著者
鈴木 広光 津田 光弘
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、所謂「古活字版」のうち、特に日本で独自に技術的展開を見た平仮名交り文古活字版の活字規格、組版にはどのような種類のものがあるかを明らかにしようとするものである。古活字版における平仮名活字の使用を網羅的に調査した結果、平仮名活字の規格とその組版には三つの方式があることが確認された。最も一般的な方式は、大きさ(縦寸法)が全角の整数倍で、それをベタ組みするものである。また慶長初年頃刊『徒然草』を調査したところ、10mm×16.6mmの全角を基準にした縦寸法が整数倍の活字のほか、1.5倍の活字があることが判明した。この方式は極めて珍しい。一方、縦寸法が文字や文字列の丈に応じたプロポーショナルな活字で、字間調整を施す組版方式を採用するのは、『無言抄』、『徒然草寿命院抄』、伏見版『東鑑』、烏丸本『徒然草』の四点のみであった。さらに、従来の整版本の記述を基礎とした書誌学の方法では説明することが難しかった異版関係の判断を精密に行なうための分析方法を提唱した。
著者
滝沢 元和
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

銀河団衝突に伴う高エネルギー現象について、数値シミュレーションとX線観測の両面から迫った。N体+(電磁)流体シミュレーションを用いて衝突銀河団での特徴的な磁場構造や質量評価の不定性を明らかにした。すざく衛星を用いたX線観測で非熱的硬X線放射の上限値を求め、磁場強度の下限値を制限した。さらに重力レンズの同時データ解析で、系の力学状態に迫った。
著者
吉田 治典 RIJAL Hom Bahadur
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

ネパール・ヒマラヤ地域における伝統的住宅の冬の熱的主観申告調査と温熱環境調査を行い,居住者の熱的満足度と中立温度について以下のことを明らかにした。1)温冷感,快適感と適温感の快適範囲の出現頻度が高く,居住者は温熱環境への満足度は高いといえる。2)Griffiths法で求めた中立温度は,住宅A,B,Cを合わせると10.7℃であり,居住者の着衣量の調節や冬の適応によって,中立温度は一般的に言われている快適範囲より低い。3)住宅Cの中立温度は12.9℃であり,住宅Aより4.5K,住宅Bより2.3K高く,居住者がある程度適応範囲を持っていることから,中立温度の大小は暴露気温の大小によって決定され,同一地域内で中立温度の差がある。また,ネパールの亜熱帯地域における伝統的住宅の夏の温熱環境と居住者の温熱感覚に着目し,パッシブクーリングの観点から分析した。その結果,居住者は室内だけではなく室外や半戸外を適切に利用するパッシブな生活様式をもつこと,気候に則した広い土間床,土や煉瓦の壁,巨大壷などのパッシブ的要素を持つ住宅が形成されていること,近代的な建築材料の利用が必ずしも温熱環境の改善にはつながらないこと,室内で裸火のイロリを利用するためエネルギー効率が良くないこと,などを見出した。得られた成果は以下の通りである。1)居住者の滞在場所に関する調査から,居住者が内部,半外部,前庭を時間的に移動して居住温熱環境を緩和している実態が示された。2)昼間の土間の表面温度は外気温より土壁造で7.4K,煉瓦造で5.9K低い。土間,土壁,煉瓦壁,壷などには夏に涼しく保つのに有効的である。3)開放型イロリで多量の薪を燃焼している台所の昼間の室温が37.7℃であり,台所の過熱を処理する必要がある。4)屋根裏表面温度は昼間に草葺きで37.9℃,粘土瓦葺きで39.4℃,セメント瓦葺きで42.2℃であり,草葺き屋根の断熱性がもっとも高い。
著者
関口 克明 吉田 燦 吉野 泰子 蜂巣 浩生 川西 利昌 早川 朝康 関口 克明
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

