著者
疋田 京子
出版者
鹿児島県立短期大学
雑誌
鹿児島県立短期大学紀要. 人文・社会科学篇 = Bulletin of Kagoshima Prefectural College. 紀要編集委員会 編 (ISSN:02861194)
巻号頁・発行日
no.68, pp.19-31, 2017

1998 年以降,西欧的な立憲民主主義体制を確立し,女性政策もジェンダー主流化へと大きく転換したインドネシアでは,「1974 年婚姻法」の改正が女性政策の中でも重要課題の一つである。だが,女性の権利やジェンダー平等の要求を,反宗教的・西洋世界のフェミニズムの模倣として無力化する「イスラームの政治化」現象も起きている。「婚姻法」の議論は憲法裁判所の違憲審査へと闘いの場が移され1),インドネシアのジェンダーに関する社会問題の実態を,競合する政治勢力に政治的資源として提供している。

1 0 0 0 OA 人物偶録

著者
徳富猪一郎 著
出版者
民友社
巻号頁・発行日
1928
著者
石原 孟 山口 敦 藤野 陽三
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.731, pp.195-211, 2003-04-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

本研究では複雑地形における局所風況を数値的に予測するために必要な計算領域の大きさを明らかにするとともに, 新しい境界処理手法と数値解法を提案し, 大型風洞実験によりその妥当性を検証した. まず計算領域の大きさに関して, 計算領域の高さ, 幅, 上流境界の位置が流れ場に与える影響を明らかにした. また境界処理方法として, 地形の体積が一定となるような緩衝領域を境界付近に設置するとともに, 対象領域と同じ程度の大きさの付加領域を上流に設置する手法を提案した. さらに大規模線形連立方程式の数値解法について詳細な比較検討を行い, 高速かつ安定な数値解法を提案した. 最後に実地形模型を用いた大型風洞実験を行い, 本研究で開発した数値予測手法が従来の手法より複雑地形上の局所風況を精度よく予測できることを実証した.
著者
小池 博明 半澤 幹一
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
長野工業高等専門学校紀要 = Memoirs of Nagano National College of Technology (ISSN:18829155)
巻号頁・発行日
no.53, pp.1-10, 2019-06-30

This paper is an investigation and interpretation (釈論) of 'Oe no Chisato-shu' (大江千里集) which is an anthology of Waka (和歌=ancient Japanese poems) by Oe himself.In this anthology, as usually called Kudai-waka (句題和歌), each Waka is given one phrase poetic title from Kanshi (漢詩=ancient Chinese poem) selected by Oe. The authors of this paper think that the mutual relations between expressions in both Waka and Kanshi have various patterns. So,the central purpose of our investigation is to concretely explicate the actual condition of all these patterns. And first,this paper treats of Waka No.11~No.13 of 'Oe no Chisato-shu'.
著者
若宮 建昭
出版者
近畿大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

血液脳関門(Blood blain barrier;BBB)透過性を有するダイノルフィン様ペプチド(DLAP)および副腎皮質刺激ホルモン類縁体のエビラタイドの構造をもとに約20種のペプチドを合成したところ、両者の下線部分の構造を合わせ持つペプチドH-MeTyr-Arg-MeArg-D-Leu-NH(CH_2)_8NH_2(001-C8)が極めて高い透過性を示した。この001-C8を蛍光標識したペプチド001-C8-NBDの調製を行ない、まだ推測の域をでないAMT機構解明研究に用いた。その結果、従来の放射性標識では不可能であったペプチドの経時的な透過過程の追跡が可能となり、正電荷を持つペプチドが脳毛細血管細胞脂質膜上の負電荷部分に吸着したあと、徐々に膜を通過して脳実質へ移行する。AMT機構を視覚的に確認することができた。しかしながら、脂質膜上の負電荷部分の詳細に関してはまだ全く未知であり、今後明らかにされねばならない重要な課題である。001-C8を用いた種々の実験から、これを薬物の運搬役として利用するにはまだ血液中のペプチド分解酵素に対する安定性および脂溶性が、必ずしも十分高くはないことが明らかとなった。そこで、H-D-Tyr-D-Arg-D-Arg-D-Leu-NH(CH_2)_8NH_2,H-MeTyr-Arg-MeArg-D-Leu-NH(CH_2)_8NHCH(CH_3)_2,H-MeTyr-Arg-MeArg-D-Leu-NH(CH_2)_8NHCH_2CH(CH_3)_2などのペプチドを新たに合成し、それらの酵素安定性と透過性の試験を行っているが、その結果をもとに運搬役として理想的なペプチドの創製を目指す予定である。以上のように、本研究課題はまだ緒についたばかりであるが、これまでの研究により基礎的な問題は解決したので、今後の飛躍的な展開を期待して研究を続けて行きたい。
著者
徳本 真紀 李 辰竜 藤原 泰之 佐藤 雅彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-50, 2017 (Released:2018-03-29)

