著者
新ヶ江 章友
巻号頁・発行日
2006

筑波大学博士 (学術) 学位論文・平成18年12月31日授与 (甲第4181号)
著者
林 茂樹
雑誌
摂南大学教育学研究 = Bulletin of Educational Research of Setsunan University (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
no.12, pp.17-30, 2016-03

本稿は、小学校の「帰りの会」における1 日の反省の場が、個人に対する「吊し上げ」や「責任追及」の場に変化するメカニズムを、教室内の相互行為と秩序形成という視点から明らかにしようとしたものである。現在では、「班・核・討議づくり」の方法論による「学級集団づくり」の影響はほとんどないと考えられる。他方で、班・係・日直等の学級集団内の組織や役割、朝の会・帰りの会という短時間の学級活動は広く定着している。そして、子どもたちは、学級集団内での生き残りをかけ、体験にもとづく、状況依存的な行為選択を日々行っている。戦後の学級活動についての制度史的・実践史的展開に関する社会学的な解釈を踏まえ、1 日の終わりの反省の場が「吊し上げ」、あるいは「責任追及」に変化する場面を教室内の社会現象が構築される過程として捉え直した。そして、教室内の相互行為による秩序形成という視点で具体的な対面場面での子どもたちの振舞いの意味を解釈することにより、意図せざる結果として、「学級裁判」と形容される場面が創り出されることを指摘した。
著者
金 勲 柳 宇 鍵 直樹 東 賢一 長谷川 兼一 林 基哉 大澤 元毅 志摩 輝治
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成30年度大会(名古屋)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.1-4, 2018 (Released:2019-10-30)

普及が急速に進んでいる家庭用超音波式加湿器による室内空気の微生物汚染が懸念されることから、微生物汚染の経時変化を実験を通じて調べた。 加湿空気と加湿水中ET濃度は3日目までは緩やかな上昇を示すが、4〜5日目から指数関数的に急増し、急速な汚染が進行することが観察された。加湿器の洗浄や加湿水交換を毎日行っても細菌濃度が上昇することがあり、これはET及び浮遊細菌の測定結果から確認できた。
著者
尾家 重治 神谷 晃 石本 博美 弘長 恭三 神代 昭
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.117-121, 1990-02-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
22

微生物汚染を受けた超音波加湿器は, 過敏性肺臓炎や感染症の原因となることが知られている。今回, 我々は学校, 家庭, 小売店, および美容院など市中で用いられていた超音波加湿器20台について, 振動子水槽水の微生物汚染を調査したところ, 13台は104~105コ/mlレベル, また残り7台は102~103コ/mlレベルの細菌汚染であった。すでに, 104~105コ/mlレベルの細菌汚染を受けた超音波加湿器が過敏性肺臓炎の原因となったとの報告があるので, 調査した超音波加湿器の過半数は, 過敏性肺臓炎の原因となりうることが推定できた。おもな汚染菌は, Pseudomonas属などのブドウ糖非発酵菌であった。超音波加湿器の細菌汚染のおもな原因として, 本装置が構造的に洗浄・消毒が困難であることがあげられる。
著者
小椋 正道 矢野 久子 利根川 賢 中村 敦 伊藤 誠 岡本 典子 高阪 好充 溝上 雅史 新井 亜希子 倉田 浩
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.99-104, 2005-06-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
13

発熱と呼吸困難を繰り返し過敏性肺臓炎が疑われた77歳女性に対し, 原因微生物を検索する目的で患者宅環境調査を行った. 調査方法として (1) 浴室, 超音波式加湿器 (以下加湿器), 患者寝室の滅菌綿棒による拭き取り,(2) 加湿器内の水 (加湿器水) の培養,(3) 患者寝室押入れと加湿器の置いてある居間のエアサンプリングを行った. その結果, アレルゲンと成り得るグラム陰性桿菌と真菌が合計11菌種検出された.これらの菌から作製した抗原液と患者血清による沈降反応 (Ouchterlony 法) を行い, 加湿器の内壁, 加湿器水, 加湿器稼動中の居間の空気の3箇所より検出されたCandida guilliermondiiが陽性であった. 3箇所から検出されたこの菌はPFGE解析により核型が一致しており, 加湿器内で増殖していた本菌が加湿器を稼動させたことで空気中に飛散したことが示唆された. 本事例は加湿器を廃棄したところ症状の再発がみられなくなった. 以上からC. guil-liermondiiを原因微生物とした加湿器肺が強く疑われた.
著者
原 真理子 守本 倫子
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.107-110, 2016-03-31 (Released:2016-06-23)
参考文献数
15

