著者
萬 伸介 森岡 正臣 田端 輝彦 森岡 正臣 田端 輝彦 西城 祐子 山尾 健一 小畑 達哉
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

林鶴一の算術・数学関係の教科書の蔵書のデータベース化の結果は冊子「資料『林文庫邦書目録原稿』(修正版)」としてまとめた。この冊子とそのリストにある蔵書(1065点)は宮城教育大学附属図書館で管理されることになった。公開に向けて作業中である。教材開発については、附属学校教諭と協力し複数の試案を作ることができている。授業実践も一回であるが実施することができた。
著者
塩川 和夫 小川 忠彦 西野 正徳 大塚 雄一 湯元 清文 斉藤 昭則
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

・平成13年7月に全天カメラ1式をアレシボ観測点(プエルトリコ)に持ち込み、アレシボにある大型レーダーと全天カメラによるTIDの同時観測を約2週間行った。この観測から、真夜中の赤道付近の電離層からやってくる1000kmスケールの大規模波動構造、200kmスケールの中規模伝搬性電離圏擾乱のそれぞれにっいて、レーダー・カメラ同時観測に成功した。・平成13年10月に、日本の磁気共役点にあたるオーストラリアのダーウィンに、上記のカメラを設置し、定常観測を開始した。同年10-11月にかけて、赤道域で発生したプラズマバブルが、日本の鹿児島県佐多観測点とダーウィンで同時に観測された。詳細な解析から、この構造が日本とオーストラリアでちょうど鏡像の関係になっていることが見出され、赤道プラズマバブルの構造が、南北の磁力管をつないだ非常に大規模な構造であることがわかってきた。・信楽・陸別で大気光イメージに観測された中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)を統計的に解析し、その伝搬特性の季節変化、緯度変化を初めて明らかにした。さらに、DMSP衛星との同時観測例を詳しく調べることにより、MSTIDの波状構造に伴って電離層中に分極電場が生じていることを世界で初めて示した。・平成14年8月9日に鹿児島県佐多岬とオーストラリアのダーウィンで、MSTIDの大気光イメージング観測に初めて成功した。その結果、MSTIDが磁気赤道をはさんで南北半球でちょうど対称の形をしており、南北半球で1対1に対応することがわかった。この事実は、MSTIDが電離層の分極電場の構造を持っており、その電場が磁力線を通じて南北に投影されていること、を示している。さらに平成15年5月21日から6月7日に第3回FRONTキャンペーン観測を行い、オーストラリア中央部のRenner Springs(滋賀県信楽町の磁気共役点)に新たに1台の大気光全天カメラを設置したほか、国内外計7カ所で全天カメラによる伝搬性電離圏擾乱の総合観測を行った。この観測から、中規模伝搬性電離圏擾乱が、非常に良い南北共役性をもち、南半球と北半球で対称な構造を保ちつつ伝搬していることがわかった。
著者
田中 義人 TRIVEDI N. VERSHININ E. HIDAYAT B. YEBOAHーAMANK ディ LYNN K. FRASER B.J. 野崎 憲朗 立原 裕司 坂 翁介 高橋 忠利 北村 保夫 瀬戸 正弘 塩川 和夫 湯元 清文 HYDAYAT B YEBOAH-AMONKWAH D ANISIMOV S. YEBOAHーAMANK ディー. 宗像 一起 桜井 亨 藤井 善次郎
出版者
山口大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

