著者
杉岡 寛子 森 明子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.323-332, 2016 (Released:2017-03-08)
参考文献数
35

目 的 正期産における前期破水の発生に関連する要因を明らかにすることである。方 法 主にローリスク妊産婦を対象とする産科病院(二次医療機関)と助産所の2施設において,正期産に出産した妊産婦の妊娠・分娩記録を用い,前期破水の発生に関わる要因を検証する関連検証型研究である。分析では,各変数の記述統計および各変数と前期破水発生との関連を明らかにし,最終的に2項ロジスティック回帰分析(変数増加法)を行った。検定の有意水準は両側5%とした。なお,本研究は聖路加看護大学(現聖路加国際大学)研究倫理委員会の承認を得て実施した。結 果 2010年8月から2012年10月に出産した610名(産科病院310名,助産所300名)の妊産婦を分析の対象とした。平均年齢31.46歳で,初産婦30%,経産婦70%であった。前期破水は全体の20%に発生していた。 前期破水発生と関連のあった8変数(初経産,BMI,出産回数,出生体重,性感染症,早産期の内診,正期産の内診,調査場所)における欠損値を除去した,474名分のデータで2項ロジスティック回帰分析を行った結果,前期破水発生と関連する因子として統計学的な有意差が認められた変数は,「初産婦(オッズ比=2.145,95%信頼区間:1.308-3.519, p=.003)」であり,「正期産の内診実施(オッズ比=1.837,95%信頼区間:0.998-3.383, p=.050)」は有意水準には満たなかったが比較的強い関連がみられた。初経産婦別に分析すると,経産婦では「性感染症(オッズ比=3.129,95%信頼区間:1.378-7.015, p=.006)」であった。結 論 正期産における前期破水発生の要因として「初産婦」,有意水準は満たさなかったが「正期産の内診実施」,そして経産婦においては「性感染症」が明らかとなった。前期破水の予防・対策に向け,妊婦(特に初産婦)への指導や,性教育など非妊時からの性感染症対策の必要性が改めて示された。正期産の内診については,今後その実態を明らかにしたうえで,その適応やあり方について検討していく必要がある。
著者
盛 虹明 増田 卓 北原 孝雄 相馬 一亥 大和田 隆
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-22, 1993-02-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
28
被引用文献数
2

肺水腫を伴うクモ膜下出血患者の肺水腫液と血清の膠質浸透圧を測定し,神経原性肺水腫の成因としての肺血管透過性亢進の関与を検討した。発症24時間以内のクモ膜下出血のうち,呼吸管理を必要とした肺水腫8例を対象とし,肺水腫を有しない33症例を非肺水腫群として比較した。肺水腫群はWFNS分類でgrade Vが75%, Fisher分類では全例group 3と4であった。来院時に血圧,脈拍,意識状態,胸部レントゲン写真,動脈血液ガス分析,血漿カテコールアミン濃度を測定した。さらに肺水腫例では,肺水腫液と血清の膠質浸透圧を測定した。来院時肺水腫群では非肺水腫群に比べ収縮期血圧の低下と心拍数の増加を認めた。肺水腫群の心胸郭比は平均48±4%と心拡大は認められなかった。動脈血液ガス所見では,PaO2が非肺水腫群78±16mmHgであるのに対し肺水腫群47±12mmHgと,肺水腫群で著しい低酸素血症を呈していた。血漿ノルアドレナリン,アドレナリン濃度は,肺水腫群でそれぞれ1,800±1,300pg/ml, 1,400±630pg/ml,非肺水腫群740±690pg/ml, 340±400pg/mlであり,非肺水腫群に比べ肺水腫群で有意に高値を示した。肺水腫液の膠質浸透圧は12.4から25.0,平均16.7±4.1mmHgと肺水腫群の全例で高値を示し,血清に対する肺水腫液の膠質浸透圧比は平均0.94と血管透過性亢進を示唆する結果であった。以上により,クモ膜下出血に伴う肺水腫の発生機序のひとつとして肺血管の透過性亢進が示された。
著者
岡村 好美 田中 翔子 湯地 敏史 木之下 広幸
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

