著者
山下 倫実 坂田 桐子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-71, 2008-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
49
被引用文献数
6 2

本研究は, 大学生におけるソーシャル・サポートと恋愛関係崩壊からの立ち直りとの関連について検討した。まず, 性役割の観点より, 恋愛関係崩壊前の情緒的サポート源が恋愛パートナーに限定される者は女性より男性に多いという予測1について検討した。恋愛関係にある大学生146名を対象に友人 (同性/異性), 恋人, 家族 (同性/異性) から提供されたサポート (情緒的/道具的) について尋ねた。その結果, 予測1は概ね支持された。次に, 現在, 恋愛関係にない大学生132名を対象に恋愛関係崩壊時の情緒的サポート源が多い者ほど, 立ち直り評価が高いという予測2について検討した。各関係からのサポート (予測1の検討と同様), 恋愛関係崩壊時のショック度, 恋愛関係崩壊からの立ち直り過程の経験及び立ち直り評価などの項目について回答を求めた。サポート形態は, 情緒的サポート源が多様である多様型, 情緒的サポート源が同性友人に限定される同性友人型, サポート低型に分類された。予測2は概ね支持され, 恋愛関係崩壊前の情緒的サポート源を恋愛パートナーに限定することが, 立ち直り評価の低さにつながる可能性が論じられた。
著者
原 翔子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.245-248, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
11

文化継承の場としての博物館は今や観光施設としても機能し始め,その役割は展示や教育にとどまらない.しかし博物館という閉鎖的かつ遮断されて環境下においては,モノからコトが切り離されやすいという問題を抱えている.また,展覧会の記憶は館外へ持ち出されてから時間が経ってしまうと日常生活のなかで想起させるのが難しい場合がある.展示内容には満足していても,混雑などにより満足いく鑑賞経験が得られないこともある.そこで本研究では,これらの問題解決の糸口となるような,文化継承の場における情報技術の更なる応用可能性や用途の多様性について検討したい.これまでは文化情報を伝える手段として情報技術を捉えてきたが,体験の記憶を再構築させるための情報技術の在り方こそが,文化継承に寄与することは確実だ.中でも特に,これまで展覧会図録が担ってきた役割に対する情報技術の貢献可能性を提唱する.
著者
時実 象一
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.237-240, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
7

デジタルアーカイブにおいても、国立国会図書館デジタルコレクション、国文学研究資料館の「新日本古典籍総合データベース」など、デジタル化書籍・書物に永続的識別子であるDOIが付与されるようになってきた。しかしデジタルアーカイブのコンテンツ、たとえば博物館資料などへの付与はあまり進んでいない。デジタルアーカイブ・コンテンツにDOIを付与すれば、それらコンテンツの活用事例の調査や収集が容易になると考えられるので、推進することを提案する。
著者
城所 岩生
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.229-232, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
2

欧米でデジタルアーカイブ化が着実に進んでいる。2004年、グーグルは出版社や図書館から書籍を提供してもらった書籍をデジタル化して検索可能にする電子図書館構想を発表。米国の一民間企業主導の電子化に対して懸念を抱いたフランスのよびかけで、欧州は2005年に各国の文化遺産をオンラインで提供する欧州デジタル図書館計画、ヨーロッピアーナを立ち上げた。法制面でも孤児著作物を利用しやすくするため、2008年に孤児著作物指令、2019年にはデジタル単一市場における著作権指令を制定。後者では拡大集中許諾制度を採用、集中許諾制度は権利集中管理団体が著作権者に代わって著作権を管理する制度で団体の構成員のみが対象だが、これを構成員以外にも拡大する制度。米国でも導入の動きはあったが、グーグルの電子図書館構想に対する訴訟でフェアユースが認められたため不要とする意見が多く見送られた。欧米に比べると牛歩の観が否めない日本の対応策を提言する。
著者
大野 理恵 細矢 剛 真鍋 真
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.211-213, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
6

国立科学博物館では2019年4月現在、470万点以上の自然史系および理工系の標本資料を管理・保管している。館内の膨大な数かつ多種多様な分野にまたがる標本資料を一元的に管理し、またその情報を一般市民に公開するため、当館では標本資料統合データベース(以下統合DB)を管理・運用している。統合DBに登録されている自然史系標本のデータは、S-Net(サイエンス・ミュージアムネット)やGBIF(地球規模生物多様性情報機構)、ジャパンサーチに提供され、公開されている。本発表では、統合DBの概要と利用状況について紹介するとともに、統合DBが有する様々な課題について報告する。
著者
高橋 良平 中川 紗央里 徳原 直子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.203-206, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
5

「ジャパンサーチ」は、我が国が保有する多様なコンテンツのメタデータを検索できる国の分野横断型統合ポータルである。本発表は、2020年夏までの正式版公開に向けて、機能改善及び連携拡大を進めているジャパンサーチについて、現時点の到達点をまとめ、今後の課題を考察するものである。すなわち、構築に至る背景と構築の目的を説明したのち、ユーザや連携機関のためのさまざまな機能、権利表示の仕組み及び連携拡大のための取組を紹介し、最後にジャパンサーチが発展していくために解決すべき課題について報告する。
著者
安永 知加子 柊 和佑 石橋 豊之
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.173-176, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
5