太陽風によつて運ばれる太陽プラズマのエネルギーは、地球の磁気圏の境界領域から極域に侵入しオーロラや地磁気擾乱をおこし、さらに磁気圏内部から赤道域まで流入し様々な現象を引きおこしている。磁力線で結ばれた日・豪の共役点を含む磁気軽度210度に沿った、高緯度から赤道域にわたる広域地上多点で、電磁場変動,極低周波のプラズマ波動やオーロラの光学同時観測を行い、関与する電磁波エネルギーや粒子エネルギーのグローバルな輸送・流入機構を調査した。また、流入した太陽風エネルギーが集積し、且つ、電離層高度にジエット電流が流れている赤道域の南太平洋域で電磁環境変動の総合観測を行った。さらに、赤道域の経度の離れた南アメリカのペル-とブラジルの多点観測網において電磁気変動の同時観測を行い、磁気圏全体の太陽風エネルギーの流入ルートやエネルギー変換過程を明らかする手がかりを得た。1、太陽風変動に呼応したグローバルな地球磁気圏の応答を明らかにするために、特に、空間変化と時間変動が分離できる210度磁気子午線沿いの広域多点観測を、アメリカ、インドネシア、オーストラリア、台湾、日本、パプア・ニューギニア、フィリピン、ロシア等の28研究機関との共同研究として実施した。210度地磁気データ、LF磁気圏伝搬波データ、光学観測のデータの解析研究を行つた。(1)、惑星間空間衝撃波や太陽風中の不連続変動によって引き起こされ、地上の低緯度で観測されるSc/Si地磁気変動の振幅が季節変化しており、特に、夏半球で冬半球のおよそ2倍になっていることが見いだされた。このことは、極冠域に侵入した変動電場により誘起されたグローバルなDP型の電離層電流の低緯度への侵入の寄与を示唆している。(2)、SC/Siにより励起されたほとんどのPc3-4地磁気脈動は磁力線共鳴振動であるが、SC/Siの振幅が極端に大きいときには、プラズマ圏のグローバルな空洞振動モードも励起されている。(3) SCにより励起されたPc3-4の振幅の減少率はL<1、5の低緯度の領域で急激に増加する。また、赤道側に行くほど卓越周期が長くなっていることが観測的に明らかにされた。この結果は、低緯度電離層における理論的な薄い電離層モデルの限界とマス・ロ-デング効果を表している。(4) L=1,6の母子里観測所で光学・地磁気観測から、Dstが-100nT程度の磁気嵐の主相の時に、時々、目には見難い低緯度オーロラが地磁気H,D成分の湾型変化と大振幅Pi脈動の発生と同時に出現することが明らかになった。(5)美瑛LFデッカ局(85、725kHz)の磁気共役点のオーストラリア・バーズビルでのLFで磁気圏伝搬波の観測データ、NOAA-6衛星での高エネルギー電子のデータ、低緯度の地上観測VLF/ELF電磁放射のデータの解析から、磁気擾乱の伴う磁気圏深部への高エネルギー粒子の流入の様子が明らかにされた。2、磁気赤道帯は赤道エレクトロジェットで知られる様に、電離層電気伝導度がまわりの緯度より高く、地磁気脈動や電離層電流の赤道異常が現れる等の興味ある地域である。しかし、地磁気に関する研究は低感度の記録データもとにするしかなかったため、現象の理解はあまり進んでいない。そのため、磁気赤道帯で高時間精度、高感度フラックスゲート磁力計による磁場観測を試みた。(1)、ブラジル内陸部の6点の密な観測網で比較的長期(半年)にデータを取得した。また、ペル-の磁気赤道をまたぐ4点に観測点を設置し赤道ジェット電流の観測を開始した。さらに新しい試みとして、南部太平洋ヤップ島で、地磁気と電離層FMCWレーダーとの同時観測を実施し成功した。(2)、高時間精度、高感度磁場観測により、赤道域での地磁気脈動の振幅がおよそ0、1-1、0nTの範囲にあることが分かってきた。(3)、高感度のデータから、日出に伴う電離層電子密度上昇による地磁気脈動の振幅変調や、電気伝導度の赤道異常が引き起こす地磁気脈動の位相遅れなどの新しい結果が得られた。高時間精度のデータからはSSCやPi2脈動のグローバルな構造、衛星データとの比較からPi2脈動の開始と関係した磁気圏粒子環境の変化(オーロラブレークアップ、サブストームオンセット)などの興味ある研究が始められた。(4)、赤道域での多点観測や電離層レーダーとの共同観測から、赤道ジェット電流の空間構造や赤道反電流と電離層電場との関係など興味ある研究が始められた。
著者
竹久 妃奈子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

