著者
内田 照久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.63-72, 2012 (Released:2013-01-16)
参考文献数
47
被引用文献数
4 4

教育心理学領域の測定・評価に係わる研究について, 2010~2011年の動向を概括した。従前から続く傾向として, 心理尺度の作成に係わる研究が数多く進められた。しかし本年は, 心理学的な構成概念や測定尺度の過度の氾濫や過剰供給に対する危機感から, 尺度の妥当性の検証の必要性を訴えると共に, 具体的な検証方法を提案するセミナーや発表が多くなされたのが特徴的であった。また近年, 心理測定や教育評価, テスト理論の研究領域は, その発展に伴って細分化が進んでいる。試験やテストに関連した教育評価の研究は, 教育心理学会からテスト学会などに発表の場が移動しつつあるように見受けられた。そこではテスト理論や統計手法の開発, IT技術の活用などのテスト技術に関する研究が精力的に進められる一方, 社会で実際に運用され, 受験者の処遇を左右するテストや試験の場面で発生している具体的な問題に向き合い, その解決を目的とした研究も行なわれている。これらの研究は, 教育心理学の従来からの課題でもある研究と教育実践の社会的な繋がりを考える上で, 大切な方向性の1つを示すものと考えられる。
著者
中島 楽章
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.501-524, 2011-02-25 (Released:2017-07-18)

明清時代の貿易秩序を「朝貢貿易システム」として概括する見解に対し,近年では明初の朝貢体制にかわり,16世紀から「互市体制」が成長していったことが主張されている。本稿では14世紀末から16世紀末にいたる東アジア貿易秩序の変容と再編のプロセスを,6つの時期に分けて,海域・内陸アジアの双方について包括的に検討してみたい。14世紀末に成立した明朝の朝貢体制のもとでは,対外通商は明朝と周辺諸国との朝貢貿易に一元化され,民間貿易は禁止されていた。こうした朝貢体制は,15世紀初頭に最大限に達するが,15世紀中期からはしだいに動揺し,海域・内陸周縁地帯では,朝貢貿易の枠外に広州湾や粛州での「互市」が成長していく。16世紀中期までには,モンゴルや倭寇の略奪や密貿易の拡大により,朝貢貿易体制はほぼ破綻し,1570年前後には,明朝は華人海商の東南アジア渡航と,モンゴルとの互市を公認する。こうした貿易秩序の再編は,ポルトガルやスペインの新航路開拓による海外銀の流入とも連動して,多様な通商ルートが併存するあらたな貿易秩序,「1570年システム」が形成されたのである。
著者
川口 俊明
出版者
福岡教育大学
雑誌
福岡教育大学紀要. 第四分冊, 教職科編 (ISSN:02863235)
巻号頁・発行日
no.59, pp.1-10, 2010-02-10

本稿は、(1)異なる学校に通うことで、子どもたちのあいだにどの程度の学力差が生じるのか、(2)どのような学校が効果的なのか(=学力を大きく向上させることができるのか)、という2つの問題について、ある市で行われた学力調査をもとに分析している。分析には、日本の社会科学領域で昨今注目を集めているマルチレベルモデル分析(Multilevel Model Analysis)を用いている。公立小学校・中学校で行われた学力テストをもとにした分析の結果、以下の2点が明らかになった。第一に、学力の差は、小学校・中学校を問わず、きわめて小さいということである。第二に、「効果的な学校」と「そうでない学校」のあいだに、決定的な違いは見いだせないということである。これは、こと学力テストの点数に限って言えば、現行の教育システム内で個々の学校・教員の努力でできることは限られているということを意味している。教育研究・教育行政に携わる人々は、この知見を真剣に受け止めて検討していく必要があろう。

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1912年06月04日, 1912-06-04

1 0 0 0 OA 防爆壁の設計

著者
浄法寺 朝美
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.69-76, 1978-04-15 (Released:2018-04-30)