【目的】日本における香りの利用は仏教儀式において始まり、以来日常生活のいろいろな状況で利用されてきた。衣生活での利用も多く、&ldquo;空薫物&rdquo;として香りを着衣に焚込めることや匂い袋を身につける他に、鬢付け油&rdquo;や&ldquo;化粧料&rdquo;として香りをまとう行動に展開されてきた。近年は、手軽な香り剤として柔軟剤が注目を集めている。柔軟剤の本来の目的は、洗濯後の衣服を柔らかく保つことや帯電防止であるが、香りに注目されるようになって香りの残効性や拡散性を強調した製品が多く提供されるようになってきた。柔軟剤の香りを対象とした研究も増えてきたが、使用状況から香りの働きを解析した報告は少ない。 本研究は、柔軟剤の香りの影響について使用状況から解析した。 <br>【方法】先ず大学生を対象として、香りへの関心度を5段階評価で実施して香りの使用意識を明らかにし、次いで5種類の市販柔軟剤を用いて、嗜好及び4段階のイメージ評価を実施した。また、使用状況調査および、柔軟処理試料の香りによる感情状態を調査した。 <br>【結果】学生は適度な強さの香りがある環境は生活に良いと考えており、柔軟剤としては「すがすがしさ」、「気品」が感じられる香りを好んだ。柔軟剤の使用状況は香りの嗜好状況および気分・感情状態と対応した。
著者
有間 英志 三輪 忍 中田 尚 中村 宏
雑誌
研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.2015-ARC-214, no.7, pp.1-6, 2015-01-22

近年,不揮発性メモリや 3 次元積層技術等デバイス技術の進歩によって,これまで以上に大容量のメモリをオンチップに実装することが可能となりつつある.また,この様な大容量メモリをラスト・レベル・キャッシュ (LLC) として用いる利用法が提案され,大幅な性能向上が可能であることが示されてきた.しかし,これまでの大容量 LLC に関する先行研究では,TLB ミスペナルティの影響については,十分な考慮がなされてこなかった.LLC の大容量化に伴い,LLC 上に格納されたデータの内,当該ページアドレスが TLB 上に存在しないものの割合は増大する.その様なデータがアクセスされると TLB ミスが発生し,キャッシュもしくはメインメモリ上に存在する当該ページテーブルエントリへのアクセスが発生する.この TLB ミスペナルティの影響を削減することは,今後 LLC の大容量化がさらに進むにつれて極めて重要となる.そこで本研究では,大容量 LLC 上において,ページテーブルエントリを保持するラインの存在割合を最適化し,ページテーブルへのアクセスの殆どを LLC 上でヒットさせることによって,TLB ミスペナルティの削減を目指す.本稿では,これを行うためのキャッシュリプレイスメントアルゴリズムを検討し評価を行った.
著者
若松 大祐
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

現代台湾(1945-現在)において、中華救助総会(救総)はとりわけ泰緬地区の同胞を救援するに際し、いかにして「我々」(国民国家的な主体)の歴史を叙述してきたのか。本研究の目的はこの問いを解明し、現代台湾という時空をよりよく理解することに在る。三年目の今年度は、現代台湾史において出現した官製歴史叙述や泰緬孤軍像を背景として踏まえた上で、特に救総が展開する歴史叙述について考察を試み、次の2つの知見を得た。すなわち、第1に、現代台湾において泰緬孤軍というふうに名づけられた泰緬地区在住の人々を、中華民国政府の主導する人権概念に基づき、救助対象とみなしていたこと。第2に、世代交代により、孤軍後商(孤軍の末窩)と呼ばれる人びとが出現し、救総の他にも中華民国と孤軍を架橋する媒体が出現したこと、の2点である。孤軍後裔は、救総とのつながりを相対的に希薄化しつつも、台湾との多様なつながりを持ち、タイや台湾という土地に根付こうとしており、タイにおいては朝野挙げての観光立国化の機運の中で、ゴールデン・トライアングルに関するテーマパークを立ち上げたり、台湾においては朝野挙げての多元化の機運の中で、雲南文化公園を設置している。特に第2点について、更なる考察を踏まえ、投稿を前提にした論文を執筆中である。受入機関の京都大学で東南アジア地域研究に関する研究会や講義へ参加し、またタイへ1回、台湾へ1回短期出張して、今年度の研究を遂行ができた。
著者
大高 明史 神山 智行 長尾 文孝 工藤 貴史 小笠原 嵩輝 井上 栄壮
出版者
日本陸水學會
雑誌
陸水學雜誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.113-127, 2010-08-25
参考文献数
49
被引用文献数
1 4

