著者
高崎 智彦
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.199-206, 2007-12-22
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

ウエストナイルウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスで,蚊によって媒介される.1937年にアフリカ・ウガンダで発熱患者から発見され,1999年には米国で初めて患者が報告された.ヒトにおける病態は,非致死性の急性熱性疾患であるウエストナイル熱と脳炎,髄膜炎,脊髄炎などの中枢神経系の症状を呈するウエストナイル脳炎がある.北米での主たる媒介蚊は,アカイエカ(<I>Culex. pallens</I>),ネッタイイエカ(<I>Cx. quiquefasciatus</I>),<I>Cx. restuans, Cx salnarius, Cx. talsalis</I>などイエカ属のカであるが,媒介可能なカは60種以上である.米国での患者数は,1999年以降2007年までに27000人以上であり,カナダでの患者数も2002年以降,4600人以上の患者が報告されている.日本においても2005年9月に米国渡航者によるWN熱の輸入症例が初めて確認された.北米のウエストナイルウイルスは,依然として強い病原性を示しているが,2003年のテキサスとメキシコでの分離株の中には,弱毒株が存在することが報告されている.ウエストナイルワクチンの開発状況はヒト用のワクチンは開発中でまだ実用段階にはない.ウマ用のワクチンは,不活化ワクチンが2001年から使用され,DNAワクチン,キメラ生ワクチン,レコンビナントワクチンも認可されている.
著者
森田 公一
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.2328-2333, 2004-11-10
参考文献数
5

熱帯性の蚊媒介性ウイルスであるウエストナイルウイルス(西ナイルウイルス)が1999年,米国に侵入し現在,北米・中米へと拡大を続けて多くの患者が発生している.本年度はカリフォルニア州でもすでに多くの患者発生が見られ,日本へ侵入する可能性があり警戒が必要である.わが国へ侵入した場合には日本脳炎との鑑別が重要である.
著者
村松 博士 住吉 葉子 栗林 景晶 沼田 隆明 山内 尚文 井原 康二 西里 卓次 高柳 典弘 長岡 康弘 佐藤 勉 松永 卓也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.12, pp.2470-2472, 2001-12-10
参考文献数
3
被引用文献数
1

症例は, 52歳,女性.主訴は意識障害,発熱.入院時,著明な高血糖あり,腎盂腎炎を疑い感染症治療を開始したが, DICを併発し重症化した.感染源の検索を行ったところ,腹部CTで左腎臓が腫大し腎実質内に低吸収域を認め,気腫性腎盂腎炎と診断した.第2, 3病日の血液培養でE. coliが検出され,敗血症を合併していた.糖尿病を基礎にきわめて重篤化したが,保存的治療にて治癒した気腫性腎盂腎炎の1症例を報告した.
著者
木俣 元一
巻号頁・発行日
2003-03

科学研究費補助金 研究種目:基盤研究(C)(2) 課題番号:13610076 研究代表者:木俣元一 研究期間:2001-2002年度
著者
木俣 昇 中村 彰彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木情報利用技術論文集 (ISSN:13491040)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.245-256, 2003

