著者
大久保 紀一朗 和田 裕一 窪 俊一 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.13-29, 2020 (Released:2020-09-17)
参考文献数
29

本研究ではマンガの読解指導について検討するための基礎的知見を得るために,小学校高学年を対象に,(1)マンガを含むメディアへの接触頻度,(2)マンガの読み方,(3)マンガへの意識・態度に関する調査を行った。その結果,マンガの読み頻度は1990年に行われた調査と比較して低いことが示された。一方で,児童を取り巻くメディア環境が大きく変化した今日においても,小学校高学年児童の多くはマンガに対して肯定的な意識をもっていることが示された。マンガに対する意識を測る尺度得点について因子分析を行った結果,マンガの有用感,マンガの分かりやすさ,マンガの悪影響,マンガへの低評価という4因子構造が得られた。それらの下位尺度得点と,読み方の関係を検討するために相関分析を行った。その結果,マンガに対して肯定的な意識をもっている児童は,マンガを深く理解する読み方をしていることが示唆された。そこで,マンガの読み方を目的変数,マンガに対する意識を構成する4つの因子の下位尺度得点を説明変数として重回帰分析を行ったところ,マンガに対する有用感がマンガの読み方に影響を与えていることが示唆された。
著者
田中 真琴
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.10, pp.1279-1284, 2019-10-20 (Released:2019-11-06)
参考文献数
6
被引用文献数
1

味覚障害患者の訴える症状は, 味覚低下・脱失といった量的味覚異常から, 自発性異常味覚や異味症のような質的味覚異常まで多岐にわたる. その原因は多様で, 単一ではなく複合的な場合も多く, 治療で改善がみられないケースもある. また, 味覚定量検査 (電気味覚検査・濾紙ディスク検査) は, 残念ながら限られた施設でしか行われていないのが現状である. これらの理由から, 味覚障害診療は, 耳鼻咽喉科医でも馴染みの薄い分野であると思われる. 味覚障害は, 60歳以上の高齢者に多い, 生活の質 (QOL) を著しく損なう疾患である. その診療の需要は, 高齢化に伴い今後さらに増加することが予想され, 耳鼻咽喉科の専門性をアピールできる領域と考えている. 味覚障害診療での, 問診, 視診, 臨床検査, 機能検査, 診断, 治療, フォローアップの概略を述べる.
著者
荒俣 蓮 三上 拓哉 藤木 淳
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.60-63, 2019-09-13

ある条件下において、文章中に含まれる単語の最初と最後の文字さえ正しければ、その文章を読むことが可能になるというタイポグリセミア現象が知られている。このように人間は単語に含まれる文字が正確でなくてもヒントを手掛かりに元の単語をある程度連想可能である。本研究では、このような人間の文字に対する認知特性に着目したゲームロジックをデザインした。
著者
西山 孝樹 藤田 龍之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.9-19, 2014 (Released:2014-07-18)
参考文献数
71
被引用文献数
1

わが国では,10世紀をピークとして9世紀から11世紀に「土木事業の空白期」が存在していた.その背景には,平安貴族を中心に土の掘削を忌み嫌う「犯土」思想が影響していたとみられる.そこで本研究では,空白期の存在をより明確にするため,当該の時代に設置された官職に着目した.土木と関わる官職が設置されていなければ,社会基盤整備を実施できなかったと考えられるからである. わが国の律令制度が倣った中国の唐および空白期と同時期に成立していた宋には,土木と関係する官職が設置されていた.一方,わが国の中央政府には土木事業を行う官職は設けられておらず,地方では災害発生時など臨時に設置されていたに過ぎなかった.9世紀から11世紀には,社会基盤整備に通じる事業を専門に掌っていた官職は存在していなかったことを本研究で示した.
著者
須田沖夫
出版者
日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, 2012-04-20
著者
髙橋 摩理 大岡 貴史 内海 明美 向井 美惠
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.36-42, 2012-03-25 (Released:2015-03-15)
参考文献数
17
被引用文献数
3