我々は、組織による地域情報の収集・蓄積・利活用を「地域の記憶」アーカイブの中核であると位置付け、収集手法、形式および保存方法、効果的な利活用手法を検討している。本稿では、組織の活動として作成されたCATVや組織内放送用動画像を地域情報資源と捉え、将来的に組織が「利活用」することを第一に考えた収集・蓄積・提供手法を提案する。具体的には、中部大学において約10年にわたって動画を作成し、地元CATVに番組を提供し続けているサークルである放送研究会の素材映像、番組映像および、構成台本、議事録等を収集対象とし、放送研究会および中部大学内で利活用しやすいアクセスポイントの設定および、メタデータスキーマと蓄積手法を検討した。アーカイブする対象としては、放送された映像のカット(映像の切り替わり)を中心に収集・蓄積を行う。素材を含めたアーカイブは既存の動画アーカイブと異なる点である。また、システムのガイドライン作成し、人的要因による入力情報不足を防ぐ。
著者
任 玉洁 林 雅子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.23-26, 2020-05-07 (Released:2020-05-07)
参考文献数
18
被引用文献数
2

The purpose of this study was to examine the effect of parental bonding instrument (PBI) on over-adaptation in adolescence from the viewpoint of gender difference. The participants were 299 university students (male=125; female=174). The results showed that the level of mother’s loving on the PBI positively predicted boys’ and girls’ external aspect (EA) of over-adaptation, but negatively predicted girls’ internal aspect (IA) of over-adaptation. The level of mother’s overprotectiveness on the PBI was found to positively predict both EA and IA in adolescence. The level of father’s overprotectiveness on the PBI was positively associated with IA in boys; however, it was not significantly correlated with IA in girls.
著者
三輪 和久 松下 正法
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.152-163, 2000-06-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
19
被引用文献数
5

We investigated the processes of mental constraints relaxation as a key factor for gaining insight, using a discovery task. In our experiments, we set up four kinds of experimental conditions. First, we introduced three conditions while controlling mental bloking factors: (1) a condition in which subjects searched an incorrect hypothesis space, (2) subjects clung a blocking hypothesis in an incorrect hypothesis space, and (3) subjects gained no constraints as above. Second, based on feedback factors, the condition (2) was subdivided into the following two cases: (2a) a case in which a prediction from a subject's hypothesis missed largely from an experimental result, and (2b) a case in which a prediction and an experimental result were separating gradually. The experimental results showed that finding the target was disturbed more remarkably as stronger blocking factors were given. Especially, when subjects who formed an invalid blocking hypothesis were given only gradual feedback, the subjects' performance of finding the target extremely declined.
著者
三島 美砂 宇野 宏幸
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.414-425, 2004-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
7 2

小学校高学年の児童に, 1学期と学年末の2回,「教師認知」と「学級雰囲気」についての調査を実施し, 教師が学級集団や学級雰囲気に如何に効果的に影響を及ぼすかということを検討した。因子分析の結果,「教師認知」因子として,「受容・親近」,「自信・客観」,「怖さ」,「罰」,「たくましさ」が,「学級雰囲気」因子として,「認め合い」,「規律」,「意欲」,「楽しさ」,「反抗」が抽出され, 重回帰分析の結果, 学級雰囲気と強い関連性をもっているのは, 教師認知因子「受容・親近」,「自信・客観」の2つであることが示唆された。「受容・親近」は主に「意欲」・「楽しさ」の2つの雰囲気に影響を与えており, 早期よりその効果が顕在化していた。それに対し,「自信・客観」は1学期にはどの雰囲気とも関連が認められなかったが, 学年末の学級雰囲気「認め合い」に正の,「反抗」に負の大きな影響力をもつことが示された。
著者
菅野 翔 国友 絢 香西 博明
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.2-5, 2016-01-20 (Released:2016-04-20)
参考文献数
11

本研究では,光応答性部位として知られるアゾベンゼンを導入した,新規置換アセチレンモノマーを合成し,Rh錯体触媒([Rh(nbd)B(C6H5)4]2)を用いて重合を行い,収率63.3%黒色粉末であった。生成ポリマーは,重量平均分子量(Mw)1.5×104,分子量分布(Mw/Mn)1.3であり,トルエンやクロロホルム,THFなどの有機溶媒に可溶であった。得られたポリマーの光異性化挙動について検討したところ,紫外光照射前後のUV-visスペクトルより可逆的なトランス体からシス体への異性化を確認した。また,TG測定の結果,ポリマーの熱重量損失開始温度は,228℃と良好な熱安定性を示した。
著者
大谷 拓馬 香西 博明
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.9-13, 2020-01-20 (Released:2020-01-28)
参考文献数
15