当プロジェクトは中国北西部の広大な黄土高原地域に根づく伝統住居"窰洞"の持続発展可能な近代化に関する研究である。調査対象の窰洞は陜西省延安市棗園村で、現地調査は1998年8月〜2002年1月に6回実施した。1〜3回は既存窰洞を対象とし、4〜5回は新型多層窰洞を対象としてそれぞれ冬季と夏季に実施した。測定内容は窰洞に関する居住環境の意識調査と温熱、音、光、空気質に関する物理量の計測である。生活に対する実態調査とアンケート結果より、・夏涼しく、冬暖かい温熱環境は90%が満足 ・空気質は通風が悪く粉塵が不快(70%) ・光環境に対する不満はない ・外部生活騒音は多少気になる等について確認した。その結果光環境については、昼間は最深部で暗く(昼光率1%未満)夜間照度は部屋中央で101x以下であることから、住民の視力検査とライトシェルフの可能性に関する調査を追加(2000/8)した。温熱環境は部屋全体として熱収支を把握し、具体的な問題点を指摘するため常に空間分布として計測した。測定は室内空気温、壁表面温度と壁体熱流について相関を持たせながら24時間の連続測定を基本とした。空気が乾燥し日較差・年較差の激しい気候のため、ふく射熱の影響を考慮した計測システムを開発して空間分布とベクトル温度による考察を加えた。室内気温は窰洞形式、居住下・無人下によって差はあるが、築年(築100年から築1年の5タイプ)による差はない。外気温との比較により土の保温性能が把握できた。新型窰洞は平地における独立二層型で、北側は換気・採光を考慮した窓開口のある厚い壁(45〜60cm)である。南側サンルームは冬季に効果的を発揮し、既存窟洞に対して明るく暖かな気温を維持するが、冬季の間終日影となる北側壁面からは常に熱流が外向きで壁体の蓄熱効果はないことを示した。また、ベクトル温度計により、気温と壁面温度の較差の様子を示した。
著者
白川 蓉子
出版者
甲南女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

幼稚園の4,5歳児が好きな遊びを選んだ活動のなかで、リテラシーに関心をもち、自発的に解読したり、書いたりしていることがわかった。この幼児自らの学びを教師は教具などをふくむリテラシー環境を整えて意図的に指導する必要がある。その際、話す・聴く・書く・読む、の四活動を同時並行的に導入すべきである。また幼児自身の「話したい」「書きたい」という「言葉への意識」と欲求が重要であることが明らかになった。
著者
杉戸 真太 能島 暢呂 久世 益充 古本 吉倫 岩本 政巳 八嶋 厚
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

わが国の太平洋沖において頻繁に発生する海溝型巨大地震では、地震動の強度が非常に大きいことに加えて、その強震継続時間が極めて長くなることが知られている。構造物の地震動によるダメージが、その強度のみならず強い揺れの継続時間に大きく依存し、その影響の度合いが構造形式に依っても大きく異なることから、これらの影響を詳細に検討し、耐震設計に合理的に取り入れることを検討した。
著者
内海 秀幸
出版者
千葉工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

水銀圧入試験を対象とした研究においては,圧入により水銀が空隙に浸入する場を表現する一般的な熱力学的つりあい式と,場固有の微細構造特性を定める数理モデルを連成させることにより,水銀の圧入過程の基本的傾向を表現することが可能な基礎式の定式化を行った.平成19年度は主に,この基礎式に対する,汎用性を実験的に確認するための研究を実施した.その結果,若材齢時におけるセメント系材料の組織構造形成過程を含む各種のセメント系材料の微細構造特性を表現する上で妥当であることが判明した.また,ガス吸着試験に着目した研究では,上記の水銀圧入試験を対象に構築された基礎式に基づいて定められる空隙径分布関数を反映した新たな理論吸着等温関係式の構築を行った.この理論吸着等温関係式の特徴は,従来のBET理論のように飽和蒸気圧において発散する形式ではなく,湿度の全範囲で閉じた形式となっている.この研究についても,本年度は各種材料へのる汎用性を実験的に確認するための研究を実施した.その結果,各種の乾燥の履歴を受けた硬化セメントペーストに対しててもその形式が妥当であることが判明した.これらの研究により,水銀圧入試験とガス吸着試験に対して,空隙径の分布特性に基づく相互換算を可能とした理論の枠組みが整備できた.また,熱重量分析については,温度上昇にともなうエネルギー変化と水分脱水過程との関係を明確にすることにより水分の熱的作用における脱水過程が微細構造特性を反映した結果であることを確認した.さらに,各水分離脱過程の活性化エネルギーを速度論的見地から評価することにより材料内水分の吸着性情を定量的に明らかにした.
著者
山岡 哲二 馬原 淳 村瀬 剛 村瀬 剛 田中 啓之
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

