著者
武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.810-818, 2012-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本稿の目的は,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance and Commitment Therapy:ACT)の実証的な症例報告,すなわち「トリートメント評価」の実際を示すことであった.なぜなら,サイコセラピーが今後さらに「社会を動かす」ためのアカウンタビリティを向上させていくためにはランダム化比較試験(RCT)だけでなく,従来のようなエピソードのみによる症例研究とRCTをつなぐ情報,つまり「再現性のあるテーラー・メイド化」のプロセスに関する情報が必要となってくるからである.本稿におけるトリートメント評価の症例は,慢性うつ病によって,10年以上にわたって休職と復職を何度も繰り返していたクライエントに対するACTトリートメントによる復職支援である.
著者
吉村 伊保子 佐々木 淳 秋元 博之 吉村 教皋
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.379-384, 1989-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

典型的な先天性筋緊張性ジストロフィーに自閉症を伴っていた症例 (11歳女児) を報告し, その臨床像, CT像, 筋生検 (光顕, 電顕) 所見を述べるとともに, 本例の示す意味について考察した.電顕所見によると, 歪に分葉した中心核と, その周辺部の筋原線維の変性を特徴としていた.本例は, 精神遅滞と脳波およびCT像の異常を認め, 他の剖検例の所見をあわせて考えると, その脳器質障害は明らかである.したがって, 本例は, 自閉症がいくつかの病因をもった器質性症候群であるという仮説を支持する症例のひとつに加えられ得ることを述べた.
著者
秦野 賢一 金沢 一樹 山津 健司 角田 欣一 窪田 健二 若松 馨
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第25回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.195, 2014 (Released:2014-12-16)

製糖工程で発生する廃糖蜜から回収される暗色物質(DM)の特性解析を行い、DMが金属結合活性を持つことを見出した。現在、植物と共に金属結合剤などを添加し土壌の重金属の易動性を高めることによる効率的な植物修復が研究されている。植物修復の促進剤としてのDMの可能性を検証する為に、各種重金属塩を含む寒天培地中にDMを添加することによるダイコンRaphanus sativusの成長阻害の軽減効果を調査した。軽減効果が確認されたPb2+, Zn2+, Ni2+, Cu2+に関しては、DMを含めた4種類のキレート剤による植物体のバイオマス量と金属蓄積量に与える影響についても検証した。硫酸銅添加培地では、DMのみが植物体のバイオマス量とCu2+蓄積量の両者を同時に促進することができた。このことは、銅汚染土壌における理想的な次世代型植物修復の促進剤としてDMが大きな可能性をもっていることを示唆した。
著者
児島 昭徳 大橋 壯樹 大城 規和 只腰 雅夫 小谷 典子 景山 聡一郎 青山 英和 亀谷 良介 安藤 みゆき 田中 昭光
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.848-854, 2019-08-15 (Released:2020-10-26)
参考文献数
11

症例は呼吸困難を主訴とする85歳の女性で近医より当院緊急搬送となった.右冠動脈後下行枝の閉塞による急性心筋梗塞後の後壁心室中隔穿孔と診断し,心不全に対し人工呼吸,強心薬での治療を開始したが,肺うっ血,尿量減少を認めた.そのためIMPELLA 2.5を挿入し,これにより血圧の上昇と尿量の流出を認め呼吸循環動態は安定した.その後心筋梗塞発症推定2週間後,IMPELLA導入6日後に手術を行った.経右室にて後壁基部よりの4 cmの心室中隔穿孔をパッチにて閉鎖し同時にIMPELLAを抜去した.術後2日後に抜管しその後の経過は良好でリハビリを行い2カ月後に退院となった.術後3カ月後に大腸がんに対して腹腔鏡下S状結腸切除術を行い,その後の経過も良好で近医にて外来通院中である.心筋梗塞後心室中隔穿孔に対しIMPELLAを使用し循環動態の改善と維持が可能となりその後待機的にパッチ閉鎖を行い救命し得た症例を経験した.
著者
久保田 和歩 真弓 夏生 桜木 惣吉
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告. 教育科学編 (ISSN:18845142)
巻号頁・発行日
no.69, pp.59-64, 2020-03-01

