著者
亀山 裕樹
出版者
北海道大学大学院教育学研究院教育福祉論研究グループ
雑誌
教育福祉研究 (ISSN:09196226)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.57-70, 2021-09-17

本稿の目的は、イギリスのヤングケアラー研究が貧困に関してどのような議論や言及を行ってきたかを検討することである。すなわち、イギリスのヤングケアラー研究において、ヤングケアラーとその家族の貧困や低所得に関してどのようなかたちで調査研究が展開され、何が議論されてきたのか、中心的ではないものの言及を行っている文献も含めて、整理を行う。
著者
亀山 裕樹
出版者
日本社会福祉学会北海道地域ブロック / 北海道社会福祉学会
雑誌
北海道社会福祉研究 (ISSN:13424378)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.35-47, 2021-03-31

本研究の目的は,日本におけるヤングケアラーをめぐる議論において,どのように貧困が言及され,どのような点で貧困の視点を抜け落としやすい議論の組み立て方が取られているかを明らかにすることである.まず,貧困への言及という観点から議論の展開を整理した.続いて,「日本ケアラー連盟ヤングケアラープロジェクト」の澁谷らによる議論を一例として取り上げ,文献資料に基づき,いかにして貧困の視点が抜け落ちるかを検討した. 澁谷らは,ヤングケアラーと貧困に応じてケアを担う子どもの混同を懸念し,ケア経験を肯定的に意味づけていた.これらに焦点を当てる際,一方で貧困の視点の抜け落ちを防ぎにくい.それゆえ,貧困などによりケアの担い手が不足し子どもがケアを担うという構造が議論から結果的に抜け落ちると示唆された.この結果を踏まえたうえで,家族に障害や病気がなくとも貧困に応じてケアを担う子どもをどう捉えるかという課題を提示した.
著者
保田 正人 山添 義隆 石原 忠
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 = Bulletin of the Faculty of Fisheries, Nagasaki University (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.18, pp.51-58, 1965-02

BERGERMAN & ELLIOTのシュウ酸定量法を若干改変した変法により汽水性,淡水性及び回遊性の魚類数種のものの肉質中シュウ酸含量とその経年消長を測定した.併せてシュウ酸含有量の温度の変動による影響について考察し,次の如き結果を得た. 1)ムッゴロウ,ワラスボの如き汽水魚におけるシュウ酸平均含有量の周年消長の様相は極めて良く類似し,両者共8月に最高,3月に最低値を示す. 2)回遊性のアジ,サバについての季節的変動は認められない. 3)魚肉中のシュウ酸含量は極めて少なく栄養学的には問題にならない. 4)棲息環境温度とシュウ酸含量については休眠期を除き正の相関が認められる. 5)魚肉中のシュウ酸含有量は温度による魚類の活動状況に支配される公算が非常に大きく,成熟度には比較的左右されないものと考えられる.

1 0 0 0 OA 燕山外史

著者
薀斎 著
出版者
支那文献刊行会
巻号頁・発行日
1925
著者
陣野 俊史
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-28, 2018