【目的】カドミウム (Cd) は、鉄の体内動態に影響を及ぼすことが報告されているが、その機構はほとんど検討されていない。そこで本研究では、Cdを慢性曝露したマウスにおける肝臓中鉄濃度および十二指腸中の鉄輸送関連遺伝子の発現変動を検討した。【方法】5週齢の雌性C57BL/6Jマウスに300 ppmのCdを含有した餌を21ヶ月間自由摂取させた。経時的に血清、肝臓および十二指腸を採取し、各種解析に用いた。十二指腸は胃の直下2 cmとした。【結果および考察】Cd曝露によりGOT・GPT活性およびBUN値が有意に高値を示したため、肝毒性並びに腎毒性が出現していることが示された。Cd曝露群の肝臓中Cd濃度は300 µg/g以上となり、投与期間に依存して増加したが、肝臓中の鉄濃度は対照群の50%以下となり顕著な低値を示した。次に、十二指腸における鉄輸送関連遺伝子の発現レベルを測定した。非ヘム鉄 (Fe3+) は十二指腸刷子縁膜上でDuodenal cytochrome b (Dcytb) により二価に還元され、Divalent metal transporter 1 (DMT1) により小腸上皮細胞内に取り込まれる。CdはDMT1 mRNAレベルに影響を及ぼさなかったが、Dcytb mRNAレベルを曝露期間を通じて有意に減少させた。また、葉酸輸送体であるHeme carrier protein 1 (HCP1) はヘム鉄 (Fe2+) の輸送にも関与することが知られているが、HCP1 mRNAレベルはCdの曝露期間を通じて有意に低下した。以上の結果から、Cdは十二指腸における鉄吸収機構に影響を及ぼしてヘム鉄・非ヘム鉄の吸収をともに阻害し、生体内鉄蓄積量を減少させることが示唆された。
著者
鶴身 暁子 田中 昌博 川添 蕘彬
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.72-80, 2007-03-25 (Released:2017-05-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究では身体活動時における顎口腔機能の役割を明らかにするために,動的な咬合接触および咬合接触圧分布と筋電図の同時計測を行い,健常有歯顎者のベンチプレス動作時の咬合接触と筋活動について検討した. 被検者は健常有歯顎者5名を選択した.被検者利き手側の側頭筋前部,咬筋,顎二腹筋前腹を対象筋とした. 咬合接触および咬合接触圧分布と筋電図の同時計測には,当講座で開発した同時計測システムを用い,咬合接触および咬合接触圧分布の測定には咬合接触圧用特注センサシートを用いた. 被検者に最大随意咬みしめおよび最大随意開口を指示し,3回の試行の咬合接触圧の最大値および筋電図包絡線の最大値を平均し,その値を個人の100%の値とした. 被検動作はベンチプレス動作とし,光による単刺激の合図に,可能な限りすばやくバーベルを挙上するよう指示した.被検者の最大挙上重量を100%とし,各重量時の側頭筋前部,咬筋および顎二腹筋の筋電図包絡線最大値に対する比率を計測したところ,ベンチプレス動作と顎口腔機能の関連において以下の結論を得た. 1.すべての被検者で約95%重量時において,咬筋筋電位の発現が20%を超えた. 2.約50%以下の重量時においては,全被検者で側頭筋前部および咬筋筋電位の発現が10%未満であった. 3.顎二腹筋の筋活動量は最大随意開口時とほぼ同程度であった. 4.すべての被検者の全試行において,最大咬みしめに至るような咬合接触値は認められなかった. 5.身体活動時において,挙上重量が個体の限界に近いほど,咀嚼筋が協力的に作用し,咬合接触の有無にかかわらず,下顎の固定に関与していることが示唆された.
著者
大島 京子 末松 弘行 堀江 はるみ 吉内 一浩 志村 翠 野村 忍 和田 迪子 俵 里英子 中尾 睦宏 久保木 富房
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.315-324, 1996
参考文献数
16
被引用文献数
4

TEG第2版の臨床的応用の第一歩として, TEG第2版を用いて健常者群と患者群とを比較検討した。一定の判定基準からTEGプロフィールのパターンを判定し, それぞれの群のパターンの出現率をX2検定を用いて比較した。また, 2群のプロフィールの相違を数量的に把握するために, 多変量解析(変数選択法・正準判別分析)を行った。その結果, TEGパターンの出現率に差があり, 患者群に不適応的なパターンが多いこと, さらに5尺度のうちFCが最も2群の判別への関わりが大きいことなど, 2群の違いが有意に示された。以上により, TEG第2版が臨床上十分有用であることが確認された。
著者
華園 聰麿
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.915-946,ii, 2005-03-30 (Released:2017-07-14)

