著者
上條 義一郎
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

暑熱馴化は血液量を増加させ高体温時における体温調節反応を改善させる。暑熱環境下・立位では皮膚血管拡張による末梢への血液貯留と発汗による脱水が心臓への静脈還流量を低下させ、心房を介して圧反射性に過剰な皮膚血管拡張を抑制し血圧を維持する。我々は、皮膚交感神経活動には心周期同期成分が含まれ、高体温・起立負荷時に皮膚血管拡張反応とともに抑制されることを示した。さらに、若年男性が5日間の持久性トレーニングを行うと、血漿量の増加と共に皮膚血管拡張や同成分上昇が亢進した。暑熱馴化における血液量増加は同成分を介して皮膚血管拡張反応を改善する可能性がある。
著者
中島 礼 伊藤 光弘 兼子 尚知 樽 創 利光 誠一 中澤 努 磯部 一洋
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.225-230, 2004-06-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

茨城県つくば市東部を流れる花室川の中流域から,<i>Palaeoloxodon naumanni</i> (Makiyama)の臼歯が発見された.産出層準は,最上部更新統である桜川段丘堆積物に相当する緩斜面堆積物で,約2.7万年前より新しい年代を示す.歯種は左上顎第3大臼歯であり,歯冠長は331mm,咬板数は1/2・22・1/2と,これまでに報告された臼歯の中でも大型であり,特に咬板数は最大であることがわかった.この標本の産出は,<i>P.naumanni</i>の時代的な形態変異を明らかにする上で重要である.
著者
三浦 隆史
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.アルツハイマー病の原因のひとつである、アミロイドβペプチド(Aβ)の凝集は、亜鉛イオンによって効率的に促進されることが知られていた。本研究者は、銅イオン共存下では亜鉛による凝集が阻害されることを明らかにした。亜鉛はAβ中に3残基存在するヒスチジンのNτ原子に結合し、分子間架橋を形成する。これに対し、銅はヒスチジンのNπ原子とその周囲のアミド基を配位子として分子内キレートを形成するため、亜鉛による分子間架橋を競合的に阻害する。銅イオンのAβ凝集阻害効果は、CU/Aβモル比が4付近で最も強い。これより高濃度になると、銅はそれ自体Aβ凝集能を持つようになる。このAβ凝集の原因となるのは、銅のチロシン残基への結合であることがわかった。2.鉄イオン[Fe(III)]も強いAβ凝集能を持つことが知られている。本研究者は、Aβの鉄イオン結合部位を調べた。AβにFe(III)イオンを添加すると褐色の沈殿を生じた。上清と沈殿を分離した後、各々の514.5nm励起ラマンスペクトルを測定したところ、沈殿からは金属と結合したチロシネート(Tyr^-)のスペクトルが得られた。このスペクトルは、可視領域のTyr^-→Fe電荷移動吸収に共鳴することによりTyr^-の散乱強度が顕著に増大したものである。一方、上清から得られたスペクトルにはTyr^-の共鳴ラマンバンドと他のペプチド部分の非共鳴ラマンバンドが共に観測された。このスペクトルの解析から、3個のHisはFe(III)と結合していないことが明らかとなり、Fe(III)の主な結合部位はTyr10のフェノール酸素であることが示された。
著者
田井 啓太 山中 正紀 石垣 智恒 廣川 基
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1132, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】肩甲骨周囲筋である前鋸筋は,様々な肩関節疾患に関与すると報告されている。先行研究において,前鋸筋の筋活動を強調するために考案された運動は,壁や治療台に手をつくような荷重下での運動で(standard push up plus,wall push up plus)あった。しかしながら,上肢非荷重下での前鋸筋の筋活動を強調した運動に関する報告は少ない。日常生活において,上肢は非荷重下で運動を行なう頻度が高いと考えられるため,上肢非荷重下で前鋸筋の筋活動を促す運動方法が求められる。