著者
田邊 純 成松 翔太 石栗 太 飯塚 和也 増山 知央 横田 信三 吉澤 伸夫
出版者
宇都宮大学農学部
巻号頁・発行日
no.48, pp.117-121, 2012 (Released:2013-10-08)

林木育種において,苗木の木材性質及び曲げ性能の評価は,材質優良家系の早期選抜のために重要である。本研究では,4年生少花粉品種由来のスギ2家系(南会津4及び東白川9)を用いて,木材性質及び曲げ性能を評価し,材質の早期選抜の可能性を検討した。成長形質,木材性質及び曲げ性能に関して,使用した2家系間に有意な差が認められた。容積密度及び晩材仮道管S2層ミクロフィブリル傾角(MFA)は,スギ未成熟材における過去に報告された値とほぼ同様の値(30°)を示した。苗木の曲げヤング率(MOE)は,気乾密度及びMFAと関係があったことから,MFA及び気乾密度によって,MOEを早期推定できることが示唆された。しかしながら,供試した材料のほとんどに圧縮あて材が存在していた。そのため,苗木を用いてMFAを指標として材質を早期評価するためには,圧縮あて材の存在に注意すべきであることが明らかとなった。
著者
長田 純一 ぜんじろう . 藤田 善弘
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.F09, 2007

近年研究開発が著しいパートナー型ロボットにおいては、何らかの機能を持ち人にサービスを提供するだけでなく、一緒にいることやインタラクション自体に価値を持たせることが求められている。つまり、ひとつひとつのインタラクションが、人にとって心地よく楽しいものである必要がある。この問題に対し、我々は「お笑い」に着目し、ユーモアを人とロボットとのインタラクションに応用することを試みた。我々はこれを「ユーモラスインタラクション」と名付けた。本稿では、ユーモラスインタラクションのための共同研究でおこなったロボットを使った漫才ショーについて報告する。

1 0 0 0 OA 参戦言論集

出版者
東亜聯盟汕頭支会
巻号頁・発行日
vol.第1集, 1943
著者
朽名 夏麿 長谷川 淳子 松永 幸大
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.104-111, 2014-12-20 (Released:2017-09-29)
参考文献数
38

Live imaging was brought about by recent development of fluorescent proteins and innovation of imaging systems. Dynamic analyses of organelle through live imaging reveal the subcellular dynamic function and the spatiotemporally four-dimensional structure. At the same time, quantitative analyses in addition to qualitative analyses become more important in analyses of the huge imaging data. Thus, we introduce our recent works in live imaging of mitochondria, nuclei, vacuolar membrane, and actin filaments in plant cells with our observation skills. Moreover, quantitative analyses of live imaging data were classified into three categories, number, morphology and distribution, three dimensional shape or dynamics. We review these three quantitative analyses.
著者
山中 長閑 吉永 尚孝 旭 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.382-387, 2018-06-05 (Released:2019-02-05)
参考文献数
15

夜空に輝く星々や我々人間を構成する電子と原子核,つまり物質は実際宇宙の主成分の一つをなしている.しかしながらそもそも宇宙に物質が多く存在し反物質がほとんど存在しない,というこの一見当たり前の事実は,実は非自明な現象である.CP対称性とよばれる対称性の破れがあってこその現象なのであり,観測から導かれる物質の量は,素粒子物理の標準模型に組み込まれたCPの破れで説明できる量をはるかに超えている.加えて宇宙には,標準模型内の粒子ではないと考えられる粒子(暗黒物質)や未知のエネルギー(暗黒エネルギー)が存在する.標準模型は現在までに地上で行われた加速器実験の結果のほとんど全てを説明する強力な素粒子物理模型であるにもかかわらず,その奥に私たちの知らない新しい物理が控えているのではないかと,多くの研究者が期待を胸に新物理の探索に挑戦している.新物理の候補のうち,多くの研究者に有望視されていた電弱スケールの超対称標準模型は,超対称粒子が期待される質量領域に見つからないことから最近その特別な地位を譲りつつある.新物理の解明へのこれまでの指針が変更を余儀なくされ,次第に新物理の証拠探しはエネルギーを上げた加速器実験によって新粒子の直接検出を目指す「エネルギーフロンティア」から,標準模型で禁止されているはずの物理過程に新物理の効果を探索する「超精密フロンティア」へと,その重心を移しつつある.この際に鍵となるものの一つは上述のようにCPの破れである.スピン方向に沿って定常的に生じた粒子の電気分極を電気双極子モーメント(Electric Dipole Moment, EDM)と呼ぶ.EDMはスピンに沿って定義されているのに,空間反転と時間反転に関してスピンとは異なる変換性を示すという奇妙な物理量.時間反転に関するこの性質は,CPT定理を通じてEDMがCP対称性の破れに関係する観測量であることを物語っている.新物理は標準模型とは異種のCPの破れを含むはずである.標準模型のCPの破れはフレーバー混合に関わるものであるため,フレーバー対角な観測量であるEDMには低次で現れず,観測にかからない.もし実験で大きな値のEDMが見つかったなら,それは間違いなく新物理に由来するものである.EDMの研究は現在,スピンを持つ様々な粒子―中性子,反磁性原子,常磁性原子,ミュオン,陽子・重陽子―を対象に世界中で探索実験が実施または計画されている.理論的にも検討が進み,これら異なる粒子のEDMがそれぞれどのような新物理に感度を持っているのか,それらの実験データが得られた時にどのような解析をすればよいのかもわかってきた:各々の新物理が生み出すCP非保存相互作用は低エネルギーでは限られた個数のパラメータで表され,これらのパラメータはハドロン物理・核物理・原子物理の過程を通じて様々な素粒子・複合粒子にEDMを生じさせる.これを逆に辿ると,測定されたEDMから各パラメータの値が求められ,その値が新物理の存在の証拠を与えることとなる.我々は,キセノンや水銀などの反磁性原子のEDMが素粒子からハドロン,原子核,原子の各階層を繋げて新しい物理を解明する際に持つ感度を明らかにしてきた.こうして今後実験の進展によりEDMが,それもただ一例ならず決定されるようになれば,提案されているいずれの模型が描く新物理が実際に現れるのかを判別する道が拓かれることになる.
著者
高田 昌幸
出版者
一般社団法人 日本外科感染症学会
雑誌
日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.669-677, 2018-12-31 (Released:2019-04-20)
参考文献数
22