PFAPA 症候群は, 周期性発熱を主症状とし, アフタ性口内炎, 咽頭炎, 頸部リンパ節炎を随伴する. 比較的新しい概念の疾患であり, 詳しい病因や病態は分かっておらず, 診断に迷うことも少なくない. 薬物療法にはプレドニゾロン頓用があり, 著明な解熱効果が得られる特徴をもつ. 外科的治療法では, 口蓋扁桃摘出術が有効であり, 当科の治療成績でも高い有効率が示された. 病態仮説には, 自然免疫の活性異常や末梢組織での T 細胞活性などが提唱されている. また, 扁桃炎の随伴が多く, 口蓋扁桃摘出術が有効であることから, 本疾患と扁桃組織との間には何らかの関連性があると推測される. 現在, 扁桃組織の遺伝子とタンパク質の網羅的解析を進めている.
著者
林 晃紀
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.55-75, 2020-09-30 (Released:2020-09-30)

When we read Wittgenstein's Philosophical Investigations, we often feel baffled because it is difficult to draw out a systematic theory from the text. Given this exegetical problem, it is often said that Wittgenstein never intends to propound any theory; rather his aim of philosophy is therapeutic.     The problem of rule-following has been most often argued among the topics in the Investigations. Most of approaches to the problem, however, are not therapeutic but constructive. The purpose of this paper is to examine the problem of rule-following from a perspective of therapeutic philosophy.
著者
田中 浩二
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.33-42, 2011
参考文献数
16

本研究は,精神科病院に長期入院を余儀なくされた患者が体験している生活世界を明らかにすることを目的とした質的記述的研究である.研究参加者は,精神科病院に10年以上入院している患者12名であり,参加観察と半構造的面接によりデータを収集し,質的帰納的に分析した.その結果,長期入院患者は【失ってしまったものが多く自らの存在が危うくなるような体験をしている】が,【入院前の自分らしい体験に支えられた生活】や【入院生活のなかでみつけた小さな幸せ】【病棟内から社会とのつながりを見いだそうとする工夫】【生きていくうえでの夢や希望】を拠り所に生活していることが明らかになった.長期入院患者の看護では,喪失体験に対する共感的理解とともに,その入らしい生活を送ることができるような場や人とのつながりを探求していくことが重要である.
著者
林 瓏
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.35-45, 2015-03-23 (Released:2017-03-24)

本稿では中国の「個人档案」を中心に、個人档案に関わる法制度、運用の現状、問題点について概説する。「個人档案」は、中国の計画経済体制下において、個人の進学や就職、昇進などに利用され、中国国民の私生活にも関わる重要なものである。よって、本稿では個人档案の重要性、新卒者の個人档案・社員档案・流動人口の档案の「移交」・保存について、事例を挙げながらその詳細を示すこととする。まず、中国の行政区画に基づいた国家档案館の階層管理方式、各階層の档案組織の役割・職責について紹介する。次に、根拠法である「中国档案法」に基づいて、個人档案の概要を示す。その後、日本と中国の戸籍制度の違いを踏まえたうえで、中国国民の就業直後から作成される「人事档案」の管理について説明する。最後に、管理制度のわかりにくさやその不透明性、また、記入標準の不足などによって生じている問題点を指摘する。
著者
勝田 至
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.7-30, 2012-03

