著者
一二三 朋子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.76-89, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
24

多言語・多文化社会では,異文化接触場面によりさまざまな心理的変容が起こり,そうした変容は共生のための学習と捉え得る。本稿では,接触場面でのコミュニケーションで行われる異なる意識的配慮に焦点を当て,意識的配慮がどのような要因で学習されるかを明らかにすることを試みる。アジア系留学生150名を対象に質問紙調査を行い,因子分析によって共生的学習に関わる要因と意識的配慮を特定し,次に,パス解析によって共生的学習の過程を考察した。その結果,意識的配慮の学習には自他の行動に関する信念が複雑に関与していること,その信念には日本での留学生活の質や日本人の態度などが影響を与えていることが明らかになった。
著者
野尻 亘
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.129-144, 1992-12-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1

わが国の地理学においては通勤の研究は主として都市圏の分析に応用されてきたが,海外の地理学においては,交通手段の選択の問題に大きな関心が示されている。それは特に非集計モデルの発達,社会交通地理学研究の進展によって,自動車を利用できない状況にある人々,移動制約者の空間行動に関心が向けられてきたからである。しかし,わが国では既存の統計の不備もあって,自動車通勤や自家用車普及率の地域的な違いは地理学研究では看過されてきた。現在でも1960年代より急速に進展したモータリゼーションの勢いはなお衰えていない。それと同時に,東京をはじめとする大都市圏に人口が集中し,衛星都市が外延的に拡大していく一方で,農山漁村や衰退産業地域の斜陽化は著しい。そこで, 1980年の国勢調査ならびに運輸省等の統計によって,全国各都道府県・都市の通勤利用交通手段の選択比率・世帯あたりの自家用車普及率を調べたところ次のような地域的なパターンがあきらかとなった。公共交通利用通勤者が自家用車利用通勤者を上回っているのは,東京・大阪の2大都市圏と札幌・仙台・名古屋・広島・北九州・福岡の広域拠点都市とその周辺の限定された地域に認められること。公共交通利用通勤者の比率が高く,世帯あたりの乗用車普及率が低いのは東京・大阪2大都市圏内の衛星都市に著しいこと。東京・大阪2大都市圏を除いた国土の大部分で通勤に最もよく利用されているのは自家用車であること。しかし,特に関東北部から中部地方にかけての日本の中央部において,自家用車の利用率と普及率が著しく高いのが目だつことがわかった。以上の結果は,過密する大都市圏においては,道路渋滞や駐車用地の不足が自家用車の保有や通勤利用の抑制要因となっていることを反映していよう。さらにわが国では,公共交通を利用して通勤することが一般的である大都市圏と,自家用車を利用して通勤することが一般的である地方中小都市・農山漁村との生活様式の違いが著しいことが確認できた。モータリゼーションは,利便性だけではなく,公共交通の衰退をはじめ,移動制約者などの交通弱者のモビリティ剥奪などのさまざまな問題を生じさせつつある。本研究は,基本的な事実を統計上から再確認したものにすぎないが,今後の交通行動研究の基礎資料とすべく,さらに1990年国勢調査のデータとの変化を分析することを予定している。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1952年04月28日, 1952-04-28
著者
横川 博一
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.292-307, 2016 (Released:2018-02-06)
参考文献数
39

By examining the communication scenes that occur between people, we consider the nature of we-mode that occurs in individual-to-individual interactions. First, we consider the basis of we-mode emergence from the perspective of speech acts and various communicative functions within the framework of verbal communication. Next, we examine the psycholinguistic models of verbal communication, referring to Levelt (1989), in order to describe the mechanisms of dialogue. Subsequently, we focus on the interactive alignment found in dialogue as a form of we-mode that arises in verbal communication and consider we-mode by examining the phenomenon of linguistic priming. In addition, after investigating whether this linguistic priming arises in communication between learners of foreign languages, as well as between native speakers, we refer to various foreign language teaching methodologies and second language acquisition theories to consider how communication has been viewed in foreign language education in the past and attempt to understand the identity and role of we-mode in verbal communication and foreign language acquisition.”
著者
安藤 丈将
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.239-254, 2014 (Released:2015-09-30)
参考文献数
35

本稿では, ラ・ビア・カンペシーナ (LVC) を中心とする小農民の運動について考察する. LVCは, 現在のグローバル政治の中で影響力をもつ行為者であるが, いかなるフレームが農民をエンパワーさせ, さまざまな人びとを連帯させているのだろうか.LVCのフレームの特徴は, 第1に, 貧しく, 弱く, 時代遅れと見なされていた小農が, 貧困と排除なき未来を切り開く存在として読み替えられていることにある. このフレームは, 「北」と「南」を横断するかたちでアグリビジネスの支配にあらがう政治的主体を定めることを可能にした.第2に, 小農の争いの中心が文化に置かれていることにある. 「食料主権」というスローガンのもと, 小農が自己の経済的利益だけでなく, 食べ物に関する自己統治を問題にする存在という位置づけを与えられているため, 労働者や消費者も含めた広い支持の獲得が可能になっている.第3に, 小農が知識を分かち合うということである. これは企業による知識の独占とは対極に位置づけられ, 小農は小規模であるがゆえに共存共栄できるという信念を作り出し, 相互の連帯を促進している.最後は, 小農は路上だけでなく, 農場でも抵抗することにある. 少ない資源を有効に利用し, 市場との関わりを限定的にしながら, 自らの労動力を使って生産する. LVCの運動の主体は, この方法を実践している組織された農村の専業農家だけでなく都市の半農を含み, 多様な生産者の層にまで広がっている.
著者
桑本 融
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.439-445, 1984-07-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1