著者
和田 剛明
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.461-496, 2010

<p>イノベーションには、既存の技術・知識にもとづく「活用型イノベーション」と、新たな技術・知識の創出を目指す「探索型イノベーション」の二者が存在し、企業の持続的な成長のためには、この両者のバランスをとる必要がある。本研究は音楽シングルCDおよび家庭用ゲームソフト市場の二市場において、両者の測定・比較をおこない、既存研究が注目する開発組織のマネジメントだけではなく、価格戦略、広告・宣伝戦略、流通企業との協調といった販売戦略も重要であることを指摘する。</p>
著者
中村 哲也 丸山 敦史 陳 志鑫
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.18, pp.65-81, 2020-03-31

本稿では,香港の食とエネルギーの選択行動を事例として,統計的に分析した。香港では中国の原発建設反対運動が起こり,食の安全性が問題視されていた。香港は深圳市にある大亜湾原発から電力を依存しているが,8 割の市民が原発から電力を依存することに不安を感じていた。他方,香港に輸入される農産物は中国産が圧倒的に多いが,9 割に市民が不安を感じていた。大亜湾原発反対の署名運動については,若い市民が関心を持っていた。そして,女性は原発依存率の高さや,大亜湾原発と香港との距離,そして大亜湾原発の放射性物質漏れ事故を不安視していた。大亜湾原発の放射性物質漏れについては香港の全地域住民が不安視していた。また,女性や世帯員数が少ない者,子供がいない者,最終学歴が高い者は食の安全性に興味があり,日本産や自然農法米,植物工場レタスを購入した。電力構成別に価格を提示した場合,経済負担が大きい者は,CO2 の排出量が少ない第2 案より原発による依存が増える第3 案を選択した。他方,コメの価格を提示した場合,日本産と新界産のコメの購買選択行動は似ていた。また,日本産の結球レタスと香港産の植物工場レタスの購買選択行動も似ていた。香港産植物工場レタスを購入する者は高学歴者であり,香港の高学歴者は,植物工場レタスの栽培方法やその用途を正しく理解し,植物工場レタスを購入することが明らかにされた。
著者
渡邉 瑞貴 領田 優太 浅野 理沙 Khamb Bilon 薄田 晃佑 飯田 圭介 岩田 淳 佐藤 慎一 酒井 寿郎 長澤 和夫 上杉 志成
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 56 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral15, 2014 (Released:2018-07-19)

1. 背景 現代人を悩ます生活習慣病の一つ、脂質異常症(高脂血症)は肥満など多くの疾病の起因となる。それら多数の疾病の予防・治療のためにも、脂質生合成機構の制御と解析は重要な課題である。 脂質生合成において、転写調節因子SREBP(Sterol regulatory element- binding protein)は中心的な役割を担う(図1)1。小胞体膜貫通型タンパク質として存在する前駆体SREBPは、キャリアータンパク質SCAP(SREBP cleavage-activating protein)と複合体を形成している。この複合体は、脂質レベルが低下すると小胞体からゴルジ体に輸送される。ゴルジ体において前駆体SREBPは酵素による二度の切断を受けて活性型となる。活性型SREBPは核に移行し、転写因子として脂質生合成に関する遺伝子群の発現を亢進する。ステロールや脂肪酸などの脂質類が産生される。 SREBPの活性化は内因性物質であるステロールによって厳密に制御されている。ステロール過多になると、ステロールはSCAPに直接作用し、SREBP/SCAP複合体の小胞体からゴルジ体への輸送を阻害する。脂質生合成は種々の複雑な制御を受けることが知られており、ステロール以外の内因性物質による直接的なSREBP活性化調節機構の存在が予想される。しかし、その詳細は未だ不明な点が残る。 私たちの研究室が化合物ライブラリーから見出した合成小分子ファトスタチン(1, 図2)は、ヒト細胞内でSREBPの活性化を選択的に阻害して脂質生合成を抑制する2,3。ファトスタチンは、SREBP活性化を阻害する初めての非ステロール合成化合物となった。さらに私たちの研究室は、ファトスタチンを誘導体展開し、ファトスタチンよりも10倍阻害活性に優れ、経口投与可能なFGH10019(2)も報告した4。一連のケミカルバイオロジー研究によって、ファトスタチンはステロールと同じSCAPを直接の生体内標的とするが、ステロールとは異なる部位に作用することを示した。この結果は、ファトスタチン様に作用する、ステロール以外の内因性物質の存在の可能性を示唆する。2. 新たなSREBP制御天然化合物の発見 以上をふまえ私たちは、SREBP活性化に関わる新規内因性物質の探索を目的に、280種の脂質化合物を新たにスクリーニングした。その結果、細胞内でSREBPの活性化を阻害する複数の内因性脂質化合物が見出された。これら見出された化合物類は、濃度依存的にSREBPの活性化を阻害することがわかった。さらに、ある一連の内因性天然脂質化合物類は、ステロールと同様にSREBPの小胞体からゴルジ体への輸送段階で活性化を阻害するが、その作用メカニズムはステロールと異なることが示唆された(図3)。CHO-K1細胞をステロールで処理すると活性型SREBPが消失し、前駆体SREBPが蓄積する。一方、内因性天然脂質化合物Aで処理すると、活性型および前駆体両方のSREBPが減少した。これら新たに見出した内因性脂質化合物類とSREBPとの直接的な関係について、現在のところ報告はない。これら脂質化合物はSREBP活性化を制御する新たな内因性物質の可能性がある。3. SREBP制御天然化合物の作用メカニズムの解明研究 スクリーニング(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
田島 佳也
巻号頁・発行日
2015-12-25