近代の民俗資料に登場する火車は妖怪の一種で、野辺送りの空に現れて死体をさらう怪物である。正体が猫とされることも多く、貧乏寺を繁昌させるため寺の飼い猫が和尚と組んで一芝居打つ「猫檀家」の昔話も各地に伝わっている。火車はもともと仏教で悪人を地獄に連れて行くとされる車であったが、妖怪としての火車(カシャ)には仏教色が薄く、また奪われる死体は必ずしも悪人とされない。本稿の前半では仏教の火車と妖怪の火車との繋がりを中世史料を用いて明らかにした。室町時代に臨終の火車が「外部化」して雷雨が堕地獄の表象とされるようになり、十六世紀後半には雷が死体をさらうという話が出現する。それとともに戦国末には禅宗の僧が火車を退治する話も流布し始めた。葬列の際の雷雨を人々が気にするのは、中世後期に上層の華美な葬列が多くの見物人を集めるようになったことと関係がある。猫が火車とされるようになるのは十七世紀末のころと見られる。近世には猫だけではなく、狸や天狗、魍魎などが火車の正体とされる話もあり、仏教から離れて独自の妖怪として歩み始める。悪人の臨終に現れる伝統的な火車の説話も近世まで続いているが、死体をさらう妖怪の火車の話では、死者は悪人とされないことが多くなった。人を地獄に連れて行く火車の性格が残っている場合、火車に取られたという噂がその死者の評判にかかわるという問題などから、次第に獄卒的な性格を薄めていったと考えられる。Kasha, which emerges in modern folklore, is a kind of monster which appears in the sky over funeral processions and carries away the dead. The monster is often identified as a cat, and "nekodanka," which is an old tale of a cat playing tricks together with the priest of a poor temple to make the temple prosper, is also known in various places.Kasha was originally a Buddhist carrier that allegedly took villains to hell. However, when kasha is portrayed as a monster, its Buddhist character is weakened, and the dead taken by kasha are not necessarily villains. The first half of this article clarifies the connection between kasha in Buddhism and kasha as a monster, using medieval materials. During the Muromachi period, kasha for the death was "externalized," and thunderstorms were considered to represent going to hell, while in the last half of the 16th century, the story of thunder carrying away the dead appeared. At the same time, at the end of the Sengoku period, the story of a Zen Buddhist monk defeating kasha gained ground. People's concerns about thunderstorms at funeral processions are connected with the fact that in the last half of the Middle Ages, gorgeous funeral processions of the upper classes attracted many spectators.It seems that kasha were first identified as cats in the late 17th century. In early modern times, kasha were also identified as raccoon dogs, tengu, moryo, etc., leaving Buddhism and beginning to walk alone as unique monsters. The traditional story of kasha, which appears at the death of a villain, was continued until early modern times, but in the story of kasha as a monster carrying away the dead, the dead was often not villains. If kasha still had the character of a monster which carries away people to hell, the rumor that kasha took the dead might have tarnished the reputation of the latter. For this reason, the character of kasha as a tormenting devil in hell would have gradually been weakened.
著者
西守 隆 大工谷 新一
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.37-41, 2004 (Released:2005-03-11)
参考文献数
4

Interpretation and integration are defined as tying up a patient's capacity for action and measurement results. This paper explains the interpretation and integration divided into the following five. “Solving relativity of impairment and active limitation”. “Solving the cause of impairment”. “Solving the correlation of impairment”. “Solving the correlation of active limitation”. “Inferring a prognosis of impairment from references or improvement of clinical physical therapy”. Interpretation and integration are the most important parts of physiotherapy evaluation.
著者
橋川 成美 小川 琢未 坂本 祐介 橋川 直也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.148, no.3, pp.139-143, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
30

カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は,様々な生理機能を有するペプチドである.強力な血管弛緩作用がその機能として第一にあげられる.CGRPは神経細胞で産生されて遊離されることから,神経系との関わりが考えられる.今回は行動異常とCGRPとの関連性について紹介を行う.我々はマウスに15日間ストレスを負荷することによって,海馬におけるCgrp mRNA量の減少が起こっていることを明らかにした.そこで,CGRPがうつ様行動に影響を及ぼすのではないかと仮説を立て,ストレスを負荷するマウスにCGRP(0.5 nmol)を脳室内投与した結果,うつ様行動の抑制が見られた.同様に海馬新生細胞数の減少の抑制,神経成長因子(NGF)mRNA量の増加が見られた.In vitroにおいても,マウス海馬E14培養細胞株にCGRP(100 nM)を添加すると,Ngf mRNAレベルの増加が見られた.そこで,ストレス負荷マウスにNGF受容体阻害薬であるK252aを投与し,行動を観察した結果,CGRPによる抗うつ作用の減少が観察された.これらの結果はCGRPがNGFの増加を介して抗うつ作用を引き起こしている可能性を示唆している.