著者
網中 昭世
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.62-73, 2017

<p>本稿の目的は、近年モザンビークで発生している野党第一党モザンビーク民族抵抗(RENAMO)の武装勢力と国軍・警察の衝突のメカニズムを明らかにすることである。考察の際の着目点は、当事者であるRENAMOの除隊兵士の処遇の変化と、RENAMOの弱体化の関係である。モザンビークでは1992年に内戦を国際社会の仲介によって終結させ、紛争当事者を政党として複数政党制を導入して以来、モザンビーク解放戦線(FRELIMO)が政権与党を担っている。しかし、FRELIMOは選挙において必ずしも圧倒的な勝利を収めてきたわけではない。だからこそFRELIMOは一方で支持基盤を固めるために自らの陣営の退役軍人・除隊兵士を厚遇し、他方でRENAMOの弱体化を図り、結果的にRENAMO側の除隊兵士は排除されてきた。近年のRENAMOの再武装化は、紛争当事者の処遇に格差をつけた当然の結果であり、それを国軍・警察が鎮圧する構図となっている。</p>
著者
川原 弘靖 若色 薫 渡辺 顯 KAWAHARA Hiroyasu WAKAIRO Kaoru WATANABE Akira
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所報告 = Technical Report of National Aerospace Laboratory TR-1136 (ISSN:03894010)
巻号頁・発行日
vol.1136, pp.27, 1991-12

航空機は大型化,高性能化が進むと同時に従来の操縦桿・操縦輪に代わり,サイドスティックによる操縦装置が,また飛行計器はグラスコックピットと呼ばれる大型CRTを用いた電子式飛行計器等が導入されるなどコックピットの近代化が進められてきている。さらに飛行計器の表示デバイスもCRTから液晶フラット・パネル・ディスプレイ(以下液晶ディスプレイ(LCD)と略す)にと変りつつある。航空機用液晶ディスプレイは3インチ型TCAS指示計が実用化されており,5~8インチ型が開発段階にあり,実用化の時期も間近の感がある。これら新しい表示デバイスを実機に搭載するにあたってはその前段階として飛行シミュレータによる機能,性能の評価が必須であり,実機搭載に十分な機能,性能を確認する必要がある。今回,日本航空電子工業(株)との共同研究で8インチ型液晶ディスプレイ(PFD,DMD)の機能,性能および表示フォーマットに関して,飛行シミュレータによる評価試験を実施した。その結果,ハードウエアについては従来のCRTの性能と同等あるいはそれ以上の性能を有していること,DMDディスプレイについては使用目的に対応した表示機能とすることにより,その有効性があることが確認できた。
著者
若山 将実
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
no.17, pp.142-153,207, 2002

1970年代に入って支持の増大を経験したイギリスの第三政党は,現在では主要政党の一つとして定着している。本稿は,第三政党支持を変化させる要因を業績評価投票モデルから再検討する。業績評価投票モデルに依拠したこれまでの研究は,政権与党の業績に対する否定的な評価によって有権者は野党に投票するとした仮定がイギリスの第三政党に当てはまらないことを主張してきたが,本稿の分析は,選挙区レベルの経済状況の変化と政党競争の状況を考慮すると,第三政党は経済状況の悪化に対する有権者の不満の受け皿として支持を増大させていることを明らかにした。また,そうした有権者の不満の受け皿としての役割は,第三政党が野党第一党として定着している選挙区において特に大きいことが本稿の分析からわかる。
著者
金子 紗梨 高瀬 亘 村上 晃一 佐々木 節
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.35-36, 2020-02-20

Armプロセッサは省電力の特徴を持ち、スマートフォンなどのモバイル機器に広く利用されている。近年はサーバ用途としても使われ、HPCの業界でも注目が集まっている。KEK計算科学センターでは、高エネルギー物理学実験で得られる大規模データの蓄積や処理、シミュレーションの用途で、大規模なLinuxクラスタを運用している。本システムは4年毎にシステム更新を行い、新しい世代のCPUへの移行を行っている。Armプロセッサは省電力で、その割に処理能力が高い。Armを採用することでシステムの運用コストを抑えることが期待される。大規模クラスタでのArmプロセッサの適応性評価として、計算性能や省電力の点からプロセッサの性能評価を行った。
著者
鍾 清漢
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 = The journal of Kawamura Gakuen Woman's University (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.187-210, 1998-03-15