日本における宗教研究の百年の歩みを、比較宗教学および宗教現象学の分野に限って見る場合、欧米の研究に触発されて、その基本的な概念や方法を吸収し、応用してきたというのが、大筋の展開である。研究の内容では、学説や概念並びに方法などに関する理論的研究や批評が目立ち、比較研究においては、研究の環境あるいは条件の特殊性にも制約されて、分類論や類型論を目指すものよりも、宗教現象に着目した比較研究に特色が認められる。このことは宗教現象学の分野においても同様で、豊富な宗教史の資料をもとに宗教の普遍的理解を追究するよりも、個別の宗教現象の意味や構造を解明する研究に独自のものが見られた。
著者
今井 健男 酒井 政裕 萩谷 昌己
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_207-2_226, 2013-04-25 (Released:2013-08-25)

本稿では,プログラムの事前条件推定を行う新たな手法を提案する.本手法では,プログラムのテキストから生成した述語の集合とプログラムに相当する論理式,および事後条件の否定の連言を作り,そのMinimal Unsatisfiable Core(MUC)から事前条件を求める.MUCは一般的に複数存在するが,本手法ではまずMUCを列挙し,その中から事前条件として適格で,かつ最も弱い条件を選択する.こうして得られる事前条件は理想的な最弱条件ではないが,与えられた述語群の組み合わせの中で最も弱いという点で,我々はこれを「準最弱」な事前条件と呼ぶ.我々は,C言語向け有界検査ツールCForgeを援用し,上記手法を実現するツールSMUCEを試作した.その上で,教科書的なアルゴリズムを実装するC言語関数9個に,2種類の事後条件と共に適用し,人手で求めた事前条件との比較による評価を行った.結果,延べ18個中10個において,人手で求めた事前条件と同等か,より弱い条件が推定され,提案手法が原理上,実用的な事前条件を推定できることが確認できた.
著者
奥 彬
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.450-453, 2002-06-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

ペットボトルに象徴される廃プラスチック問題を, 環境問題のみならず有機資源枯渇問題としてとらえ, 化学産業の生命線である資源保護のために, 教育界, 産官学, 消費者社会が協力して, 一定量の資源から繰り返し同じ商品を製造する資源再生の考え方を実現すべきことを説く。石油は経年的に急速に枯渇する資源, また植物資源は量的に有限な資源であるから, プラスチック産業は早急に資源増殖型の化学的な資源再生技術を考案して「資源の社会的蓄積による無限化への挑戦」に取り組むことを述べる。そのためには製造と廃棄の量を減らすだけでなく, 燃焼処理法を抑制する化学システムと生物非分解性の植物由来プラスチックの生産技術を考案すべきことも説く。さらにそれを助けるデポジット・リース・レンタル制度の普及, 素材の統一, 廃プラスチックの直接クラッキング法によるナフサ循環などを提案している。
著者
吉岡 亮太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.209, 2010 (Released:2010-06-10)

