著者
近藤 忠亮 井手 武朗 江草 国之
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.558-562, 1983-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

肝疾患における血清総胆汁酸, cholylglycine, 血清総, 直接ビリルビン, 一般肝機能検査成績をその変動より検討した. 無症候性HBVキヤリアーでは血清総胆汁酸, cholylglycine濃度はいずれも正常範囲にあつた. 血清総胆汁酸とcholylglycine濃度とは慢性肝炎ではよい相関にあつたが, 肝硬変症では一定の関係はなかつた. 血清総胆汁酸, cholylglycine濃度とも慢性肝炎より肝硬変症で高値を示した. 肝硬変症と肝硬変症+肝癌との間にcholylglycineでは有意の差がみられた. ビリルビンと胆汁酸との間には直接ビリルビンが低下傾向の場合により相関がみられた. また慢性肝炎で直接ビリルビンと胆汁酸濃度は相関した. 胆汁酸, ビリルビンの変動とGOT, GPT, ChEとの変動との間には一定の関係はなかつたが, A1-Paseが上昇する際に胆汁酸の変動が総ビリルビンの変動を上回ること, その逆も同様であることが認められた.
著者
黄 潔
出版者
西日本言語学会
雑誌
ニダバ (ISSN:02890089)
巻号頁・発行日
no.49, pp.57-66, 2020-03-31

本稿は、西日本言語学会第49回研究発表会で行った研究発表に加筆・修正したものである。本研究は中国国家留学基金、日本政府(文部科学省)留学生奨学金の助成を受けたものである。
著者
山下 由美子 Yumiko YAMASHITA
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.28, pp.57-71, 2018-03-18

学生のレポートにおける話し言葉の出現傾向を探るため,レポートの書き方に関する書籍で扱われる話し言葉を一覧表にまとめ,「学術文章作法Ⅰ」で課したレポートから出現数を調査した。最も多く出現したのは,接続表現の「そして」である。理由として,それを話し言葉と断定し,対応する書き言葉を明確に示しにくいことから,学生達は書き言葉であると認識し使用していると思われる。「じゃあ」「超」「~ちゃった」など口語としての話し言葉は全く出現していないため,ある程度は話し言葉と書き言葉の区別は身についていると言える。また,「ほとんど」「~と~」等,話し言葉と書き言葉の境界線があいまいなものも調査から明らかとなった。
著者
三明 翔
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5・6, pp.157-196, 2014-10-31

国際化の進む現代では、外国の捜査・司法共助を得て証拠を獲得することが刑事手続の運用に欠かせない場合がある。その一方で、外国機関が証拠収集に用いた手続や制度が我が国のものと異なり、獲得された証拠の証拠能力が争われることがある。国際捜査・司法共助により獲得された証拠の証拠能力を判断した判例はまだ多くないが、今後大きな争点となる可能性が高く、その判断枠組みの構築に取り組む必要がある。本稿は、この関心の下、ロッキード事件最高裁判決(最判平成七年二月二二日刑集四九巻二号一頁)が、検察官による事実上の刑事免責に基づいて米国の裁判所で作成された嘱託証人尋問調書を排除した論理を再検討する。最高裁は、刑訴法が刑事免責制度に関する規定を置いていないことを理由として述べたが、その相当に簡潔な判示に加え、同様の理由に基づく証拠排除の判断が他に存在しないことから、厳密にいかなる理論構成により証拠排除の結論を導いたのかについて、今なお共通の理解が形成されていない。本稿は、これまで主張されてきた種々の理解を検討し、最も整合的な理解を試みた上で、国際共助により獲得された証拠の証拠能力に関して同判決が持つ含意を探る。
著者
岩木 和夫 林 譲
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.4, pp.207-211, 2009 (Released:2009-10-14)
参考文献数
5
被引用文献数
2