オリゴ-D-乳酸と神経再生誘導性とで構成される両親媒性結合体を、ポリ乳酸製組織再生用デバイスの修飾プローブとして開発・作成した。このプローブとポリL-乳酸を溶液系で混合して電界紡糸法などの急速な脱溶媒を伴う加工法により、直径約1.2mm長さ14mmのラット坐骨神経欠損モデル用神経誘導管を作成し、in vitroおよびin vivo似て評価したところ、本プローブはポリ乳酸と分子分散し、疎水性相互作用あるいはステレオコンプレックス形成に基づいて、ポリL-乳酸基材中へと安定に固定化されることが明らかとなった。本プローブで修飾したポリL-乳酸フィルム上でのPC12細胞(ラット副腎髄質由来褐色細胞腫)の挙動から、主食により、細胞の分化が顕著に促進されることが明らかとなった。また、ラット坐骨神経欠損モデル治療実験では、移植6ヶ月に於いてコントロールに用いたポリ乳酸性神経誘導管の2~4倍の神経再生効果が確認された。
著者
荻原 理 金山 弥平 神崎 繁 近藤 智彦
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ヘレニズム時代のエピクロス派とストア派が勧める生の内実を、プラトン、アリストテレスや現代の哲学者との対比を通じて明らかにし、これらの生を現代人に対し、注目すべき生き方の例として提示した。両派に共通する、生の理性的設計の思想は、衝撃的事態に見舞われた場合の態勢の立て直しに有効であろう。死にさいして魂は消滅するというエピクロス派の説は、現代の科学的世界像と調和し、死生観としても独自の魅力をもつだろう。自己は宇宙の一部だとするストア派の思想は、"報復しない倫理"に道を開くだろう。
著者
北垣 一 和田 昭彦 内田 幸司 森 悦郎 畑 豊 森 悦朗 小田 一成 川口 篤哉
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

平成13年から平成16年の4年間に健常者491名に対してMRIデータを得た.健常者の平均値,標準偏差値は頭蓋内容積1576.56+-166.77(ml),全脳体積1258.55+-143.74(ml),頭蓋内容積比0.80+-0.04,左半球大脳体積534.06+-62.79(ml),右半球大脳体積549.92+-70.93(ml),であった.女性被検者248名の平均値,標準偏差値は頭蓋内容積1500.71+-141.93(ml),全脳体積1209.73+-132.77(ml),頭蓋内容積比0.806+-0.045,左半球大脳体積514.19+-57.93(ml),右半球大脳体積527.80+-64.97(ml)の結果を得た.男性被検者243の平均値,標準偏差値は頭蓋内容積1653.97+-154-40(ml),全脳体積1308.37+-137.51(ml),頭蓋内容積比0.791+-0.041,左半球大脳体積554.34+-61.17(ml),右半球大脳体積572.50+-69.75(ml)の結果を得た.頭蓋内容積,全脳体積,左半球大脳体積,右半球大脳体積は男性が有意に大きかったが,頭蓋内容積比は女性が有意に大きかった.そこで男性(243名,平均年齢62.04+-10.54歳)と女性(243名,平均年齢64.57+-9.96歳)に対して脳体積を頭蓋内容積による補正をしたところ女性は男性よりも有意に高齢であったにも関わらず,女性は男性より統計学的に有意に全脳,左大脳半球,右大脳半球とも大きいという結果が得られた.50代以降において女性は男性よりも頭蓋内腔にしめる脳体積が大きいことが解った.研究期問中にデータを得たアルツハイマー病患者21名(男性6,女性15,76.6+-6.42歳)は全脳対頭蓋内容積比0.754+-0.046,右半球大脳体積比0.330+-0.023が同年代の健常者と比べて有意に小さな値をとり脳萎縮の進行を体積として評価できた.
著者
福田 眞作 下山 克 坂本 十一 菅原 和夫 棟方 昭博 中路 重之
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