北海道大学. 博士(文学)
著者
橋本 正史 山岸 豊
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.119-136, 2004-05-10 (Released:2011-12-05)
参考文献数
55

多環芳香族炭化水素 (PAH) の毒性は, ダイオキシンと同様にアリルハイドロカーボンリセプター (AhR) を介して起きることがよく知られているが, このメカニズムを中心に, 発がんに関連する生物学的反応と両物質のこの反応に対する関与の態様について概説した。その上で, PAH混合物の健康リスクを評価する手法について, これまでのアプローチを概括した。その中で, すでにダイオキシン類で採用されている方法である個別のPAHの毒性を積算して評価する手法 (Relative Potency Factor Approach) について概説し, 併せて著者らが開発した発がんメカニズムに基づいた健康リスク評価手法 (誘導変異原性法) について詳述した。
著者
碓井 和弘
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経営論集 = Sapporo Gakuin University Review of Business Administration (ISSN:18841589)
巻号頁・発行日
no.5, pp.43-52, 2013-03

伝統ある商業教育機関のシンボルには翼や杖,蛇がしばしば使われている。嚆矢は一橋大学である。それは,ギリシア神話のヘルメス,あるいはローマ神話のメルクリウスにまつわるものであり,ヨーロッパで繁栄していたベルギーに存在する商業学校のものを移入したのであった。ヘルメスは,豊穣神であるとともに,商業,盗み,雄弁,競技,道路,旅人の守護神でもあり,その最大の特徴は,コミュニケーション能力の高さと狡猾さである。しかし狡猾である商業には,不信感が付きまとう。商業が社会に存立する根拠が問われるのは,その商業への不信感が背景にある。M.ホールの「取引総数最小化の原理」は,取引においては人が移動する,と前提すれば理にかなっているように見えるが,情報技術の革新は状況を一変させた。この情報技術の革新は,マーケティングにも影響を与えている。『コトラーのマーケティング3.0』は,「参加」「グローバル化のパラドックス」「クリエイティブ社会」の3つを,時代を読み解くキーワードとしている。このマーケティングの変化を学ぶことは,商業教育の象徴と現代性を追求することにも繋がると考えた。
著者
秋山 華穂 松浦 均 Akiyama Kaho Matsuura Hiroshi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice
巻号頁・発行日
vol.70, pp.187-197, 2019-01-04

現代の若者に広く浸透しつつあるコミュニケーション・ツールである“キャラ”に焦点を当て、その“キャラ”が実際にどのように用いられ、人間関係とどのような関連があるのかについて検討した。さらに“キャラ”を相手や状況に応じて切り替えることの効果、特に友人関係満足度に及ぼす影響について検討した。大学生を対象に、過去もしくは現在に所属していた友人グループの中での自身の“キャラ”を想起してもらい、その“キャラ”についての認知およびそのグループでの友人関係満足度について質問紙調査を行った。その結果、大学生が用いる“キャラ”の実態について、また“キャラ”と友人関係満足度および友人関係の特徴との関連について、“キャラ”切り替え動機と“キャラ”切り替えと友人関係の在り方や満足度との関連について明らかになった。具体的には、「お笑い」や「いじられ」キャラが多く用いられていることが明らかになった。また“キャラ”使用に関して性差がみられ、女性では「天然」「ほのぼの」キャラの数が多いのに対し、男性では「ボケ」や「お調子者」キャラが多くみられ、女性より男性の方が「キャラに対するメリット認知」をしていることが示された。さらに、「いじられ」や「お笑い」キャラと「まじめ」キャラとの間に、友人関係満足度などの差がみられた。これは、「友人関係における役割」キャラおよび「当人の性格特性」キャラの差異からくるものであることが考えられる。次に、友人関係の在り方の中では、特に「群れ関係群」において「キャラに対するメリット認知」が高く、それゆえ“キャラ”が多く用いられていることが示唆された。加えて、「キャラに対するメリット認知」は、友人関係満足度に影響を及ぼしているのに対し、「キャラに対するデメリット認知」は友人関係満足度との間に関連がみられないという結果が得られた。最後に、“キャラ”切り替えについては、「自然・無意識」を主な変化動機として行われている可能性が示された。そして、「友人関係における役割」キャラおよび「当人の性格特性」キャラにおける切り替えの程度によって、その切り替えは「関係維持」や「演技隠蔽」を変化動機として行われる場合もあるということが明らかになった。
著者
松本 桂子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.85-95, 2005-03-01