検出限界は,ある物質を検出できる最少量であり,ノイズとシグナルの境界とも言える.科学としての学問的興味から,分析化学の分野では数十年前から熱心な研究が行われている.一方,ある物質が存在するか否かは,クリティカルな国際問題とも成りえることから,国際ルールである分析法バリデーションにおけるパラメータとして採用されている.たとえば,ISO,IUPACなどで検出限界が取り上げられている.しかし,検出限界の概念を統計学的に与えてある解説は多いが,実際に求める方法を提示してある文献は少ない.現実には,分析者は,自分の分析法の検出限界を自分の責任で推定し,提出または公表しなければならない.しかし,求めた検出限界の信頼性が最も重要な問題である.数少ない繰り返し測定から求めた検出限界は,求めるごとに数倍異なることもある.少ない実験からの検出限界はばらつくことを知りながら,その偶然の値を採用し,危険な物質の検出限界を大きく推定することや,発見したい目的物質の検出限界を小さく見積もるのは反則である.本稿では,ISO11843 Part5の方法を解説する.この方法は,統計的に信頼できる検出限界を与えるので,国際的に通用するデータの信頼性を保証できる.分析法としては,競合法ELISAと非競合法ELISAを例に挙げる.
著者
巌松堂書店 [編]
出版者
巌松堂書店
巻号頁・発行日
vol.第143回, 1937
著者
申 知燕 李 永閔
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100200, 2016 (Released:2016-04-08)

1.はじめに 資本主義経済のグローバル化は,世界各国において商品やサービスはもちろん,労働力の国際移住までをも活発にさせた.労働のグローバル化とも言われる国際移住の増加は,特にグローバルシティにおいて顕著に現れており,生産者サービスに従事する熟練労働力,ならびに彼らにサービスを提供するための非熟練労働力の急増が起きている.特に,グローバルシティに流入する近年の移住者の中には,トランスナショナルな移住者という,国境を越えて様々な地域で家族・知り合い・民族集団との人的ネットワークを活用し生活情報を共有・利用しているような移住者が増加しており,既存の移民者が形成したローカルを変化させている.エスニック・エンクレイブ(ethnic enclave)のように,旧来の移住者が形成した集住地は,移住者がホスト社会に同化するまで一時的に留まるためのものであったが,近年はトランスナショナルな移住者の登場によって複数の文化や人的ネットワークが交差する中でアイデンティティの競合が起こり,多様な特性を持つ空間へと変化している. 従って,本研究では,トランスナショナルな移住者によってグローバルシティにおける移住者の集住地がとめどなく混成的に変化していることを確認することを目標にした.具体的には,コリアタウンの景観および韓人と朝鮮族の民族間関係を分析し,朝鮮族移住者の柔軟なアイデンティティがいかに集住地とその内部の移住者間の関係を変化させるのかを把握することを試みた.本研究の分析にあたり,2012年5月および2013年6月に現地調査を行い,韓人,朝鮮族,中国人など合計42人から得たヒアリング資料を収集・分析した.   2.事例地域の概要 本研究の事例地域としてニューヨーク州ニューヨーク市クィーンズ区のフラッシングに位置するコリアタウンを選定した.フラッシングでは1970年代から韓人移住者向けの商業施設が立地し,現在はニューヨークにあるコリアタウンの中でも最も歴史が長く,人口も多い,典型的なエスニック・エンクレイブとなっている.フラッシング地区における2010年の韓人人口は約3万人に上るが,近年は居住者の高齢化や新規移住者層の属性の変化によって人口の流出・現象が起きており,老朽化しつつある.   3.知見 本研究から得た結論は以下の2点となる.1点目は,フラッシングのコリアタウンが大型化・老朽化し,近隣地区にチャイナタウンが形成されたことが朝鮮族の流入のきっかけとなったことである.韓人移住者の郊外化や,自営業者の引退などによってフラッシングのコリアタウンは縮小傾向に陥った.韓国・中国のアイデンティティ両方を持つ朝鮮族は,韓人の経営する店で従業員として勤務するか,コリアタウンとチャイナタウンの境目で自営業を行い,韓国人・中国人・朝鮮族全部を顧客として誘致する.このような朝鮮族の活動によって,コリアタウンは多様な民族景観が結合された liminal spaceとなる. 2点目は,フラッシングの朝鮮族は,自らの必要に沿って,戦略的かつ選択的にアイデンティティを発揮し,コリアタウン内外で生活を営む点である.韓国語・中国語を駆使する能力や,中国国籍を活用して韓人教会のコミュニティで活動することで,彼らは生活基盤やアメリカの永住権を獲得する.彼らの柔軟なアイデンティティは,コリアタウン内の韓人にとっては同胞意識や異質感,敵対心などを同時に感じさせる要因となり,朝鮮族と韓人の間の葛藤や差別の原因にもなる.
著者
大江 茂
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.343-359, 1975-07-31 (Released:2011-08-11)
参考文献数
2

