著者
大貫 隆
出版者
学校法人 自由学園最高学部
雑誌
生活大学研究 (ISSN:21896933)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.24-43, 2021 (Released:2021-04-21)
参考文献数
47

生前のイエスによるエルサレム神殿倒壊の予言(マルコ14, 58)は,復活信仰成立後間もない原始エルサレム教会の中で再び活性化された.それは使徒言行録と全書6–7章に記されたステファノ殉教事件から読み取られるように,復活のイエスが天上から再び到来するという待望と結びついていた(第I節).その待望は満たされずに終わり,ステファノを含むギリシア語を話すユダヤ人キリスト教徒はエルサレムから離散した.しかし,アラム語を話すユダヤ人キリスト教徒は残留した.やがてペトロに代わって「義人」(主の兄弟)ヤコブが指導権を掌握した.以後その系譜に連なりながら後二世紀までさまざまな分派として存続したパレスチナのユダヤ人キリスト教のことを「ユダヤ主義キリスト教」と呼ぶ.第II節で取り上げる『ヘブル人福音書』の断片は,ユダヤ主義キリスト教のキリスト論が初期の「人の子」キリスト論であったことを推測させる.それは義人ヤコブに顕現する復活のイエスを「人の子」と明示している.第III節では,義人ヤコブの最期に関するヘゲシッポスの報告から,ヤコブとその仲間が「人の子」イエスの再臨を待望していたことが論証される.そこでは,生前のイエスが織り上げていた「神の国」についてのイメージ・ネットワークが,原始エルサレム教会の復活信仰によって補正された上で,継承されていることが証明される.同時に,ヤコブが時の大祭司によって「律法を犯したかどで」処刑されたというユダヤ人歴史家ヨセフスの証言から,ヤコ ブがモーセ律法の中の「供儀」条項を拒否していたと推定される(仮説1).第IV節では,AD 70年のローマ軍によるエルサレム神殿の陥落直前に,原始エルサレム教会がヨルダン川東岸のペラ(Pella)へ脱出したこと,その根拠となったのがキリストによる「天啓」あるいは「命令」であったという証言が取り上げられる.その証言はヘゲシッポス,エウセビオス,エピファニオスという教父たちの他,後二世紀のユダヤ主義キリスト教に属する外典文書『ペテロの宣教集』の中に見出される.そこでも,イエスは「人の子」とされ,二回にわたる到来が語られる.一回目は生前のイエスのことで,彼は「真の預言者」として「供儀の廃止」を予言したと言う.二回目は差し迫った再臨のことで,その時初めて「供儀の廃止」が実現されると言われる.おそらく,ローマ軍によるエルサレム陥落の直前には,生前のイエスによる神殿陥落予言(マルコ14, 58)がまたもや活性化され,それがキリストによる「天啓」あるいは「命令」と解釈されたものと推定される(仮説2).第V節では,皇帝ドミティアヌスがイエスの親族(ひ孫)を直接尋問して,その終末待望について問い質したという,またもやヘゲシッポスの報告が分析される.イエスの親族が語る「神の国」は,「人の子」イエスの再臨によって実現されるという点で,原始教会の復活信仰による補正を経ているが,生前のイエスの「神の国」のイメージ・ネットワークをよく留めている.
著者
前田 達郎 松本 尚之 須藤 昌吉 中原 良樹 上野 邦明 中山 英 森田 啓介 丹羽 雄紀
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.523-524, 2017-03-16

電力システム改革に伴う計画値同時同量制度の導入により、発電事業者は30分毎のゲートクローズ(需給計画の提出締切)やインバランス回避のために、定期点検等の運用上の制約のほか、気温等環境要因による発電能力の補正、燃料ガス導管の流量や燃料在庫管理等の複雑な制約も加味した緻密な発電計画を迅速に作成する必要がある。これらの制約のもとで、最大100台の発電機群の運転状態を決める大規模な最適化計算を、ヒューリスティック計算およびソルバー計算を併用することで、実用的な時間で解くことのできるハイブリッド最適化手法を東京電力フュエル&パワー株式会社と共同開発したので報告する。
著者
藤井 聡 米田 和也 北村 隆一 山本 俊行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.15, pp.489-497, 1998

本研究では, セミマルコフモデルを適用し個人の通勤手段の連続時間軸上での遷移過程を再現する行動モデルを構築し, このモデルの未知パラメータを, 複数の離散断面で実施されたパネル調査で得られたデータに基づいて推定した. 推定計算の結果, 通勤者が通勤手段としてCarpoo1を連続して利用し続ける期間は短い, すなわち, Carpoolを通勤手段として利用するという状態は他の交通機関を利用するという状態に比べて不安定であることが分かった. また, 機関別の移動速度が利用手段に影響を及ぼしていることも示された. 構築したモデルに基づいた集計化分析からは, 本研究で提案した動的な行動モデルを用いることで, 均衡状態の成立も含めたシステム全体の挙動についての解析が行える可能性があることが分かった. それとともに, 通勤手段シェアでさえも, 現状と均衡状態との間には大きな乖離がありうることが示された.
著者
高野 正博 松田 保秀 松田 正和
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.380-385, 1987 (Released:2009-06-05)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