養護教諭にとって,ストレスによる心身の不調などメンタルヘルスに関する課題等への対応は,重要な任務の一つである。そこで,ストレスへの理解を深めるため,女子大学生を被験者としてストレス度と生活習慣や生育環境・生来の性格との関連をロジスティック回帰分析により分析した。その結果,「趣味に費やす時間が十分でない」「アルバイトの現状に満足していない」「両親に叱られることが多かった」「両親に比較された」と感じている人ほどストレス度が高かった。また本人が多感であるほどストレス度が高く,心気症・精神衰弱・社会的内向性の傾向が高いほどストレス度が高かった。以上より,子供たちに好きなことをする時間を与え,子供たちをむやみに叱ったり,他の子供と比較したりせず,認めて自信をつけさせること等が,ストレスの軽減に有効であると考えられる。
著者
濱生 和加子 青木 克 清水 唯男 内田 貴久
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.403-410, 2000

目的: 特発性顔面手掌多汗症 (多汗症) 患者の心理特性と, 胸腔鏡下交感神経遮断術 (ETS) 後の患者の心理状態を調査し, ETS治療の有効性を検討する。方法: 多汗症患者を対象に, TEG (東大式エゴグラム・第2版), POMS (気分プロフィール検査), MMPI (ミネソタ多面的人格検査) をETS前に施行し3カ月以降に同心理検査とアンケート調査を行なった. 結果: TEGより, 多汗症患者は依存的, 消極的タイプが多いといえるが, 不適応的自我パターンが多いとはいえず, 術後は特に女性で適応的自我パターンに変化した. POMSでは, 多汗症患者に感情的問題が多いとはいえず, 術後に特に男性で気分状態は改善した. MMPIでは,「精神衰弱性」,「偏執性」,「抑うつ性」尺度に高得点を示す症例が多かったが, 術後は減少傾向を示した. 術後アンケートでは, 代償性発汗は全例にみられ, 約40%の患者が日常生活への支障を訴えたが, ETSを受けた患者の約95%は手術治療に対し満足感を表明した. 結論: ETS後, 多汗症患者の自我状態は自己肯定的に変化し, 気分状態も改善するが, 手術適応には, その患者が代償性発汗を受容できるかどうかの見極めが問題となる.
著者
佐藤 文宏 冨永 登夢 土方 嘉徳 酒田 信親 西田 正吾
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.355-361, 2016

<p>Our previous study designed interactive floor projection system with hands and toes input in terms of quick and light input system. This system lets user interact with floor projection by pointing the finger or stepping on projection image. It allows to realize floor interaction without using even a single hands.</p><p>However, in this system, it is difficult for user to input by toes to desired position precisely because of low accuracy of toe detection. In this paper, we propose a new toe detection method by means of implementing a leg model to improve the accuracy of toe detection. The model signifies human leg. It consists of three joints and; thigh, cnemis and foot length. Moreover, we conduct user study to investigate accuracy of toe detection compared with proposed and previous method. As a result, proposed method can detect toe position with higher accuracy than previous method.</p>
著者
米山 喜晟
出版者
大阪外国語大学
雑誌
大阪外国語大学論集 (ISSN:09166637)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.275-291, 1991-12-15

(本ノートの前半は『大阪外国語大学学報』第74-3号(1987)に掲載され、「第二章シエナの年代記類に描かれたモンタペルティ戦争」の第一節まで収録されている。第二章の第二節は紙数の都合で省略して、本稿は「第三章」と「結びに代えて」を収録する。
著者
佐藤 文宏 松田 大輝 酒田 信親 西田 正吾
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.163-171, 2015