公共事業に対する費用対効果の重視は, 当然の要請であるが, 社会基盤の持つ長期性の視点から, その風土イメージの形成性評価もまた重要である. 本論文は, この視点より, その評価支援のための動的彩色型ペトリネットシミュレータの開発と, 社会基盤を風土の中に置き, その風土イメージの四季推移の表現化に関する基礎研究を行ったものである. まず, 著者等の既開発ペトリネットシミュレータの表現力に着目し, その動的・彩色的特性を提示し, 表現系を担うプレースの形状面と彩色面の強化, さらに, 非表示機能によるネットの視覚性の保持に加え, 背景画像上でのネット構築性の付与等を提案し, 風土イメージの表現システムへの改良を行う. 次に, わが国の風土を代表する花木の桜単体を事例に, その四季推移の表現ネットの基本形を開発し, さらに, 橋梁を風土の山並の中に置く水平目線からの四季推移イメージネットを背景画像上で構築し, シミュレーション結果の提示と実用化に向けた課題整理を行う.
著者
池添 冬芽 中村 雅俊 佐久間 香 塚越 累 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】筋力トレーニングの方法として,運動速度をゆっくりとするスロートレーニングと運動速度を素早くするパワートレーニングがあるが,どちらの筋力トレーニング法が高齢者の運動機能や筋特性,歩行能力,活動量,精神心理機能の改善に効果的であるかを多面的に検討した報告はみられない。本研究の目的はスロートレーニングとパワートレーニングのどちらが高齢者の機能向上に有効であるかを明らかにすることである。【方法】対象は京都市介護予防事業に参加した地域在住高齢者59名のうち,介入前後の測定会に参加できた51名(男性5名,女性46名,年齢77.9±5.6歳)とし,スロートレーニングを実施するスロー群,パワートレーニングを実施するパワー群,トレーニングを実施しない対照群の3群に分類した。なお,測定に大きな影響を及ぼすほど重度の神経学的・筋骨格系障害や認知障害を有する者は対象から除外した。スロー群およびパワー群には週1回8週間の理学療法士監視型の筋力トレーニングを実施した。また,この監視型トレーニング以外に,家庭での自主トレーニングとして同様の運動プログラムを実施するよう指導した。運動強度は主観的運動強度で「ややきつい」程度とした。筋力トレーニングは6種目(立ち座り動作,立位で股関節屈曲・伸展・外転など)の下肢筋力トレーニングを実施した。スロートレーニングでは求心性・遠心性フェーズともに5秒かけて運動を行った。パワートレーニングでは求心性フェーズはできるだけ速く動かし,遠心性フェーズでは2秒かけて運動を行った。両トレーニングともに反復回数は各種目につき10回とした。運動機能として筋力(膝伸展筋力,握力),バランス(片脚立位保持時間,ファンクショナルリーチ,ラテラルリーチ),柔軟性(長座体前屈),敏捷性(立位ステッピング)を評価した。歩行特性として多機能三軸加速度計を用いて最大努力歩行時の速度,ケーデンス,ストライド長,立脚期時間の左右非対称性,歩行周期変動性を評価した。筋特性として超音波診断装置を用いて大腿四頭筋の筋厚および筋輝度を測定し,それぞれ筋量および筋の質(筋内の非収縮組織の割合)の指標とした。また,Life Space-Assessment(LSA)により生活空間を評価した。歩行量として3軸加速度センサーを用いて1週間分の記録データから1日あたりの平均歩数と歩行時間を求めた。精神心理機能として,Geriatric Depression Scale-15(GDS-15)により抑うつ状態,転倒に対する自己効力感スケール(Fall Efficacy Scale;FES)により転倒恐怖感の程度を評価した。統計学的検定として,各群における介入前後の比較には対応のあるt-検定,各測定項目の群間比較には多重比較検定を用いた。【倫理的配慮,説明と同意】すべての対象者に研究に関する十分な説明を行い,書面にて同意を得た。なお,本研究は本学医の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号E-1581)。【結果】3群の年齢,身長,体重に有意差はみられなかった。週1回の監視型トレーニング以外に自主トレーニングをスロー群では2.7±1.9日/週,パワー群では3.4±1.4日/週行っており,この実施率に2群で有意差はみられなかった。運動機能の変化について,膝伸展筋力は対照群では変化がみられなかったが,スロー群とパワー群では介入後に有意な増加がみられ,両群の筋力増加率に有意差はみられなかった。膝伸展筋力以外の運動機能はいずれの群も変化がみられなかった。また,スロー群,パワー群ともに筋厚の有意な増加および筋輝度の有意な減少がみられ,筋厚および筋輝度の変化率に両群で有意差はみられなかった。歩行特性はスロー群の立脚期左右非対称性と歩行周期変動性のみ有意に減少した。生活空間や歩行量,抑うつ状態や転倒恐怖感は3群いずれも変化がみられなかった。【考察】スロー群,パワー群ともに介入後に膝伸展筋力や筋厚,筋輝度の改善がみられ,両群の改善率に有意差はみられなかった。このことから,スロートレーニングとパワートレーニングは筋力や筋量,筋の質の改善に有効であり,その効果は同程度であることが示唆された。それに加えてスロー群においては歩行周期変動性や左右非対称性の改善がみられたことから,歩行特性の改善にはスロートレーニングが有効であることが示唆された。しかし,両トレーニングともに筋力以外の運動機能や生活空間,歩行量,精神心理機能に及ぼす効果は不十分であることが示された。【理学療法学研究としての意義】スロートレーニングとパワートレーニングはともに筋力や筋量,筋の質の改善に有効であり,加えてスロートレーニングは歩行特性の改善にも有効であることが示唆された。
著者
藤根 麻羽 小倉 加奈代 バハドゥール ベッド 高田 豊雄
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.471-472, 2018-03-13

