著者
原田 武夫 武本 長昭
出版者
日本海水学会
雑誌
日本塩学会誌 (ISSN:03695646)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.311-315, 1958 (Released:2013-05-17)
参考文献数
9

pH of sea water, brine and bittern decrease with increasing their concentration. From unusual low pH of the concentrated MgCl2 solution, relations between pH and MgCl2 concentration of sea water, brine and bittern were studied. Neutralization curves of MgCl2 and MgSO4 solution were obtained, and pH of the solutions of those salts were determined at various concentration. Effects of Mg(OH)2, HCl and NaHCO3 on pH the MgCl2 soluion were also estimated. Factors on which pH of sea water, brine and bittern depend were partly discussed.
著者
丹 秀也 関根 康人 渋谷 岳造 宮本 千尋 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>木星の衛星エウロパは、表面を氷地殻に覆われており、内部には内部海を持つことで知られる。近年の望遠鏡観測により、木星の衛星イオ由来の硫酸がエウロパの公転後面を汚染している一方、汚染の少ない公転前面にはナトリウム塩などの内部海由来の物質が存在していることが示された(Ligier et al., 2016)。これは内部海での化学反応により硫酸が消費されている可能性を示すが、その反応や温度・pH 条件はよくわかっていない。本研究は、エウロパ内部での熱水環境における硫酸還元反応が消費過程として働く可能性を室内実験で検証し、温度やpH条件を制約することを目的とする。エウロパ海底条件1300気圧下で溶液のオンライン採取が可能なオートクレーブ装置により硫酸還元反応の速度のpH依存性を調べた。また、硫酸還元の反応率はpHが小さいほど速くなることから、エウロパ内部海では熱水環境が硫酸濃度とpHを安定化させる、負のフィードバック作用が働く可能性がある。</p>
著者
近藤 亮介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

研究2年目にあたる本年は、19世紀中葉のアメリカにおけるピクチャレスクについて、「パーク(park)」概念に焦点を当てて検討した。主な対象としては、アメリカ最初の郊外住宅地であるニュージャージーのルウェリン・パーク(1853)とアメリカ最初の公園であるニューヨークのセントラル・パーク(1857)を扱った。この研究成果は、「2つの公園―ルウェリン・パーク(1853年)とセントラル・パーク(1857年)」として、日本臨床政治学会(専修大学、2015年10月24日)にて口頭発表(招待講演)を行った。また、前年度の研究成果を踏まえ、トマス・ジェファソンの私邸・大農園である「モンティチェロ」の造園を英国風景式庭園およびピクチャレスク美学との関係から分析した「アメリカのピクチャレスク移植―19世紀前半の農園と霊園を中心に」を、日本18世紀学会第37回大会(東京大学、2015年6月20日)にて口頭発表した。さらに、前年度から引き続き、19世紀前半の英国におけるピクチャレスクについての理解を深めるために、1790年代以降の美学言説の精読を行った。その研究成果の一部として、美学言説と植物学・旅行との関係性からピクチャレスクの社会的受容を考察した論文「ジェームズ・プラムトリが見たピクチャレスク美学―『ザ・レイカーズ』(1798)を読む」を『日本18世紀学会年報』(日本18世紀学会、第30号、2015年6月)で発表した。その他、夏期休暇には、ルウェリン・パークおよびセントラル・パークの実地調査だけでなく、ヨセミテ国立公園とイエローストーン国立公園の実地調査・資料収集も行うことができた。1860~70年代にかけてオルムステッドが深く関与した国立公園構想と環境主義についての論文をまとめることが、今後の課題である。
著者
小田 司
出版者
広島大学総合科学部
雑誌
広島大学総合科学部紀要. IV, 理系編 (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
no.19, pp.189-191, 1993-12-31

