著者
矢野 牧夫 小田島 和平 丹治 輝一
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

北海道開拓記念館に保存されている第2次世界大戦時の朝鮮人強制連行関係資料の整理分類と労働実態の調査を目的として研究を進めた。この研究によって得た新たな知見は、次のとおりである。1.連行者名簿の整理分類ーとくに住友金属鉱山,北海道炭鉱汽船(北炭)関係資料、日曹天塩炭鉱関係資料の整理分類を行い、強制連行された朝鮮人1,200名の連行者リストを作成した。これにより連行者氏名,年令,職業,本籍,連行時の居住地などを詳細に明らかにすることができた。2.強制連行関係資料の整理分類ー連行にあたっての現地における労務者の割当と募集状況,輸送計画および渡航状況,受入先での稼動状況,管理対策,稼動中の騒擾事件,逃亡状況,就業中の災害被災状況,慰安事業および馴化のための協和会組織などに関する資料の整理分類を行うとともに、それらの具体的事項を調査し,一連の強制連行,強制労働の経過を明らかにすることができた。3.強制労働が行われた現地の状況調査ー各鉱山は閉山後、かなりの年数を経過し、連行者が就労した事業所,収容された施設などはすでに存在していないが,各地に死亡者の墓碑,慰霊碑などが残存しており13箇所においてそれらの調査を行った。4.強制連行関係者からの聴取調査ーとくに、金属鉱山関係者から強制労働の実情を聴取することができた。それらは労働形態,就労内容,労務災害などに関する具体的内容であり,上記2の内容を補充するものであった.5.研究成果の公表ー研究成果の公表については,平成5年度の北海道開拓記念館研究年報および北海道開拓記念館調査報告に登載し一般への公表を行う。
著者
関口 雄祐
出版者
千葉商科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

半球睡眠とは,一側の大脳半球のみで睡眠脳波が記録される生理的状態である.これまでに,ヒトが半球睡眠を行う脳波上の証拠は得られていない.しかしながら,ヒトが局所睡眠を生じること,また,断片的報告からヒトが半球睡眠を行いうる可能性は高いと我々は考えてきた.本研究課題では,自発的な半球睡眠---脳の活動状態の左右差(大脳の左半球と右半球の活動差)---を生じさせる代わりに,視覚入力を一側(左眼球あるいは右眼球)に制限することにより,疑似的な半球睡眠状態を構築し,その状態の疲労の蓄積・回復を分析した.
著者
林 良博 小川 健司 九郎丸 正道
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

哺乳類の精巣は通常陰嚢内に存在し、体温よりも数度低い温度に保たれることにより正常な精子発生が行われている。一方鯨類、ゾウなどは陰嚢をもたず精巣は腹腔内に位置する。こうした腹腔内精巣動物の精子発生が、いかなる温度調節機構によって行われているかについては未だ不明である。本研究では腹腔内精巣と熱ショックタンパク質(HSP)およびレクチンの発現性との関連を検討した。材料としてはイルカ精巣に加えて、実験的腹腔内精巣マウス、非繁殖期ハムスターの精巣および胎生期、生後初期のマウス腹腔内精巣を用いた。実験的腹腔内精巣マウスでは、多数の変性精細胞が観察され、それらには核濃縮、細胞質の好酸性変化および濃縮が認められ、またTUNEL陽性細胞も観察された。HSP70.2の発現はバキテン期以降の精細胞に観察され、腹腔内精巣マウスでは反応は認められなかった。非繁殖期のハムスター精巣では、レクチンDBAが精祖細胞に特異的な結合を示した。DBAは繁殖期ではA型精祖細胞にのみ反応するのに対し、非繁殖期ではA型、中間型、B型の各精祖細胞に反応した。胎生期および生後初期のマウス腹腔内精巣では、レクチンsWGA,VVA,LEAが精細胞に特異的な結合を示し、これらのレクチンが精細胞の分化に関わっている可能性が考えられた。バンドウイルカ、ハナゴンドウ、ヤギのHSP84,86発現を検討した結果、HSP84と86では明らかな相違が認められた。84はB型精祖細胞に強い反応性を示したのに対し、86は精母細胞ないし精子細胞に強い反応性を現した。これらの反応性の違いから、84と86は精細胞分化の異なる過程でそれぞれ役割を担っている可能性が示唆された。また、特に86において種間差が認められた。ヤギではバキテン期以降の精母細胞および円形精子細胞に、バンドウイルカではザイゴテン期以前の精母細胞および円形精子細胞に、またハナゴンドウではすべての精母細胞が反応したが、精子細胞は反応性を示さなかった。
著者
小田 伸午 森谷 敏夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