腎移植における周術期管理についてはいくつか気をつけなければならないことがあるが,以下の 3点はとくに注意が必要である。①免疫抑制療法下で行う手術である,②腎不全患者に対する手術である,③拒絶反応,である。免疫抑制剤を用いることで免疫機能が抑制されるため感染症には注意が必要である。一旦感染症が起こると重症化しやすく,拒絶反応を引き起こすこともあるため感染予防が大切である。ドナー,レシピエントとも術前に感染症のスクリーニング検査を行っておくこと,可能な限りワクチン接種を施行しておくことが有効である。腎不全患者は(とくに生体腎移植では)腎移植手術を受けた後,比較的早期から利尿がみられる。血圧などを中心とした全身管理や十分な補液で尿量を確保することが大切である。近年免疫抑制剤の進歩により急性拒絶反応は減った一方,免疫学的リスクの高い腎移植も行われるようになってきており拒絶反応は今でも腎移植手術の重要な課題の 1つである。周術期を無事乗り切ることが移植腎予後に大きく影響するため,免疫抑制療法下で不測の事態に対応できるように移植に特有な感染症や拒絶反応など合併症によく精通しておく必要がある。
著者
高橋 公太
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.11-32, 2011-01-10 (Released:2013-11-26)
参考文献数
27
被引用文献数
1

It has now been over 20 years since we performed our first ABO-incompatible kidney transplantation(ABO-IKTx)in Japan. During that time about 1700 ABO-IKT have been performed. Since 2001 the success rate for these kidney transplants has been 96% for 1-year graft survival and 91% for 5-year graft survival, similar to results for ABO-compatible KTx. This dramatic improvement in results means that this transplantation procedure has become accepted for curative therapy in end-stage renal failure. Today ABO-IKTx accounts for 30% of all living KTx performed in Japan.In the 100 years since Karl Landsteiner discovered human ABO blood groups, the common wisdom has been that organ transplantation between incompatible blood groups would result immediately in hyperacute rejection and graft loss. However, this concept turned out to be a completely unsupported assumption. We provided epidemiological proof that hyperacute rejection was not caused by the ABO histo-blood group antigens(ABO HBGAS).We have reported elsewhere our two new ground-breaking findings regarding ABO-IKTx. We are confident that these findings will overturn the conventional wisdom about ABO-IKTx, and will mark a fundamental change in treatment strategies.The first finding involves ABO HBGAS, which are classed as carbohydrate antigens.Conventionally, emphasis has been placed on the saccharide chains only, and related phenomena have been interpreted accordingly. However, the saccharide chains in ABO histo-blood group antigens are present in the form of glycoproteins, and the binding proteins are termed " carrier proteins ". By employing proteomic analysis, we discovered that these binding proteins differ between the ABO HBGAS on the erythrocytic surface and those on the vascular endothelial cell surface. These new facts make it necessary to divide the ABO HBGAS into two broad categories.The antigens on the erythrocyte surface are ABO blood group antigens, while the antigens on the vascular endothelial cell surface are ABO histo group antigens.The lymphocytes probably do not identify the saccharides and binding proteins separately, but instead recognize them as part of a whole, and then proceed to form antibodies that have a high affinity for that whole. In other words, the recipient's anti-A/anti-B natural antibodies are primarily anti-ABO blood group antibodies, which do not have much affinity for the ABO histo group antigens on the vascular endothelial cell surface in the transplant organ. This is the main reason that hyperacute rejection is not induced by ABO incompatibility. The second finding relates to the known fact that ABO-incompatibility associated acute antibody-mediated rejection is caused by anti-A/anti-B antibodies. Conventionally it had been believed that this rejection response was caused by natural antibodies present in the recipient. However, if we consider the first theory, it becomes clear that the antibodies eliciting acute antibody-mediated rejection could not be produced without transplantation of the donor organ. That is to say, the recipient lymphocytes must be sensitized to the ABO histo group antigens on the vascular endothelial cells, resulting in the new production of anti-A/anti-B de novo antibodies. We have proven this fact indirectly elsewhere.After considering the new findings described above, we have established pretransplant desensitization therapy as the cornerstone of our transplantation treatment strategy.
著者
寺島 侑希 山形 梨里子 末吉 亮 石上 雄一郎 小川 敦裕 沼田 賢治 溝辺 倫子 本間 洋輔 高橋 仁 井上 哲也 舩越 拓
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.366-368, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
6

