著者
細野 健太 田島 進
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.97-99, 2016-03-31 (Released:2018-02-16)

思春期特発性側弯症 (AIS) は進行性の疾患であるため、経過に関する長期的なデータは重要である。側弯体操を 5 年間継続した症例について治療経過を報告する。症例は特発性側弯症と診断された 8 歳の女子である。Th9-L4 が左凸のシングルカーブを呈しており、Cobb 角は 6°であっ た。ホームエクササイズを主体とし、側弯体操を毎日約 20 分間実施するよう指導した。ホームエクササイズの実施頻度は週 5 回程度実施し、5 年間で身長が 19.3cm 増加し、Cobb 角は 11°(+5°) に増加した。体幹筋力は向上し、体幹関節可動域も拡大した。AIS の治療効果の判定は Cobb 角の変化によって捉えられており、Cobb 角 6°以上の増加が「悪化」と定義されている。今回、側弯体操を長期間継続して実施することで、AIS 患者の Cobb 角の増加を抑える可能性を示すことができた。
著者
山田 高敬
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1_109-1_133, 2017 (Released:2020-07-01)
参考文献数
55

本稿は, 経済のグローバル化がグローバル・ガバナンスにおける権威のプライベート化をもたらし, それによりガバナンス目標の達成に非国家主体の協力を必要とする 「多中心的ソフト・ガバナンス (poly-centric soft governance)」 の状況が生まれていることをまずは指摘する。その上で, そのようなガバナンス状況に伴う目標喪失リスクを極小化するために政府間組織がオーケストレーション (orchestration) を実施する可能性を指摘する。さらに, そのようなガバナンス状況では経済的誘因が使われることが予想されるものの, どのようなガバナンス・メカニズムが有効なのかについては不確定性が高いため, 政府間組織によるオーケストレーションは自ずと異なる政策実験の管理・調整をめざすこととなる。最後に, 本稿は, このようなオーケストレーションが成功する条件として当該問題領域における政府間組織の 「中心性 (focality)」 に着目し, ケーススタディーとして国連企業人権指導原則 (UNGPs) の実施過程における国連企業人権作業部会 (UNWG-BHR) によるオーケストレーションを分析する。
著者
加藤 司 谷口 弘一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.158-167, 2009 (Released:2012-02-22)
参考文献数
44
被引用文献数
6 4

許しとは“自身の感情を害することを知覚し, それに向けられた否定的な感情, 認知, 動機づけあるいは行動が, 中性あるいは肯定的に変化する個体内のプロセス”である。本研究では, 許しの個人差を測定する許し尺度を作成した。研究1では, 先行研究などから, 許し項目を作成し, 691名の大学生によるデータを用い因子分析を行った結果, 恨みと寛容の2因子が抽出された。192名の大学生のデータを用いた, 4週間の間隔をあけた再検査法による信頼性係数は, 許しの否定では0.72, 許しの肯定では0.82であった。研究2では, 331名の大学生を対象に, 攻撃性, 怒り, 共感性, ビックファイブとの関連性を検討し, 許し尺度の構成概念妥当性を検証した。さらに, 研究3では, 特定状況における許し単一項目と許し尺度との関連性が検証され, 結果は仮説と一致していた。これらの結果から, 許し尺度の妥当性が保証された。
著者
末武 透
出版者
日本システム・ダイナミクス学会
雑誌
システム・ダイナミクス (ISSN:24342025)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-16, 2019 (Released:2019-04-04)
参考文献数
8

SDを使った社会モデルは、基本的には社会調査で得た実データとシミュレーション結果を比較し、モデルの妥当性を検証する。しかしながら、本稿のコンフリクトを扱ったモデルのように社会調査を実施することが事実上不可能という状況も存在する。そのような場合であっても、コンフリクトを取り扱った記述、例えば文学作品を使うことで取り扱う対象の性格や変化を数量的に検討することができる。ここではその事例として、ODAプロジェクトクトで実施されるMitigation Programへの適用を念頭に、どのように人間は怒りや憎しみといった負の感情を許しという正の感情に転嫁させることができるかを理解するためのモデル化を試みた。 コンフリクトの解消では、人々の持つ負の感情を正に変化させる必要がある。それは単純に、負の感情が閾値を超えた際に正に変換するというモデルの表現では不十分である。むしろ、負の感情だけの世界から自己組織化されるように徐々に正の心情が生まれてくるしくみとして理解すべきであろう。 本稿では、カオスから秩序や安定が生まれる状況を述べているGladwellのTipping Pointのフレームワークを使い、負の感情が正の感情に変化していくしくみを説明する標準モデルを作成した。このモデルをベースに、憎しみが許しに変化することを取扱った文学作品であるシェークスピアのテンペストをシナリオとして使うSDモデルを構築し、その動きを検証することによりモデルのMitigation Programへ適用可能性を考察した。