現代のフットボールは、試合スケジュールや選手の活動のあらゆる領域にまでスポンサーの統治の力が浸透している文化現象である。しかし他方でそれは、その時代の社会的諸問題を浮き彫りにするものでもある。本論は過去二十年のフランス代表チームを跡付けながらその社会的・歴史的背景を考察するとともにワールドカップというイヴェントがいかに解釈できるのかを論じる。1998年大会、社会的に移民規制が高まる中でのフランスの優勝は「統合」の機運を生み出した。様々なキャリアと人種の選手の集合体こそがフランス代表だった。そこではワールドカップは刹那的ではあるが統合の夢を生み出しうるものだった。だが2000 年代以降のフランス代表が露呈したのは分断の線であった。適度に貧しいという均質化した環境から代表選手を目指すプロセスの共通性は、ジダンの時代にはあったが、ドラソーの頃には消え失せていた。郊外の中でもとりわけ治安に問題のある地域「シテ」に出自を持つ選手たちと社会的エリート階層出身の選手たちとの間にある亀裂は、社会的分裂の象徴だった。その問題が大きく顕在化したのが、2010 年南アフリカ大会である。そのときワールドカップは、そうした問題を世界に向けてあからさまな形で発信するイヴェントとなった。人種的統合/排除、階層的分断といった問題だけでなく、フランスにとってワールドカップは過去の植民地問題があらためて交渉される場としての可能性を持つものでもある。2014 年大会では旧宗主国フランスと旧植民地アルジェリアの試合が実現する可能性があった。二つの国の人種・政治・差別の問題が複雑に絡まり合い「親善試合」が期待できない状況で、2014 年のアルジェリアの健闘は貴重な機会だった。旧宗主国と旧植民地の間の複雑な歴史を露呈させ、そのうえでそうしたいっさいを配慮せずに試合を実現できるのも、ワールドカップのもつ可能性である。
著者
上妻 歩夢 齋藤 未花 本間 洋樹 水野 増彦 横山 順一 小林 史明 畑山 茂雄 菊池 直樹
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
no.50, pp.3015-3020, 2021

自転車競技,アメリカンフットボールなどの競技を対象に見た目の魅力と競技パフォーマンスとの関連性が報告されている。本研究では,大学陸上競技選手を対象に,見た目の魅力及びfacial width-to-height ratio(FWHR)と競技成績との関連性について検討した。本研究の対象者は,93名の大学陸上競技選手(男性42名,女性51名,年齢19.8±1.2歳)であった。競技成績から全国入賞以上を上位群,全国出場以下を下位群に分類した。魅力度は,対象者のことを知らない241名(男性124名,女性117名,年齢20.81±1.5歳)の評価者によって評価された。評価方法は,10 cmの直線を用いたVAS法で異性の評価を行った。対象者1人あたりの評価者の人数は32–37名であった。本研究の対象者の内,86名(男性40名,女性46名,年齢19.74±1.2歳)を対象にFWHRの計測を行った。FWHRは,横幅は左右の頬骨の位置,高さは上唇の上部から眉毛の下部の位置を,ImageJを用いて測定し,横幅と高さの比を求めた。短距離選手において,上位群が下位群に比べて魅力度が高い傾向にあった(p=0.053)。一方,長距離選手においては,下位群に比べて上位群で魅力度,FWHRともに有意に低かった(p=0.039, 0.047)。本研究の結果,短距離選手では競技成績が高い群で,見た目の魅力が高く,長距離選手では競技成績が低い群で,見た目の魅力とFWHRが高かった。
著者
笠井 純一 笠井 津加佐 沢田 伸 Kasai Junichi Kasai Tsukasa Sawada Shin
出版者
金沢大学大学院人間社会環境研究科
雑誌
人間社会環境研究 (ISSN:18815545)
巻号頁・発行日
no.35, pp.205-222, 2018-03

大阪花街「北の新地」の北陽演舞場は, 1915年に竣工した和風美術建築であった。 ここでは毎春北陽浪花踊が美々しく開演され, 一般市民もこれを観覧するなど, 花街と杜会との接点ともいうべき施設であった。 この建物は1945年6月の大阪大空襲で灰儘に帰したが. 施工者:大林組には詳細な設計図と完成時の写真が多数残されている。 本稿はこれら資料から北陽演舞場の平面 構成と浪花踊観客の動線を紙上に復元し, その結果に基づいて, この建造物の劇場としての特色を追究した。
著者
大塩 まゆみ 平岡 公一
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.5-15, 2018