ヒト骨髄性白血病細胞は,発ガンプロモーターであるフォルボールエステル処理により増殖を停止し,マクロファージ様の細胞へと分化する。この事実は多くの研究者の注目するところとなり,血液細胞分化の分子機構の解明,あるいは骨髄性白血病の治療法の開発のモデル系として多くの研究が行われてきた。しかし,これらの課題は未だ殆んど解決されていない。実際,この分化誘導に伴う転写レベルの変化(例えばc-fosやETR101などの早期応答遺伝子の発現の増強やガン遺伝子c-mycの発現の抑制など)やタンパク質レベルの変化(例えば,フォルボールエステルの細胞内レセプターであるプロテインキナーゼCの活性化やガン抑制遺伝子であるRb遺伝子産物の脱リン酸化など)に関する多数の報告があるが,これらの変化が分化形質の発現や増殖停止と具体的にどのように関連しているかは全く明らかにされていない。しかし,これらの問題を議論する前に,まず研究せねばならない基本的で重要な疑問が残されている。一つはフォルボールエステル処理による細胞増殖の停止と分化形質発現の因果関係である。一般に細胞はG1期で増殖を停止し,分化形質を発現するといわれている。フォルボールエステルによるヒト骨髄性白血病細胞の分化においても,G1期での増殖停止が分化形質の発現を誘導しているのだろうか。あるいは逆に分化形質の発現が細胞増殖の停止を誘導することはないのだろうか。もう一つは,フォルボールエステルによる分化誘導が可逆的か非可逆的かという問題である。もし,非可逆的な分化であれば,コミットメント(運命づけ)という過程が存在するはずである。そうすれば,その時期に焦点を当てて調べていくことにより,分化を決定している分子の同定が可能となる。もし可逆的な分化であればコミットメントという過程を云々することは無意味であり,細胞増殖の停止や分化形質の発現を支配している分子は,フォルボールエステル存在下でのみ発現,あるいは活性化しているだけである。本研究では2種の分化段階の異なる細胞を用いて上記の疑問を解決した。以下にその研究成果の大要を説明する。1.細胞増殖の停止は分化形質発現の必要条件ではない。ヒト前骨髄性白血病細胞HL-60はフォルボールエステルの一種であるTPA(12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate)で処理すると,S期にあるものはDNA合成を終え次のG1期で,G1期にあるものは次のS期に入らずそのままG1期で細胞増殖を停止することが報告されている。それゆえ,もし,G1期での増殖停止が分化形質の発現に必須なら,G1期にはいってからTPA処理された細胞のほうが,DNA合成の過程があるため増殖停止までに時間のかかるS期処理の細胞に比べて,分化形質をいち早く発現してくるはずである。この真偽を確かめる実験を行うには,充分に同調された細胞が必要であるが,DNA合成阻害剤であるアフィジコリンで2回処理することによりG1/S境界に同調することができた。この同調したHL-60細胞をS期,あるいはG1期において別個にTPA処理を開始し,4つの分化形質(ICAM-1(細胞間接着分子),Mac-1(補体レセプタ-type3),dish底面への接着,伸展)の発現の経時変化を調べた。その結果は,意外にもS期処理,G1期処理の細胞の間で各々の分化形質発現の時間変化に全く違いは無かった。つまり,HL-60細胞は細胞増殖が停止しているか否かに関係なく,TPA処理後,一定時間を経て各々の分化形質を同じように発現してきたのである。以上の結果より,フォルボールエステルによる分化形質の発現には細胞増殖の停止が必ずしも必要ではなく,どの細胞周期にある細胞でも差の無いことが明らかになった。2.コミットメントの過程は存在しない。コミットメントの過程があれば細胞を分化誘導剤で一定時間処理すると,たとえ培地から分化誘導剤を除去しても細胞は非可逆的に分化するように運命づけられる。従って,HL-60細胞をフォルボールエステルで一定時間処理した後,細胞からフォルボールエステルを除去しても細胞は分化形質を発現したままで留まり,再び増殖を示さないはずである。細胞から容易に除去できるフォルボールエステルPDB(phorbol-12,13-dibutyrate)を用いて実験を行った結果,たとえ長時間HL-60細胞をPDB処理しても,一旦,PDBを除くとHL-60細胞は必ず増殖を再開し,あらゆる分化形質(ICAM-1,Mac-1,接着,伸展,貪食能)を消失し,最終的には元の未分化のHL-60細胞と同じ状態に戻った。特に注目に値するのは,ICAM-1やMac-1を発現し,貪食能を示す細胞でさえDNA合成を開始することである。PDBの代りにTPAを用いても同様の結果が得られた。更にHL-60細胞より分化段階の進んだヒト単球性白血病細胞THP-1を用いて実験を行っても,HL-60細胞と同様の結果が得られた。
著者
西田 隆政
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 = Konan Women's University researches of literature and culture volume (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-7, 2003-03-18

小松英雄は,平安朝の和文文献は,書記様式として句読点の存在しない,「連接構文」のテキストであり,句読点をつけることは不要かつその表現性を無視することになるとする。しかし,句読点の存在しないことが句読をおこなうこと自体を否定するものではない。また,現代語のような句点で文をくぎること自体はおこなわないものの,用言等の終止形だけでなく,ほかの構文的な条件の存在によって,そこで文がくぎられることがしめされる場合がある。句読点のような文のきれつづきを明示する符号の存在しないことで,構文的な自在性は保持しつつも,文の終止もしめすことのできるのが,和文の構文的な特徴であったとかんがえられる。
著者
福島 直恭
出版者
学習院女子大学
雑誌
学習院女子大学紀要 (ISSN:13447378)
巻号頁・発行日
no.6, pp.25-40, 2004
著者
鈴木 啓司 鈴木 正敏
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.19, 2010