消散性肛門直腸痛は,発作性に起こり,かつ消褪する痛みで,発作が治まるとまったくその痕跡を留めないとされ,この点で他の器質的疾患と大いに趣きを異にしている。その原因についてはさまざまの仮説があるが,いずれも推定の域を脱せず,現在まで原因不明の疾患とされている,われわれは過去32例の当疾患を経験したが,いずれの症例においても骨盤後面,特に仙骨,尾骨,肛門挙筋などに限局性の圧痛点が認められ,われわれはこれがいわゆる疼痛のtrigger pointであると判断した。この部分に診断と治療を兼ねたブロックを行うことによって,ほとんどの症例で症状は軽快,消褪した。以上のことより,当疾患の原因解明に大きなアプローチを得たと思われるので報告する。
著者
Matsuo Miwa
出版者
Springer
雑誌
Transportation (ISSN:00494488)
巻号頁・発行日
pp.1-33, 2019-01

Personal automobility is critical for accessing economic and social opportunities in the auto-oriented built environment of the United States. Despite declines over the past 40 years, household carpooling remains the most popular alternative mode to solo-driving regardless of demographic group. While carpooling provides a degree of automobility, carpool-dependent passengers often suffer from practical and other disadvantages. This paper explores gender gaps and ethnicity in personal automobility levels, particularly among Hispanics. The analysis explicitly considers drivers' access to household vehicles and non-drivers' access to household carpooling. The research finds that Hispanic females, especially immigrants, are low in automobility, both in the probability of being a driver and in access to household vehicles. The large gender gap is specific to Hispanics, and differs from gaps found for non-Hispanic Whites or Blacks. The gender gap decreases, but persists, as immigrant Hispanics stay longer in the U.S., gain or maintain employment, or become college-educated. Surprisingly, the gender gap in personal automobility level exists even among U.S. native Hispanics. Gender gaps in personal automobility among different ethnicity groups, particularly Hispanics, merit more study, especially as commercial car-sharing and ridesharing services become more common.
著者
池田 清子
出版者
一般社団法人 日本フットケア・足病医学会
雑誌
日本フットケア・足病医学会誌 (ISSN:24354775)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.53-59, 2020 (Released:2020-08-31)
参考文献数
2

慢性腎不全患者は足病変のハイリスク群である. 医療者は患者の足切断を予防するため患者に正しく足病変を理解してもらい, 足を守るセルフケアを行ってもらうよう患者教育を行う. しかし, 患者教育の効果をあげるためには, 足病変を含め患者を全人的に理解する必要がある. そこで, 本稿では患者理解と患者教育に有用と考えられるセルフケアとセルフマネジメントの考え方を紹介する. セルフケアという言葉は, リハビリテーション領域や一般書でも見られる言葉であるが, 看護では動作や行動だけでなく, 人間の思考や判断, 信念や動機づけまでをも含む広い概念として理解されている. また, すべての人間は健康になりたいと願い, 能動的に環境に働きかける存在であることを前提としている. セルフマネジメントはセルフケアと似ている言葉であるが, セルフケアよりも首尾範囲が明確で, 実践に活用しやすいモデルである. 今後, セルフケア, セルフマネジメントを患者理解と患者教育に活用することで慢性腎不全患者の足切断が減少し, 患者のQOLが向上することが期待できると考える.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1172, pp.82-84, 2002-12-23

2000年10月下旬、兵庫県尼崎市のバッティングセンターに、スーツ姿の男性6人が参集した。平日の午前10時、サラリーマンの息抜きには早すぎる。手慣れた様子で、運動着に着替えた一団は世にも珍妙なバットを手にした。木製バットの打球面に白いウレタンを巻きつけ、ビニールテープで固定したそれは、まるで「綿棒のお化け」。
著者
榊 剛史 鳥海 不二夫
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.1L4GS503, 2020 (Released:2020-06-19)

近年,ウェブ・SNSの普及による情報発信・拡散の変化に伴い,デマやフェイクニュースの拡散,エコーチェンバーの発生等,情報拡散にまつわる様々な問題のある現象が顕在化している.このような状況において,情報拡散の質を評価する技術の必要性が高まっている.本研究では,「ソーシャルポルノ(脊髄反射的に拡散・共有してしまいたくなる情報)」の存在を仮定し,それに基づいて,情報発信元(以下,メディア)の質を評価する定量的な指標を提案することを目指す.各メディアの情報を拡散するユーザの反応時間に着目し,メディアごとのユーザの反応時間を集計した指標を扇動性を表す一つの指標として提案した.結果として,提案指標は,記事や記事の拡散度合いによらず,メディアによって固有の値を持つ傾向が示唆された.今後は,大規模にユーザ評価実験を行い,提案指標の妥当性についてさらに検証していく.
著者
小川 祐生 山木 誠也 八村 寿恵 鐘ヶ江 晋也 杉本 大輝 網本 宏和 岡本 芳晴 網本 昭輝
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.810-817, 2021-12-20 (Released:2022-01-20)
参考文献数
9