D.H.ロレンスは、晩年を南フランスで静養に努めながらも創作を続け、価値ある諸作品を残した。中でも、刻々と迫る死を自覚しつつ書かれた詩「死の船」は、死後の魂を未知なる世界へと運び行く小さな船を象徴として、死という自然の摂理を独特の解釈と手法で描いた作品である。そこに凝縮された死生観にも通じる根本思想を追究することにより、ロレンスの最後のメッセージとして受け取りたい。方舟聖書エトルリア復活再生
著者
村松 仁 森 千鶴 永澤 悦伸
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.42-47, 2000
被引用文献数
5

近年,香りの人体へ及ぼす影響について検討した研究により,様々な効果があることが明らかとなってきている。その中に不安の軽減やストレス軽減などの精神面への効果がある。この精神面に対する効果を精神看護に応用することは,精神看護の幅を広げることにつながり,非常に意義深いことと考える。今回はその基礎的なデータを収集する目的で,精神的ストレスがある状態でグレープフルーツの香りを提示した場合,どのような影響が起こるのかを実験により検証した。その結果,グレープフルーツの香りには,心理指標において状態不安を軽減し,覚醒水準を上昇させる傾向があり,リラクゼーションに応用できる可能性があることが示唆された。
著者
Tetsu Tanaka Kazuyuki Yahagi Osamu Wada Kai Ninomiya Yu Horiuchi Masahiko Asami Hitomi Yuzawa Kota Komiyama Jun Tanaka Jiro Aoki Akitake Suzuki Kazuho Ishizaki Kengo Tanabe
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.7326-21, (Released:2021-06-12)
参考文献数
21

Achilles tendon xanthoma (ATX) is one of the typical features of familial hypercholesterolemia (FH). The morphological evaluation of ATX by X-ray radiography is widely recognized; however, the utility of other imaging modalities remains unclear. We herein report two cases of FH in which Doppler ultrasound imaging demonstrated a microvascular flow in ATX that only rarely could be observed in normal Achilles tendons. Neoangiogenesis accompanies chronic inflammation and it may play an important role in the deposition of cholesterol crystals leading to ATX. In addition to the morphological evaluation of ATX, the assessment of neoangiogenesis may therefore be essential for the evaluation of ATX.
著者
岡崎 義郎
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.119-124, 1998 (Released:2018-05-30)
参考文献数
33

従来、ニオイは情動を喚起する刺激であるとされ、また天然精油においては覚醒・鎮静効果を持つと伝承的に伝えられているものも多い。しかしながら、このような香りの心身への効果については経験的な議論が多く、科学的に実証しようとする動きはここ10年くらいである。ここではニオイと覚醒水準の関係について、またニオイと快-不快について生理心理学の立場から概説する。これまでに得られた知見から一部の精油の香りは鎮静・覚醒効果を示すことが明らかになった。その作用機序は、ニオイ物質の薬理効果ではなく嗅覚伝達系を介した効果であることが、嗅覚喪失マウスの実験結果・特異的無嗅覚症者を含む実験結果などから示唆されている。
出版者
東京市
巻号頁・発行日
1931
著者
脇本 博 青野 敏博 松本 圭史 高安 進
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.421-424, 1983-06-10

睾丸性女性化症は性染色体がXYで,腹腔内に睾丸を有し,外性器は女性型を呈する。思春期には正常女性と同様に乳房の発育がみられ,男性化徴候は出現しない。腋毛,陰毛はほとんど認められない。このような睾丸性女性化症の症状は,胎生期または思春期に男性ホルモン作用が発現されていないことを示唆する。本症の病因として,1)睾丸における男性ホルモン分泌能の低下,2)男性ホルモンに対する標的器官の感受性の低下の2つが考えられるが,本症の患者睾丸のテストステロン合成能は正常男子と同様良好であることが明らかにされた1)。そこで標的器官のホルモン感受性の低下が本症の病因として重要視されるようになった。近年,Bullock2),Griffin3)らの研究により,本症の男性ホルモン不応は男性ホルモンレセプターの欠損に起因するものであることが証明された。したがって,睾丸性女性化症の確定診断には,アンドロゲンレセプターの検索が不可欠と考えられる。しかし,実地臨床の場でアンドロゲンレセプターの測定が,本症の鑑別診断に利用されたという報告は未だ見られない。我々は正常のヒト皮膚由来培養線維芽細胞中における5α-dihydrotcstosterone(DHT)に対するレセプターをデキストランーチャーコール法によって検索し,その最大結合部位数(B max)ならびに解離恒数(Kd)をScatchard分析によって求め,その正常値を決定した4)。同様に睾丸性女性化症および外性器異常を伴う内分泌異常疾患,染色体異常疾患を有する患者の皮膚由来培養線維芽細胞中のDHTレセプターを検索し,正常値と比較対照することにより睾丸性女性化症の診断に本検査法を応用した。本稿では,睾丸性女性化症の病像を解説した後,本検査法の実際的な使用例について報告したい。