それゆえ,本研究の目的は,上肢への荷重を伴う,もしくは伴わない様々な動作課題における前鋸筋の筋活動を検討することとした。【方法】被験者は健常男子学生15名(平均年齢21.9±0.83)とし,除外基準は肩関節に疼痛がある者,肩関節に整形外科的および神経学的な症状や既往がある者とした。動作課題は,standard push-up plus(SPP:腕立て伏せの姿勢において,肩甲帯のProtractonを意識させた姿勢),wall push-up plus(WPP:壁に寄りかかるよう手をつき,肩甲帯のProtractionを意識させた姿勢),立位での肩関節屈曲(Flex),肩甲骨面上挙上(Scaption:前額面より30°前方と定義),セラバンドに抗して水平外転方向への筋収縮を伴うScaption(Sera Scap)および屈曲(Sera Flex),バランスボールを両上肢間ではさむように水平内転方向の筋収縮を伴った屈曲(Ball Flex),セラバンドに抗して水平内転方向への筋収縮を伴う肩関節屈曲(Sera Flex)とし,挙上角度は135°で,それぞれ1kgのダンベルを保持して行った。前鋸筋の筋活動は表面筋電計MyoSystem 1200(Noraxon, USA.inc)を用いて計測した。表面電極貼付位置は先行研究に準じ,肩関節90°屈曲位において,腋窩の下部かつ肩甲骨下角と同じ高さで,前鋸筋の走行に沿って貼付した。各動作課題の試行順は無作為化し,各動作肢位は5秒間保持され,各試行を3回反復した。筋電データの解析は,整流化,フィルター処理(band-pass filter;10-500Hz),RMS(ウインドウ100ms)による平滑化を行った。得られた5秒間の筋電データのうち中間3秒間を解析に用い,各筋電データはMVCで正規化し(% MVC)解析した。各動作課題における前鋸筋筋活動の違いを検討するため,統計解析には反復測定一元配置分散分析を用い,Post-hoc testにSidak法を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本学倫理委員会の承認を得て行い,被験者には事前に研究の要旨を口頭及び書面にて十分に説明し,同意を得た。【結果】SPP(%MVC±SD:54.78±39.69)はWPP(31.50±24.97)よりも前鋸筋の筋活動が有意に高かった。Ball Flex(52.02±19.94)は,WPP,Flex(31.80±10.55),Scaption(32.12±12.19),Tube Flex(23.86±9.33)よりも前鋸筋の筋活動が有意に高かった。【考察】先行研究において,上肢荷重下で行われるSPPやWPPが前鋸筋筋活動を強調した運動として推奨されてきた。本研究において,上肢荷重下であるSPPでの前鋸筋筋活動と,上肢非荷重下であるFlex,Scaption,Ball Flex,Sera Scap,Sera Flexの前鋸筋筋活動との間に有意差を認めなかった。これは上肢非荷重下での運動でも上肢荷重下の運動と同程度の筋活動を導き出すことが可能であることを示す。上肢荷重下での運動は,日常動作において行なわれることは少ないと思われる。本研究結果より,セラバンドによる肩関節水平外転方向の力や,ボールを持つことによる肩関節水平内転方向の力を加えることによって,上肢非荷重位であったとしても,前鋸筋の筋活動を強調することが可能であることが示唆された。特に,Ball FlexはWPP,Flex,Scaption,Sera Flexより有意に高い前鋸筋筋活動を示し,前鋸筋の筋活動を高める介入方法として推奨されるかもしれない。【理学療法学研究としての意義】抗重力位にて上肢運動を行なう時期のリハビリテーションにおいて,通常の上肢拳上よりも,水平内転方向や水平外転方向の力を加えることによって,前鋸筋筋活動を強調した運動が可能となるかもしれない。肩関節は日常生活において,非荷重下で使用されることが多い。臨床で非荷重下での前鋸筋の筋力強化を目的とした介入を行なう場合,上肢挙上時に水平内転方向へ力を加えることによって,より大きい前鋸筋の筋活動を促すことが期待できると考えられる。
著者
桐田 隆博
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.207-212, 2005-03-31 (Released:2016-11-22)

