著者
徳田 佐和子
出版者
北海道立林業試験場
巻号頁・発行日
no.49, pp.35-88, 2012 (Released:2013-10-08)

ミヤマトンビマイ科マツノネクチタケ属に属する木材腐朽菌マツノネクチタケの種複合体:Heterobasidion annosum s. l. (広義)は,北半球広域に分布し,針葉樹を中心とした林木に著しい根株腐朽被害および枯死被害をもたらすもっとも重要な樹木病原菌のひとつである。そのため,海外では古くから本菌の生態や防除に関する集中的な研究がすすめられてきた。しかし,日本産のものについては分類学的検討や被害実態の把握すら十分になされず,知見が不足した状態にある。本研究は日本産マツノネクチタケの特徴を包括的に把握することを目的とし,標本収集と野外調査,屋内実験により,国内に分布するマツノネクチタケ属3種の分類学的位置づけ,トドマツ人工林でみつかったマツノネクチタケ被害の特徴,被害地における同菌個体群のジェネット分布と伝播法,および北海道で推奨されるマツノネクチタケ被害の軽減法を明らかにした。日本および東アジアに産するマツノネクチタケ属菌3種(マツノネクチタケ,レンガタケ,南方系未同定種)について,分子系統解析と形態比較により分類学的位置づけを明らかにした。日本産マツノネクチタケは,マツノネクチタケ(広義)のうち比較的病原性が弱いとされるH. parviporumであったが,ヨーロッパのものとはやや異なる形態的特徴を有し,系統樹上では異なるサブクレードに属していた。従来H. insuraleとみなされてきたレンガタケは形態的特徴がH. insuraleタイプ標本と異なっており,形態および塩基配列が既知の種のいずれとも一致しなかったことから,新種Heterobasidion orientaleとして記載した。日本の南部と中国に分布する未同定種については新種Heterobasidion ecrustosumとして記載し,和名をカラナシレンガタケとした。分子系統解析からは,本菌が国内産の他の2種よりもオーストラリア周辺に分布するH. araucariaeと近縁であることが明らかとなった。北海道東部にある68年生トドマツ人工林において激しい根株腐朽被害が発生したため,病原菌分離菌株のDNA解析と菌叢の形態観察を行い、腐朽被害の原因がマツノネクチタケであることを明らかにした。国内で発生した同菌の被害をDNA解析により確認したのは本研究が初めてである。30×35mのプロット内にあったトドマツ伐根57本のうち27本(47%)に根株腐朽被害が確認され,マツノネクチタケ被害はこれら27本のうち14本(52%)に発生していた。本菌によるトドマツの腐朽は,心材が黄色味を帯びた淡オレンジ色~淡褐色に腐朽し,材に菌糸が詰まった細長い空隙が発達して繊維状を呈するもので,腐朽部は根株だけにとどまらず樹幹上方へむかって拡大していた。被害が著しいトドマツでは樹幹内部が空洞となり,辺材部にまで腐朽が及んでいた。一方,被害地のトドマツは衰退せず,順調な肥大成長を続けていたことから,日本のマツノネクチタケはトドマツ生立木に対して強い腐朽力を持つ一方,枯死をもたらすような強い病原性は持たないことが示唆された。3種類の手法(体細胞不和合性試験,RAPD解析,マイクロサテライト解析)を併用して、被害地におけるマツノネクチタケのジェネット分布とその遺伝的多様性を調査した。国内における同菌のジェネット分布調査は本研究が初めてである。68年生トドマツ入工林被害地に設定した60×100mのプロット内にあった被害木伐根33本各々から分離されたマツノネクチタケ33菌株は,それぞれ1~15本の被害木に感染した8個のジェネットに識別された。特定の1菌株からなる1ジェネットだけは遺伝的に他のものと大きく異なっており,3手法すべてで一致して識別された。しかし,残り32菌株は非常に近縁であり,手法により異なった識別結果が得られた。マツノネクチタケ(広義)でこれほど近縁なジェネット群が被害地から識別された事例はこれまで報告されていない。また,径が51mおよび50mに達した2個のジェネットは同菌のジェネットとしては世界最大であり,成長速度から推定した齢は100年以上とみなされた。ジェネットの特徴と観察された同菌の生態から,被害地のマツノネクチタケは主に根系の接触部を通じて栄養繁殖(菌糸成長)による感染拡大を行っていることが示唆された。被害地のマツノネクチタケは,もともと1個もしくは数個の子実体でつくられた担子胞子に由来しており,入工林が造成される以前の天然林だった頃にこの場所に定着した後、残された被害木伐根もしくは感染した生残木から人工林に引き継がれ,主に菌糸成長によって隣接木間を広がったものと考えられた。マツノネクチタケによる宿主の衰退や枯死が起こらない日本では,同菌の被害を初期段階で見つけることが難しい。しかし,トドマツ被害木は特徴的な腐朽型を呈するので,トドマツ人工林が高齢級化し収穫が行われつつある現在が被害地を見つけるよい機会であると考えられる。被害がみつかった場合,海外で行われている胞子分散を対象とした防除は基本的に不必要で,そのかわり,栄養繁殖による伝播を断つことを目的とした施業が推奨される。例えば、徹底した皆伐,被害木伐根の除去,抵抗性樹種への樹種転換,広葉樹を交えた混交林化,低密度植栽などが適当であろう。日本のマツノネクチタケは子実体形成を行うことがまれで栄養繁殖に強く依存しているので,いったん林地から感染源をなくし,トドマツ同士の根系の接触機会を減らせば,その林分におけるマツノネクチタケ被害は確実に軽減されるものと考えられる。一方,現在の北海道では,森林資源の平準化や森林の持つ多面的な機能の発揮を目的として,長伐期化,択伐や小面積の孔状皆伐,複層林化などが広くすすめられている。しかし,これらの施業は,マツノネクチタケに感染した生立木を林内に長く残すこととなり、罹病木と健全木の接触機会が増えて次世代林への被害の引継ぎや林分内での感染拡大につながるおそれがあるので,同菌の被害地では避けるべきである。
著者
吉本 昌郎 信田 聡
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.91-139, 2001

