著者
綱島 洋之
出版者
実践総合農学会
雑誌
食農と環境
巻号頁・発行日
no.16, pp.99-114, 2015-10

社会的課題の解決に資する就労機会の創出は, 社会的包摂の現実的な手段であると考えられる。そこで, ホームレス高齢労働者や若年者就労支援事業体などとともに, 農地の再生と維持を試みるアクションリサーチを開始した。社会的包摂の理念を踏まえるのであれば, 人手不足の解消策として以上の意義を働き手が実感できるか否かが問われる。本研究では, 一定期間経過後に, このような就労機会の意義について参加者に意見を求めた。ホームレス高齢労働者は, ホームレス状態のまま就労できる場を求めていた一方で, 若者を指導する役割を果たしていた。若年者就労支援に農作業を取り入れることは, 利用者が自己肯定感を獲得したり, 利用者の適性を可視化したりできるなど, 就職活動の前段階として有効である。一方で, 労働市場の現状に適応するための手段として農作業を利用する就労支援に疑問を感じる若者もいた。かれらは, 賃金労働を通してではなく直接的に, 生活必需品の一部を自力で生み出したいと考えていた。以上の結果は, 参加者の就労意欲が, ホームレスおよび若者を対象とした「自立支援施策」において想定されているよりも多様であり, そして, 農業分野における就労機会を提供することで応答可能であることを明示している。ただし, 就労支援のために農作業の機会を利用することの二律背反性を克服することは今後の課題として残されている。
著者
山崎 寿一 内平 隆之
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.26, no.Special_Issue, pp.305-310, 2007-12-30 (Released:2008-12-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

Through analysis of citizen questionnaire at Sonoda district in Amagasaki-city carried out in February, 2006, We considered a role of urban farmland and possibility of the maintenance, practical use from the living environment formation, a viewpoint of community improvement. On this paper, we considered particularly civic agriculture male participation in planning awareness and possibility of civic support for farmland maintenance.
著者
岩本 和久
出版者
稚内北星学園大学
雑誌
稚内北星学園大学紀要 (ISSN:13477900)
巻号頁・発行日
no.8, pp.39-48, 2008-03

視覚的なスポーツ表象は、古代エジプトやギリシアにまでさかのぼることができる。スポーツの歴史は美術と深く結びついていると言っても過言ではない。 ソ連においてスポーツ文化は華々しい発展を遂げたが、その美術においてもスポーツは積極的に取り上げられていた。では、ソ連解体後の現代ロシアにおいて、アーティストはスポーツ文化にいかにアプローチしているのであろうか? 本論文では2015年のヴェネツィア・ビエンナーレの関連展示として注目された2つの作品、すなわちグリーシャ・ブルスキン「考古学者のコレクション」とAES+F「Inverso Mundus」を分析しながら、そこでスポーツ文化が空虚な反復や死と結び付けられていること、同時にまた、スポーツ文化に潜在するエネルギーの存在も認められていることを、明らかにしている。このようなスポーツ理解はポストモダン的な批評精神の現われとも言えるが、一方で古代的なものとも言えるだろう。
著者
西成 活裕
出版者
日経BP社
雑誌
日経ものづくり (ISSN:13492772)
巻号頁・発行日
no.690, pp.77-81, 2012-03

西成活裕(にしなり・かつひろ):東京大学先端科学技術研究センター教授。1967年東京都生まれ。1995年に東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程を修了後、山形大学工学部機械システム工学科、龍谷大学理工学部数理情報学科、独University of Cologneの理論物理学研究所を経て、2005年に東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻に移り、2009年から現職。
著者
小林 智紀 高木 通俊 高倉 葉子
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集 第61回理論応用力学講演会
巻号頁・発行日
pp.202, 2012 (Released:2012-03-28)

