著者
遠藤 由香 石川 匡子
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.105-110, 2015 (Released:2016-09-26)
参考文献数
10

にがりを構成する無機塩と塩の味質の関係について官能評価と味覚センサにより検討した.官能評価の結果,塩化ナトリウム0.8 %溶液に,塩化カリウム,硫酸ナトリウムを0.08 %添加した際,味の識別が可能であり,添加濃度の増加とともに味が濃く感じられた.一方,硫酸マグネシウムは0.04 %,塩化マグネシウムは0.16 %添加した際,識別可能であり,添加濃度の増加とともに味が薄く感じられると同時に,苦味も感じられた.味覚センサ測定では,硫酸マグネシウム,塩化マグネシウムのみ,苦味の応答パターンが他の溶液と異なっていた.以上の結果から,にがり成分によって,塩の味質に与える影響が異なると考えられる.
著者
森川 美羽 石崎 武志 高野 智早 渡辺 享平 田畑 麻里 佐藤 義高 西本 武史 小坂 浩隆 片山 寛次
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.541-544, 2012 (Released:2012-08-21)
参考文献数
18

【目的】がんの診療に伴い, 吃逆はしばしば経験し, 治療に難渋することが多い. 化学療法に伴って出現した持続性の吃逆に対して, プレガバリンが奏効した2症例を経験したので報告する. 【症例】症例は共に進行肺扁平上皮がんであり, 症例1はカルボプラチン+パクリタキセル, 症例2はネダプラチン+イリノテカンの2剤併用化学療法を施行した. 2症例共に抗がん剤の投与に応じて吃逆の出現, 増悪を認めており, 薬剤が誘発したと考えられた. 吃逆はメトクロプラミド, クロルプロマジン, ガバペンチンに抵抗性であり, プレガバリン 150 mg/日の投与によりすみやかに改善した. 【結論】鎮痛補助薬として近年用いられるようになったプレガバリンは, その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により吃逆にも効果がある可能性がある.
著者
山下 英一
出版者
日本英学史学会
雑誌
英学史研究 (ISSN:03869490)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.8, pp.83-91, 1975-09-30 (Released:2009-09-16)
参考文献数
16

福井の明新館でグリフィスに理化学と英語を習って, 後年, 名を成した学生のなかで, 特にグリフィスの強い影響下にあった一学生今立吐酔の経歴を明らかにしようと思う。
著者
宮良 広大 坂元 顕久 宮田 隆司 大濵 倫太郎 下堂薗 恵
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.2023-005, (Released:2023-08-07)

脳梗塞後に右片麻痺を呈した回復期リハビリテーション病棟患者1名に対して,神経筋電気刺激 (NMES) を併用した反復起立自主練習を提案した結果,その継続が可能で良好な経過であったため報告する.通常の理学療法介入に加え,第20病日で反復起立自主練習,第34病日でNMES併用下での反復起立自主練習を導入した.2週間毎の定期評価として,運動機能は,Manual muscle test (MMT),骨格筋量,握力,大腿・下腿周径,バランス能力はBerg balance scale (BBS),歩行能力は10 m歩行テスト,6-minutes walking distance (6MD)を実施した.第20病日と比べ,第48病日で麻痺側膝伸展MMTが2から4,BBSが39から45点,10 m歩行テストが0.32から0.67 m/秒,6MDが265 mへ向上した.NMES併用下での反復起立自主練習は下肢筋力とバランス,歩行能力の改善に繋がる可能性がある.
著者
金水 敏
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.150, pp.34-41, 2011 (Released:2017-02-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

日本語教育,あるいは日本語教師養成のカリキュラムに役割語は必要ないという意見がある。これに対し本稿では,次の点から,日本語教師にとって役割語の知識は有用であることを示す。 1.役割語は「マンガやアニメ等にのみ現れる特殊な言語」ではない。われわれは特定の人物像(キャラクタ)と結びついた話し方の類型(=役割語)をステレオタイプ的な知識として身につける。その意味ではすべての話し言葉は役割語としての性質を帯びているものと捉えることができる。 2.日本語学習者は,いわば“日本語学習者”という役割のロールプレイングを現実社会の中で遂行していると見ることができる。日本語教師は,学習者のキャラクタ作りを支援する立場にあり,そのことを自覚しながら指導に当たる必要がある。

