著者
中垣 良一 福吉 修一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.206-207, 2011-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

すべての生き物は,食べることにより生命を維持している。生体を構成する諸元素中に微量ながら含まれる安定重同位体(^<13>C,^<15>N,^<18>O)を通して生体成分を眺めると,食物の生産地や動物の食生態などが見えてくる。安定重同位体がどれくらい生体成分中に含まれているかは,生き物の生活歴を反映している。微量の安定同位体の含有量を調べることにより,食品生産地の偽装などを見破ることができる。
著者
橋本 佐由理
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.249_3, 2017

<p>【目的】子育てをめぐる社会問題は多く、不安やストレスを抱える母親が増加している。そこで本研究では、妊娠期や育児期(乳幼児)の母親を対象に子育て支援講習会を開催し、参加者の自己イメージ認知、支援認知、育児自信感や不安感などに変容がみられるか否かを検討した。【方法】講習会は1回2時間、内容は、1回目は気質コーチング法による「自分とパートナーの性格の良さを知り子育てに活かそう」(参加者8名)、2回目は情緒安定法とあるがままの自己法による「子育ての不安やストレスと上手につき合うコツ」(参加者7名)である(分析対象は7名)。本研究は研究倫理委員会の承認と参加者の同意を得て行った。【結果と考察】2回の講習会の前後で、自己イメージや支援認知の向上、育児自信感の向上と育児不安感の低下が見られた。家族への支援認知の向上は、気質コーチング法による人の性格のコアである気質理論の知識活用によりパートナーへの認知が変容し、その良さを認識できたことによるのであろう。さらに情緒安定法とあるがままの自己法により、自己や自己を取り巻く環境への感受性が変容し、自己イメージや育児への自信や不安が良好に変化したと考えられる。</p>
著者
長束 一行
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.145-150, 2004
参考文献数
3

頸動脈病変の診断に超音波検査を用いた場合のメリットは,狭窄率や潰瘍の有無といった形態的な情報ばかりでなく,組織性状も推測できることにある.形態診断:狭窄率の精度に関しては,Bモード,カラードプラ,パワードプラ画像に血流速度の情報を加味することで,90%以上の正診率があるとされている.どの診断法をgold standard とするのかという問題もあるが,われわれの成績では画像からの計測のみでは高度狭窄例では過小評価される傾向があった.また,石灰化の強い例などでは計測不能なこともあり,血流速度による狭窄率の評価を併用する必要がある.しかし血流速度による狭窄率の測定はさまざまなパラメーターが用いられ,まだ標準化されていないという問題点がある。組織性状診断:超音波で見えるプラークは,輝度からecholucent,echoqenic,hyperechoicと分けることができ,均一性からhomogeneous,heterogeneousと分類できる. echolucentなものは血腫や粥種,echogenicなものはfibrosis,hyperechoicなものは石灰化を反映しており, 90%以上の精度で組織性状と一致するといわれている.しかし,現在エコー輝度による分類は検者の主観で決定されており,診断装置の機種や設定によりかなり見え方も異なる.今後エコー輝度の定量化が必要と考えられている.
著者
焦 贇
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.153-171, 2021-07-31 (Released:2021-09-11)
参考文献数
9

With the spread of the Internet and the development of citizen journalism, women are no longer “victims” who are unable to speak out for themselves. Because of this, the word “nuhanzi” has become popular in Chinese cyberspace that positively affirms the non-feminine type of woman who had been hitherto criticized. A subculture surrounding the “nuhanzi” has emerged, shocking the dominant culture. The result of this is that the mainstream media has begun using the word “nuhanzi” in its reporting. Based on this point, a “struggle for signification” has emerged between the novel view of gender represented by the “nuhanzi” and the dominant view bound to the gender order in China, which has existed for a long time. However, as a result of the fact that reports in the mainstream media surrounding the “nuhanzi” gradually turned negative, online “activity” surrounding the term dwindled, the “struggle for signification” against the reports of mainstream media could not continue, and in many cases, the debate ceased.Based on the above facts, this study focuses on the “reproduction” of the dominant culture in the “struggle for signification” and the reasons behind excluding the new view of gender epitomized by the “nuhanzi” from the dominant culture. At the same time, we argue that in today’s information society, the existing mainstream media outlets still have a substantial influence on the reproduction of the dominant culture.
著者
辻 和洋 中原 淳
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-16, 2021-09-30 (Released:2021-11-10)
参考文献数
31