食物繊維が人の消化吸収機能に及ぼす影響を以下のように検討した。(1)まず、小腸液灌流法を用いて回腸末端部の小腸液の食物繊維(難消化性澱扮とペクチン)含有量を測定し経口摂取したそれと比較した。(2)大腸内の発酵によるカロリー摂取状況を評価するために食物繊維(難消化性澱粉、ペクチン、セルロース、ラクツロース)摂取後の呼気ガス(水素とメタン)を測定した。(3)^<13>Cにより標識された中性脂肪をペクチンとともに摂取させ、呼気中の^<13>CO_2と^<12>CO_2を測定してペクチンの中性脂肪吸収に及ぼす影響を評価した。本研究で得られた主要な結果を列挙すると以下のようになる.1.内視鏡的逆行性腸管挿管法を用いた小腸液灌流法による食物繊維の回収実験で,食物繊維の一種である難消化性澱粉の回収率は平均値±標準偏差値で345±9.7%であった。これは難消化性澱粉の食物繊維としての価値が平均でわずか34.5%しかないことを示唆した。また個体差が非常に大きく約20%の幅がみられた。2.同様方法で同じく食物繊維の一種であるペクチンの回収実験を行ったところ,平均値±標準偏差値は88.4±10.5%であった。以上よりペクチンは難消化性澱粉に比較し,食物繊維としての価値はほぼ90%と高かった。しかし,難消化性澱粉と同様に20%以上の個体差がみられた.以上より食物繊維はその種類によって真の食物繊維としての価値は大きく異なり,また個人差が大きいことが明らかになった。このことは食物繊維の真の値がin vivo系で明らかにされるべきであることを示唆し,また個人によって異なる消化吸収システムが食物繊維の真の値に大きく影響するものと考えられた.3.食物繊維の大腸内における発酵パターンにはいくつか存在することが明らかになった。この相違は腸内細菌叢の種類と量、食物繊維の小腸通過時間・通過率及び食物繊維の種類に依存していると考えられた。4.短時間における食物繊維の脂肪の消化吸収に及ぼす影響は,想定されているほど大きくないことが明らかになった。食物繊維は1971年のバーキットの繊維仮説の提唱以来注目を浴びてきた。しかし,それは根拠のない健康ブームに乗っかった側面もあった。近年,食物繊維の種類分け,測定法が厳密化し,食物織維と健康に関する研究そのものも,より厳密化してきた。したがって,食物繊維の厳密な評価による,さらなる説得力のある研究が始まりつつある.本研究は食物繊維の評価を科学的に厳密に追及したものであり,今後のより成熟した食物繊維の研究に資するところ大であると信じる。
著者
大塚 愛二 田口 勇仁 百田 龍輔
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我々は、まず初めにギ酸消化法と血管鋳型法を組み合わせた新しい走査型電子顕微鏡観察法を開発した。この方法により、細動脈・細静脈など微小な血管の弾性線維構造ですら三次元で詳細に明らかにすることができた。さらにこの方法により、壊れた内弾性板の三次元構造を明らかにすることができた。
著者
宮崎 樹夫 伊藤 武廣 岩永 恭雄 両角 達男 小口 祐一 茅野 公穂
出版者
信州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

I 教師・子供用ホームページの作成教師用ホームページで,教師がディジタルコンテンツを,3次元動的幾何ソフトを利用したカリキュラムに基づく授業用として閲覧できるとともに,単元「空間図形」の授業に応じダウンロードできる。また,子供用ページでは,3次元動的幾何ソフトのファイルと,ソフトの利用の仕方が示された動画が教師用のページとは別の構成で位置づけられている。これは,子供が授業や家庭などで空間図形を自ら学習することを支援するとともに,学校の授業では扱いきれない発展的な内容にふれる機会を提供し,空間図形に関する興味・関心を一層高めるためでもある。なお,ディジタルコンテンツは次の4種類である:単元『空間図形』(全14時間)の展開(HTMLファイル),3次元動的幾何ソフトを利用する授業(計6時間)の指導展開(HTMLファイル),授業で利用される3次元動的幾何ソフトのファイル,3次元動的幾何ソフトの利用の仕方が示されたフラッシュムービーホームページのアドレス:www.schoolmath3d.org/index.htmII 小・中学校・高等学校における"授業レシピ"の作成3次元動的幾何ソフトは,空間図形が関わる学習内容に広く利用できるものである。そこで,小・中学校及び高等学校において,このソフトをいかすことができる学習内容を特定し,その内容に関して,授業をどのように展開すればよいのか,また,その授業のなかで3次元動的幾何ソフトをどのようにいかしていけばよいのかを"授業レシピ"のホームページとして提供している。このページでは,授業のアイデアや具体的な進め方とともに,教師が利用するとよい3次元動的幾何ソフトのファイルや,そのファイルの使い方を示した動画なども配置されている。
著者
飯島 信司 西島 謙一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