トドマツ水食いについて,製材途中,製材後の供試木について観察をおこなった。水食い材は節,樹脂条,入り皮など,なんらかの欠点とともに現れることが多かった。これから,石井ら17)の指摘しているように,水食い材では節,樹脂条,入り皮など,なんらかの欠点がもとで無機塩類や有機酸が集積し浸透圧が上昇することで含水率が高くなっているということが考えられた。特に,樹脂条が節に近い年輪界に多く生じ,そのような個所で水食い材の発生が顕著であった。このことから,風や雪,択伐の際に枝にかかる応力により年輪の夏材部と春材部の間に沿って破壊によるずれが生じ,そのような個所に樹脂条が形成される際に無機塩類や有機酸の集積がおこり,浸透圧が上昇するのではないかと推測した。トドマツの気乾試験体,生材試験体についてJIS Z 2101-1994に準拠した,曲げ試験を行い,曲げ強さ,曲げ比例限度,曲げヤング係数が水食いの存非により影響を受けるか否かについて調べた。結果は気乾試験体では曲げ強さ,曲げ比例限度,曲げヤング係数といった値は非水食い試験体の方が大きい傾向があったが,統計的な差は存在しなかった。生材試験体では曲げ強さ,曲げ比例限度,曲げヤング係数といった値は全体的に著しく減少しており,水食い試験体と非水食い試験体の比較では気乾試験体とは逆に,水食い試験体の方が大きい傾向があった。しかし,これにも統計的な差は存在しなかった。トドマツの気乾試験体,生材試験体についてJIS Z 2101-1994に従った,縦圧縮試験を行い縦圧縮強さが水食いの存非により影響を受けるか否かについて調べた。結果は,統計的に有意な差は存在しなかった。トドマツの気乾試験体,生材試験体についてJIS Z 2101-1994に従った,せん断試験を行いせん断強さが水食いの存非により影響を受けるか否かについて調べた。結果は,統計的に有意な差は存在しなかった。水食い材,非水食い試験体の間に強度の有意差が存在しなかったということは,水食い材であっても,乾燥に十分気をつければ,非水食い材と同様の使用が可能であることを示唆している。現在の状況では水食い材は製材用とはならず,パルプ用としてチップとなるのが普通である。一部の製材工場では水食い材からでも構造用材ではないが,建築用材として土留め板などを採材しているところもあるが,あくまで一部の工場でしかない。今回,水食い材は,非水食い材に比べ,強度の低下が存在しないか,存在したとしても小さいものであることがわかった。したがって水食い材は構造用材などとして有効な利用を目指すことができる。
著者
今井利為
雑誌
神水試研報
巻号頁・発行日
vol.9, pp.21-25, 1988
被引用文献数
2
著者
大黒 俊二
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.55-86, 2002