本研究は高揚力装置の一種であるGurney Flapの空力特性を,NACA4412形状翼を用いて実験的に求めたものである.Gurney Flapは高速走行する自動車に装着されることの多い高揚力装置であり,1970年代にDan Gurney氏によって考案された装置である. 実験条件はRe=6.5×105であり,Gurney Flapの大きさは翼弦長に対して0%,1%,2%,3%,4%,5%,6%の高さの装置を装着する.実験よりC<>L</>曲線の変化の傾向を維持した状態での揚力係数は高さが4%のものが最も高く,翼のみの状態に比べ2倍の効果を発揮した.また変化の傾向が異なるが揚力係数がより高くなるFlapもあった.抗力係数は高揚力装置の高さを高くするほど同じ迎角でも上昇する傾向を示した.揚抗比はFlap高さが低い状態ほど高く,4%の高さの装置を装着している状態では装着していない状態と比較して74%まで減少した.これらの結果よりGurney Flapは翼重量の増加を最小限として揚力係数を得たい場合や動力の余力があり抗力係数を考慮する必要性が低い場合に最大限の能力を発揮する.
著者
倉持 卓司 上野 香菜子 厚井 晶子 長沼 毅
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
雑誌
生物圏科学 : 広島大学大学院生物圏科学研究科紀要 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.45-50, 2013

日本の代表的な内海である瀬戸内海より得られたドングリシャミセンガイLingula rostrum (Shaw,1798)の外部形態,および,分子生物学的な比較検討を行った。試料は瀬戸内海の岡山県沖備讃瀬戸より得られたドングリシャミセンガイを用い,倉持ら(2012)によるミドリシャミセンガイLingula anatina (奄美大島産)とウスバシャミセンガイLingula reevii (有明海産)の報告と比較した。ドングリシャミセンガイ(備讃瀬戸産)は,殻の形態,および,生時の肉茎の色彩により,外部形態でミドリシャミセンガイ,ウスバシャミセンガイと区分される。また,ドングリシャミセンガイ(備讃瀬戸産)の18S rRNA遺伝子の塩基配列を,ミドリシャミセンガイ(奄美大島産)とウスバシャミセンガイ(有明海産)と比較したところ,ドングリシャミセンガイ(備讃瀬戸産)は,ミドリシャミセンガイ,および,ウスバシャミセンガイの両種とは異なるクレードに属することがわかり,分子系統的にも離れた分類群として扱われるべきであることが示唆された。
著者
千葉 晃 本間 義治
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.287-294, 1981

日本海側の新潟海岸へ多数漂着するハリセンボンの新鮮標本8尾を用い, 各種器官を組織学的に観察した.いずれも軽い飢餓状態にあったが, 消化器官, 膵外分泌組織, 腎臓, 脾臓には異常は認められなかった.しかし, 肝臓への脂肪蓄積が著しく, 胸腺は退行状態にあり, ブロックマン小体にはグルカゴン産生細胞が優勢で, 甲状腺は機能低下状態を示した.一方, 間腎腺とスタニゥス小体は正常と目された.卵巣は卵黄形成前の若い卵母細胞によって占められていたが, 精巣の大部分は精原細胞よりなるものの, ごく少数の精子もみられた.視床下部神経葉には相当量の神経分泌物が検出されたが, 腺性下垂体の生殖腺刺激細胞はまだ小さく, 染色性に乏しかった.冬季に対馬暖流によって日本海の高緯度地域まで運ばれるハリセンボンは, 前報 (Chibaetal., 1976) したアミモンガラ同様に未熟の若魚で, 死滅回遊の過程にあると思われるもので, ほぼ同様の組織像を示していた.
著者
清水 則雄 河田 晃大 松浦 靖浩
出版者
広島大学総合博物館
雑誌
広島大学総合博物館研究報告 (ISSN:18844243)
巻号頁・発行日
no.1, pp.85-89, 2009