短縮URLサービスは対象のURLと対になる簡素なURLを生成するサービスであり,goo.glやbit.lyが代表例である.短縮URLサービスは冗長なURLを簡潔にすることから,文字数制限のあるソーシャルネットワークサービス(SNS)の投稿機能でしばしば利用される.短縮URLは,利便性に長けている反面,行先サイトのURLが隠蔽されるためフィッシングサイトやマルウェア配布サイトへの誘導が問題となっている.ユーザは,短縮URLから行先Webサイトが安全であるか否かを自身で判断する必要がある.本稿では,短縮URLを展開した行先URLを複数の安全性評価サービスによって検査し,その結果を統計的手法により統合,提示する手法を提案し,その有用性を評価する.
著者
板倉 亨
出版者
サイコアナリティカル英文学会
雑誌
サイコアナリティカル英文学論叢 (ISSN:03866009)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.28, pp.1-18,84, 2008 (Released:2011-05-24)
参考文献数
12

The purpose of this study is to examine the ambiguity of Hamlet from the psychoanalytic point of view.In the first place, we focus our attention on the speech of Ghost and Hamlet' s soliloquy, and examine their words with many different meanings. Because of the indefinite existence of Ghost, Hamlet cannot believe the speech of it, and loses confidence in his own role as an avenger. Similarly, because of the inconsistency between Hamlet's sayings and doings, he comes to feel a credibility gap in his own statement, and moreover, he comes to doubt the consistency in the language itself and the unity between a show and its' substance, “signi fier” and “signified”. The ambiguity of their words leads to the uncer tainty of the language itself in this play.In the second place, we consider expressions with “mirror” in this play. They are used directly in some lines and implied by symmetrical relationships between characters in this play. Each of the characters in Hamlet is connected and is contrasted with another character in it as a mirror image of himself or herself But, in the complex symmetry, Horatio is the unique character, who only stands the outside of the complicated relationships and serves as the only observer of this story. In the last scene of this play, he also functions as a narrator of all of the occurrences in it. Such distinctive position of him takes the essential part for Hamlet, which assures us of the objectivity of this story and connects us to Horatio in the role of the interpreter. In other words, when each of us, as an interpreter of Hamlet, is contrasted with Horatio as the interpreter of this story, we ourselves are thrown into the intricate symmetrical world of Hamlet in which various mirror images are reflected.Then, to discuss further on their relationships between characters in this play and between We and the text of Hamlet, we quote Jacques Lacan's theory of “The Mirror Stage” and his “schema L”, and survey them. Here, adopting his theory and the figure, we examine more closely the text of Hamlet and the symmetrical relationships between its characters, and analyze the process of our interpretations of this play from the psychoanalytic point of view.In conclusion, we reveal how “the Subject” of Hamlet or ourselves is mistaken in the process, and then I would like to point out the important role which psychoanalytical criticism can play in it.

1 0 0 0 OA 常陸帯

著者
藤田東湖 (彪) 著
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
vol.巻之3, 1868
著者
橋本 大世 鶴岡 慶雅
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.62-69, 2020-11-06