日本人と留学生の周辺視野反応時間と中心視野反応時間の平均値はほぼ同一の値を示し、グループ間には差が認められず、人種に応じた周辺視野反応時間に差がないことが明らかとなった。大学サッカー選手は一般大学生と比較して周辺視野および中心視野での反応時間に優れていることが明らかとなり、サッカー選手は、日々のトレーニングによりその能力を向上させたことを示唆している。そこで、周辺視野と周辺視野での反応時間をトレーニングする2群を設けてトレーニング実験を実施し、二つのトレーニング効果の交互作用について検討した。周辺視野反応時間をトレーニングした群では、トレーニングをした周辺視野だけでなく中心視野でも反応時間の短縮がみられた。中心視野反応時間をトレーニングした群でも中心視野だけでなく周辺視野でも反応時間の短縮がみられた。これらの結果は、いずれの視野におけるトレーニングも、キー押し運動に関連する中枢処理時間が短縮したことを意味しており、キー押しという単純反応時間であれば、中心あるいは周辺いずれかの視野においてトレーニングをすれば、効果が転移することが明らかとなった。さらに、広範囲にわたる視野の中からランダムに視覚刺激を呈示する条件下において、ヒトは注意を等しく配分するか、あるいは何らかの戦略をとるかについて検討し、被験者は広い視野の中間の位置に対して能動的に注意を向けることを明らかにした。最終年度では、周辺視野反応時間は、低強度および中強度の運動中は変化せず、VT(換気性作業閾値)を超える高強度の運動負荷時に増大することを明らかにした。これらの研究成果は、日本体力医学会など数回の国内学会で発表し、別紙に掲げた学術雑誌に公表した。
著者
森岡 正博
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究において以下の研究成果が得られた。(1)「生存肯定」は「誕生肯定」のひとつの形式として解釈されるべきである。そしてそれは「産み」の概念と関連づけられるべきである。(2)デイヴィッド・ベネターの非-出生主義はきびしく批判されなければならない。(3)ペルソナ論には、実体性に基づいたものと関係性に基づいたものがある。(4)「生存肯定」は「人間のいのちの尊厳」と深い関わりを有している。
著者
佐伯 和信 分部 哲秋 弦本 敏行
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