ミニチュアダックスフント(以下MD)は上顎犬歯部の歯周病による口腔鼻腔瘻の好発犬種であるが,その進行パターンについては未だ不明である.今回,歯科処置時に上顎犬歯口蓋側の歯周ポケットが4mm以上ある症例,及び口腔鼻腔瘻が確認された症例を対象に回顧的研究を行い,MDと他犬種の歯科X線検査における上顎犬歯側面像の所見を比較した.その結果,歯周ポケット深度が同じ区分において,MDは他犬種よりも犬歯近位及び遠位の歯槽骨吸収像が少なく,吸収部位の吻尾方向への広がりが少ないと考えられた.また,MDは口蓋側方向の吸収程度を反映するホワイトラインの明瞭割合も高いことから,口蓋側方向への広がりも少ないと考えられた.以上より,MDの上顎犬歯部歯周病の進行は,水平吸収よりも口蓋側の垂直吸収が大きく進行する特徴を有すると考えられた.
著者
砂田 勲
出版者
眼科臨床医報会
雑誌
眼科臨床医報 (ISSN:03869601)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.334-336, 1967-04
著者
Mizuki TAKEDA Nobuaki ARAI Yuzo KOKETSU Yasushi MIZOGUCHI
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.21-0266, (Released:2022-01-18)

To assess factors for canine skin extensibility, our study investigated associations between the dogs’ skin extension index and the following factors, gender, age, neuter status, weight, coat color and six coat color related gene polymorphisms. Swab samples were collected from 69 toy poodles to extract DNA. The skin extension indices of the lower back and the neck were measured using the following formula: vertical height of the skin fold divided by body length multiplied by 100. The dogs’ age, weight, gender, neuter status and coat color were also recorded, as well as polymorphisms of the following six selected coat color related genes, Melanocortin 1 receptor, Tyrosinase-related protein 1, Melanophilin, Canine β-defensin-1, Major Facilitator Superfamily Domain Containing 12 and Agouti-signaling protein (ASIP). Univariable analysis showed there was a meaningful association between the lower back skin extension index and both gender and age (P<0.001 and P=0.048, respectively). Also, there was a possible association between the lower back skin extension index and ASIP Single nucleotide polymorphism (SNP) (R96C) (P=0.078). Linear model analysis showed there was a significant association between the lower back skin extension index and gender (P<0.001), and there was a tendency of the association between the lower back skin extension index and ASIP SNP (R96C) (P=0.098). In addition, there was an association between gender and age for the skin extension index. (P=0.048). Therefore, these results suggest that a greater risk of skin extensibility in toy poodle could be related to being female and the ASIP SNP (R96C), because these factors were associated with higher lower back skin extension index.

1 0 0 0 OA The Media Debate

著者
Laing M.A. J.B.
出版者
常葉大学経営学部
雑誌
常葉大学経営学部紀要 = Bulletin of Faculty of Business Administration Tokoha University (ISSN:21883718)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.77-82, 2015-09

Abstract: In 1983, Richard Clark, reviewing the literature on instructional technology, stated that instructional media have no effect on learning. He claimed that “media are mere vehicles that deliver instruction but do notinfluence student achievement any more than the truck that delivers our groceries causes changes in nutrition,” and his statement has attracted a flood of response from educational researchers for over thirty years. In response to criticism, Clark proposed a“ replacability test,” a challenge that there is no medium that can’t be replaced with another instructional method that will produce the same result. Due to its length and inconclusiveness, some researchers, such as Richard Mayer (2010), have suggested that the media debate is unproductive, and researchers should instead direct their attention to finding the most effective instructional techniques. This paper proposes, asdoes Sharon Shrock (1984), that the media debate is well worth revisiting because it involves issues of central importance to instructional research. The debate is also worth another look because the development of new mediahas shifted the context of the discussion.
著者
佐藤 慎太郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究計画では、ヒトノロウイルス(HuNoV)ワクチン開発を念頭に置き、その抗原としてウイルス様粒子と、これまでは検討することができなかった不活化全粒子の優位性を比較するとともに、投与経路として注射型と経粘膜型の優位性も比較検討する。実験には申請者らが最近樹立に成功したヒトiPS細胞株由来の腸管上皮細胞と、この細胞で増殖、精製したHuNoVの感染性粒子を用いる。免疫担当細胞のHuNoV認識における、抗原取り込みに特化した上皮細胞であるM細胞の関与を検討し、経粘膜型ワクチンにおいてM細胞に標的化することの有用性も検討する。
著者
藤原 龍也 王 碩玉 王 義娜
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会大会講演論文集 (ISSN:13451510)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.127-130, 2016

<p><i>Due to increasing number of population of aging society in Japan, most people working in agriculture have become elders. Compared to other fruit trees, Buntan tree is especially shorter than others that bring physical stress on the lower back in working. In this report, The data from surface electromyogram.is shown for approaching new way of reducing the stre</i><i>ss.</i></p>