著者
赤林 朗
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.771-782, 2013
参考文献数
29

本稿では,まず池見酉次郎の提唱した,「東洋的心身一如を援用し,統合された一元論的な見方の重要性を主張する心身医学論」の理論的構成を批判する.そして,心身はもともと相互作用があるものであり,よりよい医療実践には,東洋的心身一如の概念であるとか,心身医学における一元論・二元論等の拙い哲学的論議は必要ではないと主張する.最後に,「心療内科」は,日本の曖昧性を好む文化的所産であると論じ,そのうえで文化的財産として,日本で定着していくには価値があると結論する.
著者
菅原 菅雄 中村 行三
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集 (ISSN:00290270)
巻号頁・発行日
vol.12, no.42, pp.119-132, 1947-02-25

種々の型式の蒸汽タービンの段落効率の一般的研究は既に屡々発表した通りである.今囘はこの一般的研究に於て取扱はなかつた速度複式衝動タービン(主としてテリータービン及びエレクトラタービンの如き特殊型のもの)に就て論じた.即ち段落効率の理論式を誘導し, これを基礎として効率に及す諸因子の影響を明らかにした.本研究に依て知り得たる主なる事項を擧げると次の如くである.(i) 速度複式衝動タービンの諸型式例へばカーチス, テリー及びエレクトラ型の如きは一見著しい相違があるやうに見えるが, 夫々の場合に對する條件を入れることに依て全く同一の方法によりその効率を論じ得ることが明らかとなつた.(ii) この種のタービンでは一般にカーチスタービンの場合に就て既に知られてゐる樣に, 先づ2速段が最も適當と考へてよいことも分かつた.(iii) 輻流タービンにおける蒸汽の流動は, 半徑方向に内向きの流れをなすものと, 外向きの流れの場合の兩型式がある.低速度比に對しては外向きの流れの方が勝れてゐるが, 高速度比の最大効率を生ずる前後では内向きの流れの型式が優秀なことにも論及した.
著者
鳥潟 博高 小林 喜男 菅沼 広美
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.145-151, 1988
被引用文献数
3 1

愛知県郷東町名古屋大学附属農場 (北緯35°, 年平均気温14.7°) で, ペカン5品種サクセスネ (Succes), ネリス (Nelies), シュライ (Schley), スチュアート(Stuart), カーチス (Curtis) を栽培し, 開花, 結実を調査し下の結果を得た.<br>1) 1ペカンの雄花は2年生枝に直接腋生し, 雌花は, 今年生新梢に頂生することを示した.上記5品種の毎年の開花期は5月下旬~6月上旬であり, 成熟期は11月であって, 雌果の成熟には154~182日を要し, 同地の無霜期間中に成熟することを明らかにした.<br>2) 開花調査の結果, サクセスは毎年開花が早く雌雄同熟か雄花先熟であった. ネリス, シュライ, スチュアート, カーチスの4品種は開花がやや遅く, 雌雄同熟か雌花先熟であった. 受粉, 結実調査の結果サクセス, スチュアート及びネリスは自家結実性のあることを示したが自然状態で充分な受粉が行なわれるか疑問であった.<br>また, 日本の山野には <i>Carya</i> 属植物がないので, 主要品種の雌花の recipient stage に花粉の shedding が行なわれる様な受粉樹の植栽がなければ結実が望めないことを指摘した.<br>3) 3ペカン5品種の100粒重はネリスが最も重く約600g, 次いでサクセス, シュライ, スチュアートで580~595g, ヵーチスは290gで最も軽量であった. 可食部率はネリス39%で最も小さく, シュライ55%で最も大きかった.
著者
橋口 公章 秦 暢宏 吉開 俊一 谷村 晃
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.8, pp.564-569, 2003-08-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
5 6

悪性腫瘍の硬膜転移に伴う硬膜下血腫の2症例を経験した.症例1では腫瘍細胞の硬膜静脈内への浸潤がみられた.硬膜静脈の閉塞の結果,硬膜内層の毛細血管からの出血が起き,硬膜下血腫が形成されたと推測した.さらに,腫瘍細胞の静脈洞閉塞により頭蓋内圧亢進が生じたと推測した.症例2では,血液凝固異常あるいはDICが血腫形成に関与していた.また,血腫外膜が未発達であることが,大量の間欠的な硬膜下腔への出血に関与していると思われた.
著者
田中 美保子
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.17-37, 2021-03-30

スタジオジブリがアニメーション化した『借りぐらしのアリエッティ』(2010)は、メアリー・ノートンのイギリス児童文学の古典The Borrowers (1952)を翻案した作品である。『ハウルの動く城』 (2004)や『思い出のマーニー』(2014)を含め、ジブリ映画の伝統に位置づけられる作品は、イギリス児童文学を脚色したり、その影響を受けたりしている。ジブリは、物語の舞台を日本へ移し、アニメーション化に際し、環境の違いや文化の背景の違いを反映した多くの変更を加えている。ジブリ作品の英語吹き替え版の大半はディズニー/ピクサーが制作し、アメリカ人声優を起用しているが、珍しいことに、『借りぐらしのアリエッティ』では2種類の英語吹き替え版が制作された。一つは、ディズニーによるThe Secret World of Arrietty (2012)、もう一つは、イギリス人役者を主に起用した、イギリスの配給会社スタジオ・カナルによるArrietty (2011)である。これら二つの吹き替え版では、脚本、性格描写、それぞれの国固有の事物・風物として焦点を当てる箇所などが違う。そしてそれは、ジブリの日本語脚本とも著しく異なっている。本稿では、こうした点に着目し、日本語版と二つの英語吹き替え版を比較対照し(また、ノートンの原作を適宜参照し)、文化を跨いだノートンの物語の広がりを探る。変更点の多くは、日本、アメリカ、イギリスの文化的な違いに関わること、言語や物質的世界の向こうへ広がる問題、物語の慣例や(特にディズニーの場合には)登場人物や家族関係に対する姿勢の違いが関係することについて考察する。その際、「国民性」といったありきたりの結論にならないよう留意しつつ、関連する要因の数やその複雑さにも配慮する。
著者
和田 実
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.186-194, 2001-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