放射線照射により細胞死が引き起こされることは広く知られた事実であるが、その死の分子メカニズムについては未だに不明な点が多い。我々は、特に付着系の細胞で、非アポトーシス性の細胞死が、放射線による主要な細胞死のモードであることを報告してきた。正常ヒト二倍体細胞を用いた実験から、放射線照射後に残存するDNA損傷が持続的にATM-p53経路依存的G1チェックポイントを活性化し、その結果、細胞はG1アレストの持続を経て老化様形質を発現するようになる。一方、がん細胞でも、放射線照射による老化様増殖停止の誘導が確認された。従来、がん細胞では放射線によるアポトーシスの誘導が報告されるが、その割合は細胞の致死率を説明できる程高くはなく、非アポトーシス性の細胞死モードとして老化様増殖停止が注目されるようになってきた。がん細胞では、G1アレストが十分に誘導されず、またG2アレストの持続にも異常があることから、多くの細胞はDNA二重鎖切断をもちながら細胞分裂期に入っていく。その結果、染色体断片や染色体架橋が生じ、このような細胞は分裂異常、いわゆるmitotic catastrophe(MC)を起こす。MCを起こした細胞は多くが細胞分裂を完遂できず、微小多核細胞などになって次のG1期に留まる。これ以外にも、細胞分裂を経ずに細胞周期を進行させた細胞は、巨核細胞になってG1期に留まり、いずれの場合も、この過程で老化様増殖停止を誘導することが明らかになった。以上のように、老化様増殖停止は、組織によっては放射線による細胞死の主要なモードになっており、その理解は、より効果的な放射線治療法の確立に貢献すると期待される。さらには、老化様増殖停止を誘導した細胞は、液性因子の分泌を介して周辺の細胞に影響を及ぼすことも明らかになりつつあり、放射線照射を受けた組織全体の応答を理解する上でも重要なキーになると考えられる。
著者
山口 真一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.24-32, 2018-06-20 (Released:2018-08-24)
参考文献数
21

本研究では,組織内外データ活用について実証分析を行う.分析の結果,自社データ活用率は36%,他社データ活用率は19%に留まることが分かった.さらに,「経営者がデータ活用を学ぶ」,「代表者を若い人とする」,「企業規模を大きくする」,「社員の自発的参加を促し,合理的管理をする」,「強制的,命令的な組織とし,データ活用をトップダウンで実行する」等の要素が,データ活用促進戦略として有効であることが明らかになった.
著者
坂田 一記 田中 千凱
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.637-644, 1971-11-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
24

Comparative studies were performed on effects, complications and shunt impairments of ventriculo atrial shunt (V-A shunt) and ventriculo-peritoneal shunt (V-P shunt) operations, mainly on the basis of our experiences with 62 V-A shunt and 19 V-P shunt operations. From the standpoint of shunt effect and durability, V-A shunt was definitely superior. From the standpoint of safety, V-P shunt was superior. We consider that, in hydrocephalic cases where both V-A shunt and V-P shunt have good indications, V-A shunt will be the operation of choice. However, in cases where any occult infection of CSF is suspected for, V-P shunt will be the operation cf choice. Various attempts hitherto performed by us for preventing postoperative complications and shunt impairments following V-A shunt, were mentioned. Remote prognosis of our hydrocephalic cases treated with shunt operations, as revealed by enquete method, was also reported.
著者
東山 雅一 平田 昌彦
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.104-113, 1995
参考文献数
35
被引用文献数
7

バヒアグラス放牧草地を利用した黒毛和種育成牛飼養システムにおいて,家畜生産に影響を及ぼすと考えられる様々な要因(気象,補助飼料,草地植生,家畜生体重,草地/家畜バランス,放牧行動,模擬採食草に関する要因)の変動を3年にわたり調査した。そして,各要因の変動範囲や年,季節および1つのパドックにおける放牧経過日数に対する反応などについて検討することにより,対象システムの特徴の一端を明らかにした。さらに,要因の変動の機作を理解し,システムの特徴を明らかにするうえでの要因間の関係の解析の重要性について指摘した。
著者
庭本 崇史 江村 正仁 中村 敬哉 林 孝徳 小林 祐介 五十嵐 修太 野村 奈都子 太田 登博 吉岡 秀敏 西川 圭美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.6, pp.1020-1025, 2016-06-10 (Released:2017-06-10)
参考文献数
10

約3年前に成人発症Still病(adult onset Still’s disease:AOSD)と診断された65歳の女性.23価肺炎球菌ワクチンを接種後に血球貪食症候群を併発した.ステロイド増量とガンマグロブリンの投与にて病勢の改善を得た.しかし,二次感染予防目的のST合剤の開始翌日から関節痛が増悪し,AOSDの再増悪を疑いシクロスポリンを投与した.その後,良好な経過を辿った.AOSDのコントロール不良例では,免疫抑制薬の併用が有用であると考えた.