湧水で涵養される湖列である津軽十二湖湖沼群・越口の池湖群(北緯40°)で,湖水循環のパターンと底生動物の深度分布を調べた。秋から春までの連続観測により,越口の池湖群には,通年成層しない湖沼(青池,沸壺の池),冬季一回循環湖(落口の池),二回の完全循環が起こる湖沼(越口の池),春の循環が部分循環で終わる湖沼(王池)という,複数の循環型の湖沼が混在していることが示唆された。これには,水温が一定の多量の湧水の流入や,冬期間の結氷の厚さや持続期間,有機物の分解に伴う底層での塩類の蓄積が関連していると推測された.落口の池と王池の底生動物群集の構成や現存量は,溶存酸素濃度に応じて深度とともに明瞭に変化した。酸素が欠乏する深底部上部にまで見られる種類は,イトミミズとユリミミズの2種の貧毛類とユスリカ属の一種など4分類群のユスリカ類で,他の山間の富栄養湖と共通していた。源頭に位置する青池と沸壺の池のふたつを除く7湖沼は,循環型が異なるにもかかわらず,いずれも成層期には深水層で溶存酸素が欠乏し,深底部下部に底生動物は見られなかった。自生的,他生的な有機物の負荷が高いため,成層期に湖底で速やかな酸素消費が起こるためと推測される。
著者
岩橋 正明 矢本 希夫 生駒 誠 仲野 良介
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.145-148, 1996

常染色体優1生遺伝QT延長症候群の1つであるRomano-Ward症候群は,Torsadedepointesや心室細動等の心室1生不整脈により失神発作や突然死をきたす.このため本疾患合併妊婦は,妊娠期間を通じて厳重な管理が必要である.今回,本症候群合併妊婦の人工妊娠中絶を経験した.症例は17歳で,7歳時にRomano-Ward症候群と診断され小児科にて管理されていた.妊娠16週で小児科より妊娠継続困難のため人工妊娠中絶目的にて紹介された.初診時の心電図ではQTc=0.58secと著明に延長していた.抗不整脈剤の持続点滴をしながら,ラミナリア桿にて子宮頸管を開大し,プロスタグランジン膣座薬により妊娠中絶に成功した.現在も抗不整脈剤の経口投与にて管理中である.
著者
斉藤 博之
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.327-333, 1998-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

従来から清酒製造では「酒造好適米」という言葉がよく使われるが, 分析値等の具体的数値で定義されたものではなかった。今回は「最新の醸造科学」としての観点から酒米分析値による好適米の判別, 酒造適性の評価方法について紹介していただいた。より効率的な好適米育種や酒造米の選択に資するところが大であると思われる。
著者
林 友直 横山 幸嗣 井上 浩三郎 橋本 正之 河端 征彦 大西 晃 大島 勉 加藤 輝雄 瀬尾 基治 日高 正規
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: M-3SII型ロケット(1号機から3号機まで)(第1巻) (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.29, pp.141-171, 1991-06