【背景】精巣は白膜に保護されているが強い外力が加わると大腿や恥骨に挟まれ破裂し, 外科的修復を要することがある。【症例】特に既往のない24歳男性。 400ccバイクで走行中に, 60km/時で軽自動車と正面衝突し当院救急搬送となった。来院時は意識清明, バイタルサインは心拍数 71回/分, 血圧 119/79 mmHg, 呼吸数 25回/分, 体温 37.0℃, SpO2 98% (室内気) だった。primary surveyでは明らかな異常を認めなかったが, secondary surveyで会陰部に陰囊の腫脹・疼痛があり右精巣が陰囊から体表に脱出していた。体幹部造影CT検査では軽度の左陰囊内への造影剤の血管外漏出以外に明らかな異常はなかった。治療方針決定のため精巣超音波検査を行うと, 左精巣が腫脹 (35×28×26 mm) しており, 陰囊内部のエコーは低エコーから高エコー域が混在, ドプラエコーで内部血流は不明瞭であり左精巣破裂が疑われた。緊急手術の方針とし, 右精巣は精巣固定術を施行, 左精巣に関しては損傷が大きく機能温存は不可能であり精巣摘出術を施行した。術後は創部感染や合併症等なく経過し, 入院7日目に退院となった。退院後の精査では右精巣機能の温存が確認できた。【結語】精巣損傷を認めた際は, 見た目に損傷が大きい側だけでなく反対側の評価も怠らないことが早期の治療加入, 精巣機能温存につながるため重要である。
著者
村井 史香 岡本 祐子 太田 正義 加藤 弘通
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.31-39, 2021-03-25

本研究の目的は、自認するキャラを対象に、キャラを介したコミュニケーションとセルフ・モニタリングとの関連を検討することであった。中学生と大学生を対象に質問紙調査を行った結果、以下2点が示された。第1に、学校段階に関わらず、セルフ・モニタリングはキャラあり群の方がキャラなし群よりも高かった。第2に、キャラ行動および受け止め方とセルフ・モニタリングとの関連について、自己呈示変容能力はキャラ行動を促進し、キャラの積極的受容につながることが示された。また、自己呈示変容能力は、キャラへの拒否に負の関連を示した。一方、他者の表出行動への感受性は、キャラ行動および受け止め方とは関連がなかった。なお、この過程は学校段階に関わらず、成り立つことが示された。以上の結果から、キャラの利用は、対人場面での自己呈示に対する不安よりも、状況に応じて自身の言動を適切に調整できるという自信に基づいている可能性が示唆された。
著者
村井 史香 加藤 弘通
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.17-21, 2020-03-25

多元的アイデンティティとは、場面ごとに出てくる複数の自分のどれもが、本当の自分であると感じられる自己意識のことであり、現代青年のアイデンティティの在り様の一つとして注目されている。本研究では、高校生を対象に、社会学領域で作成された多元的アイデンティティ尺度を使用し、尺度の信頼性および構造を確認することを目的とした。その結果、想定された3因子構造とは異なる、2因子構造となり、尺度の信頼性も不十分であることが明らかとなった。また、“自己複数性”、“自己拡散”、“自己一貫思考”のそれぞれに設定された項目が同因子内に混在しており、因子の解釈が困難であった。よって、今後、多元的アイデンティティを捉える上では、新たな尺度の作成が必要となる可能性が示唆された。
著者
Xueying Jin Nanako Tamiya
出版者
National Center for Global Health and Medicine
雑誌
Global Health & Medicine (ISSN:24349186)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.142-148, 2021-06-30 (Released:2021-07-05)
参考文献数
67
被引用文献数
6

This study aims to evaluate the current status and perspectives on the use of Japanese long-term care (LTC) claims databases for research. We conducted a comprehensive literature search of PubMed and the Japan Medical Abstracts Society (Ichushi-Web), focusing on LTC claims data analyses published between 2000 and 2020. We summarized the study characteristics, database characteristics, and the research areas related to health services that were studied. In total, 86 journal articles (12 in Japanese and 74 in English) were included in our review. A particularly remarkable increase in the number of publications from 2016 to 2020 was observed. We extracted more publications with combined databases (n = 64) than those that only used a single source of the LTC claims databases (n = 22). More than half of the studies analyzed healthcare expenditure, healthcare utilization, and quality of care which were relevant to health services research. The most frequently mentioned limitation was the lack of validation in variables stored in the LTC claims databases. In conclusion, the LTC claims databases could serve as important sources of information for the evaluation of healthcare delivery, quality of care, and LTC policy.