申請者は、世界で初めて塩害水田において選抜された耐塩性系統6-99Lの耐性に浸透圧ストレス耐性機構が関与していること、その原因遺伝子が1遺伝子であり、第6染色体に座上している可能性を示した。さらに申請者は、その遺伝子が、塩害水田におけるイネの草丈や千粒重、整粒歩合を高く維持する能力を有することを示唆した。本研究の結果、この1原因遺伝子を調節することによって、野外の塩害水田におけるイネ育種が可能となる可能性を示した。
著者
中山 恒義 兼下 英司
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2010

本研究はオフセンター内包イオン間の長距離相互作用が誘起するカゴ状クラスレートのTHz振動数領域での特異な物性について研究するものである.内包ゲストイオンの対称性が破れた系は、ガラス的な熱伝導を示し、熱電変換指数ZTが1を越えることが実験的に示され特に最近注目されるようになった.また極低温での熱電物質クラスレートに関するTHZ振動数領域での実験結果は結晶のものとは全く違う比熱や熱伝導性を示す.これらが構造ガラスと同じ振る舞いを示すことが重要である.本年度は10K領域で観測されるプラトー熱伝導についてオフセンターにゲストイオンを含む一般的系に対して成立する理論式を立て興味ある結果を得た.それらを要約すると、1.プラトーは対称性が破れたゲストイオンの回転モードと籠ネットワークがつくる音響フォノンとの結合状態を反映したものである.2.これによりフォノン分散関係が平坦化することで熱伝導が強く制限されることが明らかになった.3.フォノン分散関係を計算することでこれを明らかにし、音響フォノンンと回転モードとの結合定数がそのランダム性を反映しブロードになることが分かった.4.これがガラスで普遍的に観測されるボソンピークの起源であることが分かった.これらの結果から、効率の良い熱電変換物質の設計指針を与えることができることになった.ガラスで普遍的に観測されるボソン・ピークの起源に関する研究は純粋にアカデミックなものであったが、高効率の熱電変換物質の設計に役立つことが分かったのは大きな成果である.
著者
倉田 博之 清水 和幸 清水 和幸
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

生体分子ネットワーク中に埋め込まれている生物学的基本回路の構造と機能の関係(設計原理)を体系化して,合成生物学の基盤となるデータベースを構築した。それを基にして,基本回路の複合化システムである大腸菌中央代謝経路(解糖系+TCA回路+ペントースリン酸回路)の設計原理を解析して,それを合理的に設計するための遺伝子組換え戦略を提案した。物質生産の基盤である中央代謝経路を再設計することによって,エタノール発酵系や乳酸発酵系の生産性を向上させて,環境エネルギー問題に貢献する。
著者
上田 真世
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

昨年度、アヒル(水禽類)及びニワトリ(家禽類)各線維芽細胞に対するA/duck/HK/342/78(H5N2)感染実験において、ニワトリ細胞でのみ生じる進行性のアポトーシスの要因としてミトコンドリアの膜電位低下を明らかにした。これに基づき、今年度は膜電位低下の主要因とされる活性酸素の過剰産生ならびに細胞内Ca^<2+>濃度の変化に焦点をあて、ニワトリ細胞におけるアポトーシス誘導に関与するか検討した。ニワトリ細胞における活性酸素マーカーの発現はH5N2感染・非感染群間で大差は認められなかったが、抗酸化剤存在下において細胞生存率の回復が認められた。次に発育鶏卵を用い抗酸化剤処理・非処理両群にH5N2感染実験を行ったが、両群間で鶏卵平均死亡時間に変化は見られなかった。以上の結果より、H5N2感染時細胞単位では活性酸素の過剰産生がニワトリ細胞における進行性のアポトーシスに関与している可能性が示されたが、個体単位における病原性には活性酸素に加えさらなる因子の存在が示唆された。