<p> 本号の特集「福祉の市場化を問う」は,本学会第134回(2017年度春季)大会の共通論題での報告をもとにして執筆された4本の論文を中心に構成される。本稿は,この共通論題の企画の趣旨・背景と報告の概要を紹介するとともに,そこで提起された政策展開および研究に関わる課題と展望について座長の立場からの考察を行ったものである。政策上の課題については,市場化に伴う公的責任の後退のなかで,サービス利用機会の格差,消費者被害等の利用者側に生じた問題,および,福祉・介護分野の雇用の不安定化や低賃金,人手不足等の事業所・労働者側に生じた問題を指摘し,賃金引き上げ・労働条件の改善,介護職等の専門性の向上等の課題を提起した。研究上の課題と展望については,市場化改革の多様性と文脈の理解,サードセクター・非営利セクターの多様性と変化の検討,新たな福祉文化への着目,福祉の市場化のなかでの労働の変化の検討等の論点について検討した。</p>
著者
CHAKRABORTY HIMADRI SHEKHAR 三枝崎 剛 大浦 学
出版者
京都大学数理解析研究所
雑誌
数理解析研究所講究録 (ISSN:18802818)
巻号頁・発行日
no.2189, pp.127-140, 2021-07

In this paper, we introduce the concept of the complete joint cycle index and the average complete joint cycle index, and discuss a relation with the complete joint weight enumerator and the average complete joint weight enumerator respectively in coding theory.
著者
山田 広幸 伊藤 耕介 坪木 和久 篠田 太郎 大東 忠保 山口 宗彦 中澤 哲夫 長浜 則夫 清水 健作
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.1297-1327, 2021
被引用文献数
11

<p> 2017年台風第21号(ラン)対する上部対流圏の航空機観測を、新たに開発したドロップゾンデシステムを備えた民間ジェット機を用いて行った。これは、日本の研究グループがドロップゾンデを用いて非常に強い台風の内部コアを観測した初めての事例である。本論文では、目の暖気核構造と、それに関連するアイウォールの熱力学的および運動学的特徴について記述する。この台風は観測の2日間において、鉛直シアーが強まる環境で最大の強度を維持した。ドロップゾンデにより、この期間に対流圏中層と上層に温位偏差の極大をもつ二重暖気核構造が維持されたことが捉えられた。この2つの暖気核は相当温位が10 K以上異なり、起源が異なることが示唆された。飽和点分析により、上部暖気核の空気はアイウォールから流入したことが示唆された。鉛直シアーベクトルの左半円側におけるアイウォール上昇気流は、台風の中心側で相当温位が高く絶対角運動量が低い2層の構造を持っていた。飽和点とパーセル法の分析から、この中心側の上昇気流で相当温位が370Kを超える暖かい空気が目の境界層から流入し、最終的に上部暖気核に輸送されることが示唆された。これらの結果から、目の境界層を起源とする高い相当温位の空気の鉛直輸送が、鉛直シアーによる台風強度への負の影響に対抗して、上部対流圏の目の継続的な昇温に寄与するという仮説が導かれた。この研究は、相当温位の計算に必要な温度と湿度の測定が、ドロップゾンデのような消耗型の機器でしか行えない現状において、アイウォール貫通型の上部対流圏航空機観測が暖気核構造の監視に重要であることを示している。</p>
著者
出原 博明 Hiroaki DEHARA
雑誌
英米評論 = ENGLISH REVIEW (ISSN:09170200)
巻号頁・発行日
no.11, pp.93-120, 1996-12-20