骨格の形態的特徴が縄文人と多くの点で共通する南九州地域の古墳時代人(古代ハヤト)の遺伝的系統関係を明らかにするため、人骨のミトコンドリアDNAの解析を行い、ハプログループの頻度構成を導き出した。過去の分析例も加え、計16例のタイプを決定することができた。内訳はハプログループAが2例(12.5%)、Bが3例(18.8%)、D4が5例(31.3%)、Fが3例(18.8%)、N9bが1例(6.3%)、M7が1例(6.3%)、M8が1例(6.3%)であった。この結果はD4が多い点は現代日本人と共通しているが、縄文人に高頻度で出現するM7aや N9bもみられ、縄文人の遺伝的影響も残していると考えられる。
著者
松久 和彦
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、EU各国の法制度の比較法研究を通じて、共同生活の経済的基盤に関する法制度(基礎的財産制)の意義と法実務の運用状況、夫婦財産の清算での公平性を確保するための法実務の運用状況を明らかにすることができた。とりわけ、日本の新しい夫婦財産制への提言のために、EU各国の共通項としてまとめられた「欧州家族法原則」とEU各国への影響をさらに検討する必要があることが明らかになった。
著者
竹内 京子 菊原 伸郎 松村 秋芳 西田 育弘 煙山 健仁 岡田 守彦
出版者
帝京平成大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、回旋角度測定器付き荷重動揺計を用いた立位股関節回旋角度測定法を普及させ、この装置の自動運動中に得られる股関節回旋角度および荷重動揺軌跡から姿勢制御力や身体運動能の評価システムを確立することである。この評価システムの意義は、動的荷重動揺軌跡の形状や角度変化に着目し、動作の精度や運動能の評価を容易にしたところにある。平成24~27年度にトップアスリートから一般人まで1000名近くのデータを得た。軌跡図の形状や回旋角度の変化を精査した結果、下肢動作の左右差(一側優位性)やスポーツ種目ごとの特性を見出した。動作の精度に影響を及ぼす疲労や開脚幅の広がり等の諸要因について検討を加えた。
著者
新田 哲夫
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、石川県白峰方言の共時的な記述を行うことを主たる目的とし、方言語彙の資料の整備を行うことを目指した。また、白峰方言は、日本語史の観点から見ても重要な方言であるため、中央語との関わりに注目しながら、次の調査研究を行った。1.形容詞語幹の長母音の記述と変化の研究白峰方言の形容詞は、ターキャ(高い)、サービ(寒い)など語幹に長母音をもっている。これらの形容詞活用の形態とアクセントを記述した。また、この現象は、新潟県北部・中部、長野県秋山郷、島根県隠岐地方、大分県国東半島付近、高知市、和歌山県西南部にみられる。これらのうち、大部分がすでに先年度、新田によって調査が行われたが、まだ未調査の和歌山県田辺市において調査を行い、これらの現象を確認し、その記述を行った。これまでの調査を含めて導かれる結論は次のとおりである。(a)これらの長母音は、「独立語基>ウ音便の融合母音をもつ語基>その他の語基」の順に多く現れ、出現に包含関係が見られる。(b)これらの長母音は短母音より歴史的に古く、語内部の後続の融合母音が出現する環境で保たれる傾向にあった。(c)長母音のかわりに、促音・撥音が現れる方言があるが、これらも長母音から発生したものである。2.民話・自然談話などの録音資料のテキスト研究当方言で語られる民話の採取を行い、テキストを作成した。また、『NHK全国方言資料』の白峰の部分の改訂と注釈を行った。3.基礎語彙調査当方言の基礎語彙の調査を行った。「天候・気象」、「動物」の分野について形態・意味・用法について記述を行った。4.アクセント資料の作成当方言の動詞、形容詞について、アクセント資料を作成した。
著者
宮崎 まゆみ
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平安時代および鎌倉時代に記された楽譜等の文献解読を基に、平安時代の宮廷箏曲の内の独奏曲の復元を試みた。平調、盤渉調の調絃音は左手の「推し」の奏法を伴う独特の方法だったこと、「連」や「かかげ合せ」の奏法は、現行の楽箏とは異なる奏法だった可能性があること、「かき合せ」や「調子」と称される楽曲は、現行の楽箏とは異なり、親指だけではなく中指、人差指を駆使して弾くことと、左手を活用させての余韻装飾から、全体的に中国の琴(きん)曲に類似した音楽であったこと等が判明した。
著者
上嶋 誠 小河 勉 中井 俊一 吉田 真吾
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,三宅島2000年噴火活動時に観測された自然電位変動から,水の流動に関する定量的な見積もりを行うため,三宅島の岩石を用いて,流動電位を決定するゼータ電位の性質を実験的に明らかにした.初年度に実験装置の整備改良を行い,三宅島にて各噴出年代の火山岩試料の採取を行った.試料を採取する際に立ち寄った神津島において自然電位マッピングを実施した結果,神津島での地形効果が約10mV/m(高度1m上昇につき10mV電位が下降する)と三宅島に比べて約10倍であることが判明したため,この違いが,両島で採取した岩石のゼータ電位の違いによって説明可能であるかを実験的に検証することも目標の一つに加えた.まず,HCl-KCl-KOH系における,ゼータ電位のpH依存性に関する実験を行った.その結果,各年代の三宅島玄武岩,神津島流紋岩共に,pH3-10の範囲ではゼータ電位が-10〜-20mVに決定され,さらに塩基性が強くなると共にゼータ電位は大きくなった.また,三宅島玄武岩がpH2付近でゼータ電位がゼロから(さらに酸性の強いところで)正に転ずるのに対し,神津島流紋岩ではゼータ電位はマイナスに留まった.従って,三宅島と神津島の地形効果の相違は,地下水のpHの相違か,比抵抗など他のパラメタの相違によるものと考えられる.Ishido&Mizutani(1981)の実験では,花崗岩,安山岩,斑レイ岩ともに,ゼータ電位がpH6以上で-80〜-100mVに決定され,今回の結果は約1桁小さい値を得た.岩右試料の表面状態の差異が,このような実験結果の相違を生む要因として考えられたため,岩石の破砕粒度を変えた実験を行った.その結果,新鮮な表面の割合が多いと考えられる,より粒径の小さな試料ほど絶対値として高いゼータ電位になっているという実験結果を得,ゼータ電位を考える上で新たな要因を考える必要性が明らかとなった.
著者
藤目 ゆき
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