一方、細胞内Ca^<2+>濃度に関してはニワトリ細胞においてH5N2感染時顕著な濃度変化は認められず、Ca^<2+>キレート剤存在下においてもアポトーシスは進行した。これらの結果よりH5N2感染時のニワトリ細胞におけるアポトーシスにはCa^<2+>濃度変化は関与しないことが明らかとなった。アポトーシスに関与するウイルス因子として、昨年度組み換えウイルスを用い高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)のヘマグルチニン(HA)が重要であることを示したが、今年度はHPAIV-HAが細胞外から内へのCa^<2+>の流入を促す因子であり、その結果細胞内Ca^<2+>濃度の上昇をもたらしアポトーシスを誘導することを見出した。またHAと相互作用する宿主因子として小胞体シャペロン蛋白質であるGRP78を同定した。
著者
伊藤 啓史
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の主な目的は、家禽で増殖できない野生水禽由来のインフルエンザウイルスがどのような仕組みで家禽体内での増殖能を獲得するかを分子レベルで明らかにすることである。H16年度に実施した研究では以下の成績を得た。(1)野生の水禽から分離された弱毒トリインフルエンザウイルスA/whistling swan/Shimane/499/83株(以下499株)の鶏増殖能獲得変異株24a株のリバースジェネティクス系を確立し、人工24a株(以下RG24a株)を作出した。(2)鶏での増殖が不可能な499株と可能な24a株のリアソータントウイルス(合の子ウイルス)をリバースジェネティクスにより作出した。(3)(1)、(2)で作出したウイルスを用いて鶏雛での感染実験を行い、各ウイルスの増殖能を調べたところ、HA遺伝子は24a株に由来し、その他の遺伝子は499株に由来するRG24aHA株は鶏雛で増殖可能で、その逆のHA遺伝子は499株に由来し、その他の遺伝子は24a株に由来するRG499HA株は鶏雛で増殖不可能であった。したがって、HA遺伝子が水禽インフルエンザウイルスの家禽での増殖能に関わっていることが明らかとなった。さらに、RG24aHA株のNA遺伝子を499株から24a株に交換したRG24aHANA株の鶏増殖能はRG24aHA株に比べ増強されたことから、水禽インフルエンザウイルスの家禽での効率良い増殖には適切なHA遺伝子とNA遺伝子の組み合わせが必要なことが明らかとなった。(4)499株と24a株のHA遺伝子およびNA遺伝子翻訳産物であるHA蛋白とNA蛋白の機能を比較したところ、24a株の赤血球吸着活性(HA蛋白)およびノイラミニダーゼ活性(NA蛋白)は各々499株の約45%に低下していた。以上の結果から、野生水禽由来のインフルエンザウイルスが家禽で増殖できるようになるにはHAおよびNA遺伝子に変異が生じ、その翻訳産物であるHA蛋白およびNA蛋白の機能が変化することが重要であると考えられた。
著者
鈴木 晶子 小田 伸午 西平 直 金森 修 今井 康雄 生田 久美子 加藤 守通 清水 禎文
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

スポーツや音楽演奏や伝統芸能における「わざ」の修練・継承においては、(1)目習いと手習いの連動、(2)修練と継承の一体化が軸となっていた。(1)目習いにおいては単に視覚のみでなく様々な運動感覚が統合的に働くこと、また手習いにおいても自己の身体動作の実際と身体イメージとの間を繋ぐために表象・言語の力が大きく関与していること、(2)修練における経験の内在化が常に継承行為の一部となっていること、創造的模倣(ミメーシス)が、経験の再構成において広義の制作的行為(ポイエーシス)へと移行していく機構が認められることが解明された。
著者
足立 昭夫 内山 恒夫 山下 知輝 野間口 雅子
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