ソウシハギは, 熱帯・暖海域に広く生息する大型のカワハギ科魚類である。2008年7月31日に, 瀬戸内海安芸灘の広島県大崎上島町木臼島沖合において本種の幼魚1個体(全長19.7cm)を発見・採集した。本種の幼魚は流れ藻に随伴し海流とともに移動すること, 過去にも瀬戸内海伊予灘での採集記録があることから, 黒潮の分流に乗って豊後水道を経由して流入してきたものと考えられた。瀬戸内海安芸灘の冬季水温環境は本種の越冬が不可能なレベルにあり, 死滅回遊として偶発的に出現したものと考えられる。
著者
平田 智法 小栗 聡介 平田 しおり 深見 裕伸 中村 洋平 山岡 耕作
出版者
日本魚學振興會
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.49-64, 2011

A monthly underwater visual census was conducted in the coral-dominated habitat of Yokonami, Tosa Bay, Japan, from June 2006 to January 2009. A total of 12,586 individuals belonging to 168 species in 43 families were recorded during the study period. The number of species and individuals increased from June-August (summer), the highest numbers occurring in September-December (autumn), thereafter decreasing from January (winter) to the lowest point in May (spring). Labridae was the most dominant family in terms of species numbers (28 species), followed by Chaetodontidae (21 species) and Pomacentridae (18 species). In terms of individual numbers, Chaetodontidae was the most abundant (56.3% of total individual numbers), followed by Labridae (15%) and Pomacentridae (12.5%). The most dominant species were Chaetodon speculum (33.4%), Pomacentrus coelestis (11.1%), and C. lunulatus (8.2%). The fish assemblage was divided into 4 groups: (1) temperate fishes (1877 individuals in 26 species), (2) (sub-)tropical fishes (10,648 individuals in 136 species), (3) temperate-tropical fishes (28 individuals in 2 species), (4) unknown fishes (33 individuals in 4 species). Species and individual numbers of temperate fishes were high in summer and low in winter, whereas those of tropical fishes were high in summer and autumn and low in spring, suggesting that typhoons in summer and autumn, and low water temperatures in winter might affect fish recruitment and community density. Moreover, at least 44 tropical species were observed throughout the year during the study period.
著者
田代 光輝 小松 正 浅子 秀樹
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.285-286, 2020-02-20

インターネットによる未成年の誘い出し被害や、いじめの予防のため、北海道・宮城・東京・大阪・福岡の8校の高校生にパネル調査(有効回答数1,017人)を2018年度(以下:RIS調18)と2019年度(以下:RIS調19)の2回、及び、神奈川県の高校生にアドホック調査を2018年度(有効回答5,573人・以下:神奈調18)に行った*注1(以下、調査全体を本調査)。本調査結果から、高校生の多くがネットでの出会いを経験してる実態が明らかになった。ネットでの出会いのうち67.6%は高校生同士であるが、大学生や社会人も16.9%、不明が9.9%あり、誘い出しのリスクにつながっていると考えられる。
著者
宮下 敦 堤 之恭 佐野 貴司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.10, pp.511-522, 2016-10-15 (Released:2017-01-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1

関東山地の木呂子角閃岩は,白亜系跡倉ナップと御荷鉾緑色岩類の境界に挟まれている小さいブロックで,角閃石K-Ar年代が約400Ma(竹内・牧本, 1995)という古生代前期を示すことで知られている.この角閃岩は,主にmagnesiohornblendeと曹長石からなり,他に高変成度を示す指標鉱物は含まない.また,角閃岩の全岩化学組成は,周囲のMORB組成を持つ御荷鉾緑色岩類とは異なっている.この角閃岩のジルコンU-Pb年代は約480Maを示し,これは火成年代を示していると考えられる.また,変成作用の時期を示す角閃石の40Ar/39Arプラトー年代は,約430Maが得られた.これらの年代値は,木呂子角閃岩が日本列島のカンブリア紀-オルドビス紀の火成岩-変成岩複合岩体に属することを示している.
著者
兎束 淑美
出版者
上田女子短期大学
雑誌
創る
巻号頁・発行日
pp.277-290, 1996-08-30