめぐる言説と対置させ、より文化的な背景の中にテクストを読み込む作業に従事した。また、物語手法や疑似科学への接近という観点から、ディケンズとをポストモダン以降の作家と比較研究を行い、その成果の一端を、論文「「別名で保存」される『大いなる遺産』-ピーター・ケアリー『ジャック・マッグズ』」として島根大学『外国語教育センタージャーナル』(2005年)に発表した。次いで、疑似科学についてのディケンズの基本的な見解、および当時の言論人の反応について検討し、メスメルの提唱した.「動物磁気」を、シャルコー、フロイトと受け継がれていく催眠療法の原初的な形態として位置づけ、疑似科学としての精神分析の再読を試みた。これらの研究成果の総括として、「美しく燃える人体-ディケンズと疑似科学」というタイトルの論文を執筆、島根大学『外国語教育センタージャーナル』に掲載予定である。
著者
徳武 千足 坂口 けさみ 芳賀 亜紀子 近藤 里栄
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

乳児を持つ母親の添い寝及び添え乳のヒヤリハット経験は 1 割以上があり、約 7 割が出産後入院中より開始していたことより、母親に関わる専門職が正しい知識と方法を持って方法を指導していくことの必要性が示唆された。また、新生児期における呼吸循環機能は、 動脈血酸素飽和度が 95%未満を示す時間があり、 自律神経機能は、明らかなパターンはなく不安定、個別差が大きいことが明らかとなった。
著者
北島 象司 古塚 孝 狩野 陽 KANOH Minami
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

この研究では2種類の実験を実施した。第1部門は短かい時間の中で生じる注意転換の研究で、第2部門はプライミングパラダイムを用いた記憶の研究である。第1部門の概要:2種類の刺激(数字と4エィーボード、NとC)を200および400ミリ秒で対にして提示(S_1とS_2)し、もう1対(S_3とS_4)をそのあとに提示した。被験者の課題は、Nの読み上げとCのパタンの異同判断であった。この時間内(200と400ミリ秒)の注意の変動を測定するために誘発電位を利用し各刺激に誘発された陰性波(N_1)の波高値を測定した。注意条件はターゲットの場所(時間的)が決まっている焦点注意(F)とターゲットの種類が決まっていて場所が未定の分割注意(D)の2条件とした。実験の結果判明したことは(1)F条件でもD条件でも健常者はターゲットに注意を集中しノンターゲットには注意しない。この注意配分の統制は200でも400ミリ秒でも可能である。(2)精神薄弱児と精神分裂病者群では、ターゲットに注意することは健常者と同じであるが、ノンターゲットにも注意を配分してしまう点で注意配分の統制が不良であること、(3)特に精神薄弱児では反応カテゴリー(NとかCの各前や異同)に含まれない『まえ』とか『うしろ』を手がかりにして注意配分をすることが困難であること、であった。第2部門の概要:日常見慣れた物体や動物の絵を対にして提示し、第2刺激の名称を発話するまでの反応時間(RT)と誘発電位のN400を測定した。対刺激相互間に意味上のつながりの強弱をパラメーターとして上記測度を分析した。判明した結果によれば、(1)意味つながりの最強な同一対の場合にRTが最小となり、(2)つながりが弱いほどRTが大となること、(3)精神薄弱児の場合でも同じ傾向があること、(4)ただしRTが健常者よりも長大となること、が示された。