著者
ルイス・コムジック 佐藤 英一
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
応用数理 (ISSN:09172270)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.164-169, 2006
参考文献数
2

近年,産業界における構造固有値問題の規模は,すでに数百万自由度も珍しくないまでに,すさまじい勢いで増大している.そのような状況の中,構造動的解析における高精度の大規模固有値計算に対しては,この20年余り,ランチョス法が事実上の業界標準として使用されている.本稿では,第1章で基本的なランチョス法の概念,第2章で産業界における使用を考慮した特別な工夫についての説明,第3章で民間商用プログラムにおいて使用されるいくつかの重要な数値処理について解説する.また第4章で現状の先端工業分野での適用例を紹介し,第5章でランチョス法技術の将来の拡張性について概説する.
著者
浅野 隆二
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

手術室の温湿度は,手術を受ける側,行う側の両者にとって最適な環境が望ましいが,現実は麻酔で体温調節中枢が抑圧され,かつ体腔内までが室内空気に晒された状態の患者と,術衣,ガウン,フード手袋,および手術によっては鉛防護衣を着用し,ほとんど室内空気との熱交換ができない状態で長時間立位での手術を行わなければならない医療従事者との間には大きな隔たりがある.また,手術室用の空調設備そのものも,従来の精度の高い空調システムに対して,温湿度制御性能は劣るが機械室スペースの必要としない手術室内設置型のシステムが増加傾向にあり中間期の高湿度等の問題が発生している状況である.手術室の温湿度環境は,日本で唯一の病院設備の規定であるHEAS-02-1998にてDB22℃〜24℃〜26℃,RH45%〜50%〜60%とされている.一般に手術室では壁面の人の胸辺りの位置に温湿度センサを設置し制御しているが,測定している温湿度は吸込み口付近のもっと熱い(冷房の場合)空気だと思われる.その温湿度センサの位置を変えることによって医療従事者周辺,術野の温湿度状況がどのように変わるかの数値解析を行った.
著者
木田 勇輔
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.30, pp.59-75, 2013

In recent years, modern radical leaders have been elected in some representative metropolitan municipalities in Japan, such as Tokyo, Osaka, Yokohama, and Nagoya. This article studies a case of Nagoya city, and analyses radical reformist mayor's electoral base.<br> As a result of analysis of survey data, we obtain some empirical findings. (1) The effect of basic social categories is not so strong, but young voters tend to approve Kawamura's job. (2) Not only supporters of Democratic Party, but also active non-partisans approve Kawamura's job, and voters' reformist identity is also significant for job approval. (3) Political organization members and government sector workers don't approve Kawamura's job.<br> In modern Japanese cities, the system has weakened which enables parties to get voters' support through various groups and organizations. A large number of urban voters often demand political reform. This article shows the social base of today's urban political antagonism.
著者
永田 晋治 清家 瞳
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.31-37, 2021-04-01 (Released:2021-04-22)
参考文献数
66

昆虫の摂食行動も,他の生物と同様に内分泌系により支配されている。ペプチド性因子はその中心的役割を担い,エネルギー恒常性を維持している。栄養分依存的なメカニズムとしては,他の生物と同様,インスリン様ペプチド (ILP)と脂質動員ホルモンAKH(グルカゴンの昆虫におけ る機能的アナログ)により血糖値や体液中の脂質レベルを調節する。その上流や下流では,他のペプチド性因子が機能し,ホルモンリレーを作り,様々な栄養条件に対応できるようになっている。また,摂食行動に重要とされている各組織には,内分泌細胞が存在し,ペプチド性因子と摂食行動との強い関わり合いが予想できる。これらのペプチド性因子は,腸管の蠕動運動を調節することが知られているので,腸管の蠕動運動や口の動きなど摂食行動にかかわる運動はペプチド性因子が直接制御していると考えられる。 つまり,ホルモンによる統合的な調節メカニズムが摂食行動を制御しているのであろう。
著者
秋里籬島 編
出版者
鶴声社
巻号頁・発行日
1886
著者
松本 睦樹 大石 恵
雑誌
經營と經濟 : 長崎工業經營専門學校大東亞經濟研究所年報 (ISSN:02869101)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.235-262, 2006-02-24