ポリウレタンCU-LTIはクルクミンとリジントリイソシアナートによって合成した。得られたCU-LTIの構造解析はFT-IRスペクトルによって測定した。N-H基およびC=O基に起因するピークがそれぞれ確認できた。CU-LTIの紫外-可視吸収スペクトルからは450 nmの吸収ピークが確認できた。また,CU-LTIの蛍光スペクトルにおいては520 nmに発光ピークを確認できた。TG測定の結果から,CU-LTIの10%熱重量損失温度は約200℃であった。CU-LTIのガラス転移温度は70℃を示した。応力-ひずみ曲線はCU-LTIが比較的軟らかく伸びる性質であることを示した。
著者
江草 由佳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.28-33, 2020-01-07 (Released:2020-03-02)
参考文献数
7

図書館が所蔵する書籍をデジタル化したコレクションをデジタルアーカイブとして公開する方法として国立教育政策研究所教育図書館近代教科書デジタルアーカイブを紹介した。カテゴリ検索を実現する方法として、図書館が通常提供している蔵書検索システムの一部に外付けでHTMLとカテゴリのサムネイル画像だけを使ってデジタルアーカイブを構築する方法を紹介した。図書館が持続的にデジタルアーカイブを公開するための論点として以下を考察する。構築時における書誌情報の作成と著作権調査、外部サービスとの役割分担、リンク連携、データとシステム移行への考慮を挙げ、考察する。
著者
Aya Ueda Shinji Toki Chisato Kitayama Manabu Akazawa
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.1135-1140, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
19
被引用文献数
4

Inappropriately reduced doses (IRDs) of direct oral anticoagulants (DOACs) are common in clinical practice. We performed a retrospective review using electronic medical records of St. Marianna University School of Medicine Hospital (a 1200-bed teaching hospital in Japan) to address the prevalence of IRDs and patient-related factors that result in IRDs. We also surveyed DOAC-treated patients who were hospitalized due to a stroke during the 5-year study period to analyze the association between stroke events and IRDs. We found that one in five patients who were newly prescribed a DOAC was treated with IRDs. Patients treated with edoxaban received the most IRDs (64%, 7/11), followed by those treated with dabigatran (50%, 1/2), apixaban (32%, 19/61), and rivaroxaban (27%, 12/44). Our analysis showed that the renal function (measured as serum creatinine and creatinine clearance values) and age are possible factors influencing dose reduction. The HAS-BLED score and antiplatelet use were not associated with IRD prescription. An analysis of the 5-year hospital records revealed 20 stroke cases despite ongoing treatments with DOACs, and IRDs were noted in three of these cases. In all three cases, the patients had been on an IRD of rivaroxaban. To prevent IRDs of DOACs, we suggest that a clinical protocol be incorporated into formularies to support the prescription process.
著者
大江 昌彦 白髭 由恵 窪田 泰夫 乾 まどか 村上 有美 松中 浩 森岡 恒男
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.127-132, 2010-06-20 (Released:2012-06-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

近年のにきび用化粧品は,毛包漏斗部を閉塞するような成分を除きpHを弱酸性にするなど,処方面での工夫がなされており,にきび患者が使用試験して問題となることは少ない。反面,化粧品の使い方(スキンケア)については,人によって方法が異なるのが現状である。そこで,〓瘡患者を対象として,化粧品の使用実態調査を行った結果,〓瘡患者は健常者に比べ,洗顔回数や洗顔料の使用量が多いことなどが明らかとなり,〓瘡の予防や改善のためには,化粧指導とスキンケアが重要であることがわかった。今回われわれは,女性〓瘡患者31名を対象として,皮膚科専門医による化粧指導とともにスキンケア製品を2カ月間使用し,皮膚生理機能および患者のQOLを調べた。その結果,皮膚の生理機能や患者のQOLの改善が確認され,皮膚科医によるスキンケア指導は,〓瘡患者の治療補助として役立つことが確認できた。
著者
Naoya WADA Tomoaki KUMEDA Masashi NAKAMURA Nagahiro HOSHI
出版者
The Electrochemical Society of Japan
雑誌
Electrochemistry (ISSN:13443542)
巻号頁・発行日
pp.20-00043, (Released:2020-06-16)
参考文献数
27
被引用文献数
1

Previous study shows that tetra-n-hexylammonium cation (THA+), which is composed of one nitrogen atom and four alkyl chains, increases the activity of the oxygen reduction reaction (ORR) on Pt(111) eight times as high as that of bare Pt(111). We have studied the ORR on Pt single crystal electrodes modified with alkane to elucidate which part of THA+ contributes to the enhancement of the activity for the ORR. The ORR activity is increased only twice by the modification of Pt(111) with dodecane and hexadecane. Combination of a nitrogen atom and alkyl chains of THA+ plays an important role in enhancing the ORR on Pt electrodes. Dodecane and hexadecane increases the ORR activity on Pt(111) and Pt(110), but they deactivate the ORR on Pt(100) and the high index planes.