7 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1933年05月05日, 1933-05-05
著者
諸隈 夕子
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.111-138, 2023 (Released:2023-02-09)
参考文献数
34

本稿では,アヤクーチョ方言の-sqaまたは-naによって作られる体言化従属節の中で起きる示差的目的語標示(differential object marking: DOM)を記述・分析する。アヤクーチョ方言では,体言化従属節内の目的語の標示パターンに-taと-øの2通りが見られる。本稿では,聞き取り調査の結果に基づき,-taによる標示が,対比的焦点および意外性という情報構造上の概念に動機づけられると主張する。このようなアヤクーチョ方言のDOMは,DOMの類型論および情報構造の理論において次の3点を示唆する。①DOMは多くの言語で報告されてきた有生性,定性・特定性,主題性以外に,対比的焦点や意外性にも動機づけられることがある。②従来情報構造の標示が見られないとされてきた従属節内でも,対比的焦点や意外性といった情報構造上の概念が標示され得る。③情報構造における対比性の有無は,明確に言語形式に反映され得る。
著者
濟渡 久美 長谷川 莉子 桑原 明 石川 伸一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.67-78, 2022 (Released:2022-03-04)
参考文献数
30
被引用文献数
1

豆乳および牛乳を用いて, 各種増粘剤 (ゼラチン, キサンタンガム, ɩ-カラギーナン) 添加によるエスプーマの起泡安定性を中心とした物理的特性, および若年層, 高年層による官能特性を検討した. 起泡性は, 豆乳N2Oエスプーマおよび牛乳N2Oエスプーマともに増粘剤添加濃度が高いほど起泡性が低下する傾向がみられた. 泡沫の安定性は, 豆乳N2Oエスプーマおよび牛乳N2Oエスプーマともに増粘剤添加濃度が高いほど増加した. 食材によって, 安定性の向上に適した増粘剤の種類や濃度が異なることが示唆された. 嚥下調整食コード2の食品物性を示したエスプーマは, 2.0%ゼラチン添加牛乳N2Oエスプーマ, 0.2%ɩ-カラギーナン添加豆乳N2Oエスプーマであった. 若年層, 高年層による官能評価の結果豆乳N2Oエスプーマは有意に飲み込みやすいと識別され, 豆乳CO2エスプーマは苦いと識別された. 0.2%ɩ-カラギーナン添加豆乳N2Oエスプーマは若年層において, 最もべたつきやすいと識別された. 増粘剤を添加した豆乳および牛乳エスプーマは, 嚥下調整食の新しい調製方法として期待される.
著者
山鳥 重
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.9-15, 2009-03-31 (Released:2010-06-02)
参考文献数
28
被引用文献数
2

脳損傷が引き起こす認知・行動障害は単一認知能力の単純な欠損(陰性症状)として出現することは少なく,多くの場合,行動・認知能力の変容(陰性症状と陽性症状の複合)として出現する。超複雑構造である大脳が,ある程度自律性を持つ複数の機能系から成っているため,これら複数の機能系の間に損傷機能系の活動低下と非損傷機能系の相対的な活動亢進という,複雑な力動関係が発生するためである。このような力動関係の破綻を表していると考えられるさまざまな症候群のうち,筆者が個人的に経験し,論文として発表したことのあるものを 4 種に大別し,その病態メカニズムをまとめた。  すなわち,(1) 上位神経水準と下位神経水準の統合・拮抗関係の破綻を示す症状,(2) 左右大脳半球の統合・均衡関係の破綻を示す症状,(3) 前頭葉機能と頭頂葉機能の統合・均衡関係の破綻を示す症状,そして (4) 言語機能における情報統合能力の破綻を示す症状である。
著者
渡邉 学
出版者
宗教哲学会
雑誌
宗教哲学研究 (ISSN:02897105)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-14, 2003 (Released:2019-03-21)