主として石油プラント,コンビナートにおける爆発事故について,爆風圧と容器破片の効力および被害局限のための防爆壁の配置,構造,材料,支持法を記し,特に鉄筋コンクリート防爆壁について,塑性理論による最終強度モーメントM、を,単鉄筋および複鉄筋壁について例示計算した.一方,防爆壁の代表的支持法四つについて,爆圧を等布荷重として,壁に生ずる最大曲げモーメントmax Mを算出し, Muとmax Mを比較することにより,必要な壁厚と鉄筋量を判定できるようにした.破片貫徹防止上必要な壁厚と防爆壁の効果も記述した.
著者
竹原 健二 三砂 ちづる 本田 靖
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.215-224, 2006-11-30 (Released:2011-02-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1

The purpose of this study is to comprehend the correlation between the conditions of experience in sexual behavior and the sex education needs of high school students. We conducted a cross-sectional study in January-February 2004 using self-response sheetstargeting 681 students (15-16 years old) attending three public high schools in Ibaraki Prefecture and received valid responses from 627. The subjects of the analysis were divided into three groups depending on the conditions of experience in sexual behavior. We found that, as sexual behavior becomes more active, there are more pressing needs for sexual behavior related information such as "contraceptive methods" and "sexually transmitted infectious diseases" while lessinterest is shown in "male and female psychology" or "interaction between the sexes, " It became clear that the source of sex-related information is shifting from textbooks and school instruction to friends and news media. Although 30-40% of the subjects responded that they wanted to know more about the "nature of love" and "interaction between the sexes, " that is hardly handled in sex education. This suggests that needs and the sources of information on sex-related issues also differ.Judging from this result, if instruction in sex education had more varied content depending on experience in sexual behavior, there would likely be a strong possibility of being able to respond better to student needs. Though the primary issues handled in current sex education are probably centered in the provision of medical knowledge, it can be assumed that high school students want to know more essential matters as well as specific methods and it would be desirable for sex education to provide more multifaceted information.
著者
梅崎 みどり 富岡 美佳
出版者
学校法人山陽学園 山陽学園大学・山陽学園短期大学
雑誌
山陽論叢 (ISSN:13410350)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.67-75, 2011-12-15 (Released:2018-11-28)

本研究の目的は、中学3年生から大学4年生までの男子を持つ母親が、恋愛に関する話題を子どもから伝えられた時に、母親が抱く気持ちのあり様を明らかにすることである、研究対象は、中学3年生から大学4年生までの男子がいる母親10人であった。データ収集方法は、半構成的インタビューとし、質的帰納的に分析を行った。その結果、子どもの成長に伴い交際を知ったときの母親の気持ちは中学生・高校生・大学生の時期により変化をしていた。家庭における性に関する親子間のコミュニケーションでは、中学生では、子どもの成長過程を理解したうえで、男女交際でのエチケットやお互いを思いやることの大切さ、高校生では、性の自己決定ができるアドバイス、さらに、大学生では、社会人としての自覚が育まれるような発達段階に応じた親子間コミュニケーションを行うことが重要であることが示唆された。
著者
原 健一 永松 美雪 中河 亜希 齋藤 ひさ子
出版者
日本思春期学会
雑誌
思春期学 = Adolescentology = 思春期学 = Adolescentology (ISSN:0287637X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.223-234, 2012-06-25

本研究は,中学生男女の親・教員の会話と,男女交際および性感染症に関係する知識・意識・行動の関連を検討することを目的とした。平成20年度から開始した佐賀県予防教育事業に,21年度から新たに参加した中学校のうち学校長の研究承認が得られた8中学校に調査を行った。2-3年生1746人の保護者へ説明書・同意書を配布し,保護者の同意および本人の同意が得られた生徒に実施した。調査期間は21年5月~7月である。調査内容は,親との会話の頻度,教員との会話の頻度,男女交際中の暴力認知,男女交際の意識,性感染症の知識,性行為の意識,危険行動である。佐賀大学倫理委員会の承認を得て,佐賀県予防教育事業の事前調査として実施した。調査を完了した1541人(回答率882%)の結果を分析した。男子は817人(5aO%),女子は724人(47.0%)であった。家族や中学校の教員との会話の頻度は,すべての項目で女子より男子が少なかった。男女交際において「男女の対等な関係」,「相手を思いやること」,「自分を思いやること」を大切であるという意識は,女子より男子が有意に低かった。男女交際中の暴力のうち精神的暴力は,女子より男子が暴力としてとらえていなかった。性行為を容認する意識は,女子より男子が有意に高かった。エイズの知識合計点と性行為経験者数は男女で有意な差を認めなかった。また,中学生男女の親・教員の会話と男女交際および性感染症に関係する知識・意識・行動に関連があることが示された。危険行動予防のために,親や教員との会話を増やすことが重要であることが示唆された。
著者
川口 優子 西本 美和 三木 智津子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.45-52, 2004-05-31 (Released:2017-07-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2