HIV-1は霊長類であってもヒトとチンパンジーにしか感染せず、かつ、ヒトにのみエイズを発症させる。このため、病原性ウイルスの研究に最も重要な個体レベルの実験・解析が不可能であった。このような状況の下、我々は世界に先駆けてサル・ヒト細胞指向性HIV-1の構築に成功した。このウイルスはGag-CAの一部(シクロフィリンA結合領域)とVifとがSIVmac由来である。本研究課題では、このウイルスを基に、1.サル細胞指向性を決定するウイルスゲノム領域の決定、2.サル細胞指向性のメカニズム解明、3.サル細胞での増殖に馴化したウイルスの構築とその特徴、4.サル細胞指向性R5ウイルスの構築、5.アクセサリー遺伝子変異体の構築とその性格、などに取組んだ。プロトタイプのサル細胞指向性HIV-1(X4ウイルス)はブタオザル、アカゲザルおよびカニクイザル由来の末梢血単核細胞に感染可能であるばかりでなく、ブタオザルとカニクイザル個体にも感染し、免疫反応を惹起させることがわかり、病原性発現機構の解明に向け大きく前進した。しかし、このウイルスはサル細胞でのTRIM5αによる抑制を解除できておらず、増殖効率がSIVmacに比較するとわるかった。この抑制に関与するGag-CA領域も解明して、増殖効率の向上したウイルスが構築された。また、細胞馴化によりSIVmacと同程度の増殖性を示すウイルスクローン(X4およびR5)も得られている。現在、上記全ての変異を持つHIV-1分子クローンとそのアクセサリー遺伝子欠損体を保持しており、個体内ウイルス複製機構/病原性発現機構の解明、アクセサリー蛋白質の役割解明、臨床応用を目指した近い将来のサル感染実験に備えている。
著者
水野 直樹 駒込 武 松田 吉郎 堀 和生 藤永 壮 松田 利彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、朝鮮・台湾に対する日本の植民地支配の特徴を歴史学的視点から明らかにするために、両地域を総体的に把握するとともに、両者を比較しその違いを念頭に置きながら、進められた。扱われた分野は、政治・経済・警察・軍事・教育・文化など多岐にわたっている。朝鮮と台湾との比較研究に関しては、例えば、「植民地住民登録制度」(台湾の戸口調査簿と朝鮮の民籍)の成立過程を検討することによって、それらの特徴を明確にした。また、「日本帝国」という広がりの中で朝鮮・台湾の占めた位置をも考察した。日本帝国における機械の生産・流通を統計的に分析することによって、帝国において植民地である朝鮮・台湾がきわめて大きな比重を占めていたことが明らかにされた。近年、植民地支配に関わる歴史資料の公開が韓国・台湾において急速に進んだが、本研究ではそれらの文書資料、および日本に残されているできる限り利用して、実証性を高めることができた。例えば、台湾における私立学校設立認可に関わる文書(台湾文献委員会所蔵)をもとにして、台湾総督府の教育政策の性格を実証的に解明した。研究代表者・分担者は、韓国・台湾の学会・シンポジウムなどで研究発表を行なうとともに、両国の学会誌・論文集に論文を掲載して、両国の専門研究者から批評を受けることとなった。これを通じて、植民地支配の歴史をめぐる国際的な研究交流・討論を深めることができた。
著者
森 雅生
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は次の3点であり、それぞれ以下のような研究結果となった。●プロトコルの数理モデル化攻撃可能なプロトコルを経験的に補完する例は知られているが、それをプロトコルすべてのセキュリティホールに適用すると冗長性を生じる。このことに注意して、まず暗号化関数と補助的な情報をメッセージに挿入するだけの数理モデルを考察した。これは数理的なモデルでありモノイドとなる。●正規の通信と攻撃的通信の分類一般にプロトコルは公開されており、これを悪用した攻撃は正規の通信との分別が困難である。上述したモノイドモデルでの攻撃的通信を分別することは可能である。●効率に関する考察冗長性はプロトコルの効率性と反比例する。このことについては上述のモデルだけでは議論が不十分であることが分かった。さらに一般的なモデルを構築することが必要となるが、メッセージ集合を文字列とし、プロトコルの実行はメッセージ間の通信と時系列関係によるグラフ(通信グラフ)と考え、文字列としたメッセージが通信グラフの頂点に割り当てられるような構造を考えた。しかしながら、予想していたよりも複雑な構造を持つことがわかり、この一般的なグラフモデルでのプロトコルの安全性と冗長性に関する理論的な結果を得るにはいたらなかった。さらなる研究が必要である。