遣伝子治療に用いられるパントロピックレトロウイルスは、外被タンパク質として水痘性口内炎ウイルスVSVのGタンパク(VSV-G)を用いており、VSV-Gのリセプターがリン脂質であるため、基本的に全ての細胞種に感染可能である。これは優れた特性である反面、バイオハザードという観点からは危険である。そこで天然状態では感染能がなく、リポフェクション試薬など特殊な遺伝子導入試薬存在下でのみ、感染性のあるウイルスをつくることを考えた。VSV-Gタンパクは28アミノ酸からなる細胞内ドメイン15アミノ酸からなる膜貫通ドメインさらに298アミノ酸からなる細胞外ドメインを有する.細胞外ドメインには2つの糖鎖結合部位があり、この部分が安定性などに重要と考えられる.そこで細胞内、膜貫通、糖鎖結合部位以外の部位を欠失させたところ、細胞外の先端から143アミノ酸を欠失させ2箇所の糖鎖結合部位を残したもの、及び末端から298アミノ酸を欠失させ糖鎖結合部位を1箇所残したものについてはリポフェクチン依存的に感染性を有していた。しかしVSV-G全長に較べ感染力は1/1000程度であった。またウイルスの細胞からの出芽状態をRT-PCRで調べたところ、変異株では1/10程度であった。一方、レトロウイルスのDNA挿入活性に対するINI-1タンパクの効果を調べるため、INI-1タンパク及びモロニー白血病ウイルスのインテグラーゼ遣伝子をクローン化した.これを用いて結合集験を行ったが、現在までのところ報告されているようなINI-1タンパクとインテグラーゼの相互作用は検出されていない。
著者
白浜 公章
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、データマイニング技術を映像処理に応用して、大量の映像が蓄積された映像アーカイブから、所望のイベントを効率的に検索するための3つの手法を開発した。1つ目は、ラフ集合理論と呼ばれる技術を用いて、所望のイベントに特有の特徴量(色、エッジ、動きなど)の組み合わせをパターンとして抽出する手法を開発した。2つ目は、イベント中に出現する概念(人、車、建物など)をビデオオントロジーとして体系化し、概念間の関係性に基づいて検索精度を向上させる手法を開発した。3つ目は、異常な編集パターンが使用されている映像区間を印象的なトピックとして抽出する手法を開発した。
著者
服部 力 太田 祐子 根田 仁
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

マレー半島の多様な森林植生タイプにおいて、多孔菌類を中心とした木材腐朽菌などきのこ類のインベントリー調査を行うとともに、主要な木材腐朽菌についてシーケンスを行い、分子情報を明らかにした。低地熱帯老齢林、山地林、マングローブ林にはそれぞれ固有と思われる種が分布、特に低地林、山地林ではマレーシア国外から知られない種が認められた。これまで約100サンプルについてシーケンスを明らかにし、これらの種については分子情報からの同定が可能になった。
著者
大江 浩一 岡本 和紘 三木 康嗣
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