Nagasaki Commercial High School (NCHS) was established in 1905 and turned out about 2,300 graduates in the Meiji and Taisho eras. In this article, some characteristics of its curriculums and graduates' jobs are shown. Firstly, by discussing curriculums in NCHS and other national commercial high schools, it became clear that NCHS made efforts to make its curriculums equally match those of Tokyo and Kobe Commercial High Schools, and that NCHS, on the other hand, gave foreign language lessons specializing in China and the South Asia. Secondly, it was tried to investigate the graduates' course in the eras. Although it was impossible to collect complete data, some features were ascertained. First, most of the graduates got jobs in the enterprises and banks whose headquarters were in Japan. Second, about 10% of graduates went on to higher schools (imperial universities, Tokyo Commercial University or graduate course of NCHS) in 1920's.
著者
Hiroyuki UEDA Katsuhiko NISHIYAMA Soichiro YOSHIMOTO
出版者
The Electrochemical Society of Japan
雑誌
Electrochemistry (ISSN:13443542)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.217-219, 2018-09-05 (Released:2018-09-05)
参考文献数
22
被引用文献数
5 8

The electrochemical behavior and specific adsorption of an ionic liquid, 1-butyl-3-methylimidazolium iodide, on a Au(111) electrode surface were investigated via voltammetric analyses, X-ray photoelectron spectroscopy (XPS), and scanning tunneling microscopy (STM). The electrochemical potential window and the reductive desorption of I adatoms were evaluated using voltammetric techniques. The XPS and STM results supported the specific adsorption of I adatoms on Au(111). Furthermore, high-resolution STM images revealed the formation of characteristic nanostructured rings consisting of imidazolium cations on I adatoms for the first time.
著者
清永 修全
雑誌
東亜大学紀要
巻号頁・発行日
no.26, pp.65-74, 2018-03
著者
田中 努 西尾 修 川南 吉弘 西田 直史 増井 芽
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.194, 2010

焼成処理は、焼却灰の資源化処理方法として、この5年の間に着実に実績を重ねてきた。しかし、焼成処理は未だ認知度が低く、溶融処理との比較が十分に進んでいない。そこで、焼成処理についての実例を挙げ、溶融処理との比較を行い焼成処理の特徴を検討した。その結果、燃料使用量とCO2排出量は1/4から1/2程度であること、維持管理費を抑制できること、品質維持管理が容易で安定していること、操業上の危険性が低いこと、焼成処理後の焼成砂の販売先が確保されていることなど、溶融処理に対して焼成処理には優れた点が多いことがわかった。
著者
ガンガ 伸子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.244, 2018

【目的】わが国では、高齢者世帯の増加を背景に、消費市場では高齢者消費の割合が増加傾向にあり存在感を増している。その一方で、貧困化する高齢者が増加の一途をたどり、生活保護世帯の半数以上を高齢者世帯が占めるに至っている。現役引退後の高齢者世帯は、消費が所得を上回り、貯蓄の取り崩しによって赤字を補填するという生活になる。しかしながら、晩婚化の進行等により、十分な老後の資産形成ができないまま高齢期を迎える世帯が拡大し、金融資産の保有状況により消費生活の内容に大きな違いが生じるという高齢者世帯の二極化が進んでいる。そこで、高齢者世帯のバランスシートを作成し、他の年齢階級との比較から、その特徴を明らかにしていく。<br>【方法】総務省統計局「全国消費実態調査」から世帯主の年齢階級ごとにバランスシートを作成し、高齢者世帯(世帯主が60-69歳、70歳以上)の特徴を明らかにする。その他、就業状況や住宅の所有等の違いによる比較も行う。さらには、時間の経過とともに、どのように高齢者世帯のバランスシートが変化してきたかについても明らかにする。<br>【結果】世帯主の年齢階級間でバランスシートを比較すると、世帯主が60歳代の世帯の純資産が最も大きく、その後貯蓄の取り崩しにより70歳以上では減少している。負債は世帯主40歳代以降年齢とともに減少していくものの、60歳代や70歳以上になっても住宅・土地のための負債が残っているという現状であった。
著者
稲吉 真子
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.147-159, 2016-01-15