一 : 説教史料 : 「声の影」 : 西欧中世史研究において、説教記録のもつ豊かな可能性が広く知られるようになったのはここ二〇年来のことである。説教記録は近年ようやく、単なる記録を脱して歴史家にとっての史料としての地位を得たといってよい。それ以前、説教記録は教会史家や思想史家、ときに文学史家が興味を示す程度であり、研究者も修道士など教会関係者がおもであった。それが今日では、説教それ自体が中世最大のマス・コミュニケーション手段として専門研究の対象となるとともに、経済史、心性史、女性史、民衆文化史、美術史などの研究者が素材を求めて説教史科に赴くようになっている。……
著者
三宅 和朗
出版者
三田史学会
雑誌
史學 = The historical science (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.83-105, 2020-10

一、はじめに二、主観的な環世界三、環境への心性史研究の拡がり四、地域差・階層差・時代区分と史料五、おわりに

1 0 0 0 OA 岡山県公報

出版者
岡山県
巻号頁・発行日
no.(10963), 2008-04-11
著者
佐藤 孝雄
出版者
三田史学会
雑誌
史學 = The historical science (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.147-155, 2020-10

緒言環境史の特質と射程「環境への心性史」とその広がり過去二〇年の考古学結言 : 脱・人間中心主義の環境史
著者
鶴見 みや古 園部 浩一郎 山道 弘美 塚本 洋三
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.136-182, 2014-03-20 (Released:2016-03-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

Dr. Yoshimaro Yamashina (1900–1989) was a Japanese ornithologist and the founder of the Yamashina Institute for Ornithology. His two-volume “A Natural History of Japanese Birds”, published in 1934 and 1941, was an important contribution that had a major influence on the development of Japanese ornithology. One characteristic of the book is the use of figures printed from wood engravings. Indeed, this is thought to be the only Japanese bird book that includes figures made in this way. The Institute has been working on registration and preservation of the old unattended materials. The project revealed materials, such as original drawings, wood blocks and autographed manuscripts that Dr. Yamashina had used in preparing the handbook. A total of 527 related materials were registered, consisting of 51 autographed manuscripts, 448 original drawings, wood blocks, etc., and 28 miscellaneous items such as letters and envelopes. It was evident that Dr. Yamashina had shown a meticulous attention to detail in the preparation of his handbook. Furthermore, he had kept working on writing with a clear intention of publishing a third volume. The materials for the published and unpublished handbooks are important for studying the history of the development of Japanese ornithology, and they are also valuable as a means of showing that Japan at that time had a culture capable of producing such a book. Most of these materials are owned by the Institute.
著者
Cheryl Tatano Beck 中木 高夫 黒田 裕子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.362-370, 2011-07-15

「エビデンスに基づく実践(Evidence-Based Practice ; EBP)」を提供しようとする強い外圧により,私たちの学問に質的研究から得られた最高レベルのエビデンスをもたらすために,看護研究者たちは質的研究のメタ・シンセシス訳註1の方向に目を向けるようになった。メタ・シンセシスは,質的研究をエビデンス階層のふさわしいレベルに位置づけ,エビデンス階層のレベルを高めるのに役立つ。私たちには,「実践に移植することができるように,研究者,臨床家,そして一般の人々に利用可能な知識を生みだす」責務がある(Thorne, Jensen, Kearney, Noblet, & Sandelowski, 2004, p.1360)。システマティック・レビュー訳註2は,例えば,航空機が離陸する前に,耐空性能が十分であることを確認する飛行前検査に匹敵するものである(Pawson, 2006)。メタ・シンセシスのようなシステマティック・レビューは,臨床実践に利用される前に,あるいは保健政策を形づくるのに先だって,その結果の信頼性を確かなものとするために,厳格な一連のステップを踏む。 いまから40年前,Glaser & Strauss(1971)は,もし蓄積された知識の体系を構築するための方法が使用されなければ,研究者たちがばらばらに訪問するために,その個別の質的研究からの結果は「他から切り離されている全く関係のない知識の島(p.181)」としてとどまるに過ぎないと警告した。メタ・シンセシスはそのような1つのアプローチである。Sandelowski, Docherty, & Emden(1997)は,他者から孤立して作業する「分析的マスタベーション(分析だけに没頭してしまう視野狭窄)」に質的研究者たちが貢献しないように強調した。
著者
北 素子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.253-259, 2012-06-15