1 0 0 0 OA 鉄道省職員録

出版者
鉄道大臣官房人事課
巻号頁・発行日
vol.昭和16年8月15日現在, 1941
著者
山崎 修
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.89-93, 2009-07-31 (Released:2017-09-30)
参考文献数
17
著者
三浦 洋四郎 長井 辰男
出版者
帝京大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

わが国では覚醒剤取締法によりその使用や所持が禁止されているが、現在でも不法な密輸があとを絶たない。現在の覚醒剤の事犯は、粉末または粒状の形で密輸されているのがほとんどである。われわれは、覚醒剤の密輸・密売ルートの科学的解明を企図した。1.覚醒剤の光学異性体に着目し、獨協医科大学法医学教室の長井敏明と共同でHPLC分析条件を検討した。acethyl化した被検試料を内部標準物質N-n-Propylanilineとともにセルロース誘導体カラム(40℃に加温)にチャージした。溶媒系はHexane/Isopropanol(19.1)を用いた。これによって、methamphetamineのd体とl体を再現性よく分離出来た。2.韓国ルートの密輸覚醒剤はmethamphetamineの塩酸塩で、融点170〜175℃,光学純度は100%のd-methamphetamineであるが、黄色結晶が混入していた点で薬物移動の追跡指標として利用出来る。われわれが厚生大臣の許可を得,合成し分割したmethamphetamineはl体を除く目的で精製をくり返すごとにd/l比は未精製のもの1.08から3回精製したものは、 d-methamphetamineの標準品に近ずいた。その融点は133℃であった。このd/l比および夾雑物は当該覚醒剤の薬物指紋として犯罪捜査時に個人識別のため使用する指紋と同様の利用価値がある。この薬物指紋を集績することによって、覚醒剤の密輸・密売ルートの科学的解明に利用することが出来る。3.methamphetamineの生体内動態を実験動物を用いて研究した。その結果、d体がl体より強い薬理作用を示し、骨・歯牙・毛髪などの硬組織から当該薬物を検出出来ること及びWaterhouse-Friderichsen Syndromeを誘発することが可能であることを初めて明らかにした。methamphetamine中毒患者および中毒動物の尿は、薬物依存の有無を確認出来るが、当該研究のような密輸・密売ルートの解析には不適である。
著者
池見 猛
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.301-314, 1935
被引用文献数
1
著者
三木 哲郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.160-167, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
7

近年の急速なヒトゲノム解析の進展と各国およびバイオ関連ベンチャー企業の意欲的な活動によって世界中のゲノム研究分野は技術的に飛躍的な進展を見せている.現在の標的は,複数の環境要因と複数の遺伝要因が複雑に関連しながら発症する生活習慣病の遺伝子群の単離同定である.肥満,糖尿病,高血圧,脂質代謝異常等が研究対象となってきている.将来,到来する自分自身の遺伝情報やオミックス情報を知り,それを管理する時代に備える必要がある.そして,制度の整った倫理指針の元でのオーダーメード医療の実現,健康寿命の延長,QOL(quality of life)の向上,医療費の大幅削減などに生かされることが期待されているが,そのためにも多くの研究機関および医療機関の協力,提携がより一層の成果につながると考える.
著者
山田 貴久 福並 正剛 大森 正晴 熊谷 和明 辻村 英一郎 阿部 泰士 西川 永洋 伯耆 徳武
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.26, no.Supplement6, pp.104-107, 1994-12-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
7

洞不全症候群(SSS)における心房筋の電気生理学的異常を体表面加算平均心電図(SAE)により検出しうるか否かを検討した.対象はSSS群37例と正常洞結節機能を有し発作性心房細動(Paf)の既往のないControl群67例である.SAEのフィルターは40~300Hzとし,P波同期法にて200心拍加算平均し記録した.その空間マグニチュード波形においてフィルター化P波の初期部10,20,30msec間の平均電位(EP10,EP20,EP30),その終末部10,20,30msec間の平均電位(LP10,LP20,LP30)を計測した.EP10,EP20,EP30はともにSSS群でControl群に比し有意に低値を示した.LP10,LP20,LP30はPafを伴うSSS群では有意に低値を示したが,Pafを伴わないSSS群とControl群間には有意差を認めなかった.SSSにおけるSAEの特徴は心房波初期部分の電位が低値を示すことであり,この心房波初期電位によりSSSを検出しうることが示唆された.