著者
日沖 敦子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
no.10, pp.338-332, 2008-12

国立歴史民俗博物館蔵『久修園院縁起』(写本一冊)、および、福岡県八女郡大光寺蔵『飛形山大光寺縁起』(写本一冊)の二種の寺社縁起を翻刻紹介する。いずれも、藤原山蔭関連の寺社縁起である。藤原山蔭の説話・伝承を踏まえ、本尊の由来を説いた寺社縁起は複数確認でき、未紹介のものも少なからず存在する。近世前期には縁起絵巻も制作されており、本誌第四号では、大阪府茨木市常称寺が所蔵する『総持寺縁起絵巻』を紹介した。また、第七号では、天理大学附属天理図書館が所蔵する『新長谷寺縁起』を紹介した。今回紹介する、『久修園院縁起』は、かつて星田公一氏により紹介されたもの(『久修園院所蔵本カ)であるが、国立歴史博物館蔵本とは、若干字句に異同があり、『飛形山大光寺縁起』と併せて翻刻することにした。『飛形山大光寺縁起』は近世中期のものであるが、未紹介の寺社縁起である。内容の詳細については、後稿に記したい。
著者
内田 幸子 小柴 朋子 田村 照子 森本 美智子 田辺 文憲
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.44-51, 2014

<p>臨床現場で働く看護師にとってナースウェアは,看護業務を行っていく上で不可欠であり,超高齢社会に突入した我が国において,高齢者のケアに多くの時間を要する看護師の衣環境の工夫は急務である.本研究の目的は現状のナースウェアについて調査し,問題点を抽出して今後の改善課題を明確にすることである.アンケート調査は東京都,山梨県で実施,対象者は554名である.ナースウェア選択時に重視する項目は「動きやすさ」「素材」「デザイン」が上位で,回答者の45%が現行のナースウェアに「動きにくさ」を感じていた.ナースウェアの型としてはパンツスーツ型が,開きではファスナー開きが好まれていた.ナースウェアの色は「白」が最も好まれ,次いで「ピンク」であった.洗濯は大多数が病院契約のクリーニング業者で行っていた.ナースウェア選択基準の特性について因子分析を行った結果,耐洗濯性,素材,付加機能,デザイン性,動きやすさを重要視していると解釈することができた. </p>
著者
後藤雄太著
出版者
ナカニシヤ出版
巻号頁・発行日
2021
著者
小寺 一興 平石 光俊 三浦 雅美
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.189-194, 1997-06-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8

調音結合が単音節明瞭度に与える影響を, 正常聴力者8名と感音性難聴患者12名を対象に検討した。 無意味2音節語表で調音結合を含む語表と含まない語表の間で語音明瞭度検査を行い, 以下の結果と結論を得た。 1) 調音結合を含む2連音節語音では, 第1音の明瞭度は第2音より低下する。 その原因は, 音節を連続発声するとき第1音が不明瞭に発音されることによっている。 2) 調音結合にともなう音響情報が欠落すると, 感音性難聴患者の明瞭度は大きく低下する。 その原因は, 第1音の母音が第2音の子音を遮蔽することによっている。
著者
野中道郎著
出版者
三省堂書店/創英社
巻号頁・発行日
2021
著者
三野 たまき
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.118, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 肥満は成人病などの様々な病気の原因とされ,健康的な生活を送るためには,普段から食生活に気を配るとともに運動習慣を身につけ,体脂肪を適量に保つ必要がある.誰でもが無理なく行える有酸素運動条件下で体脂肪が燃焼しやすい運動負荷強度について調べることを目的とした.方法 被験者は健康な若年成人女性18名であった.測定前夜7時間の睡眠を取った被験者は毎朝5時に起床し,6時に規程食を摂食した.綿100%の半袖Tシャツとポリエステル100%のハーフパンツに着替え,環境温度24.5±0.3℃,相対湿度50.3±2.5%,照度827±27lx,気流8.0±0.1cm/sに設定した人工気象室7時に入室した.椅座位安静を1時間保った後,呼吸代謝と心拍数を8時から40分間測定した.運動負荷は,最高心拍数から年齢を差し引いた値のHRMAXの30,40,50,60,30%の強度で6分間ずつ自転車エルゴメーターをこがせた.運動負荷の前後には5分間の無運動負荷のコントロールを測定した.結果 エネルギー・糖・脂質消費量と相対心拍数は,ともに前コントロールに比べ,各運動段階及び後コントロールよりも有意に増加した.エネルギー・糖消費量と相対心拍数は有意に1<2<3<4段階であったので,運動強度を増せば,エネルギー・糖消費量や相対心拍数が増した.一方脂質消費量は,どの運動段階の組み合わせでもい有意な差がなかった.このことから,有酸素運動下では運動強度を高めても脂質消費量は増さないので,敢えて運動負荷強度を大きくする必要がないことがわかった.
著者
綿引 大祐 吉松 慎一
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.49-55, 2017-04-05 (Released:2019-04-05)
参考文献数
16