剛直構造としてスピロフルオレンを導入した複素環(フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール)を構成単位として、種々のπ共役有機オリゴマーを合成し、それらの発光特性や電気化学特性を調査した。スピロフルオレン構造によって、その分子中のπ共役構造の平面性が著しく向上し、固体状態における分子間相互作用のみを抑制できることが明らかとなった(機能性保持と性能向上)。また、スピロフルオレン構造に基づくスピロ共役が発光特性に及ぼす効果についても明らかにすることができた。これにより有機溶媒に対する適度な溶解性と高いガラス転移温度を有する熱安定性に優れたπ共役有機分子を構築することができた。
著者
吉田 勝 奥平 敬元 有馬 真 古山 勝彦 加々美 寛雄 小山内 康人
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1)平成11年度と12年度の2年間ににかけて、インド原生代変動帯を主題とし、UNESCO-IUGS-共催事業国際地質対比計画(IGCP)No.368プロジェクトの総括研究を行った。補助金によって蛍光X線分析装置と走査電子顕微鏡を購入し、後者には既存のEDXを装着し、研究地域の岩石・鉱物の分析的研究を行い、多くの成果を得た。インド楯状地及び関連地域の内いくつかの重要地域の野外研究を実施した。インドから科学者2名を招聘し、同位体年代分析あるいはインド原生代変動帯に関する全般的な情報提供を頂いた。また、インドの研究協力者らによってインド半島原生代変動帯の重要地域の地質研究成果のとりまとめが行われた。これらによってインド亜大陸の原生代変動帯に関する広く新しい知見が得られ、多くの国際集会に参加して研究発表、討詮及び研究のまとめを行った。2)これらの研究の結果、インドの原生代変動帯はメソ原生代のロディニア・東ゴンドワナの集合テクトニクスで重要な役割を演じたこと、ネオ原生代には基本的には再変動であったことが示された。最近Powellら(Gondwana Research 4,PP.736-737)などによって東ゴンドワナのネオ原生代集合モデルが提案されているが、我々の研究成果は、この新しいモデルはさらに精密な検討を要することを強く示唆している。3)これらの研究成果は研究分担者、協力者らによって国際誌等での学術論文公表135編・国際シンポジウムなどでの研究発表59題、国際誌特別号や学会メモアなど18冊の論文集冊などとして公表され、或いは印刷中である。4)本研究の成果報告書として「インドの原生代変動帯:IGCP-368の研究成果」(英文、GRG/GIGE Misc.Pub No.15)が発行された。本書は全376頁で、第1章:東ゴンドワナ研究の最近の進歩、2章:東ゴンドワナのテクトニクス、3章:インド半島のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、4章:アフリカと周辺地域のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、5章:南極のテクトニクスと岩石・6章:その他のゴンドワナ地域の地質、7章:IGCP-368プロジェクトの活動-国際シンポジウムとフィールドワークショップ-から成り、公表論文リスト、講演リスト、文部省提出書類ファイル一式が付録として付けられている。
著者
岡本 玲子 谷垣 静子 小出 恵子 鳩野 洋子 岩本 里織 草野 恵美子 小寺 さやか 岡田 麻里 塩見 美抄 合田 加代子 井上 清美 尾ノ井 美由紀 松原 三智子 岡本 里香 小野 美穂 金藤 亜紀子 田中 祐子 星田 ゆかり 茅野 裕美 福川 京子 俵 志江 長野 扶佐美
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、健康課題の多様化・深刻化に伴い、保健師に求められる役割が拡大・高度化している。本研究の目的は、大学院博士前期課程の科目で実施する、保健師等のコンピテンシーを高めるための学習成果創出型プログラムを開発し効果を検証すること、及びそれを地域貢献に活かすよう普及することである。プログラムは、2回の試行と修正を経て開発された。プログラムのコンセプトは「私の学び、明日への貢献」であり、4か月間にグループ・セッションが5回、その間の個別面接4回で構成されている。期間中参加者は、現場の課題と、それを解決する自分の学習課題を明確にして、自分で決定した到達目標の達成に向けて取り組む。研究者は学習支援者として、参加者の学習成果が最大になるように支援した。プログラムを実施した結果、以下の結果に示す一定の効果が検証された。前後のアウトカム評価では、参加者の専門性発展力や公衆衛生の基本活動遂行能力、事業・社会資源の創出コンピテンシー、住民の力量を高める能力、活動の必要性と成果を見せる能力など多様な能力が有意に高まっていた。さらに、プログラム実施後の参加者の満足度と、費用に見合う効果を得られたと思う程度は高かった。また、参加者の学習プロセスにおいては、1)現状と課題への気づき、2)改善計画の実行、3)改善した成果の確認という3つの必須通過点が確認された。本プログラムは今後、大学院教育や大学と連携した自治体や企業、看護協会保健師職能による現任教育への適用可能性がある。