著者
池田 泰子 足立 さつき 中野 泰志
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究成果は、(1)ひらがな文字に関する課題(絵記号の理解課題から文章読解課題)の健常児データを整理し、2013年7月に「ひらがな文字検査」を発売する。(2)今まで明らかにされていなかった音韻分解と音韻抽出能力がひらがなの読み書きにどのように影響しているのかを明らかにした。(3)文字の読み、書きではない関連課題23課題を3歳~6歳の健常児に実施し、スクリーニングに有効な課題として18課題が検出された。
著者
菅井 康祐 神崎 和男 山根 繁
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

音声学的な知覚・認識能力を適切に判別するテストを作成するための基礎調査として,従来型のリスニングテストがこれらの能力をどの程度予測するのか調査を行った。1つ目のディクテーション・インタヴュー課題では従来型のリスニングテストで同程度の習熟度と判定された学習者間では,ある程度の傾向は見られるものの異なる特性も見られた。単音節語の語頭の子音のみを入れ替えたミニマルペア識別課題では,正答率についてはそれほど大きな差は見られないものの,反応時間においては学習者間・課題間に大きな差が見られた。これらの結果により従来型のリスニングテストは子音の識別能力を弁別できないことが明らかになった。
著者
樋口 俊郎 清原 正勝 山本 晃生
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究では,高出力静電モータが真空環境での駆動や,真空環境での電磁場利用用途への応用に適していることに着目し,モータ技術と非接触浮上技術を統合することで機械的摺動部を排除した超クリーン静電浮上リニアモータを開発することを目的とした.研究の第1段階としては,まずは非接触浮上技術を用いることなく,モータ構成を真空環境に適した構造とすることで真空環境下での位置決め制御等を可能とした静電モータステージを開発した.開発したステージは,真空環境下においても通常環境下と同等の推力を発生することが可能であった.このステージでは,ステージ位置を検出するための静電容量式位置センサを新たに開発した.開発したセンサを用いて,真空環境下での位置決め制御に成功した.第2段階として,静電浮上技術を統合した静電浮上リニアモータの開発を行った.はじめに,静電モータの特性検討を通じて浮上技術との統合手法に関する検討を行い,静電浮上リニアモータの構成および制御方法に関する基礎的手法を提案した.提案した構成に基づき試作機を製作し,提案原理の妥当性を検証した.試作機においては,原理検証を目的とするため,浮上方向1自由度,推進方向1自由度の計2自由度に動作を限定して実験を行った.その結果,移動子を固定子下200μmの位置に静電気力で浮上させ,浮上状態を維持したまま,推進方向へのモータ動作を行うことに成功した.さらに,推進方向の推力についてサーボ制御を試み,位置決め制御を行うことにも成功した.実験で得られた最大推進速度は20mm/sであり,推進時のギャップ変動は最大で20μmであった.これにより,提案した浮上モータの原理の妥当性を確認した.以上の結果より,静電浮上リニアモータの開発という当初の目的は達成されたものと考える.今後は,静電浮上リニアモータに関して,実用化へ向けた技術開発を進めていくことが必要であると考えられる.