The purpose of this paper is to make clear the relation and meaning of the countryhouse at Gardencourt to Isabel Archer. Into the story come a number of houses, but only four of them actually concern the heroine; they are the countryhouse at Gardencourt, Isabel's grandmother's house in Albany, and Osmond's lodging places in Florence and Rome respectively. Osmond's houses are much more refined and decorated than the other two. However, they are closed to the world. For instance, his villa in Florence is described as 'having heavy lids but no eyes', and his Palazzo Roccanera in Rome, as 'the house of suffocation.' The American house in Albany is not open to the world, either. The way Isabel lives there is to enclose herself to the corner of a room and devote herself to reading books and reverie, without opening its door which would give access to the outside. Mr. Touchett's estate at Gardencourt is not very closed to the world though it makes much of privacy. It shows no decadence but religious aspiration after Heaven, one of the characteristics of Gothic architecture. It was built under Edward the 6th, of early Tudor style, honoured by the great Elizabeth's overnight stay, bruised in Cromwell's wars, and remodelled in the 18th century. The house may tell a lot about its master. Mr. Touchett is mentally healthy though he is fatally ill. He preserves his identity as an American well, both in his appearances and frame of mind. His estate, with its aestheticism, its honourable history, its religious symbolism of early Tudor style, and without any decoration of vanity, suggests the master's way of life, and that of Ralph, his son, who, cynical, is also mentally healthy in spite of his crucial illness. Mr. Osmond has completely lost his identity as an American and he belongs nowhere. Neither his looks nor his spirit holds any nationality. He is rootless. Osmond's villa in Florence and his Palazzo Roccanera in Rome represent what their master is; he, who is an egotistic aesthete, sensitive and clever, turns his back on the real world and collects curios; he is a snob to a T, full of pretension and vanity. Osmond, who is nearly 20 years older than Isabel, entraps her into marrying him and encloses her in his Palazzo Roccanera as if she were one of his collected curios. When Ralph's illness becomes critical, Isabel returns to Gardencourt to see him, in the teeth of her husband's threats. One of her motives for this is to be reconciled with him, that is, to confess to him that her married life is miserable and that she was wrong in marrying Osmond against Ralph's objection. Another motive to drive her into returning there is her nostalgia for Gardencourt. Psychologically speaking, Gardencourt could be a real home for her. Only this place makes her feel herself most relaxed, and enlivened. This is the place from which she jumps into the abysses of life, and comes back again, exhausted with its hardships. Now she is a grown-up woman, mentally well developed, quite different from that romantic girl who had very little knowledge of real life when she showed herself to us for the first time at Gardencourt several years ago. She likes Gardencourt best of all the houses in the story, feeling a greatest affinity for it. However, Gardencourt is not hers legally, and so it is very difficult for such a self-reliant woman as she to indulge herself with Ralph's kindness and live there for ever. As it is, she has to return to Rome, partly to defend herself against Casper Goodwood, her persevering wooer. Yet, Gardencourt remains in her mind an affinity most comfortable and most soothing. Even Mme Merle, who is Osmond's mistress-conspirator, confesses to Isabel that dear old Gardencourt is the house in which she would have liked best to live.
著者
熊倉 慎
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.257-261, 2013-03-01

北越紀州製紙関東工場勝田工務部では,建築廃材や間伐材,ペーパースラッジなどを燃料とする木質バイオマス発電ボイラーを2006年9月に営業運転を開始した。<BR>このバイオマス発電ボイラーでは,主な燃料である,木質燃料の搬送にベルトコンベアが使われている。他社の事例では,この搬送コンベアでの火災の事例が報告されている。この火災事例に対して,早期発見,延焼防止を目的とする,コンベア温度監視システムを,2012年5月に設置した。<BR>本稿では,「バイオマスボイラー木屑搬送コンベア温度監視システムの導入と課題」と題して,コンベア温度監視システムの機器選定から設置工事,操業状況について報告する。<BR>以下に概略を述べる。<BR>1.機器選定においては,以下4種類のシステムについて比較を行った。<BR>(1)光ファイバー式温度分布システム<BR>(2)熱(火災)感知線システム<BR>(3)熱電対/測温抵抗体システム<BR>(4)赤外線サーモグラフィーシステム<BR>それぞれのシステムより,測定精度,機器に対して広範囲で測定可能,火災位置特定が可能,導入コスト,バイオマスボイラーの定期点検の期間内で工事完了可能,等を考慮して,「光ファイバー式温度分布システム」を採用する事とした。<BR>2.設置工事は,該当する各コンベアの形状により異なる以下4種類の布設方法を計画し実施する事とした。<BR>(1)非密閉式ベルトコンベアタイプ<BR>(2)密閉式ベルトコンベアタイプ<BR>(3)密閉式チェーンコンベアタイプ1(コンベアフライトのバタツキ小)<BR>(4)密閉式チェーンコンベアタイプ2(コンベアフライトのバタツキ大)<BR>この「バイオマスボイラー木屑搬送コンベア温度監視システム」は,5月に稼動して以来,大きなトラブルも無く,正常な監視状態にある。