はじめに 筆者らは,Catherine Pope,Nicholas Mays,そしてJennie Popayによる書籍『Synthesizing Qualitative and Quantitative Health Evidence : A guide to methods』(2007)を翻訳する機会を得て,医学書院より日本語版タイトル『質的研究と量的研究のエビデンスの統合─ヘルスケアにおける研究・実践・政策への活用』(Pope, Mays, & Popay, 2007/伊藤,北監訳,2009)として出版した。本書は,英国における医療制度と,エビデンスに基づくヘルスケア政策とマネジメントという文脈において執筆されたものであり,英国を発祥とするEvidence Based Medicine(以下,EBM)の情報インフラストラクチャー(コクランライブラリー)のシステマティックレビューに,質的研究を含めてゆくためのさまざまなアプローチがまとめられている。その目的は,質的研究と量的研究から得られたエビデンスを,政策や臨床実践場面での意思決定に活用できる形に統合してゆくことにある。 日本の看護界においても,質的研究・量的研究の量と質を確保することと平行して,それら両方の研究から産み出された成果を活用され得る形にまとめ上げていく気運が高まっている。そのあらわれは,例えば2010年にPatersonらによる『Meta-study of qualitative health research a practical guide to meta-analysis and meta-synthesis』(2001)が邦訳され,『質的研究のメタスタディ実践ガイド』(Paterson, Thorne, Canam, & Jillings, 2001/石垣,宮﨑,北池,山本監訳,2010)として紹介されたこと,さらに2011年,第37回日本看護研究学会学術集会が黒田裕子大会長(北里大学看護学部教授)のもと,「エビデンスに基づいた看護実践を! 現場の研究熱を高めよう」というメインテーマで開催され,メタ分析およびメタシンセシスに関する研究手法を積極的に実践しておられるC.T. Beck博士の招聘講演が行なわれたこと,それに伴い,博士の論文「Meta-synthesis : Helping Qualitative Research Take Its Rightful Place in the Hierarchy of Evidence」(Beck, 2011)(邦題「質的研究をエビデンス階層の正しいレベルに位置づけるのに役立つ方法」)が,本誌『看護研究』44巻4号に収録されたことなど,枚挙にいとまがない。こうした状況の中で,改めてPope博士らによる本書を読み返してみると,質的研究を看護実践のエビデンスとして位置づけるためのさまざまな方略を俯瞰することができるという点で,私たちにさまざまな可能性を示してくれるように思う。 本稿では,第30回のJRC─NQRでの発表内容をもとに,本書の書かれた背景,すなわち質的研究から得られたエビデンスをシステマティックレビューに含めていこうとする統合アプローチの背景と,Pope博士らがその著書で提示している内容から,システマティックレビューにおける「統合」の位置づけ,さまざまな統合アプローチ,および質的方法論を基盤とする解釈的アプローチについて概説する。
著者
川崎 弘 岩田 文男 メスキータ フィーリョ マノエル V.
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.45-50, 1984

セラードにおける作物の根群文布は著しく浅いため, 栽培期間中不定期に発生する小乾期なよってしばしば水分不足の被害をける.従来, この浅根化は強酸性土壌に由来する交換性Alの阻害作用に婦せられ, 石灰の深層施用が推奨され, かつ実施されているが, 依然として改善されていない.本実態調査ではセラートにおける作物根分布の表層化の原因を解明するため, セラードのライソル (Ferralsols) , 肥沃なテラロシャ (Eutric Nitosols) および沖積土壤 (Dystric Fluvisols) のダイズ根群の分布を調査・比較し, セラードにおけるダイズ根群分布の特異性を明らかにしようとした.調査の結果, セラードのダイス根群はテラロシャおよび沖積土壤に比べて主根の伸長・肥大が悪く, 代って地表近くの分枝根が良く発逹し, 根群が表層に集中する特徴を示した.しかし, セラードの開墾初年月の畑では主根が深くまで伸長し, 根群も地表から比較の深層まで広い範用に分布しているのが認められた.
著者
大久保 直美
出版者
農業技術研究機構花き研究所
雑誌
花き研究所研究報告 (ISSN:13472917)
巻号頁・発行日
no.10, pp.55-63, 2010-12