「も」の基本的な用法である「累加」とは,「同じカテゴリーに属するとい う判断(同一範疇判断)を示すこと」である。しかしながら,その用例を見 てみると,同一範疇の判断がつきにくい,もしくは同一範疇のものが文脈上 に存在しない場合も多くある。「も」の同一範疇を判断する基準としては,統 語的同一範疇判断と語用的同一範疇判断があり,その内どちらかが必要とな るが,語用的同一範疇判断についてはある種の推論を必要とすることが多い ため,統語的同一範疇判断と比較し,同一範疇判断がつきにくいと言える。 同一範疇判断がつきにくいか否かについては,類命題の有無が大きく関与し ており,それぞれの用例を類命題との関わりから考察する必要がある。 なお,類命題がないものに関しては,類命題以外にどのような同一性に基 づき「も」を使用しているのかについて,新たなる観点を導入して検討する 必要があるが,それについては,「世界知識」という観点を導入し,話し手の もつ「世界知識」に基づき発話がなされているタイプとして分類することが できる。 また,数量をとりたてる「も」についても,類命題がないタイプとして位 置づけることができるが,これについては,「まで」,「しか(ない)」,「は」, などの,他のとりたて詞との対応関係から,「も」の特徴を明らかにしていく。 以上のように,本稿では,「も」の基本的な用法とそれ以外の用法について, 統語論的観点から整理した上で,新たなる観点を取り入れつつ,語用論的観 点からの考察を試みる。
著者
高塚 千広 村上 陽子 川上 栄子 新井 映子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 中川(岩崎) 裕子 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 静岡県に伝承されてきた間食や行事食に関する家庭料理の中から、次世代に伝え継ぎたいおやつのあり方や特徴について考える。<br />【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき、静岡県東部(沼津市、富士宮市、伊東市)、中部(静岡市、焼津市、藤枝市)および西部(袋井市、浜松市)の各地域において居住歴が30~81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。<br />【結果】昭和35~45年頃の食料事情と聞き書き証言を踏まえると、家庭では「おやつ」の習慣は定着していなかったと解釈される。日常食として、さつまいもや小麦(粉)の料理が静岡県全域にあり、ときには間食に用いられていた。その他、魚介 (イカ嘴、イワシ等の稚魚、貝類)、寒天、小豆、落花生、雑穀(キビ、ソバ)、種実類(トチ)等が間食になることがあった。炒ったソバやアズキを石臼で挽いた「たてこ」や、複数の穀類と豆を組み合わせた「とじくり」は西部特有である。もち米(餅)・うるち米(団子)の菓子は、正月や五節句、仏事用で、柏餅に材料の地域差があり、大福の形状や名称に変形が見られた。屋外の遊びの場面で、子どものおやつに通じる食事があり、川で採った小魚を河原の焚き火で加熱したり、山野で果実を摘んだり、駄菓子屋では、薄いお好み焼き、おでんこんにゃく、アイスキャンデー等があった。中部では明治以降から製餡業が盛んで、現在も県内に製餡業者が多く存在する。以上のことから、静岡県では、おやつに適する様々な農水産物の保存技術や料理が様々な形で伝承されてきたことがわかる。これらの食材は、噛みごたえ等の食感、色や香りを味わうことができ、デンプンやカルシウム、食物繊維等の補給にも役立つ。