1.はじめに 神社の全国的な分布を明らかにしようとする研究は、長い歴史を有するにもかかわらず、今も未解明な点を多く残している。特に、全国で12万社以上ともいわれる神社を、その系統別に整理し、その分布を複合的に検討し、分布の地域的特質とその要因を明らかにした研究はあまり見られない。本研究では、デジタルデータである「平成『祭』データ」の特性を生かして、このような課題を解明することを目的とする。 2.研究方法 「平成『祭』データ」は全国に鎮座する神社のうち約8万社についての基礎的な情報を掲載しており、全国的な検討をする際には極めて有用な資料である。このデータの文字検索機能を用いて分析し、神社をその名称によって系統的に整理し神社群を設定した。そのうち神社数が20社以上という基準を設定すると、197の神社群を抽出することができた。特に、突出して多いのが1位の「八幡宮」群であり、以下29位の「氷川神社」群までは急速に減少していき、それ以下は横ばい傾向を示す。そこで、29位までを主要神社群とみなすこととし、それらについて分布を検討した。 3.各神社群の分布による東西格差 総神社数の6割を占める主要神社群29社の分布は、「越前―美濃―尾張」ラインを境として大きく異なる。すなわち、それ以東においては全体として29社の占める比率が高く、それ以西では比率の高い地域が一部塊状にあらわれ、神社分布においても「東北日本」「西南日本」という地域差が認められる。 次に、主要神社群を構成する各神社群の分布の特質を地図化を通して明らかにした。その結果、神社群の中には全国的に鎮座が見られるものとそうでないものとに二分でき、主要な神社群は前者に属する。そこで前者の分布特質に対して5つの型が指摘できた。第一は、「八幡宮」群や「賀茂神社」群、「厳島神社」群がそれに該当するが、各国にほぼ一定数で鎮座が見られる型であり「分散型」と呼称できる。第二は、「白山神社」群や「諏訪神社」群、「鹿島神社」群が該当するが、本社を中心とする地域への集中が顕著であり圏構造が認められる「偏在型」である。第三は、「天満宮」群や「日吉神社」群などがそれに該当するが、本社をおく地域を中心にした圏構造は見られる一方で、それ以外の地域にも一定数の神社が存在する型であり、第一と第二の中間ということで「中間型」と呼称することができる。次に、第四は、「熊野神社」群や「稲荷神社」群、「愛宕神社」群が該当するが、本社の存在する地域から離れた遠隔地にむしろ神社が集中する「乖離型」である。最後に第五は、「神明宮」群がそれに該当するが、第三と第四の両面を併せ持つ型であり、仮に「特殊型」と称しておく。 このような各神社群の分布パターンと、本社の位置との関係を整理すると、「東北日本」に本社をおく神社全てと、「越前―美濃―尾張」ラインにごく近い伊勢に本社をおく神明宮は、共通して「偏在型」という特徴を有しており、「越前―美濃―尾張」ラインが分布上の境界となっている「西南日本」への鎮座が極めて少ない神社であった。一方で、「西南日本」に本社をおく神社は、「分散型」もしくは「中間型」を示し、「越前―美濃―尾張」ラインを越え「東北日本」へと等しく分布している傾向が見られる。また、「乖離形」を示した神社も「西南日本」に本社を持つ神社群であるが、4社中貴船神社群をのぞく稲荷神社群・熊野神社群・愛宕神社群の3社が「東北日本」内の「東国」への集中傾向を示しており、「東北日本」「西南日本」の境界がより東に傾いてあらわれていた。 このように、「東北日本」側の神社にとって「越前―美濃―尾張」ラインがその境界として機能していた一方で、「西南日本」側に本社を持つ神社には、「越前―美濃―尾張」ラインが境界として機能しておらず、一貫して「東北日本」への伝播・勧請の影響が強くあらわれていた。「東北日本」と「西南日本」にあらわれる地域差は、それぞれに本社をおくこうした神社分布パターンの差異によって形成されたと考えられる。 4.今後の課題 以上、神社の分布について全体の約6割を占める主要神社群の分布検討を通して分布上の特質を、全体のみならず主要神社群の類型化の結果を通して明らかにした。ただ、国を基域とした全国レベルの検討にとどまっており、また予想された以上に多い5つもの類型があらわれる結果となった。したがって、今後よりミクロな分析により、このような分布パターンが現出した要因についても明らかにできると考える。
著者
欅 惇志
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.778-779, 2019-07-15

本稿では,著者の大好きな作品である山田胡瓜先生の「AIの遺電子」を紹介する.物語の舞台は,AIやヒューマノイド(外見や思考において人間を模倣したロボットであり,人間と同等の権利を持つ)関連技術が高度に発達して社会に溶け込んでいる近未来である.本記事の前半では,作品の魅力や,物語の中でAIがどのように運用され,どのように捉えられているのかについて紹介します.本記事の後半では,人間らしいロボット・心を持つロボットを実現する上での課題と現在の技術について議論する.
著者
小倉 毅 須貝 静 小倉 譲
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.21-30, 2008-06-16

いきがい対応型デイサービス利用者140名に調査をした結果,前期高齢者に旅行希望が多く,国内外に関係なく観光ツアーに希望が多かった。また,国内旅行においては,夫婦や家族と旅行するより,「気のおける友人」と楽しい旅行をしたいという要望が強い。逆に海外旅行では,夫婦や家族といった身内との旅行を望んでいる。また,オーダーメイドの手作り旅行や目的地のみを設定する旅行では,兄弟や親戚,ご先祖様の供養にお墓参り,思い出の地に行きたいといった希望がある。旅行日程は「2泊3日」が最も高く,次いで「1泊2日」,「日帰り旅行」である。旅行中の心配事については,「目的地までの移動時間・手段を考えると体力に不安,荷物を運ぶのが不安,トイレが近いので,休憩回数・時間がきになる。また,後期高齢者になるほど,付き添い者がいてほしい」という結果がでた。これらの結果をもとに,「長崎に単身赴任中の息子に会いに行きたい」と願う89歳(男性)のエスコートヘルパー旅行を実施した。長崎で息子に会えた喜び,観光,希望のかなった食事に満足して,「一生懸命遊び,人生を楽しむことこそ生きがいである」という本人の人生観に基づいた旅行が実施できた。今後の課題として,旅行先の移動手段,お手洗いの整備状況,入浴・食事の手配と介助方法,疾患状況を把握するためのアセスメント技術,さらには,旅行者の「生きがい感(人生観)」を理解する技術,車いすの操作方法,準備物の運搬方法を確立する必要がある。