For analyzing the phenomenon of animal motion, first of all, the author tried to give chase to the movement of a human being and a horse with 16 mm cine-camera.And, it was studied to express the measurement system for the element of motion from the filming image.As the result, it will be possible to get the motion value by developing the description of the movement of the various joints of a human's and horse's bodies.The author was interested in the study of analyzing a movement as the mation on line animation of the figure of animals, and next it was tried to use the experimental formula for the change of perspective value of the backward (it is an opposite side for the shooting camera) and skew motion from the three dimensional standpoint of the image through the photographic lens.
著者
石原 淳子 津金 昌一郎
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.590-602, 2017-12-01 (Released:2018-02-20)
参考文献数
36

がんの発生には栄養・食生活などの生活習慣が深くかかわっている.本稿では,国内外で明らかとなってきている,がんのリスク要因となる栄養・食生活習慣のエビデンスの現状について紹介し,ライフコースを見据えたがん予防・対策における課題と今後の方向性について考察した.国立がん研究センターが提示する「日本人のためのがん予防法」の推奨項目は,科学的根拠に基づく日本人のがんリスクを総合的に評価し,提言された指針をもとに作成されている.評価の時点で発表されている論文の系統的レビューを行い,科学的な根拠としての信頼性の強さと,要因とがんの関連の強さを判定基準に沿って総合評価する方法で行われている.評価された項目のうち,「飲酒」「塩分・塩蔵食品」「野菜・果物」「身体活動」「体形」などの食と栄養に関わる項目は,予防可能なリスク要因のうち,日本人におけるがんの人口寄与割合が喫煙,感染の項目に次いで高いことが明らかになっている.また,国際的な動向として,世界がん研究基金と米国がん研究協会の「食物・栄養・身体活動とがん予防・継続的評価(Continuous Updating Project)」による評価がある.全粒の穀類・食物繊維,乳製品・カルシウム,赤肉・加工肉,コーヒー,体格,体脂肪(ライフコースにおける変化含む),βカロテンサプリメント,グリセミック負荷など,日本人を対象とした評価では関連が弱い,またはデータが不十分な項目についても評価されている.がんのリスク要因に関する知見のまとめと公表を目指したこのようなトランスレーショナル・リサーチは,疾病予防のための課題解決に向けて,優先順位をつけるため国内外で行われている.ライフコースを見据えたがん予防においては,①栄養・食生活について科学的に明らかながんリスク要因の具体的効果的改善方法に関する研究推進および実践,そして②若い世代が将来,がんを発症する世代になるまでの間の,食生活変化を踏まえた動向の注視,特に国際的に課題とされている要因についてのモニタリング,の二点が重要である.がんは生活習慣が長い年月蓄積して発生する疾患であるため,ライフコースを見据えた対策は特に重要である.生活習慣が確立されるライフコース前半に,身に着けるべき望ましい栄養・食生活の習慣を国民に広く伝えていくと同時に,将来,リスク要因となりうる,ハザードに関して国際的な研究結果に注意を払い,先手の対策を考えることも重要である.
著者
梶原 景昭
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-37, 1995