本研究の目的は、単身の統合失調症者に対して訪問看護師が具体的にどのような援助を実践しているのか、訪問看護における援助内容と看護技法を検討することである。対象は精神科訪問看護師4名(女性3名、男性1名)と、利用者5名(女性2名、男性3名)である。研究者が訪問看護に同行して参加観察を行い、許可を得て場面を録音した。全体で10回の訪問場面の録音を逐語録にし、観察事項を加えた記録を作成し分析した。その結果、訪問看護師の援助内容として、1)現在の生活の維持・向上 2)他機関・他職種との連携 3)治療・看護の継続として3つのカテゴリーを抽出した。看護師が直接手を出す援助を実際的援助として7つのカテゴリーを、援助時のかかわり方を看護技法として8つのカテゴリーを抽出した。そして精神科訪問看護師の特徴的な看護技法を提示した。
著者
是川 空 五十嵐 力 柴原 一友 但馬 康宏 小谷 善行
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2007論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, no.12, pp.99-106, 2007-11-09

パズルは探索問題としての見地からその性質が考えられてきた.しかし数独やカックロなどのペンシルパズルでは,探索経路が一本道であり、探索問題として考えるのは意味がない.効率的な解法のためには数字を入れる図中の箇所を選ぶ順序が重要である. 本研究ではこの点に着目して新しい概念を提起し,理論化する.ペンシルパズルにおいて一般的に存在している,制約による解答の順序構造を問題の「解き筋」として定義した.解き筋を問題から抽出することで,問題の難易度や良し悪しの判定をするために使用する.効率的に解き筋を抽出するために,解き筋の中でも重複した部分を取り除いた有用な解き筋のみを得るアルゴリズムを設計する.ラテン方陣問題による実験を行い,その解き筋を得た.得られた解き筋から問題の特徴を考察する.
著者
林 大和
出版者
一般社団法人 粉体工学会
雑誌
粉体工学会誌 (ISSN:03866157)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.409-416, 2019-07-10 (Released:2019-08-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Many innovative processing of metal nanoparticle related material were developed by ultrasound and microwave reactor in solid-liquid system. Ultrasound and microwave reactor not only enhanced chemical reaction but also created novel chemical reaction. Metal oxide was used as eco-metal source in our processing. Solid-liquid (metal oxide–ethanol) system will be high concentration and high throughput processing. Realization of innovative nanomaterial fabrication enabled joining environment, low cost and high throughput by combining these reactor and metal oxide, solid-liquid system. This commentary explained reactor and nanomaterial processing problems and introduced the example of some metal nanoparticles related material processing by synergistic effects of solid-liquid system and ultrasound, microwave reactor.
著者
桑原 直巳 黒住 眞 川村 信三 夏秋 英房 川本 隆史 根占 献一 高祖 敏明 ウセレル アントニ 島村 絵里子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

イエズス会の修道会としての特質は国家の枠を超える国際的視点にある。また、その人文主義的な教育、就中修辞学教育の伝統は、直面する社会的現実に対して柔軟に対応する体質をもたらしている。本研究の結果、こうしたイエズス会の特徴が多様な文化と対話する基本姿勢をもたらしていることが明らかになった。第二バチカン公会議以降の今日、イエズス会を中心とするカトリック系人文主義教育は、社会正義の強調という方向を打ち出している。この方向は、グローバル化が進展しつつあり、移民の増加、地球レベルでの経済格差の拡大といった問題に直面している現代社会に対して様々な示唆を与えることが明らかになった。