本研究は,調査報道の困難さを乗り越え,推進していくための新聞社のデスクの役割について,ニュース制作過程を通じて検証する。その分析対象には,調査報道の決定的な事例として2004年度に新聞協会賞を受賞した北海道新聞社「北海道警裏金問題」報道を取り上げた。調査報道は一般的な報道に比べて記事化の不確実性が高く,リスクもコストも高いと言われる報道形態である。その中で調査報道の成立には,デスクが重要な役割を果たすとの指摘がある。しかし,ニュース制作過程研究において,調査報道におけるデスクの役割はほとんど実証的に明らかにされていない。そのため,デスクによる記者や上司らへの働きかけなどについて,本事例を担当したデスクと記者に半構造化インタビューを行った。調査の結果,デスクは調査報道のニュース制作過程において,取材のビジョンと目標を熟考し,明確化した上で取材班を結成するといった取材に向けての戦略を入念に立てていた。記者らに対しては取材活動の自律性を確保したり,鼓舞したりする取材に対する支援行動が見られた。また上司らに対しては社内で議論の場を積極的に設け,説明責任を果たしていた。これらの行動は先行研究において描かれていない行動であり,調査報道においてニュース制作を推進していく上で重要なデスクの役割である可能性が示唆された。
著者
越野 英哉 苧阪 満里子 苧阪 直行
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.27-40, 2013
被引用文献数
1

デフォルトモードネットワーク(Default Mode Network: DMN)は脳内ネットワークのひとつであるが,様々な認知課題遂行中に活動の低下を示すため,近年神経科学の分野で注目を集めている。ブレインイメージングにおいては,認知機能の神経基盤を探るにあたって,従来の構造と機能のマッピングから,最近はネットワーク間の競合や協調に注目するように観点が変化してきていると思われる。その際にネットワークを構成する領域がどのような状況で同じ活動を示し,またどのような状況では異なったネットワークの一部として活動するかという機能的異質性の問題は近年重要性を増している。これは大きな領域や,大規模ネットワークに関して特に問題になる。脳の領域と機能の間の関係は,特に連合野は,単一の領域が複数の機能に関係しまた単一の機能はそれが高次機能になればなるほど複数の領域の協調によって遂行されるという多対多の関係にある。また脳内ネットワークと機能の間の関係も一対一とは限らず,したがってある課題において同一のネットワークに属する領域も課題の状況によっては異なったネットワークに属することも考えられる。本稿ではこの機能的異質性の問題についてDMNを中心に検討する。

1 0 0 0 OA 運動視差

著者
豊浦 正広 柏木 賢治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.243_4, 2014 (Released:2016-04-19)

観察者の身体・視線方向の変化によって,視野中の対象物の位置が変わること.身体移動や視線方向変化の量と,対象物の位置の変化の情報は脳内で統合され,対象物までの距離が知覚される.例えば,視線方向を同じだけ変化させても,近くにあるものほど視野中の位置が大きく変わり,遠くにあるものほど位置があまり変わらないので,この位置の変化量から対象物までの距離を推定できる.単眼による観察によっても運動視差は生じるので,単眼失明者も運動視差を利用することで距離の知覚が可能である.
著者
金澤 健 中村 拓郎 坂口 淳一 川口 和広
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.177-186, 2021 (Released:2021-11-20)
参考文献数
26

極限解析の上界定理を用いて,凍害による材料劣化が生じたRC棒部材に対し,実験結果の回帰式等を用いず,軸力と終局モーメントの相関曲線を解析的に得られる力学モデルを構築した.構築したモデルは,実構造物のコア供試体から取得した劣化深度に基づいて速度場を分割することで,劣化域の耐力への寄与を評価することが可能である.凍結融解試験後に曲げ破壊を生じた21体の実験結果との比較により,構築したモデルが平均で±5%の算定精度を有していることを確認した.さらに,著しい劣化により撤去された既設RC床版から切り出したはり部材の曲げ解析を行い,実験結果と比較することで,劣化深度を指標とした力学的合理性のある健全度評価の可能性を示した.