ツツジ類の害虫として知られるベニモンアオリンガEarias roseifera Butlerの幼虫が,Exobasidium属菌によって引き起こされるツツジ類もち病の菌えいとその表面に生じた白色粉状の子実層を摂食する様子を野外および屋内の飼育下において観察し,本種の菌食性とえい食性を確認した.野外における記録:埼玉県ふじみ野市大井と鹿児島県屋久島町安房において,ツツジ類もち病の菌えいから合計3個体の若齢・中齢幼虫を採集した.いずれの地点においても中齢幼虫は肥大して丸まった菌えいの内側に静止,あるいは組織内部へ食入しており,菌えいには内側と外側(表と裏)の両面に生じた子実層をかじり取るように摂食した跡が残っていた.屋内における記録:屋久島町宮之浦より得られた1雌成虫から採卵・ふ化した幼虫を用いて簡易飼育実験を行った結果,菌えいと子実層のみを餌資源として全ステージを完了できることが明らかとなった.その場合,若齢幼虫期は菌えいの組織内部に食入・成長し(えい食性),中齢幼虫期以降は組織外へと完全に脱出,菌えいの表面に生じた子実層を積極的に摂食することも判明した(菌食性).さらに,茨城県つくば市で得た1個体の終齢幼虫を用いて行った60分間の低速度撮影からは,本種が菌えいの表面に生じた子実層を積極的に摂食している様子が鮮明に観察された.なお,通常本種はツツジ類の新芽や花芽の基部側面に穴をあけて植物体の組織内部へ食入・食害することが知られているが飼育下でも同様の習性を観察でき,それはほとんどが若齢幼虫によるものであることが分かった.今回の実験においてベニモンアオリンガの幼虫は,寄主植物の葉茎と菌えい,および菌類の子実層を摂食し,特に中齢~終齢幼虫が積極的に子実層を摂食していた.チョウ目の菌食性は,様々なグループで派生的に繰り返し生じたものであるとされており,今回明らかになった本種の食性は,植食性から完全な菌食性へと移り変わる進化段階を示している可能性もある.
著者
天野 定雄 黒須 康彦 中山 寿之 三宅 洋 松田 健 遠藤 潔 上田 仁 森田 建 佐藤 公望
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.2313-2320, 1991-10-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
13

最近9年間に経験した鼡径部ヘルニア821例について統計的観察を行い,また施行された手術術式,術後合併症,術後再発,術後愁訴などについて検討した.ヘルニア種別頻度では外鼡径ヘルニアが76.1%,内鼡径ヘルニアが13.6%,大腿ヘルニアが8.2%,内外鼡径ヘルニアが1.9%であった.手術術式は外鼡径ヘルニアではMarcy法,内鼡径ヘルニア,大腿ヘルニア,内外鼡径ヘルニアではMcVay法が最も多く行われていた.術後合併症は3.7%に認められ,血腫形成が最も多かった.再発率は全体で3.1%であった.内鼡径ヘルニア型再発と大腿ヘルニア型再発が主であり,これらの症例の中には全身の併存疾患を有していたものが多かった.術式別愁訴に関してはMcVay法で程度は軽いものの牽引痛の頻度が著しく高かった.再発や愁訴を減少させるためには,ヘルニアの基本的な理解と確実な手術手技が重要と思われた.
著者
浅野 裕一
出版者
島根大学教育学部
雑誌
島根大学教育学部紀要 人文・社会科学 (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
no.18, pp.p51-96, 1984-12

秦帝国は、商鞍・韓非系統の法術思想を統治原理としたが、秦が滅亡して漢帝国が成立するとともに、それまでの法術思想に代り、黄老道が政治思想の主導的地位に躍りでてくる。この時期、黄老道的統治を行った人物としては、曹参・陳平・汲黯などが著名であるが、彼等の政治的手腕は、主に地方の郡国を舞台に発揮されている。 そこで問題となるのは、漢の皇帝と重臣達の黄老道的統治との関係である。もし歴代の皇帝が、帝国の中枢に於て、黄老道とは全く相い容れぬ、秦帝国同様の皇帝観・統治観を保持していたと仮定すれば、皇帝の意向を無視して、臣下の側だけが一方的に黄老道的統治を実施する行為は、到底不可能であったろう。とすれば、漢初に於ける黄老道隆盛の背景には、秦の皇帝観とは異なる、漢独自の皇帝観の存在が予想される。 これまで、秦帝国と漢帝国、及び秦の皇帝支配と漢の皇帝支配とは、秦漢帝国ないしは古代帝国の名の下に一括され、とかく両者の同質性ばかりが強調されてきた。しかしそれでは、前記の時代思潮の転換を、全く説明できぬこととなろう。そこで小論では、黄老道が流行していた、高祖・恵帝・文帝・景帝と連なる時期の漢の皇帝観を、秦の皇帝観と対比することにより、両者の間に存在した本質的差異を明らかにしていきたい。
著者
吉岡 完治
出版者
慶應義塾大学産業研究所
雑誌
Keio Economic Observatory review
巻号頁・発行日
no.1, pp.77-89, 1975-07

昭和48年はじめ頃から,我が国経済は,異常なまでの物価騰貴にみまわれたといわれる。そして,49年に至って,その物価騰貴がさらに激しくなるとともに,景気後退が並列して観察されたことから,スタグフレーションなる事態がさわがれている。一方,このような経済状態の前ぶれ,ないし,背後の主要な要因として,世界的規模の急激な需要増加が,ファクト・ファインディングとして指摘されている。前論文,及び前々論文は,かかる経済状態にもとづき,polypoly(急性売手多占を媒介とする売り惜しみ)negopsony(急性買手負占による買い急ぎ)の理論,及び実証的解明にあてられたといえよう。売り惜しみ,買い急ぎ,は,いうまでもなく在庫投資行動の介在によって具体化する。本試論は,この種の在庫投資に関する仮説の設定にあてられる。物価分析特集. 第I部. スタグフレーションと市場機能. 第3章