著者
横尾 俊輔 柳澤 秀吉 村上 存 大富 浩一 穂坂 倫佳
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.C19, 2010 (Released:2010-06-15)

製品音は感性品質を向上させる重要な設計要素である.静音化が十分なレベルに達した製品群においては,製品音を感性品質として捉えた音のデザインが注目されている. これまでの筆者らの研究から,製品音に含まれる適度なピーク成分(トーン)の存在が快音に寄与する知見が得られ,新しい感性品質指標の存在が示唆されている.そこで,本研究では,ピーク成分を含む製品の定常音について,和声学にもとづいた音の調和性を向上させることで,音質評価が向上することを被験者による感性評価実験の結果から明らかにする.これにより,製品音の快音化において調和性が一つの評価指標となることを示す.また,この調和性を説明する特徴量の候補として,和音性モデルの特徴量及びトーナリティを提案し,それらと対応する評価語,及び調和感・不快感に関する定量化を行う.さらに,不快感と調和感,及び協和感には強い関係があり,協和感を上昇させる不協和度を低く設定することが音質評価における不快感の軽減につながることを示す.
著者
高橋 恒介
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第23回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.435, 2007 (Released:2009-01-14)

情報技術者でもコマーシャルやアニメのバックミュージックとなる音楽を作曲できるように、作曲またはサウンドデザイン手法を教育指導するためには、心地よい響きの音楽が対位法で導き出される理由を説明する必要がある。和声や和声の進行だけでない。そのための一手法として音楽のグラフ表示とグラフ分析方を提案する。対位法を考慮して、2声~4声の音楽でのパート間音程間隔の推移をグラフ化し、心地良さの原因を提示する。代表的な合奏曲での良い響き事例を示す。
著者
土谷 正和
出版者
一般社団法人 日本エンドトキシン・自然免疫研究会
雑誌
エンドトキシン・自然免疫研究 (ISSN:24341177)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.23-25, 2018 (Released:2018-11-22)
参考文献数
7

Low Endotoxin Recovery (LER) is a phenomenon of endotoxin activity decrease in a matrix containing a chelating agent and a detergent, and is a controversial topic in the biopharmaceutical field. The mechanism of LER is not fully elucidated. When endotoxin in LER solutions was diluted with water, the activity was decreased. The activity was maintained for a long time at 4°C, and was recovered by magnesium dilution and direct addition to the Limulus amebocyte lysate (LAL). The size of endotoxin in LER solution was not changed after the activity was decreased. Considering these results, a new LER mechanism was proposed. A chelating agent removes divalent cations from the surface of endotoxin aggregates, and endotoxin molecules on the surface of the aggregates are replaced with detergent molecules. The reduction of the surface area of endotoxin aggregates causes decrease of the endotoxin activity to the LAL.
著者
近藤 裕貴 岩田 学
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.577-581, 2011 (Released:2011-11-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

〔目的〕体幹筋へのアプローチとして,臨床場面でのSLRの活用方法を見出すために下肢伸展挙上(以下,SLR)保持における非挙上側下肢の条件設定によって,下肢・体幹筋活動がどのように変化するか調査した.〔対象〕健常男性21名(年齢20.6±3.7歳)を対象とした.〔方法〕課題動作は,非挙上側下肢を鉛直下方向に押すことを強調したSLR保持:「押す」,押さないことを強調したSLR保持:「押さない」,特別な条件を加えない通常のSLR保持:「通常」,の3条件とした.非挙上側下肢の肢位は股・膝関節伸展位とした.表面筋電図により,脊柱起立筋,腹直筋,内側ハムストリングス,大腿直筋,それぞれ左右両側の計8筋の筋活動を測定した.〔結果〕脊柱起立筋は「押す」,腹直筋は「押さない」において,左右両側とも他の2条件に比べて有意に%MVCが高かった.〔結語〕「押す」,「押さない」の2条件は,脊柱の運動が制限されていても様々な臨床場面で体幹筋活動を促して,体幹機能の賦活化を図ることが可能であることが示唆された.
著者
今和泉 卓也
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.92-99, 2017-06-14 (Released:2017-07-01)
参考文献数
1
被引用文献数
1

これまでいくつか自分なりに教材や実験を作ってきた。その際に,モットーとしていることがある。それは「まずは自分で考え,なるべく身近なもので作り上げる」こと,そしてそこに「違和感あるいは自発的な気づきを生み出す余地がないかを検討する」ことである。いまだ反省材料や課題は多いが,12年間の教員生活の中で,そういった意識のもと取り組んできた実践について,具体例を中心に紹介する。
著者
荘司 博行
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.390-397, 2015-11-25 (Released:2019-02-20)
参考文献数
14
被引用文献数
2