連合国占領軍の事件・事故に起因する人身被害に関する研究を行い、被害者とその遺族が受けた心理的・社会的・経済的ダメージやその後の暮らし、現在の心境・考えなどを明らかにした。全国調達庁職員労働組合による被害実態調査について、1000件を超える調査票の内容をデータ入力し、地方ごとに年表およびマップを作成した。GHQと米日両政府・被害者及びその遺族・政党や労働組合などの社会団体の動向を調査し、補償請求運動と立法化の過程を解明した。また、占領軍被害補償問題を原爆や空襲の被害、「慰安婦」被害など他の補償請求問題との比較検討・関係性の考察を進めた。
著者
鈴木 仁 佐藤 淳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

私たちはハツカネズミ(Mus musculus)の進化史理解のため、第8染色体上の毛色関連遺伝子Mc1rを含む近隣7遺伝子のハプロタイプ構造の解析を行った。その結果、3亜種グループの中東・インドにおける自然分布域を特定するとともに、インド亜大陸内の亜種castaneusが空間的に2系統存在することを明らかにした。また、歴史的放散前に亜種内、亜種間の遺伝的交流が存在したことも判明した。さらに。この遺伝子領域のうち、Mc1rにおいて塩基多様性のレベルの著しい低下があり、選択的スイープ現象の存在が示唆され、Mc1r遺伝子への自然淘汰の関与があったと考えられた。
著者
三浦 玲一 越智 博美
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平成24年度は、三浦と越智の共同の成果公開の機会が多くあった。本プロジェクトの目標通り、リベラリズムのイデオロギーと現代のアメリカ文学研究の深い関係を分析しようとする試みは、三浦、越智が執筆し、三浦が編者をつとめた『文学研究のマニフェスト』(研究社)として刊行された。越智は、第二次世界大戦期の南部文学と新批評がリベラリズムをどのように制度化したのか、三浦は、J・D・サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』とコーマク・マッカッシーの『ザ・ロード』がどのようにリベラリズムの文学として成立しているかを論じた。また、平成23年急逝されたお茶の水女子大学の竹村和子教授を偲ぶ、アメリカ文学会東京支部におけるシンポジウム(6月於慶応大学三田キャンパス)に、三浦、越智の双方が招かれ、発表を行った。この成果は、アメリカ文学会東京支部の紀要『アメリカ文学』の6月発行の次号において、公開される予定である。越智は、竹村さんの仕事を貫くリベラリズムへの複雑な想いを、三浦は、竹村さんの後期の仕事における生政治批判がどのようなリベラリズム批判であるかを論じた。さらに、一橋大学において隔年で慣行されている人文学とジェンダーの関係についての論集が2013年3月に慣行されたが、その編者を三浦がつとめ、そこに越智も執筆した。『ジェンダーと「自由」』(彩流社)と題されたこの論集も、本プロジェクトの延長上で、リベラリズムと人文学的な想像力との関係を、批判的に考察しようとするものである。越智は、冷戦期の男性性が当時のどのようなリベラリズムの言説によって正当化されたかを、三浦は、新自由主義期の男らしさ、女らしさがどのような新しい定義を与えられているかを論じた。
著者
Alexander Kilpatrick
出版者
名古屋商科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

Human perception is shaped by experience. When input is improbable in the context of the perceiver's experience, perceptual systems will sometimes create an illusion so that the input conforms better to expectation. For example, Japanese does not allow homorganic consonant clusters and when Japanese listeners are exposed to non-native speech that contains homorganic consonant clusters, they sometimes report hearing an illusory vowel amid the cluster. This project will explore the various ways that Japanese listeners perceive input that is improbable in the context of their linguistic history.
著者
井下田 貴子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

非母語話者は「学習言語の文脈」において、「学習言語の音素」を「母語の音素」で代用することが多々あり、このことが原因で、発音の誤りや異聴の可能性が高まることはよく知られている。中国人日本語学習者の場合、日本語の「う」「お」を後続母音とする半母音「ゆ,よ」において、「う」と「お」の識別の混同が、音声生成・知覚の両面で観察される。本研究では、半母音・拗音における母音と子音の音響特徴量に着目し、中国人日本語学習者の知覚識別境界および識別の手掛かりを探る。
著者
松崎 秀夫 財満 信宏 岩田 圭子 小川 美香子 辻井 正次 瀬藤 光利 土屋 賢治 伊東 宏晃 間賀田 泰寛
出版者
浜松医科大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2009