The focus of the psychology of religion is on conversion from the beginning of its history. The theme of “defection” was not focused on until recently. This theme concerns not only psychological change or disillusionment, but also the loss of a social identity and disaffiliation from a religious community. Formerly it was common that scholars of religion regarded defectors as sources of trouble for new religious movements. As a result, they tended to underestimate their importance for their study. However, scholars have changed their attitude toward defectors due to the high rates of dropouts after the second half of the 1970s. There are two kinds of studies on defectors: one by defectors themselves, and the other by scholars of religion. The former is divided into those by defectors who become disaffiliated through their own will, and another by defectors forced by their community to be disaffiliated. Scholars of religion have found three levels of defection: affective (disaffection) , cognitive (disillusionment), and social organizational (disaffiliation). And they have found temporal variability in defectors’ testimonies. In this essay the author takes the concrete example of a former executive member of Aum Shinrikyō in order to examine those findings. The defector is apparently a willing one, with some complications. He first showed disillusionment, knowing the assassination of Sakamoto family was done by Aum members, and disaffection followed. He was disaffiliated from Aum according to his own free will after he was arrested. He changed his testimony during the series of his trials.

7 0 0 0 OA 歌麿

著者
ゴンクウル 著
出版者
第一書房
巻号頁・発行日
1929
著者
舟津 昌平
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.50-66, 2023-06-20 (Released:2023-07-12)
参考文献数
46

本稿の目的は,イノベーションをめざす産学連携における大学の関与のあり方について包括的に考察することにある.本稿では,2000年における『組織科学』の産学連携特集号と比較しながら,現在の産学連携における大学の関与について検討した.文献研究および事例研究の結果として,大学組織と個人研究者とのコンフリクト,上場した大学発ベンチャーにおける大学の関与の多様性,社会性概念の出現というリサーチトピックを提示した.
著者
下島 裕美 蒲生 忍
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.2-7, 2009 (Released:2009-09-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本稿では,ワシントン大学のマコーミック博士が杏林大学において実施したGuided Death Experienceという課題を紹介する。GDEはワシントン州の大学や病院,ホスピス等で広く実施されている課題である。まず五色のカードを5枚ずつ計25枚用意し,1枚のカードに1つずつ「大切なもの」「大切な人」「大切な場所」「大切な目標」「普段大切にしている出来事」を記入する。そして「あなた」が死にゆく物語を聞きながら大切なものが記されたカードを投げることにより,死にゆく過程における喪失を疑似体験するものである。本稿では,これまでとは異なる時間的展望への気づき,本当に大切なものへの気づき,他者との関係性の中に織り込まれた自己への気づきという視点からGDEのデス・エデュケーションとしての可能性を考察する。医療系の専門教育においては,死にゆく過程における患者やその家族へのサポート意識の高まりとともに,燃え尽き症候群から医療関係者の心を守るという役割も期待される。
著者
藤平 眞紀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.378-393, 2023 (Released:2023-08-05)
参考文献数
15

本研究では, 婦人雑誌『婦人之友』を資料として, 第二次世界大戦後の1946年から2021年における, 住まいや住生活, 住まいに係わる家計や家事に関する記事を抽出して, その中で住居管理に関する記事に着目し, 記事内容から住居管理の変遷を検討した. その結果, 住まいに関わる記事のうち, 住居管理に関することは時代を問わずコンスタントに掲載されていた. 具体的には, 掃除・清掃, 整理整頓, 補修・修繕, 衛生・清潔に関することが多かった. 戦後の急激な経済成長の中で, 従来からの住生活の見直し, 椅子座や集合住宅居住など新しい生活様式や家電製品などを取り入れながら, 住居管理は従来の方法に加えて新しい生活様式に応えるように繰り返し情報が出されており, それを必要とする生活者が多くいたことが明らかとなった. 戦後のモノ, 住宅不足から住宅取得への住宅に対する生活者の熱い思いが, 管理行動にも映し出される一方で, その対象は段々と住宅内部の狭い範囲に移っていた.