自閉症スペクトラム(以下ASD)児の摂食状況の調査と摂食・嚥下機能の評価を行い,療育場面および家庭における食事の問題に対する効果的な医療的支援方法を検討することを目的に本研究を行った。地域療育センター摂食・嚥下外来を受診したASD 25 名を対象に,主訴,摂食・嚥下機能評価,指導内容と経過等の検討を行った。主訴は偏食,丸飲み,溜め込みが多く,年齢により差がみられた。低年齢では口腔機能の未熟さや食具操作の未熟さが食べ方の問題として表出し,高年齢ではASD のこだわりなどの特性が偏食として問題になったものと思われる。一方,主訴と摂食・嚥下機能の問題が一致しないケースもみられ,保護者が小児の摂食・嚥下機能を正しく理解していない様子も窺われた。また,食べ方が口腔機能に影響を与えている様子が窺われ,ASD の食事の問題に対応するにあたっては,摂食・嚥下機能評価を行い,それに基づき支援方法を検討する必要性が示唆された。指導が継続しているケースは発達レベルが低く,自閉症の特性が強い傾向があり,全体的な発達を促す対応が重要と思われた。
著者
吉田 豊 永田 義毅 広田 幸次郎 柴田 恵三 石瀬 淳 北 義人 金兼 弘和
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.375-380, 1997-10-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
8

多臓器不全を合併したインフルエンザA(H3N2)感染の一例を経験した。既往歴に心電図異常を指摘されていた16歳女性が,数日間の感冒様症状の後,呼吸困難となり入院した。呼吸不全に加え,横紋筋融解症,心不全,腎不全を認め,インフルエンザ感染による合併症と診断された。直ちに人工呼吸管理,血液浄化法,カテコラミン投与を開始した。持続的血液濾過法は,水分,電解質バランスの維持およびミオグロビンの除去に効果的であったと考えられる。インフルエンザ感染による致死的合併症は高齢者で稀にみられるが,若年者においても慢性心疾患のある症例では,これを十分考慮し,速やかに対処することが重要である。
著者
小川 英雄
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.19-32,iii, 1962-03-31 (Released:2010-03-12)

The social and economic development of the Nabataean Kingdom was one of the most remarkable facts in the Hellenistic Near East, whose influence, direct or indirect, would be found especially in the amazing diffusion of Oriental merchants and ideas in the Roman Empire, and, on the other hand, the process of sedentarization illustrates a pattern of the progress of the ancient society, which is also useful for sociological studies.In my former article which appeared in the “Shigaku” (Journal of the Mita Historical Society, 33), I studied the birth of the flourishing kingdom from a tribal community in which they originally led a nomadic life, and asserted that its development was mainly due to its accustomed caravan trade. And the present paper treats the economic aspect of the kingdom in relation to its commercial activities and systems, and confirms that agriculture and cattle breeding were just a secondary cause of its prosperity.
著者
佐竹 伸夫 山田 尚勇
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第37回, no.自然言語処理, pp.1051-1052, 1988-09-12

われわれは、幼児の母語習得に関して、Chomsky派の主張する普遍文法のような言語知識を生得的とはせず、問題解決能力を生得的とする立場で、モデルBUDを作り、それに基づき、シミュレーション・プログラムを製作中である。BUDは、どの言語でも、その言語のサンプルを入力として与えられれば、与えられた言語の構造を習得することを目指しているが、本稿で用いる例は、すべて英語である。また、BUDでは初期状態として、具体的な動作を表わす基本的な単語は知っているが成人文法でいう単語の範疇は全く知らない。初期状態についての詳しい議論は[2]を参照のこと。
著者
前田 敏樹 田中 明 小河 靖昌 武田 亮二 片岡 正人 向原 純雄
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.1234-1237, 2008-11-01

48歳女性。患者は悪心、嘔吐、食欲不振、体重減少、間欠的腹痛を主訴に、はじめ著者らの施設にある内科を受診、腹部単純X線にて腸閉塞を指摘され、精査加療目的で外科へ救急入院となった。立位単純X線では多発する鏡面像と小腸の著明な拡張が認められ、更に腹部造影CTでは小腸の著明な拡張、管腔内の液体貯留、左卵巣の嚢胞がみられた。一方、イレウスチューブ造影では小腸に多発する狭窄を認め、狭窄部ではチューブ先端が翻転し、先進しなかった。保存的治療では限界があったため、イレウス解除術を施行する方針とし、これを行なった結果、手術所見では腸管子宮内膜症による腸閉塞が確認され、狭窄の強い部分のみ切除し、凍結骨盤となっていた子宮内膜症に対しては手術操作を加えなかった。