自閉症者血清中の脂質VLDL分画の低下から(1)自閉症者血清中の脂肪酸解析、(2)脂肪酸所見に基づく自閉症動物モデルの確立とその解析、(3)動物モデルを用いた新規自閉症治療法を検討した。その結果、VLDL分画の低下に関連の深い脂肪酸としてω6脂肪酸を含む6種類の脂肪酸を見出した。ついでCD38KOマウスに自閉症者同様の血清中脂質VLDL分画・ω6脂肪酸の低下を認め、血中ω6脂肪酸の低下を出生直後に補うと社会認識行動の修復につながることを見出した。VLDLR-Tgラットにも多動と組織中のアラキドン酸の欠乏が示された。
著者
森田 雅也
出版者
関西大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

当該年度は、裁量労働制を経営学的に研究するための基礎づくりとして、文献研究と実証研究を行い、その実態把握及び労働の人間化研究の中での裁量労働制の位置づけの明確化に努めた。文献研究では、国内外の労働の人間化関連の文献のサーベイ及び裁量労働制導入企業の事例に関する文献、雑誌、新聞記事等を精力的に収集、分析した。実証研究では裁量労働制を導入している企業6社に対するインタビュー調査及びアンケート調査を承諾して下さった企業への質問票調査を行い、裁量労働制の実態について定性的データ、定量的データの蓄積を行った。その結果、裁量労働制は仕事を離れた生活の確立を容易にする可能性が高いこと、成果と評価が結びつきモチベーションが高まること等、労働の人間化の視点からもホワイトカラーの新しい働き方として有効であることが確認された。しかし、実際にその制度のもとで働く労働者の勤務状況は、裁量労働制導入以前と比べてそれほど変化していないこともインタビュー調査等から確認された。しかし、それは裁量労働制の制度そのものに起因するのか、導入後それほど時間が経過していないためなのかは今後の更なる検討を要するものである。なお、阪神大震災の影響で質問票締切を3月末日に設定せざるを得なかったため、現時点では論文の形にまとめられた成果はまだない。質問票が返送され次第、可及的速やかに論文の形にまとめ公表する予定である。
著者
森田 雅也
出版者
関西大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

企画業務型裁量労働制がどのように認識されているかを数量的に把握するために、従業員規模100人以上企業の人事部長1,673名を対象に「企画業務型裁量労働制に関するアンケート調査」を2001年3月に行った(有効回答率14.9%)。その結果、次のような点が明らかになった。(1)企画業務型裁量労働制導入を考えている企業は少ない(79.9%が「導入を考えていない」)。(2)導入を考えている企業は「成果主義の徹底」や「従業員の自律性を高める」ことを導入目的としている。(3)多数の企業(70.8%)が事業所単位で設ける労使委員会は「煩雑」だと考え、それが「必要である」と考えているのは3割程度しかない。(4)3割強の企業が労基法38条によらない「裁量労働的勤務」を既に導入したり、導入の検討を行ったりしている。また、文献サーベイや聞き取り調査の結果もあわせて検討した結果、企画業務型裁量労働制が「ゆとりと時短」を創出するという本来の趣旨に沿った成果をあげているとは現時点では言い難い。裁量労働制が、その対象者に自律的な働き方を提供する可能性はきわめて高いが、そのためには次のような条件が満たされる必要がある。(1)個人の多様な働き方を認める組織風土の形成、(2)公正な評価能力をもつ管理者の存在、(3)対象者の、自分の働き方(キャリア形成)に対する意識向上、(4)経営者による導入目的の明確化(成果主義徹底だけのための手段として用いない)。これらの点を鑑みると、裁量労働制、特に企画業務型裁量労働制が労使双方にとって有益な人事労務管理施策として定着するためには、経営者も雇用者もかなりの意識変革をすることが、特にエンプロイヤビリティーに対する意識を高めることが求められる。そして、それにはさらにある程度の時間が必要であろうと考えられる。
著者
渡辺 俊
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

裁量労働制を採用している法人組織のメールサーバーのアクセスログの分析を通じて、今日の就業者は4種類の執務スタイル(保守型、時間流動型、空間流動型、ポスト定住型)に分類できることを確認した。さらに、アクセスログの詳細分析、およびWeb上のデータベースサービスと地理情報システムの活用を通じて、就労スタイルごとの時間分布・空間分布を明らかにするとともに、就業者ごとに執務行為の流動化の度合いを計測・比較可能な指標を提示した。