深層強化学習の多くの設定ではエージェントが行動を取る際, 一度選んだ行動を何度か繰り返し, 次の行動決定時まで状態は観測しないことが一般的である. これはaction repeat またはframe skip と呼ばれる. 行動を繰り返すこの技法にはいくつかの利点があるが, 行動を繰り返す間のデータ(中間フレーム)は実質的に捨てられてしまう. 学習データ量はaction repeat の長さに反比例するため, これは学習のサンプル効率に悪影響となりうる. 本研究では, 擬似的な行動という概念を導入することでこの問題を軽減する, シンプルでありながら有効な手法を提案する. 提案手法の要点は, 擬似的な行動を考えることで, actionrepeat 間の遷移データを学習に利用できるようにすることである. 連続制御タスクにおける擬似的な行動は, 行動を決定する時刻をまたぐ行動系列の平均として得ることができる. 一方, 離散制御タスクにおける擬似的な行動は, 行動の埋め込み表現から計算することができる. この手法は, Q 関数の学習を伴う任意のモデルフリー強化学習手法と組み合わせることができ, 汎用的である. 実験では, OpenAI Gym の連続制御タスク, 離散制御タスクの両方で提案手法の有効性を検証した.
著者
小川 欽也
出版者
日本実験力学会
雑誌
実験力学 (ISSN:13464930)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.89-96, 2002 (Released:2010-03-19)
参考文献数
54
被引用文献数
5

Split-Hopkinson Pressure Bar (SHPB) method is the most versatile technique to evaluate the stress-strain relations of materials at high rate of strain. Over the decades, the method has been improved and developed, and now, it has been widely applied to investigate the various kinds of mechanical properties of materials under impact loading. Recent research activities and techniques related to this famous method are reviewed in the present paper.
著者
大須賀 穣 秋山 紗弥子 村田 達教 木戸口 結子
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.295-311, 2019
被引用文献数
3

<p>【目的・背景】</p><p>予定外妊娠とは妊娠の希望の有無にかかわらず予期せず妊娠することであり,その後の社会生活に影響を及ぼす可能性がある。本研究では予定外妊娠数および予定外妊娠によって生じる医療経済的影響について推計を行った。</p><p>【方法】</p><p>先行研究において用いられた分析モデルを利用し,予定外妊娠数および予定外妊娠によって生じる医療経済的負担について推計を行った。また,経口避妊薬および子宮内避妊用具が避妊法として選択される機会が増加した場合の影響についても各避妊法の避妊失敗率から算出した予定外妊娠数の変化量から,増加前後を比較することで評価した。</p><p>【結果】</p><p>年間推定予定外妊娠数は約61万件となり,年間予定外妊娠費用および年間避妊費用はそれぞれ約2,520億円,373億円となった。経口避妊薬および子宮内避妊用具が選択される機会が増加した場合における予定外妊娠への影響を推計した結果,年間避妊費用は増加したが,年間予定外妊娠数が減少したことによる予定外妊娠費用が大きく削減されたため,予定外妊娠関連費用の総額は増加前より削減された。</p><p>【考察】</p><p>避妊失敗率の低い避妊法の利用が増加することにより経済的な効果が期待されるが,若年層にとっては継続的に服用する必要のある経口避妊薬の費用は大きな負担となるため,避妊薬等の利用について何らかの補助が実施されれば,予定外妊娠による経済的および社会的負担は大きく軽減されると考えられる。</p>
著者
福田 博同
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.24-37, 2004
参考文献数
10

In this paper I attempt to clarify the following: first, the proper data collection range for a fine-arts related web site, and second, a good method for constructing a web site which efficiently displays the information which should be exhibited. Many web sites move or disappear. How should a fine-art related web site, which must treat such changing information, be constructed? I propose the following method is a good one. That is, it is a method for bringing together the data transferred, using the database function of Excel in one place, and maintaining only the data. Next, it is changing the CSV data into an HTML file using VBA. I explain the reason for making it an HTML file, using not XML but VBA. Finally, an example of a JADS site describes the procedure of data conversion.
著者
モロジャコフ ワシ―リー
出版者
拓殖大学国際日本文化研究所
雑誌
拓殖大学国際日本文化研究 = Journal of the Research Institute for Global Japanese Studies (ISSN:24336904)
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-66, 2020-03-25

本論文は、支那事変を中心にして、日本の大陸政策・植民地政策に対するフランス知識人の見解を調査・分析するものである。列強の政府と政治エリートたちが、満州・中国での日本の行為を「侵略」と非難した際、欧米の世論とメディアはほとんど全て反日になった。フランス政府と政界も日本の政策を非難したが、知識人の見解は分かれた。その一部は日本の行動を弁護し、支持した。本論文では、この二つの派閥それぞれについて、フランス人政治評論家・作家の著作を検討する。