フィリピン社会に、今日でもきわめて強い浸透力をもつフォークロアが存在する。それは太平洋戦争中、旧日本軍が戦争遂行のための財貨をフィリピン国内に隠匿し、現在でもまだ埋まっているというものである。戦争末期に山下奉文大将がフィリピン方面軍司令官として着任し、その後降伏したこともあって、この隠された財貨は「山下財宝」と総称されている。この覚書は、今日でも人びとがうわさし、実際に財宝を求めて探索を続けている「山下財宝」伝説を、フィリピン社会・文化の文脈のなかで位置づけ、戦後五〇年にわたる変化の軌跡についてもあわせて検討するものである。この伝説のありようは、フィリピン人の世界観、歴史的背景、対外関係、富の概念、経済の状況、国家のあり方、政治権力の性格などを、多層的に映し出している。なお本稿を書くにあたり、平成六年度文部省海外学術調査「異文化共存の可能性」(代表 青木保) に関わる実地調査に負うている。ここに感謝を示したい。

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1933年02月16日, 1933-02-16
著者
上村 繁樹 大久保 努 野本 直樹 原田 秀樹
出版者
公益社団法人 日本下水道協会
雑誌
下水道協会誌 (ISSN:00214639)
巻号頁・発行日
vol.56, no.686, pp.114-120, 2019

<p> 本報では,インド国ウッタルプラデーシュ州アグラ市において建設された,処理水量5,000m<sup>3</sup>/dのDHS(Down-flow Hanging Sponge)実規模実験プラントで形成されたDHSスポンジ担体付着汚泥(アグラDHS担体汚泥)の性状について報告する.アグラDHS担体汚泥は,日本の通常の初沈流出下水で形成されたものと比較して,非常に粘土質で,汚泥濃度が約100g-DS/L-spongeと高く,そのうち60%近くを無機物質が占めていた.またその表面は<i>Thiothrix.</i> spからなる硫黄マットで覆われていた.アグラDHS担体汚泥の無機成分をX線回折と蛍光X線分析で解析した結果,主にカオリン類という粘土類が検出された.さらにアグラDHS担体汚泥に対する初沈流出下水の処理性能試験および水の浸透度試験を行った結果,カオリン類の蓄積の影響により,スポンジ担体への水の浸透が阻害され,DHSの処理性能に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された.</p>
著者
大山 晃平 小川 剛史
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.31-39, 2020 (Released:2020-03-31)
参考文献数
24

There have been many studies on cross-modal interfaces by interaction among multiple sensory modalities. Most of the previous studies utilize the cross-modal phenomenon as a means to give a new stimulus or to enhance stimuli. In this paper, we propose the diminished reality method for a pressure stimulus by the cross-modal phenomenon. Our method generates cross-modal phenomenon by the mismatch between visual stimulus and pressure stimulus by using reverse reproduction of video. The experimental results showed that the pressure perception can be reduced by the mismatch between visual stimulus and pressure stimulus in both smartphone mode and HMD mode.
著者
野本 直樹 多川 正 荒木 信夫 大久保 努 上村 繁樹
雑誌
宇部工業高等専門学校研究報告 (ISSN:03864359)
巻号頁・発行日
no.66, pp.5-9, 2020-03

To investigate the hygienic environment in Peru, we visited Cusco sewage treatment plant. The altitude of Cusco sewage treatment plant is 3,193 m being considered that it is one of the treatment plants installed at the highest elevation in the world. It is the newest plant in Peru and the present facility has run since 2014. The treatment type is trickling filter with PVC media. One of the features for being installed at high altitude is installing blowers to supply oxygen despite that trickling filter substantially does not need aeration. It is because of the low oxygen concentration in the air at high altitude. It should be noticed that the plant was entirely controlled by modernized and sophisticated system despite that it was built in developing country.