This study examined the differences between interpersonal relationship of same-sex old friends (OF) and that of new friends (NF). It also investigated the effects of physical distance with an old friend and gender on the friendship. Respondents were 208 undergraduates, 86 men and 122 women, who chose one of most intimate person each from same-sex friends they had made before and after they entered a university, and answered questions to describe their relationship. Results showed that relationship satisfaction and tired feeling were higher for OF than NF. Spending time together and talking over telephone were more frequent for NF than OF, but for each occasion together or over telephone, OF spent longer time than NF. OF expected more self-disclosure between them than NF. Gender differences in friendship expectation were similar to previous findings (Wada, 1993, 1996). Furthermore, gender and physical distance both influenced the frequencies of OF spending time together and over telephone. These findings are discussed in terms of gender differences in friendship.
著者
北澤 茂良 桐山 伸也 松本 祐二
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

人工内耳装用者(CIR)のための音楽聴取支援装置として個人ごとの移調と速度調整の特性を学習獲得できる「懐名歌」を開発し、CIRの内観報告を多数得た。これを生かして人工内耳の音響シミュレーションを開発し、人工内耳音階の効果を確認し、音楽聴取できる人工内耳の可能性を検討した。 CIRが楽しめる音楽を提供するために、知名度、年代、主旋律の音程、リズム、などを考慮して15曲を選択し、音楽訓練を受けた女声・男声・口笛が演奏した。曲楽は、刺激電極数が最大化されるように移調を行った。
著者
鉾井 修一 原田 和典 小椋 大輔
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

森林による二酸化炭素の固定と木炭の製造・貯蔵というCO2固定化プロセス、水およびエネルギー循環、排出量取引などの国際的な取決め・経済・社会システムをトータルに考えたシステムの提案と、提案するシステムの可能性を探ることを目的とする。そのために、本研究では以下の事項についての検討を行う。1.木炭化により固定し得る二酸化炭素(炭素)量の評価と炭化プロセスにおけるエネルギー収支の把握 2.木材供給システム、木炭製造プロセスおよび木炭貯蔵システムの検討と木炭貯蔵可能量の予測 3.木炭の吸放湿性を利用した室内湿度制御と健康との関係についての検討 4.木材および炭化後の木材の耐火性能についての評価 5.二酸化炭素固定化を認定・評価する国際的なシステムの提言今年度は以下の研究を行った。1.森林における物質収支、エネルギー収支についての基礎資料を収集し、二酸化炭素固定量の評価、木炭の製造に利用可能な木材量を把握する。2.代表的な木炭製造プロセスのエネルギー関係、木炭の収率、材種との関係などを整理し、その特徴を評価する。これにより、木炭化により固定し得る二酸化炭素(炭素)量を評価する。3.木炭貯蔵が可能な場所をリストアップし、その貯蔵可能量を見積もるとともに、木炭生産地と貯蔵地との間の最適な輸送システムについて検討する。4.木材および炭化後の木材の耐火性能についての評価を行う。5.壁の吸放湿性を利用した建物内湿度の調整と空調による湿度調整との関連について調査・整理する。
著者
松浦 純生
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.21-25, 2020-02-01 (Released:2020-03-02)
参考文献数
9
著者
吉田 高子 浦添 元気
出版者
近畿大学理工学部
雑誌
近畿大学理工学部研究報告 = Journal of the Faculty of Science and Engineering, Kinki University (ISSN:03864928)
巻号頁・発行日
no.44, pp.27-34, 2008-09-01

The sericulture industory has been done for a long time in Yabu City. Therefore, do the in existence of a lot of peculiar three-story sericulture farmhouses. The number of sericulture farmhouse according to the form was examined based on the investigation done in 2006, and the distribution was researched. The feature was found respectively when examining it dividing Yabu City into four districts. It has been understood that buildings of the same type has concentrated on a part of district, and the same type has concentrated along the river.
著者
吉田 高子 浦添 元気
出版者
近畿大学理工学部
雑誌
近畿大学理工学部研究報告 (ISSN:03864928)
巻号頁・発行日
no.44, pp.27-34, 2008-09

The sericulture industory has been done for a long time in Yabu City. Therefore, do the in existence of a lot of peculiar three-story sericulture farmhouses. The number of sericulture farmhouse according to the form was examined based on the investigation done in 2006, and the distribution was researched. The feature was found respectively when examining it dividing Yabu City into four districts. It has been understood that buildings of the same type has concentrated on a part of district, and the same type has concentrated along the river.
著者
王 岩 吉野 泰子 熊谷 一清 高橋 深雪 関口 克明
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
no.634, pp.1451-1455, 2008-12
参考文献数
7

This paper describes the actual conditions of thermal environment when silkworm is breeding, and the air quality such as CO<sub>2</sub>, CO, VOC, carbonyl compound whose hearth is used. In addition to those factors ventilation rate in each part of the traditional house corresponding to sericulture are found out in Setagaya Ward Jidaiyubori Park. Moreover, the ventilation performance in back of the ceiling and the monitor roof is investigated. The mechanism of thermal conditions, IAQ and ventilation rate was clarified in this paper for the first time using the three-dimensional heat fluid simulation software.