入浴剤は日本独特の商品である.お風呂文化も日本独特であり,これほど生活に密着したものはない.入浴剤の原型「浴剤中将湯」が世の中に出て,110年以上が経過する.入浴剤の初期は,香りより入浴効果を重視した.昭和5年には,「芳香浴剤 バスクリン」が発売され,入浴剤の主役は,効果から次第に香りに移行する.そして,時代とともに入浴剤の形態も多様化した.発売当初から現在までの,多様化する入浴剤の変遷を追いながら,入浴剤の主役ともいえる香りの変遷について,香りを創る調香師の目線で考察する.
著者
清水 誠一 福田 三郎 有田 道典 先本 秀人 江藤 高陽 高橋 信 西田 俊博
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.2090-2095, 2010 (Released:2011-02-25)
参考文献数
12

腎癌術後に肝転移再発と鑑別困難であった,肝副葉の1例を経験した.症例は59歳,男性.平成16年,右腎癌に対して手術施行されたが,術前のComputed tomography(CT)では肝腫瘤は認めていなかった.腎癌術後6カ月のCTで肝左葉に1cm大の腫瘤を認め,その後増大傾向を認めた.Dynamic CTでも造影効果を認めたため,転移性肝腫瘍を疑った.手術を施行したところ,肝外側区域から被膜を介して肝外に伸びる母指頭大の腫瘤を認め,切除した.摘出標本では,被膜内に門脈,動脈,胆管を認め,腫瘤は正常肝組織であり肝副葉と診断された.肝副葉は手術時などに偶然発見されることが多いが,本症例は術前に転移性肝腫瘍と鑑別困難な症例であったため,文献的考察を加えて報告した.
著者
一戸 渉
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. 文学研究篇 = The bulletin of the National Institute of Japanese Literature. 人間文化研究機構国文学研究資料館 編 (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.45, pp.63-91, 2019-03

本稿は白河藩第三代藩主にして、幕府老中首座を務め寛政の改革を主導した松平定信(一七五八~一八二九)の晩年における文事、とりわけ定信自身が「細写」と呼ぶ、主として豆本形態での歌書の写本製作活動の総体的把握を目指したものである。まず桑名市博物館所蔵のものを中心とする定信作製の細写本二十八点(現存未詳のものも含む)について整理を試み、適宜書誌解題を付した。続いて、定信が筆写した書物がほぼ歌書に限られていることから、歌書製作の伝統的様式としての豆本形態について概観した。更に、定信自身がこうした細写本製作をどのようなものとして捉えていたのかについて、定信の抱いていた文学観の検証と併せて、定信自身の言説と行動とのあいだに見られる落差や不整合に着目しながら一定の解釈を試みた。その結果、定信はつまるところ当時の倫理観とは相容れない要素を含み持つ王朝文学の風雅な世界を愛好しつつも、あくまで治者として係累や周囲のひとびとに自己を道徳的に見せようと心を砕いており、その結果として、一見すると矛盾や強弁にも見える言動を行っていたものと結論付けた。This article aims at a comprehensive understanding of the elaboration of the Kasho (Waka book) manuscripts by Matsudaira Sadanobu (1788 -1829), a daimyō of the Shirakawa Domain who served as chief of the council of Elders of the Bakufu and led the Kansei Reforms. Among his writings in the later years, we put weight on ones in the mame-bon (miniature book) style which Sadanobu called saisha (minutely written). First we organized 28 of the saisha manuscripts made by Sadanobu, mainly of the Kuwana City Museum collection (including extant unidentified ones), and attached bibliographical information when necessary. Subsequently, we reviewed the mame-bon style as a traditional style of kasho manuscript making since books handwritten by Sadanobu are almost limited to kasho.We tried to obtain certain interpretation on Sadanobu's perspective toward the roles the manuscript making played in literature together with the validation of Sadanobu's view of literature, while paying attention to differences and or inconsistencies between Sadanobu's discourse and his behavior. We concluded that contradictions and or bullish claims might have been seen in his behavior due to the differences between his duties and his personal preferences. Specifically, Sadanobu had to represent himself morally as the ruler to his dependents and to people surrounding him while he loved the elegant world of dynasty literature which had incompatible elements with the ethics of the time.
著者
平井 廣一 足立 清人
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.103-113, 2018-06-14

近代日本経済史の分野では,明治初期の地租改正を契機に成立する地主的土地所有の歴史的性格をめぐって,地租を「近代的租税」と規定するか,あるいは絶対主義下の「半封建的貢租」とするかで見解が分かれている。また地主的土地所有についても,「近代的土地所有」であるか,あるいは「半封建的土地所有」と規定するかで見解の対立が見られる。本稿は,「半封建的土地所有論」が立論の根拠とする「近代的土地所有権の未成熟」論を,民法における土地法ないしは借地借家法の視点から再検討を加える。すなわち,「近代的土地所有権」がイギリスをモデルとして成立したことをもってその典型といえるのか,また「土地用益権の物権構成」は果たして近代的土地所有権が確立するための必須の条件なのかを法理論的に再検討する。