近年来,中国は勿論,欧米からアジアに至る世界各地で,客家学の研究が急速に盛んになってきている。その原因はいろいろと挙げられるが,総じて言えば,二十一世紀を控えて,中国をはじめとするアジアの急激な発展によってもたらされたものである。顧みれば近代中国の政変や改革において大きな役割を演じてきた数々,例えば,太平天国,辛亥革命,五四運動,中華人民共和国の建国等,そのどれにも客家出身者の活躍が際立って見える。その中でも,洪秀全,孫文,宋慶齢姉妹,朱徳,彰徳懐,葉剣英,郭沫若,蓼承志,郵小平等各氏,現中国の李鵬首相,朱鎗基副首相等の指導者が客家である。また,東南アジアの指導者の中では,台湾の李登輝総統,行政院長の蒲万長氏,民進党野党第一党首の許信良氏,前国民党秘書長の呉伯雄氏,カンボジアのシアヌーク国王,フィリピンのコラソン・アキノ前大統領,シンガポールのリーグァンユー元首相とゴーチョクトン現首相も客家出身である。経済界をリードしているターガーバームの胡文虎氏,香サリムグループ港の李嘉誠グループ,インドネシアの林紹良財団,タイの経済を牛耳っている華人,とりわけバンコク銀行も客家系の陳有漢氏が率いている。本文はまず漢民族における客家とは何か,その開拓者精神と特質,続いて客家の分布,移住,発展を分析し,そしてその客家人英傑を輩出している素地として宗族社会の規律についても考察,分析し,論述しようと試みた。
著者
橋本 雄太 宮川 真弥
雑誌
じんもんこん2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.237-242, 2018-11-24

歴史文献史料を構造化されたデータとして扱うためには,何らかの機械処理可能なマークアップ言語を用いて翻刻文を記述することが望ましい.加えて人文学研究者やクラウドソーシング参加者が利用するためには,そのような言語は簡潔かつ可読性の高い文法で記述される必要がある.そこで,古文書や古記録,古典籍といった日本語文献史料を記述するための軽量マークアップ言語を開発した.この言語の文法を形式文法のひとつである解析表現文法によって定義し,また縦書き入力やシンタックスハイライトに対応したオンラインエディタを開発した.このような入力負荷の低いマークアップ言語が普及することで,クラウドソーシングによる史料翻刻や,文献史料のデータベース化が効率的に進むことが期待される.
著者
山寺 博史 中村 秀一 鈴木 英朗 遠藤 俊吉
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学雑誌 (ISSN:00480444)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.53-56, 1997
被引用文献数
1

We experienced a 49 years old female SAD patient who showed a good response the next day after alprazolam 1.2 mg administration. The back ground EEG of the patient showed a abnormal EEG with slow waves. The personality was colored with histerical features. The nadir of body core temperature from rectum slightly delayed in remission phase compared with depressive phase. The patient became hypomania and calmed down gradually. Alprazolam tratment is seemed to be available for SAD patients. (J Nippon Med Sch 1997; 64: 53-56)
著者
大植 賢治 富永 孝紀 市村 幸盛 河野 正志 谷口 博 森岡 周 村田 高穂
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.109-114, 2010 (Released:2010-03-26)
参考文献数
19

〔目的〕本研究では,言語教示によって対象者の能動的注意を自己の身体内部および外部に向けさせて,運動を認識している際の脳活動の違いを明らかにすることを目的とした。〔対象〕右利き健常成人8名とした。〔方法〕機能的近赤外分光装置(fNIRS)を用いて検証した。〔結果〕能動的注意を右手で自己の身体内部へ向けた場合では,右半球前頭前野と右頭頂領域で,左手で身体外部へ向けた場合では,左半球前頭前野と左頭頂領域で酸素化ヘモグロビンの有意な増加を認めた。〔結語〕今回の結果から,運動を認識する際の運動と同側大脳半球の左右大脳半球の機能分化として,能動的注意が右手で身体内部に向かう場合は右半球前頭-頭頂領域が,左手で身体外部に向かう場合は左半球前頭-頭頂領域が担うといった側性化が存在することが示唆された。
著者
内田 浩志 土井 彰 赤木 博文
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.157-162, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
13

症例は既往歴に化学物質過敏症を持つ51歳女性. 歯性感染による頸部蜂巣炎を発症し, 水島協同病院耳鼻咽喉科にて入院加療した. 治療中両手掌・両下肢を中心に皮疹を発症した. 皮疹は, 当院皮膚科に紹介し, 薬剤・感染症・化学物質過敏症の何れかが原因の中毒疹と診断された. 最初は薬疹を疑い, 抗菌薬の変更とステロイド薬の投与を行うも改善しなかった. 入院後8日目に築年数の若い外来棟で診察したが, 外来棟の建物に入ると強い刺激臭を自覚し, 数時間後皮疹は増悪した. 頸部蜂巣炎治癒後, 皮膚科に転科し治療を継続するも治癒までには至らず, 全身状態は良好なことから退院帰宅し環境を変えた. それ以後皮疹は徐々に消失した.