著者
冨永 良喜 小澤 康司 村本 邦子 前田 潤
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2004年12月に発生したインド洋大津波の被災地インドネシア・アチェの被災した教師36名に対して2007年9月、2日間の心のケア研修プログラムを実施した。また、アチェの中学生及び高校生に対して、心のケア授業を実施した。2008年6月には、アチェの中学・高校生297名に、心理教育のための心のケア・アンケートを実施した。その結果、97%の生徒が「またツナミが来るのではないか心配だ」と回答した。防災教育の必要性を示唆する結果であった。
著者
高橋 淑子
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

血管ネットワークは成体の隅々にまで張り巡らされ、酸素や栄養補給など重要な生理機能を発揮する。これらの血管ネットワークはどのようにして形成されるのであろうか?この問いに答えるために、初期胚における血管形成のしくみを研究した。個体発生の過程において、血管組織は一定のルールに従って作られる。そこでは動脈・静脈などのサブタイプに加えて、血管が作られるべき場所が厳密に規定される。血管形成の場所やタイミングがどのように制御されるのかについて、ケモカインSDF1とその受容体CXCR4の役割に注目した解析を行った。これまでに、SDF1/CXCR4シグナルは、背側大動脈から分岐する肋間血管の形成に重要な役割をもつことを見出している。興味深いことに、CXCR4は、形成されつつある細い血管において発現される一方で、それらの血管形成が終了し周囲を壁細胞で覆われる頃になると、CXCR4の発現が消失する。これらのことから、CXCR4は細胞移動の制御のみならず、血管内皮細胞の分化・成熟にも関わる可能性が見えてきた。これらの制御機構をさらに詳細に理解するために、CXCR4の下流で働く分子群の同定を試みた。候補分子の機能解析にあたり、トリ胚を用いた血管特異的な遺伝子導入法を開発した。解析の結果、さまざまな細胞接着関連分子群や、低分子量GTPase RhoファミリーがCXCR4と協調的に働く可能性が高まった。血管形成におけるケモカインシグナルの下流の分子メカニズムはこれまでほとんど知られておらず、本研究による成果は、血管パターンの形成機構を理解する上で、新たな知見を提供するものである。
著者
井上 亮 有山 達郎 北村 信也 岡部 徹 山本 高郁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

溶銑中V溶解度の温度依存性、高炉スラグ/溶銑間V分配比から、鉄鉱石中のVは炭化物を析出せずに溶銑に移行することがわかった。溶銑予備処理および転炉工程でV及びNbが含FeOスラグ中に取り込まれることを見出した。このスラグの冷却凝固過程でV はCalcium silicate相およびCaO-FeO-Al_2O_3相に、NbはCaO-FeO-Al_2O_3相に、PはCalcium silicate相にそれぞれ濃縮したことから、これらの鉱物相を分離することによって、高濃度のV、Nb、Pを含む鉱石代替品とすることが可能であった。
著者
岡崎 克則 井上 恵美
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)のC末端側サブユニット(HA2)に存在するαヘリックス領域のアミノ酸配列がH1〜H15亜型ウイルス間でよく保存されていることを見出し、本領域に含まれる10残基のペプチドを培地中に添加するとウイルス増殖が1/10程度に抑制されることを示した。感染細胞内で新たに合成されたHAの三量体形成を阻害することによってHAの輸送あるいは機能的発現を阻害するものと考えられたことから、エンドサイトーシス非依存性のトランスフェクション試薬を用いて本ペプチドを積極的に細胞内に導入することによって抗ウイルス活性を増強することを試みた。その結果、ウイルス感染前および後におけるペプチド導入でもウイルス増殖抑制効果は認められなかった。三量体形成に与る粗面小胞体〜ゴルジ体への導入には、エンドソームを経由する経路が有効なのかもしれない。新型インフルエンザに備えた抗体医薬を開発するため、H5およびH2亜型HAに対するモノクローナル抗体の作製を試みた。両亜型HA間で共通かつ分子表面に存在する7残基のアミノ酸配列を見出し、これをマウスI-A^b MHCクラスII分子結合カセットに挿入したペプチドを合成した。本ペプチドをC57BL/6マウスに免疫し、SP2/0細胞を用いてハイブリドーマを作出した。得られた800余りのハイブリドーマのうち1クローンがA/Singapore/1/57(H2N2)の感染性を中和する抗体を産生していた。現在、効率を上げるためにMAPペプチドを免疫したマウスの脾細胞を用いてハイブリドーマを作出している。