M-3SII型ロケットでは, M-3S型と異なり, 新たに装備されたサブブースタSB-735の性能計測等のために, サブブースタにテレメータ送信機を搭載した。また, サブブースタの分離状況を画像伝送するため第2段計器部に画像伝送用テレメータ送信機を搭載し, さらに3号機では新たに開発された第3段モータの性能計測のために, 第3段計器部を設けてテレメータ送信機を搭載する等の大幅なシステム変更がなされている。搭載テレメータ送信機で新規に開発されたのは, 画像伝送用テレメータ送信機で, M-3SII型ロケットの試験機であるST-735ロケットで予備試験を行い, 地上追尾系を含めて総合的に性能の確認を行ったのち, M-3SII型1号機から本格的に搭載された。地上系では, 第2段モータの燃焼ガスが通信回線に大きな障害をもたらす等の問題が生じ, 2号機から高利得の18mパラボラアンテナを使用し, 従来の高利得16素子アンテナに対する冗長系を構成した。また, 第3段目の機体振動計測データ等を伝送していた900MHz帯テレメータは3号機から送信周波数がS帯へ変更されたのに伴い, 地上受信アンテナとしてはこれまで使用していた3mφパラボラアンテナをやめ衛星追跡用10mφパラボラアンテナを使用する事となった。データ処理系では, 計算機によるデータ処理が本格化し, 姿勢制御系, 計測系, テレメータ系のデータ処理のほか, 従来のACOSやRS系へのデータ伝送に加えM管制室へもデータ伝送が出来るようになった。コマンド系では, 1&acd;2号機は従来と同様であるが, 3号機から第1段の制御項目等を増やす必要からトーン周波数を増し, コマンド項目を3項目から6項目にし, さらに操作上の安全性を向上させた。集中電源は, 充電効率や管理の点等から見直しをはかり, 従来M-3S型で用いられていた酸化銀亜鉛蓄電池に替わりニッケルカドミウム蓄電池が使用されるようになった。資料番号: SA0167008000
著者
我妻 堯
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.169-172, 1994-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-9, 2005 (Released:2006-01-26)
参考文献数
9
被引用文献数
4

Understanding the spinal neural function is important in physical therapy for patients with neurological disease, especially the control of spasticity. We introduce our research and that of others about the spinal neural function for motor control using evoked EMG. The excitability of the spinal neural function, especially that of the spinal reflex is influenced by central and peripheral nerve function due to muscle contraction and muscle stretching at different parts. In this report, we introduce researches into the spinal reflex rearding: 1) Presynaptic inhibition in healthy and neurological diseases; 2) Excitability of the spinal neural function of an affected arm with muscle contraction of the leg in patients with cerebrovascular diseases (CVD); 3) Excitability of the spinal neural function of an affected arm at the distal part with muscle stretching of the affected arm at proximal parts in patients with CVD; and 4) Excitability of the spinal neural function of an affected arm with direct muscle stretching in patients with CVD. From these reports, it is suggested that the excitability of the spinal neural function is changed by several factors: muscle contraction, muscle stretching and others of the affected muscle and different parts.
著者
藤田 利治 藤井 陽介 渡辺 好宏 小坂 仁 和田 敬仁 森 雅亮 横田 俊平
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.73-95, 2010 (Released:2011-03-22)
参考文献数
14
被引用文献数
15 17

Objective: The mechanism underlying the development of neuropsychiatric symptoms such as unconsciousness, abnormal behavior, delirium, hallucinations, and convulsions in influenza has not been thoroughly investigated. The relationship between drug administration and neuropsychiatric symptoms during influenza is also poorly understood. This study is the first pharmacoepidemiologic study focused on investigating the relationship between drug administration and neuropsychiatric symptoms.Design: Cohort studyMethods: Study subjects were patients under 18 years old who had influenza during the 2006/07 season. We prepared two kinds of questionnaires for doctor and for patient's family, and carried out the survey between January and March, 2007. Using data from 9,389 patients, we analyzed the relationship between neuropsychiatric symptoms, such as delirium, unconsciousness and convulsion, and drug administration of acetaminophen and oseltamivir.Results: Analysis of the relationship between delirium and drug administration provided hazard ratios of 1.55(p=0.061)for acetaminophen and 1.51(p=0.084)for oseltamivir. These hazard ratios, which were adjusted for risk factors by multivariate analysis of the proportional hazard model, showed an increasing tendency of delirium after administration of each drug. In patients who received oseltamivir, a high incidence of delirium was observed between 6 and 12 hours after onset of fever. Furthermore, delirium was found to develop in a shorter time following oseltamivir use than it did after acetaminophen use. There was no relationship between unconsciousness and acetaminophen administration, as demonstrated by a hazard ratio of 1.06(p=0.839). The incidence of unconsciousness increased significantly with oseltamivir use with a hazard ratio of 1.79(p=0.0389), and unconsciousness was found to occur in a short time after oseltamivir use.Conclusion: The results obtained from this study suggest that there are increased risks of delirium and unconsciousness with drug administration. Further pharmacoepidemiologic studies for hypothesis testing are required to study the relationship between abnormal behavior and drug administration.