Wearable projection systems enable hands-free viewing via large projected screens, and eliminating the need to hold devices. These systems need a surface of projection and interaction. However, in case of choosing a wall as the projection surface, users have to be positioned in front of the wall when they wish to access information. In this paper, we propose a wearable input/output interface for floor projection system composed of a mobile projector, a depth sensor and a gyro sensor. It allows user to conduct "select" and "drag" operation by footing and fingertips controlling in the projected image on floor. Also it can provide user more efficient GUI operations on floor with combining hand and toe input. To confirm advantage and limitations of the system, we conduct user study. Finally we suggest guidelines and identify some problems when designing an interface for the interaction between the hand/toe and the floor. We also suggest the input method which uses both a finger and a toe.
著者
今津 玲子
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-14, 1992
著者
玉懸 慎太郎
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.31-31, 2004

本発表の目的は、マス・メディアとしての劇映画が、ロケ地に与える影響を実際の事例で検討することにある。本発表では、フィルム・コミッションが誘致した映画のロケ地が、映画のヒットによって「名所」になっていく過程を報告する。事例としたのは、映画「世界の中心で、愛をさけぶ」とそのロケ地となった香川県木田郡庵治町である。映画「世界の中心で、愛をさけぶ」は、300万部を突破した片山恭一原作のベストセラー小説を映画化したものである。映画の公開は2004年5月で、観客動員は400万人を超えた。劇映画とは別に、テレビドラマも制作され、「セカチュウ現象」という言葉を生み出した作品である。香川県木田郡庵治町は、高松市中心部から車で約30分ほどの距離にある。人口は約6,500人で「四国本土最北端のまち」「石と魚のまち」がキャッチフレーズであった。庵治町で撮影が行われた背景には、香川フィルムコミッションの存在が大きい。原作の小説の作者は、愛媛県出身のため、映画の行定監督らスタッフも瀬戸内海を中心にロケ地を探していた。そこで香川県観光協会内にある香川フィルムコミッションが、映画制作会社東宝に働きかけ、香川県内の数カ所を紹介した。スタッフが実際にそれらの場所を訪れ、庵治町が映画のイメージにぴったりだったことからロケ地に決定した。町に観光客が来始めたのは、2004年5月に映画が公開された直後のことである。ロケ地目当ての観光客が町に殺到した。町では慌てて4カ所に看板を設置し、ホームページでロケ地情報を提供した。7月にはパンフレットができあがり、町内の公共施設などで配布を始めた。このブームをきっかけに、庵治町では有志によるボランティア団体「庵治町おこし会」が結成され、7月24日から町役場に隣接する町民ギャラリーでロケ地と映画の写真展を始めた。将来的な課題として、映画ブームが去った後、どのように町おこしをしていくのかがあげられる。
著者
千葉 和夫
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.95-107, 2012-03

私はかねてより高齢者が住みなれた地方での生活を離れ、子どもたちとその家族が生活している都市部へ移住することによる心の不安や体調の悪化、新たな友人関係を構築することの困難さに着目していました。 そのような折に東日本大震災が発生しました。私は大学社会福祉学部教員であると同時に「福祉レクリエーションワーカー」でもある立場から、いかに行動を起こすか?を考えましたが、今の自分にできることは何かを優先すべきであると思慮し、先に述べたような観点から本研究ノートを執筆することとしました。 論考の主軸は、コミュニティ・サロン&エンカウンターグループ・リハビリテーション・TRS(セラピューティックレクリエーションサービス)・ジェネリックソーシャルワークに設定しました。こうした論点から、被災された高齢者の心の復興を再学習しようとしたからです。 本研究ノートの執筆により、私の教育者・研究者・実践者としての基本的スタンスが僅かではありますが鮮明化されたように感じています。そして多くの福祉レクリエーションワーカーらとともに、被災された高齢者やそのご家族の方々の心の復興に少しでもお役に立てることができれば幸いと思っています。