11種のニオイゼラニウムの葉の発散香気成分をGC-MSで分析した。香気成分はほぼテルペノイドで構成され,主要香気成分は以下のとおりであった。ローズ(Pelargonium 'Rose'),スノーフレーク(P. 'Snowflake'),β-グアイエン,β-シトロネロール;レディプリマス(P. 'Lady Plymouth',ギ酸シトロネリル,β-シトロネロール;ドクターリビングストン(P. 'Dr. Livingston'),β-シトロネロール,イソメントン;スケルトンズユニーク(P. 'Skeleton's Unique'),β-グアイエン,β-カリオフィレン;ペパーミント(P. 'Peppermint'),チョコレートペパーミント(P. 'Chocolate Peppermint'),イソメントン,メントン;レモン(P.'Lemon'),ゲラニアール(α-シトラール),ネラール(β-シトラール);クロリンダ(P. 'Clorinda'),β-グアイエン,アロマデンドレン,ミセスキングスリー(P. 'Mrs. Kingsley'),β-グアイエン,ゲルマクレンD,スイートミモザ(P. 'Sweet Mimosa'),イソメントン,ゲルマクレンD。
著者
田辺 浩介
出版者
国立研究開発法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

大量のデータの収集と分析によるデータ駆動型研究の進展に伴い、データの効率よい収集や検索のために、実験データや計測データなど、研究活動において作成された実際のファイルと、それらのファイルの作成者や作成時刻、ファイルの属性などを記述したメタデータを関連付けた管理が求められるようになっている。本研究では、これらの研究データを複数の研究分野において管理・流通・再利用可能とするための「研究データパッケージング」の手法を検証・確立し、データ駆動型研究を円滑に進めるための枠組みを構築する。
著者
立川 陽仁
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B15, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表では、北米、北西海岸先住民がおこなってきたポトラッチについて、2つの点を検討する。1つには、研究史は「ポトラッチとは何か」という問題にいかに対応してきたのか。もう1つは、研究史はポトラッチでおこなわれる経済行為をどう解釈してきたのか。
著者
森岡 周
出版者
日本認知運動療法研究会
雑誌
認知運動療法研究 (ISSN:13473433)
巻号頁・発行日
no.1, pp.83-97, 2001
著者
佐藤 健司 Kenji Sato
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.733-749, 2021-03-12

本稿では、日本企業の職場における人間関係に関する従業員の満足度やストレスの状況について確認したうえで、これまでの日本企業における働き方がどのような考えや慣行のもとで構築されていたのかということについて分析する。そしてそうした分析に基づいて、今日の日本企業において生じている働き方や人間関係の問題を解決するためには、どのような点に留意すべきなのかということについて、ジョブ型雇用の考え方と関連させながら考察を行う。
著者
堀舘 秀一 清水 由朗 Hidekazu HORITATE Yoshiro SHIMIZU
出版者
創価大学教育学部・教職大学院
雑誌
教育学論集 (ISSN:03855031)
巻号頁・発行日
no.73, pp.207-216, 2021-03-31