The social functions of laughter have been often mentioned but rarely studied in the field of psychology. This paper briefly shows the results of two studies in which we addressed the question as to when and why people laugh, and inferred some functions of laughter in conversation. In the first study, using diary method, we investigated some aspects of laughter in daily life. It was found that the diarists laughted most in social interactions, especially in conversation. Furthemore the results showed that although they were not often conscious about the reasons why they laughted, the recorded numbers of laugh episodes were positively correlated to the "other-directedness" and "acting" factors of the subjects. In the second study, we examined the laughter in an interview setting, especially focusing on the phenomenon that people phrase raughingly, i.e., laugh-speak. The conversations of the interviewer and the subjects were videotaped, and they were precisely transcribed using conversation analysis notations. On the basis of these transcripts, laughing events were identified and analyzed. The results indicated that the mean rates of laugh-speak to total laughs in the subjects should reach 50%. Some functions of laugh-speak, such as qualifier, were inferred from the contexts of conversation.

1 0 0 0 OA 1けい光の理論

著者
吉田 善一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.871-878, 1968-07-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
29
著者
小島 亜有子 久保田 敏昭 森田 啓文 田原 昭彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1519-1522, 2008-09-15

要約 目的:ステロイドレスポンダーの臨床的特徴の報告。対象と方法:副腎皮質ステロイドの点眼または内服で眼圧が5mmHg以上上昇し,かつ25mmHg以上になった17症例をステロイドレスポンダーと定義した。7例は全身投与,10例では点眼が原因であった。男性9例,女性8例で,年齢は15~82歳(平均49歳)であった。診療録の記述からその特徴を検索した。結果:屈折は右眼-3.58±2.72D,左眼-3.50±2.58Dであった。ステロイド投与開始から最高眼圧に達するまでの期間は,全身投与群では9.8±13.5か月,点眼群では10.5±12.7か月であった。最高眼圧は全身投与群31.7±5.3mmHg,点眼群40.6±13.7mmHgであった。眼圧の上昇率は全身投与群143.0±103.1%,点眼群154.1±100.9%であった。すべての項目で投与方法による有意差はなかった。全身投与群では両眼の眼圧が上昇し,点眼群では点眼側の眼圧だけが上昇した。結論:ステロイド投与では,点眼だけでなく全身投与でも眼圧が上昇することがあり,かつ長期の経過観察が必要である。
著者
後藤 健太郎 村山 英晶
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
pp.19-00034, (Released:2019-06-19)
参考文献数
22

The Lean Automobile is a minimalistic tilting personal mobility for urban transportation with the suspension device equipped with a mechanism which converts driver’s actuation force into lean moment. We proposed it as a solution for the urban traffic problems and conduct study of it aiming for societal implementation. Since the most distinctive feature of the Lean Automobile among the other micro mobilities is its lean control method that is enabled by the unprecedented suspension device, we need to focus on the lean motion dynamics in order to verify the feasibility of the lean control left in the hands and feet of the driver. In this paper the process and outcomes of the feasibility study based on the calculations of transient characteristics and the simulations of lean motion is discussed. A newly developed dynamic model which describes the tilting vehicle with the suspension device equipped with the mechanism generates lean moment is used for the calculations and simulations. Through the study we find out the conditions to stabilize weave mode along with the differences between multiple lean control tactics that is allowed by the distinctive suspension device, therefore we get the prospect that there is multiple tactics to stabilize the Lean Automobile’s lean motion along with avoiding rollover.
著者
大平 哲也 中野 裕紀 岡崎 可奈子 林 史和 弓屋 結 坂井 晃 福島県県民健康調査グループ
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.34-41, 2018

<p>2011年 3 月11日,東日本大震災が発生し,それに引き続き福島第一原子力発電所の放射線事故が起こった.原子力発電所周辺の多くの住民が避難を余儀なくされ,生活習慣に変化が起こってきた.そこで,各市町村で実施している健康診査、及び福島県で実施している県民健康調査のデータを用いて、震災後の避難が循環器疾患危険因子及び生活習慣病に影響する可能性を検討した。本稿では,震災前後における健康診査結果の変化及び県民健康調査の生活習慣病に関する縦断的検討の結果を概説する.震災前後において健康診査データを比較した結果,震災後,避難区域住民においては過体重・肥満の人の割合,及び高血圧,糖尿病,脂質異常,肝機能異常,心房細動,多血症有病率の上昇がみられた.さらに,震災後 1 ~ 2 年間と 3 ~ 4 年間の健診データを比較したところ,糖尿病,脂質異常についてはさらなる増加がみられた.したがって,避難区域住民,特に実際に避難した人においては心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患が震災後に起こりやすくなる可能性が考えられた.また、これらの要因としては震災後の仕事状況の変化、避難による住居の変化などによる身体活動量の低下、心理的ストレスの増加などが考えられた.今後,避難者の循環器疾患を予防するために,地域行政と地域住民が協働して肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常の予防事業に取り組む必要がある.</p>
著者
野下 裕市
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.139, no.9, pp.814-821, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

This paper proposes a linear PFC regulator with a light flicker compensating circuit for LED lighting applications. The proposed circuit is small in size because it includes no reactors or electrolytic capacitors. The light flicker compensating circuit, which is connected in parallel to the LED string, consists of four ceramic capacitors and diodes. These capacitors are operated in series in the charge state and in parallel in the discharge state by using a diode network circuit. Therefore, an external controller and large capacitors are not required. The proposed circuit is experimentally validated using a 9W prototype. From the experimental results, it is found that the power fluctuation of the LED string is less than the JIS and JLMA limitations, and the power factor is 0.95. In addition, the power loss is analyzed at an efficiency of 89.4% for the prototype circuit. Also, by modulating the current regulator, sinusoidal input current can be achieved. The second proposed circuit is experimentally validated using a 7.5W prototype, and the power factor and input current distortion are found to be 0.999 and 2.1%, respectively.
著者
矢田 智春 山田 洋明 花本 剛士
出版者
パワーエレクトロニクス学会
雑誌
パワーエレクトロニクス学会誌 (ISSN:13488538)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.168-175, 2014-03-31 (Released:2016-04-08)
参考文献数
8

This paper proposes a novel co-operational control method of LED driver, consisting of voltage and current sourced flyback converters. In the proposed method, both the flyback converters are controlled by the LED reference current to obtain wide range variable light control from 10 % to 100 %. Digital computer simulation is implemented to confirm the validity of the proposed method and demonstrate that the minimum on time of the MOSFET is longer than 1 μs even under the operation of 10 % of the LED rated current.

1 0 0 0 OA 含羞草

著者
シエレー 著
出版者
武林堂
巻号頁・発行日
1907