( 1 )図工科教育におけるICT活用とデジタルメディア表現 文部科学省では各教科におけるICTを活用した授業実践を様々な形で推奨しており(文部科学省 2020)、我が国の教育政策として各学校への普及は必然となった。ICT活用と聞いて誤解しやすいのは、教員が情報機器の操作をこなす義務ととらえがちであることである。しかし、デジタルであれ、アナログであれ、ICTの考え方に基づいていることが重要であり、学びの本質に向かうための仕組みのひとつとして捉えるべきと考える。 現在、小学生から大学生に至る世代は、すでにデジタルの仮想空間に慣れ親しんできた世代であるといえる。この世代は、一概には言えないが、自然材や人工材など、図工・美術表現の材料に直接働きかけて、つくり、つくりかえるという体験の不足が推察される。小学校における図画工作科、保育における造形表現という美術関連の学びの領域で考える場合、この世代の弱点として「つくる」体験の不足があるのではないだろうか。一方、これまで自然材や人工材などの材料による表現を指導、研究の対象としてきた教員、研究者は、デジタルメディアによる表現の方法・内容に対して、相応の研究力・指導力が求められることになるであろう。 その意味で教員養成大学における図画工作科の教育法等の授業においては、手づくりによる表現と、デジタル技術を活用した表現・鑑賞を組み合わせた授業実践を試みることにより、教員、学生双方が、新しい表現方法に挑戦していくという学びの意義が創出されると考える。 そもそも美術には表現ジャンルとして、「メディア・アート」が存在する。1960年代から韓国生まれの現代アート作家、ナム・ジュン・パイクがビデオ・アートの流行の先駆となり、そのアシスタントとしてスタートした、ビル・ヴィオラが1995年の第46回ヴェネツィア・ビエンナーレのアメリカ代表に選出されるなど、大きな話題となったが、現在ではメディア・アートの分野で活躍するアーティストは多数に上り、プロジェクションマッピングを含めると、誰でもその表現者になることができ、標準的な表現の一分野となっている。東京藝術大学大学院映像研究科教授の布山タルトは、メディア・アートの特徴として、メディアに対する「メタ認知」と「領域横断性」の二つに集約されると述べている。この特徴をICT活用の図画工作科の授業に生かした場合、より主体的・対話的で深い学びへとつなげることが可能になるであろう。( 2 )コマ撮りアニメーション制作のためのKOMA KOMA デジタル表現に慣れ親しんでいるか否か、また機器の操作の得手、不得手にかかわらず、新しい表現方法に挑戦していくという学びの意義を考慮したとき、活用できるツールとして、KOMA KOMA(KOMA KOMA LAB)(図1 )というアニメーション制作のためのアプリケーションが適していると考えた。KOMA KOMAは撮影後すぐにその画像を確認可能で、振り返り学習が容易な設計となっている。撮影した画像はトレーシングペーパ-を重ねたような透過するイメージでその形状が残像化されるので次の撮影位置を決めやすい。また、サムネイルとして画像を随時仮保存できるため、過去の作品や現在制作中の作品を比較して新たな気づきを得ることができる。 図画工作科においては、実際に自分の手や体全体の感覚を総動員させて表現に向かわせたい、というのが授業を担当する大学教員の願いであるが、加えてICTを表現・鑑賞のためのツールとして活用する場合、この仕組みを指導者自身が使いこなせるかどうかが課題となる。道具に指導者が「使われている」状況の中では、学生一人ひとりが自分なりの想像を広げ、つくり、つくりかえる試行錯誤の中で新たな発想や構想を脹らませるという学びの本質を見失うことも考えられる。 その点、KOMA KOMAは、シンプルかつ扱いやすい設計であり、デジタル機器に慣れていない人でも表現ツールとして活用できる可能性が高い。 図画工作科のICT活用については、『教育の情報化に関する手引』(文部科学省2020)において、①感じたことや想像したことなどを造形的に表す場面、②作品などからそのよさや美しさを感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深める場面、での活用を例示している。KOMA KOMAはこの点からも、効果的な表現ツールであるといえるだろう。( 3 )授業実践の先行事例 2020年9 月5 日に開催された判断力科研第7 回研究会において、2020年4 〜 8 月に実施されたプロジェクト活動の経過報告と、山梨学院小学校全児童による作品発表が行われた。その中で、松嶋・川瀨・ケネス(2020)は、この連続授業の試みにおいて、制作した街を舞台にKOMA KOMAを使用したキャラクターが動くアニメーションを、子どもたちがチームになって撮影し、動画作品として制作したことを発表している。また、KOMA KOMAの利点として、同一の画面で、撮影と再生が可能であること、そのため、何度でもやり直して質を高められること、手仕事とデジタルを融合できることを述べている。 その後、松嶋は、2020年10月~11月に同小学校にて、クレイアニメーション(粘土を用いた動画づくり)のプロジェクト活動として、下記のような取り組みを行っている。 <対象学年/クラス> 1 ~ 6 年生5 名の3 チーム、合計15名 前半:時数22時間、計画・キャラクターづくり・セットづくり 後半:時数22時間、KOMAKOMAによる撮影 なお、効果音はインターネット上のフリー素材を活用し、セリフはICレコーダーで録音し、最後に編集し加えている。この取り組みにより完成した作品は、「宇宙探検 宇宙飛行士VS隕石」( 1 分36秒)、「恐竜時代 草食VS肉食」( 2 分38秒)、「日本昔話 村人VS巨人」( 1 分43秒)の短編3 作品となっている。いずれも子どもたちが、粘土を主な材料として、段ボールや石、木片、アクリル絵の具を用いた手仕事により、各チーム内での話し合いを通して制作する時間が全体の半分を占め、残りの半分を撮影・編集時間にあてており、バランスの取れた授業設計であるといえる。